和也には苦手なものがある。
その一つが週明け、休み明けの学校とかである。
「めんどくせ~」
和也はそう呟きながら自分の教室に入った。
しかしそんなネガティブな言葉とは違い、教室はその逆だった。
「ねぇねぇ。テロリストて怖くなかったの。」
「どんな銃持ってたの。」
飛一郎と姫華が教室の前の方で質問攻めにあっていた。
一昨日の事件の犯人を倒したのは和也ではなく姫華と飛一郎である無論そのことを和也は知らない。
しかし、犯人を倒したのは和也だけではなく姫華と飛一郎も三人は倒したがトータル面でみれば和也一人で狩った人数が圧倒的に多いいが、和也は表舞台にたてる人間ではない。
そんな二人を和也はシカトし、自分の席に向かった。
席に向かう途中で裏切り者と言いたげな二つの視線を感じたが、面倒だと思い無視した。
「一体なにがあったの。」
和也は自分の隣の席の衣瑠香に聞いた。
「それはですね。これを見たらいいと思います。」
和也は衣瑠香から新聞を手渡された。
この時代になっても従来の紙の新聞は存在する。
和也はもらった新聞を見た。
そしてある一つの記事をみつけ、今さっきの状況が理解できた。
「なるほど。あれ衣瑠香も、協力してなかったけ。」
「私は実質なにもしませんでしたから。被害者側に回りました。それにあんな風に質問攻めされるの苦手ですし。」
薄情だと、和也は思った。それは今の飛一郎たちの状況をみてそう思った。
教室が静かになったのは朝のSHRが始まったときだった。
「和也君どうして私たちのことを見捨てたの。」
一時間目と二時間目の間の十分休みに入るなり姫華が和也に行った。おかげで和也は逃げることが出来ずにいた。
しかも飛一郎が和也の後ろに回っていた。
これで和也の退路は絶たれた。
「ひでよなー和也。友達を見捨てるなんて。」
和也はなにも言い返せなかった。なんせそれは事実であったから。
ここで普通の人は心の中でこう思う。
あの場をどうすればよかったんだよ。
と、しかし和也はそれを心の中ではなく口に出した。
「じゃあ、僕はあの時どうしたらよかったんだよ。」
それが沢渡和也という人間だった。
思ったことを口に出してしまう。
これを良く言って天然。悪く言って無神経。
「――っ。」
「――っ。」
二人は絶句してしまった。
言われると思っていないことを言われたのだ。
もちろん二人にこの質問が答えられるわけがない。
なにせこの二人も、もし自分が和也と同じ状況下にあったらこの二人も無視をしていたと思う。
結局この休み時間でのこの話題は、うやむやになり、次の休み時間に持ち越されたかと思ったが、この話題がでることはなかった。和也自身もこの話題を持ち込むような野暮なことはしなかった。
「疲れた。」
昼休みに食堂に着いて飛一郎が始めに呟いた言葉だった。
「全くだらしないわよ。あんた。」
「まあまあ。姫華ちゃん。」
姫華をなだめる衣瑠香この二週間で当たり前になった光景でもあった。
そしてなぜ飛一郎がそんなことを呟いたというと。
前の時間が魔法の実技の授業であったためである。
その日の授業の課題が魔法起動時間を一秒以内で起動させることだった。
衣瑠香は意外にもに五回目で成功、姫華は授業終了間際に成功、飛一郎は授業終了から五分後に成功。
その間和也は、効率のよい魔術術式の配置を探していた。
「とりあえず、席を確保しよ。」
和也のこの提案にみんなは同意した。
四人は運よく八人がけの席を手に入れた。
「じゃ、まず誰から飯しを取りに行く。」
「こういう時はレディファーストでしょ。」
「ここに衣瑠香以外に女子は居ないよな。」
「絞めるね。」
これまた当たり前となったコントをみて笑う和也と衣瑠香であった。
結局最初に昼食を取りに行ったのは女性陣だった。
「飛一郎。取りに行ってもいいぞ。」
和也の提案に飛一郎が予想道理食らいついてきた。
「朝の非礼のお詫びだ。」
「そじゃ、お言葉に甘えさせてもらいうぜ。」
飛一郎は前の授業で頭を使ったのもあり、彼は空腹であったに違いない。その点和也は全く頭を使っていないのもありそこまで空腹ではない。
彼は元々燃費もよく。縁の修行の中で三日は何も食べなくても平気な体である。
飛一郎と入れ違いになった感じにある人がきた。
「和也君、お待たせ。」
「いや別に待ってはいないけど。」
ちなみにこの答えは嘘である。
その声の主は紫之宮ナギサその人であった。
魔法の才能も高く。発動時間でいえば学年一しかも二位とは圧倒的な差である。百人の男子に聞けば百人が美少女とかえす、美貌の持ち主でもある。
「沢渡さん。こんにちは。」
「こんにちは。」
ナギサの後ろから聞こえる二つの声に和也も挨拶を返した。
「三人ともとりあえず席について。」
和也がそう言うと三人は席に着いた。ナギサは和也の隣に。
最初に和也に挨拶した少女――桜井優佳は和也の向かい側の席に着いた。
そしてその隣の席に座った少年――瀬那焔。
この二人と和也の関係はナギサを通しての仲でお互いのことは苗字で呼ぶ程度である。
飛一郎たちが戻ると入れ替わりに和也たちが昼食を取りに向かった。
和也たちは傍からみたらお似合いの二組のカップルに見える。(しかし片方は当たり前だが和也の方はそうだと思われていない。これは余談だがこの四人は誰一人として恋仲ではない。)
しかしそんな殺気めいた視線も和也は気がついていない。
いや、気がつかないほうがいいだろう。
「そういえば、見ましたよ新聞。」
和也たちが戻ると食事が始まった。
その中で優佳が提供した。無邪気な話題にいち早く反応したのは姫華と飛一郎だった。朝にあんな目にあっていたのだ。挙句の果てにはどっかの阿呆が二人は付き合ってるんじゃないかと言い。その場が大変なことになったのを和也は覚えている。また当事者であった二人は真っ先に反応するのはある意味当たり前かもしれない。
「すごいですね。三代川さんと島崎さん。私が一等生であってもあの場で二人みたいな行動は出来ませんよ。」
優佳は本当に関心していた。
「いやーそれがね。実際は私たち二人で倒したんじゃないのよ。まあ、三人は二人で倒したけど。」
そこで姫華が和也にアイコンタクトをとった。(すでに手遅れなきもするが)和也は想像がつきいいよと返すと姫華が事件の真相を二人に話した。
和也の異能については、和也自身衣沙羅にばれてから、どうでもよくなった。
「そうだったんですか、沢渡さんすごいですね。」
優佳の褒め言葉に和也は否定した。
「別にすごくはないよ。僕自身、その異能があったから行動したんだから、異能がなきゃ、僕も一般市民と同じことをしていたよ。」
でもそれに反論する声があった。
「それでも、力があると思って、行動したんだからすごいよ。その場にオレがいたら、オレは安全なほうを取ると思う。」
焔がそう言った。
こうなると和也には反論ができない。(これは補足だが、優佳と焔は一等生である。又ナギサとクラスが一緒で二人ともナギサと友達である。)
「ごめん。さっきの言葉は撤回するよ。」
そこで和也が折れた。
「そうだ。沢渡さん。ちょっと付いてきてくれませんか。」
昼食を食べ終えた和也がこれも昼食を食べ終えた焔に提案された案に特に迷いもせずに乗った。
「それじゃ、僕たちは先に失礼するね。」
その言葉を残して、和也たち二人は食堂を後にした。
食堂から少し離れた所で和也が焔に話しかけた。
「瀬那、用件はなに。」
「すいません。沢渡さん。」
「和也でいいよ。僕も焔て呼ぶから。」
和也はなんとなく丁寧語で話しかけられるのが苦手だったのでこう提案した。
「分かりました。いや、分かった和也。」
和也のその考えが分かったのか口調が一気に崩れた。
「それで、用件ですが、これはお節介かもしれませんが言わせてもらいます。」
和也は心の中で身構えた。
「和也は紫之宮さんのことが好きか。」
「なっ、どうゆう意味だよ。」
「そのまんまです。」
「まさか、焔はナギちゃんことが。」
「それは断じて違います。オレは優佳一筋です。」
和也はめずらしく動揺していた。
「これは同じ幼馴染としての忠告です。オレなんて長年いるせいで、告白しにくい状況なんですから。」
「それはまた残念ですね。ありがとう。だけど僕はどうあれナギちゃんは僕のことはただの幼馴染としてしかみられていないと思うから。」
これがあとを引いたのか午後の授業(今回は自習だったが)が全く集中できなかった。
(それにしても焔ていつもはクールな性格だけど桜井さんが関わると性格が一気に変わるんだな。)
「ありがとうございました。」
和也はお礼を言った中学生に「どういたしまして」と返し魔法科中学校をあとにした。
今日は仕事兼雑用は魔法科中学校の屋上清掃だった。
和也はこの学校が改めて広いなと感じていた。和也がいつも登校するときの校門こと西門が高校、北門が小学校、東門が中学校、南門が大学となっている。進学の基本はエスカレータ方式だが、特に高校にあがる時に中学生の半分近くが別の学校に行くその訳は高校では魔法だけしか先生に教えてもらえず基本科目はほとんど課題でつけられる。しかも高校からはクラスワケもされる。(中学校は魔法力でクラス分けをされていない。)
和也はこの労働になれ、歩く足取りは軽いものだった。
和也はこのあともう帰っていいとの指示を受けていたが、和也が知っている限りで飛一郎は発掘部、衣瑠香は美術部、姫華は不明となっていた。一応待ち合わせをしているが時間までまだかなり余裕があるため少し散歩でもするかと考えたとき、
「あの、今、時間空いてる。」
と後ろから声を掛けられた。
和也は後ろを振り向くと見知らぬ女子生徒がいた。(和也は一度だが面識がある。)
「えっと誰ですか。」
と思わず聞いてしまった。
しかし、そう言ったと同時に和也は話しかけてきた女子生徒を思い出したが時すでに遅し。
「忘れちゃったの部活勧誘期間中に助けてもらったものですよ。」
部活勧誘期間それはその名の通りものである。
ただここのは少しスケールが違い、毎年お祭り騒ぎになる。
そのため、風紀委員が警備を行っているが人手が足りない。
そのなかで生徒会から派遣されたのが執行部の和也だった。
和也は特にけんか騒動などにも会わずに呑気に警備していたが、剣道部と剣技部(部屋は毎日交互に使われている)にの部室に来た所で呑気が吹っ飛んだ。
それは今、ここにいる女子生徒が男子生徒に魔法で攻撃されていた。
しかも殺傷ランクBの魔法である。これは和也があとで知ったことだが闘技場で使っていい魔法もこれで決まっていて殺傷ランクBまでだったら神秘の服で防げる。
和也はすかさず異能を使いこの男子生徒(たぶん先輩だと思う)を風紀委員に引渡しその場を後にした。
「あのときはありがとうございました。」
「いえ、仕事ですし。」
「まあ、それでも私にとっては命の恩人なのだから、お礼になにかおごらせてよ。」
和也はそのまま流されるがままに高校内にある一階喫茶店まで来ていた。
喫茶店は食堂と違い中々お洒落な感じの店だった。
「それじゃ、まず自己紹介からね。私は二年E組 美樹桜乃。」
そのまま流されるように席に座らされた和也は相手の自己紹介に条件反射で自分も自己紹介をした。
「僕は一年D組沢渡和也です。」
自己紹介が終わると、適当になにか飲み物を頼むことにした。
飲み物はすぐに来た。
「沢渡君て見た目通りの子供なんだ。」
と和也が頼んだもの見ていった。
桜乃が頼んだのはその印象にあってコーヒー。
和也が頼んだのはジュースであった。和也は童顔で身長も平均よりちょっとした。ある意味ではこれも印象にあっているが。
ちなみに桜乃は和也より頭一個分身長が高い。
しかし和也にはジュースを頼む理由があった。
はっきり言えば色々と疲れていたからである。
そのためここは疲労回復がある糖分を取ろうという策にでた。
あとおまけでジュースが好きであったからである。
「僕は子供なんかじゃありません。立派な高校一年生です。」
高校生でも子供は子供だが和也はこれを言わずにいられなかった。
「ごめん、ごめん。私が悪かったから。」
と桜乃も謝ったので和也は許すことにした。
「それじゃ、改めまして、この前はありがとうございました。」
桜乃から改めて礼をもらった和也は
「どういたしまして。」
と返した。
よってこの話は終わり。
後は雑談に等しいものになった。
しばらく話していると桜乃がとんでもない提案をしてきた。
「ねぇ、沢渡君。」
「はい。」
「剣道部に入らない。」
和也はその言葉を聞きたっぷり十秒間考え言った
「すいませんがその誘いお断りさせてもらいます。」
「どうして。あなたの身のこなしなら剣道で十分にいけるのに」
桜乃は疑問を投げた。
ちなみにその身のこなしは知っての通り縁の修行のおかげである。
「生徒会の仕事が忙しいからです。」
これは和也の本音でもあった。
「具体的に言いますと僕の役職は主に肉体労働です。しかもほとんど下校時間まで仕事をしてます。当たり前ですが放課後もこれにくわれます。
申し訳ありません。」
和也は本当に申し訳なそうに謝った。
「いえ、私のほうこそ無理を言ってごめんなさい。」
お互い話しかけにくい空気が流れてしまった。
和也は気まずさに負けジュースに口をつけたがジュースはすでになくなっていた。
「それじゃ、僕はそろそろ失礼します。美樹先輩ごちそうさまでした。」
と喫茶店を後にしようとしたら、桜乃がそれをとめた。
「ちょっと待て、連絡先交換しない。」
和也はしかたなく携帯端末を取り出しお互いを連絡先を交換した。
そのあとようやく喫茶店から脱出した和也はまだ時間があるにもかかわらず本当に暇になり図書室に寄ることにした。
そこでは何事も起こらず静かに読書ができた。
和也が読んでいたものは魔法の本だった。
和也は走っていた。
その訳は、
「くそー、本を読むのに集中しすぎて、時間を確認するの忘れてた。」
ようやく待ち合わせ場所である校門に着いたときには和也以外のメンバーは全員集まっていた。
つまり和也はビリケツだった。
「ごめん。」
和也は最初に言ったことはこれだった。
「いえ、そこまで待ったわけでは・・・・・・。」
衣瑠香は和也にフォローしようとしたがそれを止めるものがいた。
「ひどいなー。和也君私たちはすごく待ったんだよ。」
「いや、十分くらいしか待っていないが。」
飛一郎の言葉は和也の耳には届かなかった。
「ひどいやねー。カズにぃ。」
さらにナギサの援護射撃(姫華にたいしての)
「一人1000円以内までだったらおごる。」
姫華はこの言葉を待ってましたとばかりの表情を見せた。
その日和也は予想外の出費をした。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。