三話 ここがどこだか教えてほしい 3
とは言ったもの魔法なんてわけわかんないものの使い方なんてさっぱりだ。
「でもせっかくもらったんだし。まず解析魔法……か?」
しかし、すんごいことが出来るというのだし、扱う努力ぐらいしてみてもいいだろう。
とりあえず俺は手を前に突き出して、それっぽいポーズをとってみる。
どうせ一人なんだし気にする必要もないのだが、やっぱりちょっと気恥ずかしい。
だが、恥ずかしがっていたって仕方がないだろう。
俺は深く息を吸い込むと、意識を集中し気合を入れた。
「魔法でろ!」
タイムラグに赤面しつつ、何となくそれっぽいことを考えてみる。
すると。
「おお!」
なんと体がうっすらと青く光り出したじゃないか!
自分でやってみてびっくり仰天だった。
使おうと思っただけで使えるのか魔法ってやつは!
案外簡単で何よりだ。
そして、体の中から何かが消えてゆく感覚の代わりに、奇怪な模様の描かれた円が空中に現れたじゃないか。
これがつまるところ魔法陣らしい。
それはそのまま静止して、ぼんやりと光りながら明滅していた。
幻想的な魔法陣を前に、口を開けて眺めていた俺だったが、すぐにハッとする。
ボーっとしている場合じゃなかった。
「よ、よし! いけ! 解析!」
気を取り直して声に出した途端、魔法陣はひときわ大きく輝くと、弾けて消えてしまった。
……失敗か?
少し不安になったが、そうではなかったらしい。
無事効果は表れて、一瞬遅れて目の前に、立体映像の表みたいなものが飛び出してきた。
なんだか胸がドキドキする。
正直、初めて使う魔法は俺的にかなり感動ものだったのだが……。
表に映しだされていたのは、一見するとゲームのパラメーターみたいなもので……というかそのまんまだった。
俺の密かな決め顔が画面に映し出されていたが、そこは俺の心の平穏のためにスルーしよう。
「わかりやす!……どれどれHP10? ひっく! 俺どれだけ体力ないんだよ……いや、高いのか低いのかそもそもわからないけど。
MPは……例の魔力って奴なのかな?」
そして肝心のMPの欄を確認してみる。
しかし表示されている数値は、ちょっと意味が分からない。
「は? 800万1000?」
目を擦って、もう一度見直す。
……ちょっと待とう。
普通が1なんだよね?
そして、この1000って言うのが貰った分だとすると……元々が高すぎないか?
というか確実に桁が違う。
俺は知らず知らずに、だらだらと冷や汗をかいていた。
ひょっとしたらだが、これはもはや化物とか、そういうレベルではあるまいか?
それに加えて、さっきの魔法……。
「あはははは、爺さん……。あんた、話と大分違うんじゃないか?」
俺は虚ろな表情で消えてしまった爺さんの顔を思い出す。
その顔はひどくいい笑顔で、無駄に白い歯をきらめかせていた。
「どぅりゃ!」
俺は思い切り画面を殴って、すぐさま解析の魔法を打ち切った。
必要なかっただろうが思わずである。
ついでにそのまま手の甲で額の冷や汗をぬぐった。
ふぅ。さてどうしようか?
「あーもう……どうでもいいか! 多くても困るわけじゃなし!」
考えたっていい案など思いつくわけがない。
大は小を兼ねるとも言うし、俺はとりあえず気にしないことに決めた。
「よし! 次行ってみよう!」
さて、魔法も無事? 使えるとわかったことだし、となればさっそく実践編だ。
とにかく試しになにかやってみるのもいいだろう。
今一番やってみたいのは、あの爺さんに色々と文句を言ってやりたいって事だが……まぁいい。
ともかく、その凄い魔法とやらも試さないことには始まるまい。
「魔法創造! ちんからほい!」
呪文とかよくわからないので、適当にやってみたらなんか出来た。
本当にそんな適当なことでいいのか魔法?
とは言っても今回は何か特別な演出があるわけではない。
見ていた者がいたとしても、何か変化があるようには見えなかっただろう。
しかし魔法が魔法だけに、先ほどとは比べ物にならない複雑な魔法陣が俺の中で展開されていく感覚は、ちょっとした恐怖だったりする。
外側ではない、内側にだ。
これは俺の感覚でしかないんだろうが、俺の中に刻み込まれた何かが、どこかに繋がろうとしているのがわかる。
そして数秒後、俺はなにかとても大きなものとの繋がりを強く感じていた。
何とは言えない。
ただこう大きくて、意味が分からないくせに、どこか知っているようで、掴み所がないなにか。
これが世界と言うものなのだろうか?
よく理解出来ないが、これが簡単に頭で理解出来るような代物ではないことだけはひしひしと感じるのである。
しかし俺の第一声は、驚きでもなんでもなく。
「……なんでやねん」
ただツッコミを入れてしまった。
いやいや、せっかく壮大な感じで感動していたのだ。
俺だって「なんてことだ……」とか「人間が使っていい力なのか……!」とか言いたかったさ。
でもさすがにこれはないと思うんだ。
非常に見慣れた液晶画面。
脳内に現れた画面は、パソコンで見慣れた検索エンジンだったのだから。
何を言っているのかわからないと思うが、言葉にウソ偽りなどまったくない。
なにこれ? ぐぐれってか?
なんかもう、色々台無しだった。
さっきからゲームのパラメーターだのPC画面だの全然魔法っぽくないし。
目を瞑ると、画面の真ん中あたりにチコチコ点滅するバーが見える。
どうやらここに検索ワードを入れるらしい。
「……想像力ってお前、確かにその通りかもしれないけどさ」
想像力というかむしろ語学力?
適当に言葉を思い浮かべると、文字が勝手に打ち込まれてゆく。
検索が終わると、色々な魔法がずらりと表示されていた。
ワードを入力すると、出来そうな関連項目が一覧で表示される仕組みらしい。
完全にネットですね、本当にありがとうございます。
検索ワード次第では、出来ることの幅も違ってくるというわけか。
こんなことなら国語の勉強をもっとちゃんとしておけばよかった。
「さてどうするか……なんかやる気がごっそりなくなったけど」
モチベーションを下げられて、単語を思い浮かべては消してゆく。
そんな中、俺は唐突に馬鹿な事を思いついた。
いくらなんでも無理だろう。
そうは思ったが、一応遊び半分くらいの気持ちで検索をかけてみたんだけど……あれ? なんだか出来そう?
もちろんダメ元だったんだけど……出来てしまったんだよね。うん。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。