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入学編
入学編Ⅹ話
約束の日である金曜日がついに来た。
生徒会役員たちは舞台裏にいた。
会場たいいくかんの方はもう生徒が大勢きていて、ざわついている。
「風紀委員の配置は完了しました。」
冷菓の報告を受け、生徒会役委員たちは最後の打ち合わせに出た。
「まず、配置の確認ね。麻耶と梓とは舞台の前面で待機。ナギサちゃんは司会をお願いね。
 和也君は舞台での発表。私から振るからお願いね。」
この手の集会では何人かが交代で行うより一人での独壇場のほうがやりやすい。
しかし和也には部費のグラフを発表しなければならなかった。
それはあのグラフの製作者である和也のほうが質問の対応がしやすかったためである。
「それじゃ。始めるね。」
舞台裏から舞台にでた。

「みなさん。こんにちは。生徒会長の八雲衣沙羅です。
 今日は先日の件でお話します。」
二等生側で声がでた。
しかもかなり多い。
どうやら、有志同盟は仲間を増やしたらしい。
今まで隠れていたが、この前の放送で吹っ切れたらしい。
「まず。各部に関する部費の問題です。生徒会で確認をしたところ一等生を優遇しているといったものは一切ありませんでした。」
その意見に予想通り「嘘だ。」、「インチキだ。」等の言葉が出た。
「これに関しては、二等生の生徒会執行部の沢渡和也君お願いします。」
衣沙羅は二等生の部分を強調していった。
衣沙羅と交代する形で和也は舞台に立った。
舞台に向かう途中、衣沙羅とすれ違ったときに「がんばって。」と激励をされた。
舞台に着いた和也はまず、会場全体を見た。
一等生からは不審な目で見られ、二等生(有志同盟)からは期待の目で見られていた。
「ご紹介に頂きました。二等生の生徒会執行部の沢渡和也です。
 まずこちらのグラフを見てください。」
スクリーンに一つのグラフが出てきた。
これは和也が集計したグラフである。
和也に発表させた訳は二つあった。
一つはさっき衣沙羅が言ったとおりで、もう一つが話を有利に進めるためである。これを衣沙羅が発表すれば結局一等生を贔屓していると言われかねない。
しかしここで二等生の和也が発表することで、一等生、二等生、両方が納得のいくものになる。
「まずこのグラフを見てください。これは各部の部費をグラフで表したものです。各部の部長さん、部費のほうに間違いはありませんか。」
会場側から違うなどの意見はなかった。
「では次に見ていただくものは各部にどのくらいの一等生と二等生が入っているかです。」
そこで和也は生徒会で話したことを分かりやすく話した。
「執行部からは以上です。生徒会長あとはお願いします。」
和也は一礼をして、舞台から舞台裏に戻った。
司会のナギサが和也に笑顔でよくやったといいたげな顔をしていた。

「部費に関することは沢渡君の話でよく理解できたと思います。
 分かりきていると思いますが、彼は嘘などついていませんよ。」
それを理解をしていいた生徒たちは何も言わなかった。
「次に差別問題です。
 たしかに今現在、一等生と二等生の間に壁があります。それもかなり厚い壁です。
 私たち生徒会も対策を練ろうと頭を絞っていますがこれといった案がなにも思いつきません。
 けれど最近、私はその壁を壊してくれるある一つの可能性を思いつきました。
 それは二等生の生徒会長就任です。」
会場内が騒がしくなった。
「お静かにお願いします。」
司会のナギサの声が会場内に響いたがそれは無意味なものだった。
しかし会場内を静かにさせたのは別のものだった。
体育館の入り口と二階くらいの高さにある窓から(蹴り破られた)武装した侵入者が入ってきた。
しかも学生でない。
しかしその侵入者も事前に配備されていた風紀委員によってなにもするまもなく捕らえられた。
なにも知らない一般生徒は混乱し始めた。
「落ち着きなさい。」
その声の主は衣沙羅だった。
たった一言であったが一般生徒の混乱は収まった。
和也は直感で思った。この人にはリーダーの素質がある。
「ここは安全です。みなさんは騒ぎが収まるまでここにいてください。」
衣沙羅そう言うと、舞台裏に移動した。
その間、舞台の前衛にいた二人が生徒たちに説明をしていた。
「和也君。ちょっとお願いがあるんだけど。」
「はい。なんですか。」
和也は何を頼まれるか予想は付いていたがあえてなにも言わずにいた。
「実は襲撃を受けたのはここだけではなくて、あと他にも数箇所あるの。一つは教員用の駐車場だけど、こちらは先生たちがどうにかしてくれるから、気にすることはないは職員が対応しているからもうすぐ終わると思うから。もう一つは図書室よ。たぶん、彼らの目的は図書室にある。魔法に関係している本よ。一般の書店で売っているようなものではないはものよ。和也君にはナギサちゃんと一緒にいってもらうは。和也君にとっては少し邪魔かもしれないけど、もしもの保険よ。和也君見たところ飛び道具系のものなにもないから彼女の遠距離系魔法が役に立つと思うは。あと今回のこの件には有志同盟の生徒が関わっていると思うは。たぶん一年生を集会によこして、二年生と三年生は襲撃者とのお手伝いだと思う。」
和也の予想は九割は合っていたが一割間違っていた。それはナギサのことであった。
「飛び道具は問題ありません。僕にはそれに似たものがありますからそれに最低の場合は相手の銃器を奪って戦いますから。ですからナギサはいりませんよ。」
和也は真剣に頼むためいつものよび方ではなく普通に名前で呼んだ
「和也君、たぶん、ナギサちゃんはなにがあっても和也君についてくると思うは。それが危険なことならなおさらよ。
 だったらせめてあなたの近くで居させるのが一番安全でしょ。」
和也は「参ったな」と思った。
よく考えれば衣沙羅の言う通りだなと和也は思った。
「分かりました。ナギサをよんできてください。」
和也はもしもを備えて持ってきていた袋に入れていた状態の《夜桜》を肩に掛けた。
ナギサはすぐにこちらに来た。
「和也君たちは裏口から出てね。がんばってね。」
衣沙羅に送り出され和也とナギサは体育館を後にした。

和也は極限まで(今の段階で)鍛えた走力でナギサは加速魔法で一分もかからず教室棟に着いた。
忍びこんだらすぐにエンカウントした。
しかし、向こうは和也とナギサには気がついていなかった。
数は一、武装はハンドガンとナイフ(日常雑貨のよりは大きい)。
和也はナギサに自分一人で出来ると小声で言い。
襲撃者の後ろに忍び寄った。
そのまま躊躇いもなく、襲撃者の首を締め上げた。
最初こそ抵抗していた襲撃者だったが最後はもう気絶していた。
和也は早速、戦利品を頂いていた。
襲撃者からは、ハンドガンとその弾倉とタクティカルナイフをもらった。
そう様子を見ていたナギサはおまわず
「カズにぃって狩人ハンターなの。」
と言ってしまった。
しかし和也はそれが聞こえなかったらしく一人、慣(‘‘‘)れた手(‘‘‘)つきで銃の点検をしていた。
その結果これがセミオートマチックということが分かった。
「カズにぃって銃とか使ったことあるの。」
あまりにも慣れた動作でその作業をしていて驚いたのかナギサがこちらに近づきながら聞いてきた。
「いやたぶん。ゲームの影響だと思うよ。」
そうは言ったものの和也自身そう指摘され驚いた。
けれどすぐにあることを思い出した。
(そういえば。結構リアルなFPSのVR(仮想現実)ゲームしていたからそのせいだろう。僕、記憶力いいし。)
と和也は思うようにした。
「それじゃ行くよ。」
剥ぎ取りを終えた和也は襲撃者を縄で締め上げその場からすぐさまに立ち去った。
階段に来たところで和也は地下の方の階段から人の気配を感じた和也は、ハンドガンの銃口を反射的にそちらに向けた。
「待った、待った。和也俺たちだ。」
その声の主は
「飛一郎それに姫華。」
そこにはクラスで一番親しい友達がいた。
「あれ、集会に参加しなかったの。」
「俺たちはめんどくさかったからパスして訓練所に行ってた。」
「私もそんな所よ。」
和也はこの状況にも関わらず思わず思ってしまった。
(この二人て意外とウマが合うんじゃないか。)
「でもそしたらちょっと面白そうなことが起きたじゃん。和也たちはそれを対処するんだろ。俺たちも手伝うぜ。MCAも持ってるし。」
「分かった。来てもいいけど、可能な限り僕から離れるなよ。」
待ってましたとばかりの表情を二人はしていた。
飛一郎のMCAは鋼の手甲。姫華のはトンファーだった。
一体どんな風に使うのだろうと和也は一人ワクワクしていた。
図書室につくまで何人かの襲撃者とエンカウントしたがそのたびに和也が的確に両肩だけをハンドガンで打ち抜き戦闘不能状態にしていったためナギサたちはなにもしていなかった。無論約二名ほど不満を持った方々がいた。
「僕が一番初めに突入して、実弾部隊しゅうげきしゃを潰すから。三人は先輩方をよろしく。」
三人の返事を聞かずに和也は図書室に突入した。
そして和也の予想通り、そこには実弾部隊がいた。
和也が突入すると同時に、魔法と銃器の集中放火を浴びた。しかし、後者の方はすでに和也によって無力化されていた。
かかった時間は十秒弱。
和也は的確に相手の肩だけを撃ち抜いた。
しかし魔法のほうは防ぎなかったが、和也に当たった魔法の全てが反射した。
(能力制限されてるからあと十分はいけるか。)
その隙に和也は本棚に隠れた。
能力節約のため和也は反射リフレクトを切った。しかし、それが決定的な隙となった。
和也の背後に隠れていたらしい襲撃者がいた。しかしそれを瞬時に反応した和也はさっき奪ったタクティカルナイフをを取り出し、相手の脇腹に刺した。
和也の次に突入したのは飛一郎だった。飛一郎は加速魔法をかけ、一気に敵の懐に突っ込み今度は硬化魔法で制服を強化したおかげか、攻撃を受けてもほとんど無傷に近かった。
「チェリョーーーーーーーー。」
飛一郎が叫ぶとMCAの手甲が、手が脚が硬化した。
そしてバリケードごと殴り壊した。
「あれ、なに?。」
「あれは一昔前に流行った。音声認識型のMCAよ。」
和也の疑問に姫華が答えた。
「姫華、お前も働けよ。」
「だって、今、あのバカの独壇場だし。」
その時、相手側に動きがあった。
「美樹。あれを使え。」
和也はその言葉に反応した。
自分が知っている先輩がいたからだ。
桜乃は指に紫色の指輪をはめた。
その瞬間、前衛で戦っていた飛一郎、和也の近くにいるナギサと姫華が突然、耳に手を当てはじめた。しかも尋常じゃない強さで。
敵のど真ん中にいた飛一郎を和也は持ち上げ姫華たちの所に戻った。
「どうしたの。」
和也は混乱しながらもこれだけは言えた。
「マギカジャミング。」
ナギサが呻きながらも答えた。
しかし、その症状も除々に回復してきた。
三人共恐る恐る耳から手を離した。
「今のはなんだったの。」
「マギカジャミング。魔法を封じる鉱石、魔法師の天敵。魔法師にだけ大きな超音波が耳に響き渡る。けれどその発掘数は少ない。」
ナギサが淡々と説明した。
「そんなことより急ぐぞ。敵さんは撤退したに違いない。今だったらまだ追いつく。」
飛一郎の提案にみな賛成した。

予定外だった。
逃げながら桜乃は思っていた。
その予想外の要因は和也たちだったがその中でも一番大きかったのが和也であった。
(魔法を跳ね返したあれはなんなのよ)
辺りには誰もいなかった。
全員、バラバラに逃げ少しでも逃走率を上げていたのだった。
「美樹先輩。」
不意に後ろから声がかかってきた。
その声の主は桜乃にとって一番大きな要因だった和也であった。
その後ろにもさっきの面々がいた。
「あら、なにかしら沢渡君。」
「美樹先輩。大人しく投降してください。」
和也の駄目もとの提案は予想通り駄目だった。
「ごめんな。沢渡君それは出来ないは。私はどうしても認めさせなきゃいけないの私を含めて虐げられた人たちのために。そして私自身のために。」
それを言い残して桜乃は再び逃走を始めた。
再び追おうとした和也を姫華が止めた。
「ここは私に任せて。」
なぜだか分からないが和也はこれに従ったほうがいいと思った。

「どーも先輩。」
逃走をしていた桜乃の前に一人の女子生徒が出てきた。
「あなた、確か沢渡君と一緒にいた子よね。」
「そうですよ。」
桜乃はここは下手に戦闘に入るより遠回りに逃走するのが吉と考え、後ろに逃げようとしたが、それは止められた。
「無駄ですよ、後ろには和也君たちがいますから。」
「私は袋のネズミてわけね。ならごめんね。少し怪我するはよあなた。」
そう言ったところで女子生徒が一本のなんの変哲のない木刀を投げてきた。
「拾いなよ先輩。こっちのほうがやりやすいでしょ。」
彼女は自分用に用意していた木刀で構えていた。
桜乃は迷いもなくその木刀を拾った。
「一撃で決めるからね。」
「分かりました。」
勝負は一瞬だった。
桜乃が動き出したと共に女子生徒も動いたのだ。
女子生徒の速さは比喩表現でもなんでもない疾風のごとくだった
それが決定的な勝負の分かれ道だった。
勝負に勝ったのは女子生徒だった。
「負けちゃったか。あれは自動加速魔法?」
「そうだよそれにすごいよ。先輩。先輩は認められるよなんせ三代川の娘に攻撃をかすれせたんだから。」
「ありがとう。」
桜乃が突然女子生徒――姫華に言った。
「あなたのおかげでようやく、自分を止められたよ。」
それ言うと桜乃は倒れた。
「安心して先輩。優しい後輩が今、保健室まで運ぶから。」

結局、学校の外に逃げれた学生はいなかったが、何人かの襲撃者が逃走した。
騒ぎも一通り収まり、和也達は保健室にいた。(ここにいるのは。生徒会役委員、風紀委員、そして関係者として姫華に飛一郎)
桜乃の怪我は幸い時間が経てば直るようなものだった。
そして今、和也達は桜乃を尋問するためにここにいる。
尋問はこの場合、怪我が回復してから行われるが今回は桜乃の強い希望があり、すぐに行うことになった。
「まず聞くは、誰が今回の騒動を計画していたの。」
「間宮。間宮司まみやつかさ。」
桜乃ははっきりと答えた。
それと同時に冷菓が携帯を取り出し、風紀委員に指示を出していた。
どうやらここの生徒だったらしい。
「あなたはそのグループの外部者にあったことあるの。」
「一回だけあるは。だけどその時の記憶ははっきりしていないは。」
「最後に。あなたはどうじて有志同盟に入ったの。」
桜乃は思い出すように考え言った。
「分からないは。今さっきまでははっきりとしていたのに今はなにも分からないは。」
その時後ろのほうでこんな会話がされていた。
「ねぇ、冷菓。」
「うん。なに。」
「うん。冷菓って、美樹先輩と剣で組んだことあるの。」
冷菓はじっくり考えて口にした。
「思い出した。たしか、去年の春、一回だけあるは。驚いたよ。剣道では私より圧倒的に強かったよ。」
「そのとき、なにか言った。」
「うーん。確か私では君の相手は務まらないと言った覚えがあるよ。」
姫華は慌てて和也を引っ張ってつれて来た。
そしてそのことを聞いた和也は桜乃の前に飛び出した
「先輩、あれは先輩の勘違いだったみたいです。」
和也が突然桜乃の前に乗り出し言った。
「あれって。」
「先輩が有志同盟に入った理由です。」
桜乃は全てを思い出したかのように笑い出した。
「はっはっは。そうよね。やっぱり勘違いだったのね。
でも不思議だは、今さっきまではそれが入るけっかけだったのに今はもうなにも思い出せないは。」
「会長。一つ聞いていいですか。」
和也は一つ確認したいことがあり衣沙羅に話しかけた。
「これに関係することならね。」
「魔法を使って記憶の捏造とか出来るんですか。」
「出来るは。記憶が新しいものなら魔法が使える者には簡単にね。」
衣沙羅はそれを自分で言うなり和也が言いたいことに気がついた。
「美樹先輩。先輩は騙されただけかもしれません。記憶を捏造する魔法を使われて。」
桜乃はどこか安心し、しかし顔を強張らせた。
「でも、私がしてきたことは許されないことよ。いくら記憶を捏造させたとはいってもそれを止める判断能力はあったのに。」
「ありがとうございます。美樹さん。私達は帰ります。」
和也達は保健室を後にした。

「和也君。今、和也君は何をしたい。」
衣沙羅に唐突にそんなことを聞かれたものだから一瞬戸惑った。
「美樹先輩をいえ学校の日常を壊そうとしたやつらを叩き潰したいです。」
和也ははっきりと言った。
「それは本当だね。」
和也は力強く頷いた。
衣沙羅は携帯を取り出し誰かに電話をしていた。
一分くらいで終わると和也たちの方を向き言った。
「今からある人に会わせるは。その人はたぶん和也君の力になるは。」
「分かりましたここからは一人で行きます。場所を教えてください。」
和也はそう言ったナギサたちが反論してきた。
「わたしも行くよカズにぃ。」
「俺もだ。」
「私も。」
ナギサ、飛一郎、姫華三人とも和也について行こうとした。
「僕は元々、単独行動を主に訓練をされてきた。この手のものは僕一人で行くのが安全だ。」
「なめないで和也君。私はこれでも三代川の娘よ。実践訓練だってつんでる。間違っても足手まといにはならないは。飛一郎はその手の訓練は受けてなさせうだけど今日の戦い方を見て並みの腕前ではないって思ったは。ナギサちゃんいうまでもないでしょ。」
和也が何か言い返そうとしたが、衣沙羅の方が早かった。
「確かにそのほうがいいはね。」
和也はこれで反論、出来なくなった。
情報源である衣沙羅に和也は逆らえなかった。
「分かりました。」
和也は渋々了承した。
衣沙羅に案内され連れて来られた場所はカウンセラー室だった。
「会長。なにかの冗談ですか。」
あまりに場違いの所に連れて来られた為、和也は衣沙羅に確認した。
「うん。ここだよ。」
返ってきた問いは肯定のものだった。
「失礼します。」
衣沙羅は躊躇いもなくドアを開けた。
「タマちゃん~。遊びに来たよ。」
衣沙羅が友達にも話しかけるかのように室内の椅子に座っている女教師に言った。
「衣沙羅、何度言えば分かる。私はこれでも先生なんだ。タマ先生は可だがタマちゃんはなしだぞ。
 衣沙羅の後ろにいる少年が噂の沢渡和也君かね。」
タマ先生という人が和也を指差した。
「はい。僕がそうですよ。噂とはどのようなものかは知りませんが。」
「無論、君が異能者ということだよ。」
和也は警戒の威嚇をタマ先生にした。
「おい、おいそんな怖い顔をするな。全部、衣沙羅から聞いたことだ。それと自己紹介が遅れたな、カウンセラーの爾玉城みつるたまきだ。よろしく。呼ぶときは爾先生かタマ先生でいい。間違ってもタマちゃんなんて呼ばないでほしい。」
和也はそれを聞き安心しいつもの穏やかな顔に戻し、満面の笑みで言った。
「もう知っていると思いますが、1-D組の沢渡和也です。タマちゃん。」
「君もそういうのか。なんか傷つくな。」
本当に傷ついた風な玉城であった。
「本題に入りたいんですけどいいですか。」
和也は一回わざとだしく咳払いをしてから言った。
「そうだったな。君たちは今日の襲撃者、《グランシェ》の東京支部を叩いて欲しい。
 まあ、ここで気がついての通り私はただのカウンセラーじゃない。まあ政府の者かな。」
「それで、僕は異能力を使っていいんですか。」
「まあ、そお、急ぐな。今のところ敵はせめてくる気配はない。そして異能力だが、使うことを許可する。制御装置を解除してもいいとのことだがどうする。」
和也は少し考えてから口を開いた。
「いえ、制御装置は解除しなくてもいいです。いざって時は十分で制圧も出来ますし。」
「ならいいが、それでは奴らの潜伏場所だが衛星確認したところ、ここから二キロくらい離れた廃工場を人が住めるように改造したところにいるらしい。そこらへんには一般人もあまり近寄らないから秘密のアジトを作るには持ってこいだな。」
「意外と近くにあるんですね。」
「だからこそ、今回の襲撃にこれが生きたんだよ。魔法科学校の近くにアジトを作るなんて誰も思わないからな。」
和也はグランシェの策に感心していた。
「分かりました。アジトまではどのように行けばいいですか。やっぱり徒歩ですか。」
「それには及ばないよ。外に車を待たせている。これからアジトに乗り込むやつは付いて来な。」
和也、ナギサ、飛一郎、姫華が玉城の後に続いた。

案内されたところには一台の白のワゴン車があった。
和也は迷うことなくそのワゴン車のドアを開けた。
中にはすでに和也が一度は会ったことがある二人がいた。
運転席に六道春樹が乗っていた。そしてその隣に和也が部活勧誘のときに張り倒した先輩――木原謙吾きはらけんごがいた。
「沢渡。話のことはもう知っている。悪いが邪魔させてもらう。」
和也は特になにも言うつもりはなかったが謙吾のほうから話しかけてきた。
「別にかまいませんよ。」
和也はそう答え、ワゴン車に乗り込んだ。
そのあと他の三人も乗り込み車は発車した。
「沢渡。お前が指揮を執れ。」
六道に言われたことが一瞬理解できなかった。
「僕がですか。」
和也が確認を取ると
「そうだ。」
間髪入れずに答えが返ってきた。
「分かりました。まず突入は――――。」

和也たちが乗せたワゴン車が廃工場に突っ込んだ。
「飛一郎。ありがとな。」
飛一郎は疲れ切った風に返した。
「なに。これくらい朝飯前だ。硬化魔法は俺の十八番だからな。」
和也が考え出した、初手はシャッターがあったため。
硬化魔法が得意だという、飛一郎にシャッターにぶつかる寸前でそれを車に掛けてもらった。
そのせいか集中力が切れ今は椅子に座り込んでいるがすぐもとに戻るだろうと判断し、和也は指揮を出した。
「六道先輩はワゴン車で待機。入り口は飛一郎と姫華で守ってくれ。・・・・・・相手側に遠慮はいらない。
 僕とナギサと木原先輩はこのまま敵の懐に入ります。」
和也はこの場を大事な場だと思い。自然といつも、「ナギちゃん。」と呼んでいるナギサを普通に呼んでいた。
他の面々からも次々に了解等の返事をもらい。
和也と三人は敵の懐に赴いた。

そこは、もうただの廃工場ではなくなっていた。
外は、廃のままだが、中はそれとは真逆であった。
「ようこそ。沢渡和也君。」
上の方から声がした。
「誰だ。」
そこには一人の青年がいた。
「おっと申し送れました。私の名前は橘芳樹たちばなよしき。グランシェ東京支部の幹部を勤めています。
 早速ですが沢渡和也君。あなたにお願いがあります。」
「なんですか。」
和也はそういった。
「私たちの仲間になってくれませんか。
 あなたのことは桜乃からよく聞いています。」
「桜乃」という単語で和也は腹が立った。
(この人が美樹先輩を)
和也のその思いはただの汚れなき純粋な怒りだった。
和也は桜乃のことをどうとも思っていない。認識でいえばただの先輩である。
「すごいですね。素手で、高周波ブレードを掴みとるなんて、その技術を私たちに教えてくれませんか。」
「誰がなるか、テメェらーみていな、クソみてぇーなやつの仲間になんて。」
「だけど、君はもう私達の仲間だ。」
何も起きなかった。
そのなかで和也の拍手の音が響き渡った。
「はっはっは。面白い演劇でしたよ。あなたの魔法の対策を僕は練っていました。」
「なに。」
「これが僕の答えです。」
「このことを後悔するなよ。」
芳樹のそれを合図に隠れていたやつらが出てきた。
当たり前ながらその全員は銃を装備していた。
和也はズボンのポケットから人数分の礼符を取り出した。
それを右手で払い投げた。
和也の照準は全ての銃の銃口だった。
全滅符アニヒレーションコール。」
その一言で勢いよく飛ばされた、札が小さくなっていた。
銃口の大きさに合わせるかのように。
そしてそれが中に入るのを和也は確認すると和也は歩き出した。
銃の引き金を全員が引いたが、その瞬間銃が爆発した。
全滅符アニヒレーションコール
和也がこめた霊能力の札。
ターゲットに近づいてら、除々に小さくなっていき、ターゲットの体又は物に入り込むと、その周囲を爆破、全滅する。
その札によって戦力が四分の三減った。
「ナギちゃん。ここはまかせたよ。魔法は、相手を殺さないくらいならなにを使ってもいいよ。」
「うん。分かった。」
それを言い残し、和也と謙吾は進むことにした。
芳樹は騒ぎの間に逃げただしい。
ナギサのところに和也が倒しきれなかったやつらがよってきた。
ナギサは躊躇いをもたずにブレスレットタイプのMCAで一つの魔法を起動させた。
その瞬間、一瞬だけ炎が全体を包んだ。
炎が消えた中では、グランシェのメンバーが全員氷付けにされていた。
凍結炎とうけつファイヤー
広範囲魔法。
相手を炎で包み、次の瞬間には氷付けにされる魔法。
(あとはまかせたよ。カズにぃ)

和也は今、一人だった。
今さっき、分かれ道が見つかり二手に分かれたところだった。
和也の手にはあの時の銃が握られていた。
彼の戦闘スタイル、それを可能な限り異能を使わずに回りの物で対処する。
百メートル先辺りにドアがあるのを和也は見つけた。
そのドアに近づくと、反射的に《透視能力》を使用した。
数は二十。武器はハンドガン、サブマシンガン。重火器はなし。
(こりゃ、ちっと本気出すか)
和也は自分のポケットから十枚の記号が書かれたカードを取り出した。
そしてそれを、《透視能力》、《空間移動テレポート》を利用して。
カードを条件が整った場所に移動させた。
全ての準備を終わらせると、和也は銃を構えながら勢いよくドアを蹴り破った。
「《エレキショック》」
和也は小さく呟いた。
その言葉じゅもんに反応して、魔術術式が作動した。
二十にもの人間に死なないくらいの強さの電気ショックが全員に伝わった。
もちろん和也にはなにも異常がない。
和也は警戒をしながらその部屋に入った。
見たところ誰もいなかったが、そのとき声がした。
「やあ。沢渡和也君。どうだい、気が変わったかい。」
「いえ、僕の意思は変わっていません。」
その声の人物は芳樹だった。
「そうならば、残念ながら君には死んでもらう。」
芳樹はそう言いながら紫色の指輪を取り出した。
それはどこからどうみてもマギカジャミングだった。しかも桜乃が持っていたのより幾分か大きい。
「魔法が使えなければ貴様もただの一般人。」
ここにナギサたちがいたら、大変なことになっていただろうなと和也は思っていた。
彼は魔法師ではなく、異能者だ。
そして魔法と近いものとすれば魔術。
そう、彼は魔術師であって魔法師ではない。
彼には魔法の才能のカケラもない。
マギカジャミングなんてものは和也にとってはただの綺麗な宝石でしかなかった。
和也は自分のポケットから単語帳を取り出した。
魔術の呪文がすでに書かれた。
その中で適当なものを一枚を単語帳から千切った。
そしてそれを無造作に投げた。
それは閃光を放ちながら飛んでいた。
それは形を現した、それは弓矢だった。
追跡ホーミングする弓矢アロー
弓矢は紫色の宝石に向かって飛んでいた。着弾までは時間はかからなかった
マギカジャミングはしょうもないで砕け散った。
「そんな・・・・・・。ばかな。」
倒れこんだ芳樹の中の一つの現実が崩れた。
その時、高周波ブレードの音が聞こえた。
「沢渡。」
それは謙吾の声だった。
「はい。」
謙吾の声に威圧感を感じた和也は一瞬それに負けそうになったがなんとか踏んばり返事を返した。
「こいつが桜乃をおかしくしたのか。」
和也は何もためらいなく言った
「はい。」
次の瞬間、謙吾が芳樹の右腕を切り落とした。まるでバターをナイフで切るように。
この瞬間グランシェ東京支部が壊滅した。
その壊滅の役割のほとんどが和也の手柄であったが、本人の意思もあり、この件の手柄は六道春樹、部活連合のものとなった。
それはあくまで生徒向けである。教職員、生徒会、風紀委員、部活連合の部長、一部の生徒はこの事件の真実を知っている。
次話でエピローグを入れたら、この章は終わりです。


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