【萬物相】古本屋街

 1カ月に一度は古書店を訪れる。自宅近くのソウル・新村一帯には今も「学友書店」「コンさんの本屋」「隠れている本」というような温かみのある名前の古書店が多く残っている。先週の昼休みには、鍾路2街に開店して間もないアラジン中古書店に行った。同じ古書でも「お客様が今売った本」「今日入荷した本」のように「新鮮さ」別に分類されていてセンスがあるように見受けられた。英文学の大家、李相億(イ・サンオク)ソウル大名誉教授が20年前に出したエッセイ集『ホトトギスとコノハズク』など4冊を1万3000ウォン(約1100円)で購入した。

 1960-70年代、「街の哲学者」と呼ばれたミン・ビョンサン氏は東大門の古書店街に毎日通い続けた。ミン氏は「買いたい本があっても金が足りずにそのまま書店を出る時は胸が痛い」と話した。しかしミン氏がさらにつらい気持ちになる時がある。「持ち主の手から離れるはずのない本が古本屋に売られ、他の本の間に挟まっているとき」だ。ミン氏は「この本がどのように持ち主から離れてしまったのか、持ち主にはどんな事情があったのだろうか。あれこれ想像すると悲しくなる」と話した。

 毎年4万種類以上の新刊が大量に出版される。だがこのうちの大部分は、読者に記憶される間もなく書店から消えて行く。新刊書店ではいくら目を大きく見開いても見えなかった本が、古書店で「私、ここにいるよ」と存在を現すとき、読者は宝物を発見したような喜びを感じる。古書店巡りを50年続けている元新聞記者の南載熙(ナム・チェヒ)氏は、これを「アスファルトの上の釣り師が大物を釣り上げる喜び」と表現した。

 読書先進国には、その国を代表する古書店街がある。東京・神田の神保町、英国ロンドンのチャーリング・クロス通り、パリのセーヌ川沿いのノミの市のようなところだ。英国ウェールズのヘイ・オン・ワイは、50年前に衰退した炭鉱村を古書店街に変身させ、年間50万人を集めている。この10年、日本の新刊書店は6000店以上減少したが、神保町の古書店はむしろ増加した。

 朴淳元(パク・スンウォン)ソウル市長が先日、朝鮮日報のインタビューで「清渓川や新村の大学街にヘイ・オン・ワイや神保町のような古書店街を作る」と話した。われわれにとっても、かつてソウルの清渓川、釜山の宝水洞、大邱の南門市場、仁川・昌栄洞など、各主要都市に地域住民たちに愛される古書店街があった。物資が足りないためリサイクルする、という意味もあったが、基本的には本を大切にし貴重なものとして扱う雰囲気が、その時代にはあった。最近繁盛しているコーヒーショップと古書店文化が協力し合えば、ソウルに格調ある街が誕生するきっかけとなるかもしれない。

金泰翼(キム・テイク)論説委員
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
関連ニュース