フランス・パリの複合文化スペース、ポンピドーセンターは1977年の建設当時、大変な非難にさらされた。建物の壁の中に隠すべき鉄筋や排水管、通風管がむき出しになっていたからだ。当時はまだ「美術館、博物館の建物は大理石で優雅に建てるべきだ」という考えが支配的だった。このため「内臓が外に出ている建物」「(建設途中で)建設中止になった工場のようだ」などの声が相次いだ。
2002年、ロンドンを流れるテムズ川沿いに奇怪な姿の建物が建設された。かぶとをかぶせたようでもあり、卵を傾けたようでもあった。男性の睾丸(こうがん)のようだと言う人もいた。この建物は、英国が誇る建築家、ノーマン・フォスターが設計したロンドン市庁舎だった。ロンドンはセントポール大聖堂、バッキンガム宮殿、ウェストミンスター大聖堂をはじめとする国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産級の建物が立ち並ぶ都市だ。当然、都市の奥ゆかしい格調を害するという非難が相次いだ。
しかし今は、ポンピドーセンターやロンドン市庁舎を「醜い」と非難する人は誰もいない。ポンピドーセンターは「美術館は高尚でなければならない」という固定観念を壊した。誰でも気軽に自由に出入りし、楽しむことができる名所となった。ロンドン市庁舎は、周りの古い建物と時には対照的に、時には調和しながら、ロンドンの新しいランドマークとしての地位を得た。先端科学技術を動員し、エネルギー効率を高め、画期的な外観で都市に生気を吹き込んだ公共建築のモデルケースに挙げられている。
世間の非難という面だけで見れば、昨年オープンしたソウル市の新庁舎もポンピドーセンターやロンドン市庁舎に負けないだろう。600年の古都、ソウルの真ん中になぜエイリアンのような建物なのか、と言う人もいれば、セメントの森の中で縛り上げられた昆虫のようだと言う人もいる。では時間がたてばソウル市の新庁舎もポンピドーセンターやロンドン市庁舎のような名物になることができるのだろうか。専門家たちの目も一般の人の目と大きくは異ならないようだ。ある建築雑誌が建築家100人に対しアンケート調査を実施したところ「韓国最悪の現代建築第1号」にソウル市新庁舎が挙がった。
ポンピドーセンターを設計したイタリアの建築家、レンゾ・ピアノは、「建物を建てる際は魔術が必要だ」と話した。「建築家はこの魔術のために社会学者となり、詩人となり、科学者とならなければならない」。問題は、ソウル市新庁舎には詩も科学も建築の新たな時代を突破しようという意志も見受けられないことだ。ソウル市新庁舎は「無概念」だ。「植民地時代の日本でさえも特別に気を使ったソウルの心臓部に、われわれは自ら大きな失敗をした」と指摘するある建築家の評価が痛い。