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入学編
入学編Ⅳ
昨日和也はあの後さすがに《夜桜》を裸で持っていくのは不味いと思い和也は余った布(サイズが合わなくなった黒のジーンズを再利用)を使い。刀入れを作り眠りについた。(日付をまたいで)
そして今日の朝の和也の起床時間は昨日と比べると圧倒的に早かった。具体的に言えば昨日の起床時刻は朝の七時だったが今日は朝の五時だった。
和也は自分の実家にいたときは毎朝早くに起きて修錬をしていた。しかし修錬といっても座禅だけだが、和也にとっては最も安全な修行法だった。
和也の場合は精神統一をした上でさらに自分の異能の波を体の一点に集め強めたり弱めたりさらには一点に集めた波を複数に移動させたりと力のコントロールと強さは日々増している。
修錬を一時間くらいし、今日の朝の修錬を終わらせた和也は制服に着替えた和也は自分の携帯端末を手に取り、検索サイトを使い、少し魔法のことを調べていた。魔法のことが皆無と言っても等しい和也は周りにも怪しまれないようにとこの時間で基本を覚えようとしていた。和也にとって魔法の基本を言葉だけで覚えるなら楽なものだ。使えないのだから困る。というのが和也の心情だった。これはおまけだが余った時間でMCAについても少し調べ覚えた。
調べているとちょうどいい感じに時間は過ぎ去り、昨日のように朝食をとり少し休んでから学校に行こうと思った所でインターホンがなった。
和也がドアの近くに行こうとしたときドアの向こう側から声がした。
「おーいカズにぃ。朝だよ起きて。」
和也は迷惑がかからない声で返事をした。
「もう起きてる。すぐ行くから少し待って。」
和也は今回は特に慌てることもなくカバンと昨日徹夜で作った刀入れを肩にかけ、ドアの外に出た。和也が外に出てまず目に付いたのはナギサだった。
魔法科学校の女子の制服は白のブレザーに黒のロングスカートで色でいえばたいして男子と変わりはない。
「おはよう。ナギちゃん。」
「うんおはよう。カズにぃ。」
と朝の挨拶を一通り済ました二人だったがナギサが和也の肩にかかっているものに気になったのか和也にたずねた。
「ねえ、その肩にかかっているのなに。」
「これ、これはね妖刀だよ。」
この回答はおかしいものではなかった。和也があの一時間で学んだことで、実際の魔法師でも妖刀を使っている人もいる。
ナギサもそれ以上追求をしなかった。
「ほら、こんなところにいつまで突っ立てないで行くよ。」
「あ~待ってよ。」

和也とナギサは今駅で電車を待っていた。
そこで和也はあることを思い出した。
「ねえナギちゃん。」
「なにカズにぃ。」
和也は一つ決心をし言った。
「学校で僕のことをカズにぃと呼ばないでくれないか、もちろん僕もナギちゃんて呼ばないから。」
「えーどうして、わたしは別に気にしないけど。」
「いいから分かったナギサ。」
「うん。分かったよ。カズに・・・・・・じゃなくて和也君。」
なんとかなったと思って、安心した和也だった。
「いやーそれにしても昨日の入学式は暇だったね。僕なんておもわず寝ちゃったよ。」
会話の内容がなくなったので昨日の入学式のことでも話そうと思った和也だがこれがまさかの爆弾発言だということ次に瞬間気づくのだった。
「へ~和也君昨日の入学式で寝ちゃったんだ。どれくらい。」
「それはもう式が始まった瞬間に眠気に襲われてそのまま式の最後まで寝てたよ。」
「ひどいな和也君。入学式の新入生挨拶はわたしがやったんだよ。あ~せっかく上手に挨拶出来たのに聞いてなかったてひどいな。」
そのあとナギサは和也が話しかけても無視をし続けていた。
最終的には和也がナギサになにかを御馳走することで許しを得た。

「今日は朝から災難だった。」
和也は自分の教室の席につき少し大きめなボリュームで呟いた。その理由は。
「なにがあったんだ和也。」
「わたしてちでよけでば話を聞くけろ。」
「そうですよ。話せば楽になりますよ。」
和也の周りには飛一郎、衣瑠香、姫華がいたからだ。そしてこの三人は昨日のナギサの登場によって和也のことを名前で呼ばれるようになった。もちろんそれにあわせて和也も三人のことを名前で呼んでいた。
「それがさ、聞いてくれよ三人とも。」
和也は自分が今朝具体的に言えばついさっきまで体験したこと話した。
それを聞いた三人のコメントは。
「お前が悪いな。」
「女心が分からないの和也君は。」
「残念ですがこれは和也さんが悪いと思います。」
その全ての答えが和也に非があるというものだった。
されだけでは飽き足らずに和也にさらにコンボを叩き込んだ。
「むしろなにかをおごるだけで許してもらったんだ。感謝するのが普通だぞ。」
「そうよね。」
「そうですね。」
その後十分くらい和也は言葉の暴力を受けたが持ち前の能力(異能ではない)でいつもの自分を取り戻した。ただ今後は女性にたいする接し方に気をつけようと反省と決心をした。
チャイムが鳴ったと同時に先生が入ってきた(先生といっても形だけで事務的なことを伝えることだけの人であるが)。
言っていることは主に今日の学校の自由見学についてだった。
それが終わったあとはクラスメートの親睦しんぼくを深めるのをかねてのオリエンテーションの時間だった。これも生徒間でだけ行われて、先生の関与がないためか、ほとんど自由だった。和也たちは暇でその時間を利用してどこを見学するかを先に決めていた。
そしてようやくオリエンテーションの時間が終わったときには昨日決心したにもかかわらず和也はまちくたびれて顔を隠して眠っていた。

「ふあ~。」
和也は教室から出るなり大きなあくびを一つした。
「それにしてもまた寝てたよね和也君。」
「しかたないだろう。昨日これ作っていたんだから。」
と言いながら和也は自分が肩にかけている刀が入っている袋を指した。
「それにしても和也が妖刀使いとは意外だよな。」
「そうですね。それよりあそこなんだか人だかりがありませんか。」
と衣瑠香が指を指す方向にはたしかに人だかりできていた。
「ねぇねぇ。いってみようよ。」
その姫華の提案に、
「ああ行ってみよう。」
「ええ、おもしろそうですしね。」
「三人とも見学の時間なくなるよ。」
と唯一の否定的な意見の和也を無視し三人はその人だかりの中心に歩き出した。和也は「しかたがないな。」と思いながら三人に続いた。
その人だかりを間近にみた和也たちは特に気にすることも人をかきわけ騒ぎの中心についた。そこにいたのは、
「ナギサ。なにしてるの。」
和也は驚きではなくあきれた声で言った。和也は覚えていた。ナギサはこの学校で新入生挨拶した生徒。新入生挨拶をした生徒=(イコール)魔法力がその学年で一番だと言うことを証明している。なおかつ彼女は百人の男に聞けば百人が美少女と答える容姿。そんな彼女が二等生のところにいれば人だかりの一つや二つは出来る。
「和也君。」
彼女は若干泣きながら和也に近づいてきた。そして和也にほとんどその人だかりに睨まれた。
「おいおい。どうした。」
「だって学校見学、和也君と回ろうと思って、教室からでようとしたら何回も何回も誘いを受けては断って誘われは断る作業の繰り返しで、ようやくここまできたらこんどは人だかりが出来て、和也君のところに行けなかったから。」
「そうか、それは大変だったな。どうだ、僕と昨日の面々で見学しないか。」
「うん。」
その返事は何よりも頼もしかった。



「――――というわけでナギサも一緒に行く事になったからよろしく。」
と和也は昨日の面々に報告した。
返ってきた答えは。
「「「なんだってー。」」」
だった。おまけに三人とも声を重ねて。
「いや。だって。なあ。」
飛一郎のわけの分からない問いを理解できたとか二人が
「ええ。だってね。衣瑠香。」
「そうだよね。姫華ちゃん。」
「ああもう三人とも行くよ。時間がなくなっちゃうよ。」
という和也の多少強引な言葉でその場をくぐりぬけた。



「いやー。それにしても疲れた。」
魔法工房の体験授業を終えた飛一郎が言った。
和也たち五人は今、食堂に昼になると混むと予想した五人は見学を早めに切り上げた結果、席が空いていた。
今は六人がけのテーブルに座っていた。女性側がソファに座り、男性側が椅子に座っていた。
五人は今は食事を取っていた。
「あんたが大雑把すぎるのよ。」
と姫華バカにした風にいった。
「いや、姫華それはお前もだと僕は思うよ。」
和也はひっそりとつぶやいた。
「いいんだよ俺は戦闘むきなんだから。将来は警察か、自衛隊にはいるよ。」
とふて腐れた感じに言った。
「でも私はあれ得意だったので、将来は工房関係の職業につきたいと思ったわ。」
と衣瑠香が幸せそうに言った。
「私も将来はそうしようかしら。」
「おいおい。お前には才能があるんだから少しは考えろよ。」
「はーい。和也君。」
「あれ、ナギサちゃん。どうしたの昨日みたいにカズにぃていわないの。」
姫華が疑問を投げつけた。
「うんそれがね。・・・・・・・。」
そこでナギサが今朝の話をした。
「え、そんなことがあったんだ。」
「はっはっはっは。そうだよな和也恥ずかしいもんな。」
「笑うな飛一郎。」
その話を聞き終えた飛一郎がたいきれんとばかりに笑っていた。
「それはそうと、みんなもご飯食べ終えたならそろそろ出よう。混んできたし。」
たしかに姫華の言うとおり和也たちが来たころに比べると混んできていた。
ほかの四人も納得して席から立ち上がり食堂から出ようとしたとき。
「あれ、紫之宮さん。どしてここに。」
と聞こえたナギサは後ろを振り返った。そこにはナギサのクラスメートの男女四、五人のグループがいた。
「え、それはこの人たちと一緒に見学しているからです。」
そういうと彼ら彼女らの目は和也たちのある一点に目をつけた。それはエンブレムがある場所をみていた。だけど和也たち四人にエンブレムなんてない。そのことに気づいた一等生のクラスメートの男子生徒の一人が。
「お前ら、二等生じゃないか、なんで一等生の紫之宮さんと見学しているんだ。」
これに腹がっ立った二人、飛一郎と姫華が飛び出そうとするのを和也が制止、自らが前に出た。
「では逆に聞きますがなぜ二等生が一等生と見学してはいけないんですか。」
和也があくまで丁寧に相手をした。
「ふさわしくないからだ。」
「ではなぜふさわしくないんですか。」
和也は間髪いれずに聞いた。
「・・・・・・・。」
「ではこれで失礼します。さ、行こうみんな。」
和也がこの場を切り上げようとしたとき。
「おい待てよ。なめてんじゃないぞ。」
男子生徒が脅しとばかりの声を出した。
それに和也は目をつり上げ低い声で、
「おまえこそ、なめてんじゃねぇ。魔法でしかとりえがないやつが調子に乗るな。」
とはき捨て和也達は食堂を後にした。

「なあ。和也さっきの最後はなんだったんだ。」
「悪い。変なとこ見せたな。」
「いやそれはいいんだが。お前たぶん自分が思っているよりあれ怖いと思うぞ。」
「ごめんね。和也君わたし迷惑かけて。」
「いやいいよ。あれはナギサが悪いてわけないし。」
「さ、暗いムードはこれくらいにして午後は闘技場にいかない。」
明るい声で姫華が今の空気をぶち壊す。
「午後から生徒会長の八雲衣沙羅やぐもいさらの実技演習がみれるて。」
その提案には誰も反対しなかった。

和也たちが来たときは予想通り誰もいなく、なんなく最前席を手に入れた。
時間が近づくにつれ席は除々に埋まっていった開始十分前には立ち見の生徒まで出てきた。ただ座っている生徒は全員一等生で二等生は和也たちを除けばほとんどが立ち見だった。
周りからは変な目で見られていたが十分後に見られるものに興奮している五人には気がつかなかった。
それから十分後予定道理、実技演習が行われた。
演習が終わって和也達は各々の感想いっていた。
「いやすごかったなー。」
の和也の一言が始まりだった。
その感想の中で姫華あることに気づいた。
「ねえ。このあと一年生同士試合があるらしいよ。」
「へー。誰対誰。」
「ううん。決まった相手じゃなくてこれから決めるらしいよ。」
和也はこの時点でいやな予感がした。
「ど、どういう。意味。」
再度和也が問うと姫華がニヤと笑いながら言った。
「いまから参加したい生徒を募集してそのなかから一組が選ばれるだって。」
「それでどうするんだ。俺たちも参加するのか。」
「本当にあんたて冴えないわね私がそんなつまんないことはしないわよ。参加を決める方法はジャンケンで負けた人。それじゃジャンケンポン。」
「「「「ポン」」」」
結果は和也はチョキ他の四人はグーの結果だった。和也は姫華が何かを言う前に一言残した。
「は~。行ってくる。」
後ろから「いってらっしゃい~。」とナギサの声が聞こえた。


「あのすいません。試合に参加したいですけど。」
和也が受付の若い先生に声を掛けた。
「はい。ではこちらの機械にIDカードをかざしてください。」
和也は指示に従いその機械にIDカードをかざし。
元の場所に戻った。
「よお、お帰り和也。」
「ただいま。飛一郎。」
和也はこのメンバーで唯一の男友達の飛一郎が一番に和也を向かえた。他のメンバーはなにかを楽しそうに話していた。
「なあ、和也お前以外に誰か参加しているやつはいたか。」
「僕が参加したときは誰もいなかったけど。」
と和也が問いに答えたとき放送が始まった。
「闘技場からです。ただいま試合に参加をしたい人を募集し抽選を行ったところ。参加者が決まりました。まず一年B組早乙女禍瑠麻さおとめかるまさん。そしてもう一人は一年D組沢渡和也さんです。お二人は一度受け付けまで来てください。以上です。」
和也は自分になにが起きたのかをまだ理解できていなかった。
「おい。和也おーい生きてるか。」
「ああ、別に三途の川でおばあちゃんには会ってないからな。」
「それならいいんだが。なんか、がんばれ。」
「ああ。」
和也はげんなりした声で返事をした。
「がんばってね。」
「がんばってください。」
「がんばってカズにぃ。」
和也は女性人からも応援を受けた。ナギサのことでならいつもツッコムが今回はめんどくさいと思った和也であった。



受付に向かった和也は自分より先にそこにいた人に気づいた。向こうも和也に気づいたらしく近づいてあることを聞いてきた。
「すいません。あなたがオレの試合相手の沢渡さんですか。」
「はい。僕が沢渡ですけど。」
和也は彼の第一人称はいい人だなと思ったがそれも次の一言で壊れた。
「なにがあって二等生がこれに参加したか分かりませんが、魔法をなめないでください。その刀みたいのもどうせお飾りでしょ。今謝るんでしたらけがをしない程度に試合では相手をしますんで。」
和也はさっきまで自分がどう負けようと考えていたがこの瞬間あることを決心した。
(コイツだけは泣かす。)
「ざけんな。くずが。」
「今、なんていいましたか。」
「何度でも言ってやるよ。くずさん。」
「覚悟しておけよ。」
「そっちがな。」
そのあと和也と禍瑠麻は一言も交わさなかった。

さてどうするか、和也は考えていた。
控え室に案内された。和也は怪我防止に配布された。
神秘のミステリーベールを着て考えていた。
自分が異能者だと悟られないように戦わなければならないと考える和也が使えるものは数えるくらいしかなかった。
ズボンのポケットの中に入れておいた一つの御札おふだを出した。この御札の中には一体の霊がいる。
和也が始めて自分で見つけ封印した霊が。
(コイツだけで勝てるか)
いざと言うときは《夜桜》を使えばいいがあまり使いたくない。と思いながら《夜桜》を刀入れから出した。

結局《夜桜》は抜かないことにした和也は今さっき衣沙羅が立っていたところにいた。
感想は客席から見ていると小さく感じたが実際立ってみるとすごく大きく感じた和也であった。
しかしその気持ちも自分の向かい側にいる人がいなければの話であった。
「恐れずによく来ましたね。」
向かい側の人 禍瑠麻が聞いてきた。
「恐れる必要がどこにあるんですか。」
「何だ―――。」
しかしこの言葉はアラームの音で消された。
「ただいまより。一年同士の試合を始めます。参加者は東側が一年B組早乙女禍瑠麻さん西側は一年D組沢渡和也さんです。」
放送のアナウンスから選手の紹介をしていた。
観客席には一年生の一等生、二等生が声を上げて応援をしていた。
「―――それでは試合を始めます。カウント5,4,3,2,1,0。」
そのアナウンスと同時に和也は動いた。
間髪いれずに相手の懐に飛び込み鳩尾うちをしようとしたが、和也はその動作をやめ左に体を回転させた。
そしてさっきまで和也がいたところに銃弾が飛んでいた。
「あれ、はずちゃいましたか。それより速くその刀抜いたほうがいいですよ。」
「なんでだよ。」
禍瑠麻の右手には銃型のMCAがあった。
「右手だけではないですから。」
さらに左手には右手に持っていた同じ型のMCAがあった。
さらにそこからさっきと同じくらいの速さの銃弾を飛ばした。
しかしただの銃弾ではなく自分の体内にあるマギカ粒子をMCAにチャージし、それを銃弾の形に変え発砲する通称マギカ弾。
「くっ。」
苦し紛れにもなんとか避ける和也はこのまま近距離にいては不利と判断し距離をおいた。
「そんなじゃ次は避けれませんよ。」
禍瑠麻は左右同時にMCAの引き金を引いた。
通常、MCAの二刀流は不可能とされている。
しかし、禍瑠麻の場合は魔法式を構成し、発射する時に片方のほうを少し遅めに引き金を引いているのだ。
そんなことが分からない和也は必死にマギカ弾を避けていた。
あのあとは一方的だった。和也は出来ることはただ距離をおいて避けるだけだった。
《夜桜》のさやを利用し防いでいたが、このままではだめだと判断し走り出した。走るといっても、もちろん普通の人の早さではない。
和也は流れ弾防止に作られた対魔法物理結界たいまほうぶつりけっかいを異能を使わず走っていた。
禍瑠麻も一瞬驚いたがすぐにさっきの動作をはじめた。
和也は壁を走りながら、呪文を唱えていた。
「我のめいに使えしものよ我ためその姿を現せ。くさび。」
「は、我がマスターなんなりとご命令を。」

「あれ。」
衣瑠香はあるものに気づいた。
「どうしたの。衣瑠香。」
その声が聞こえたのか姫華が衣瑠香に聞いてきた。
「ううん。なんでもないよ。姫華ちゃん。」
という彼女であったが和也の近くに出てきたものが一瞬だが見えていた。
彼女は《イディオムアイ》だった。
和也の霊もピュシス粒子から出来ているんだから、彼女には見えた。
(あとで和也さんに聞けばいいか。)
そう考え衣瑠香はその考えを頭の中にしまった。

「楔お前の精神干渉せいしんかんしょうであいつに蜃気楼しんきろうみたいなものをみせれないか。」
和也は口が動いているか分からないくらい小さな声で聞いた。
「そんなの造作をありません。」
「なら頼むぞ。楔。」
楔は和也の命を受け禍瑠麻の所に向かった。
無論、禍瑠麻には楔の姿が見えなかった。そのせいですぐに楔の精神干渉にかかった。
マギカ弾が和也から外れていくのに時間はかからなかった。
「くそ。どうしてあたらないんだ。狙いは正確なはずなのに。」
禍瑠麻は息を荒らげながら言った。
彼が魔法を使えるのもあと少しだった。
観客もざわざわしていた。それもそうだ。さっきまで正確に和也の体に照準が向いていたが今はそれすらもはずしている。
そろそろとどめかといった感じに和也が動き出した。
禍瑠麻もなんとか狙いを定め撃つが寸前の所で外れてしまう。
けれど、和也が距離をつめるにつれマギカ弾が和也の顔にかすめる。
勝負は一発だった。
和也が取ったこの試合で最初で最後の攻撃は鞘を抜いていない状態の《夜桜》を鳩尾に当てた。
禍瑠麻は自分になにが起きたのか分からなかった感じだったがそれを確認する前に痛みで気絶した。
和也の最後の一撃は神秘のミステリーベールの防御力がなけでば禍瑠麻を殺していたと思った。
「お前にはコイツを抜くほどの強さじゃなかったな。」
和也はそれを捨てゼリフを言って去っていた。

「お疲れ様。和也君。」
戻ってきた和也に一番最初に声を掛けたのがナギサだった。
「ありがとう。ナギサ。」
と礼を返す和也だったがそれに続くかのように残りのメンバーも和也に声を掛けた。
「お疲れ。和也。」
「私からもおつかれ。」
「あの。お疲れのとこすいませんが和也さん。試合中に魔法以外の何かを使いませんでしたか。」
衣瑠香の質問に和也は一瞬驚いたが怪しまれないためにもすぐに冷静さを取り戻させた。
「なんのことだよ。僕は魔法もなにも使ってないよ。」
「私はイディオムアイです。試合中にピュシス粒子が出ているのが見えました。」
「まあまあ。衣瑠香ちゃん。他人の魔法について聞くことはタブーだよ。」
ナイス姫華と和也は心の中で思った。
「そういえばそうでした。すいません。和也さん。」
「いえいえ。別に気にしてないから。」
と言いながらも和也は一人ホッとしていた。そして今後は衣瑠香の前では気をつけなくてはと考えていた。
「時間もあと少ししかないけど、どうするもう教室戻る。」
姫華の提案にナギサが否定の意見を入れた。
「わたしの場合だとたぶん、早めに教室にもどったら絶対の確率でなんか言われちゃうから出来れば、ギリギリまで見学したいんだけど。」
申し訳なくナギサがいった。
「そっか。じゃ、もう少し見学しようか。」
新しい姫華の提案に、和也及びほかの二人は、
「「「賛成。」」」
と言った。


あの後、和也たちはギリギリの時間まで見学をし、終了直前に和也達はナギサと一緒に帰る約束をしていた。
和也たちのほうがさっきにHRが終わり校門の前で待っていた。しかし和也は途中でトイレに行きたくなり、三人に断ってトイレに行って戻ったときには奇妙な光景が繰り広げられていた。飛一郎たちが今日の昼にあった一等生たちとなにか言い合っていたのだ。よくみればナギサもいた。和也はわけがわからずその場で突っ立ていた。
(一体なにがあったんだ)
それを知るには和也がトイレに行った一分後の話だった。

「ごめん。待った。」
校舎からナギサが出てきた。
「ううん。待っていないよ。」
姫華がそう言うとナギサは安心した顔になった。
「あれ。和也君は。」
「和也なら今手洗いに行ってるぞ。」
と飛一郎がナギサに教えた。
「おや、冴えない飛一郎君ならお手洗いのことトイレと言うと思ったのに。」
姫華が本当に驚いたように言った。
「おい。俺もさすがにそこらへんは気を使うさ。それにしてもまだか和也のやつ。」
と飛一郎が言ったとき後ろから声がした。
「紫之宮さん。なにをしてるんですか。」
そこには昼間の一等生たちがいた。
「ええ、これから今は一人いませんが戻ってきたらこちらの方々と一緒に帰ろうと思いまして。」
「また、お前らかどうせその中の誰かが強引に約束させたんだろう。」
その言葉に三人は黙った。強引ではなかったが約束をしたのは和也だったからだ。
だけどそれでは和也は悪者扱いみたいにされて飛一郎と姫華が手を出そうとしたより先に衣瑠香が前に出た。
「たしかに約束をしたのはこちら側の人でしたけど、彼は強引には誘ってはいませんでした。」
衣瑠香は堂々と言った。それに相手は一瞬驚いたがすぐにさっきの威勢を取り戻し。
「でもそれは紫之宮さんが気を使ったのかもしれないじゃないですか。」
「それは違うと思います。ナギサさんはたぶんあなた達といるより和也さんと一緒にいるほうが楽しんでいると思いますから。今回もナギサさんは和也さんと約束しているんで」
話を切り上げようとした衣瑠香だったがそれは叶わなかった。
「他クラスの人より、同じクラスの人と交友を深めるほうが普通のでは、そもそも二等生が一等生と一緒にいるなんておかしい。」
「なにがおかしいんですか。」
「どうでもいいじゃないか。」
「どうせ、魔法のことでもいってるんでしょ。いくら一等生といっても今現在どれくらい二等生との差はどれくらいなんです。」
その一言に今まで冷静だった、一等生に変化した。
「どのくらいの差か、その身に叩き込んでやる。」
一等生の男子生徒がMCAを取り出した。さらに肩に背負っていた竹刀袋から竹刀を取り出した。
「これが一等生の力だ。」
彼は魔法を起動させてしまった。しかも《鋭利化》の魔法を使っていた。
魔法にもさまざまな種類があり《炎》、《水》、《電撃》、《氷》、《大地》、《風》、《草》、《加速》、《振動》、《超音波》、《再生》、《破壊》、《鋭利》、《光》、《闇》などその他たくさんの種類があるが一般的なのがこれだ。
鋭利化の魔法をまとった竹刀は戦車の装甲をバターのように切り込める鋭さがある。
殺魔法ランクB級のものでもある。
そんなものが十五才の少女の体に切り込まれようにしていた。
しかしその攻撃は通らなかった。
衣瑠香の前には一人の少年がいた。

「あれは、《鋭利化》魔法。」
さっきから出るタイミングを失くした和也はずっとあの状況をみていた。
(しかもあれは人を殺せる魔法。ここで超能力の《瞬間移動テレポート》を使えばどうということはないが、自分が異能者であることは隠せて言われているし。そんなこと考えている場合ではない。人一人の命が関わっているんだ。)
和也は自分の迷いを捨て、自分をあの場所に向かわせるようにと念じた。
次の瞬間和也の視界は大きく変わっていた。
それを慌てはせずに左手で振り下ろされる凶器を掴んだ。もちろん《反射リフレクト》を使い掴んだ。《反射》は力の向きを変更する能力。
和也はそれの補助もありほんの少しの力を入れただけで鋭利化された竹刀が砕けた。
それに驚き鋭利化をかけた一等生の男子が倒れこんだ。それに危機感を抱いたのか一等生側の女子は魔法を構成していた。
和也はもしものために《未来予知フューチャーサイト》を使い、未来を見たが彼女を使う魔法はただの閃光魔法しかも目くらまし程度だったのでなにもしなかったが、後ろからマギカ弾が飛んできたそれは展開中だった魔法式に食い込まれ閃光魔法は不発で終わった。 
「風紀委員です。関係した生徒はこちらに。」
和也たちを含め、一等生の生徒もそれに従った。
「あ、和也君たちはこっちこっち。」
と呼ぶ声が聞こえたほうには生徒会長こと八雲衣沙羅がいた。
「あれ、衣沙羅先輩どうして。」
和也はきっと自分がすごい拍子ぬけた顔をしていると思ったが、気にする暇はなかった。
「まあいいからこっち。」
と手招きするほうに和也たちは進んだ。
「和也君、モテモテだね。」
「どうゆう意味だよ。ナギサ。」
「別に。」
となぜナギサがへそを曲げたか分からない和也であった。

「まあ、まずはじめになんであんなことになったか説明してくる。」
と衣沙羅が和也たちに聞いてきて代表としてか、衣瑠香が少し前にでた。そして衣瑠香は今までのことを話した。

「―――。というわけです。すいません私も良く考えたら言いすぎた面があると思います。
「気にすることはないわよ。なにがあれそれくらいで魔法を使ちゃうほうが駄目なんだから。魔法を学ぶていうのは精神を鍛えることだもの。」
と衣瑠香に安心させるかのように言った。
「それより。和也君がさっき使ったのは魔法。それとも別のなにか。」
「なんのことですか。」
うまくごまかそうとしてもそれを衣沙羅は許さない。
「誤魔化しても無駄だよ。」
「うっ。」
「ありえないくらい鍛え上げられた走力・・・・・・ううん、それだけじゃないかもね。そして魔法を使わずに発動した魔法を止める。普通じゃありえないよね。」
勘弁したとでもいいたいような口調でいった彼女に和也は参ったような口調で
「僕の一存で僕のことは話せません。」
「そ、ならちょっと待ってね。」
と衣沙羅が携帯端末を取り出し誰かに電話していた。
一分後彼女は電話を終わらせ、和也にキラキラした目を向けていた。
「すごい。和也君、異能者だったのね。」
和也はなぜこんなことにと思っていた。
「これで生徒会に入る条件はOKだね。」
「僕はまだ入るか考えていませんからね。」
「一等生が二等生に対する態度が。それを変えられるのはあなたかも知れないのよ。」
衣沙羅の目は本気だった。それに屈した和也は、
「分かりました入りますよ。生徒会に。」
「ありがとう。それじゃ明日の放課後生徒会室でね。あとナギサちゃんも連れてきてね。また明日。」
一方的な感じで終わった会話に和也たち唖然としていた。
「ねえ。和也君、異能者てなに。」
「明日はなすから今日は勘弁してくれ。」
和也は姫華の疑問に答えた。
ほかの三人は気を使って先に帰ったがナギサだけは残っていた。
「わたしは今日きかせてもらうからね。カズにぃ。」
と満面の笑みで言うナギサに和也が、
「勘弁してよナギちゃん。」
と言った。

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