「は~」
彼はため息をついた。
その理由は、
「何で僕が魔法科学校に行かなきゃならないんだよ」
彼は一人迷惑にならないくらいに叫んだ。
彼の名前は沢渡和也。
この世界では全くといっていいほど役に立たない超能力者だ。
もっと詳しくいえば和也は魔法以外の全ての異能力が使える。
「僕はあくまで異能者で魔法は一切使えないんだぞ。そのせいで僕は一人暮らしをするはめになるし」
和也は元々都会から離れた所に住んでいた。だけど都会から離れているといっても電気はちゃんと通っているし近くに大型店のデパートなどもある。はっきりいえばこれといった不便はなく、和也の家族みたいな人たちもたくさん住んでいた。だがそんなある日、政府の関係者と名乗る人がなぜか和也の異能力のことをどこからか聞き
彼の家に来たのだ。そこで彼は検査を受け自分が異能者だとばれてしまった。彼の家族も和也に異能力があるの知っていてそれがばれた時はかなり動揺していた。だが政府の関係者の人は彼の異能力が本物だと分かると魔法科学校に入ってくれと言ったのだ。
しかも試験も受けずに入れる上にさらに学費などその他諸々も政府が出してくれると聞いた時点で和也の両親は大喜びであった。しかしただひとつ大きな問題が残っていたそれは彼の家からその学校がものすごく遠く、往復で六時間もかかるのだった。しかしその問題もあっさり解決した。その解決策はなんと魔法科学校がある東京のマンションの一室を貸すといったのだ。無論これも政府の金でだ。
このような形で親と政府の関係者は交渉を終わらせた。
和也はただ呆然としているだけだった。
そんな理由があり、今、彼は東京のマンションの自室兼寝室にいる。
しかし、今は後悔してもしょうがいないと自分に言い聞かせし、ベッドから体を起こし、制服に着替えた。制服は白のシャツ、そのうえに黒のジャケット。ズボンは白。
この制服を初めてみた和也はこれじゃ白魔法師か黒魔法師か分からないなと笑っていた。
着替えた終えた和也は昨日買った、食パンをトーストし、目玉焼きを作り簡単なサラダを作って朝食をすませた。家を出るまで少し時間があり、彼は、彼が通う学校のパンフレットを見ていた。「第一魔法学校」世界で創めて作られた魔法学校で今は小中高大まである。世界各国にも姉妹校及び兄弟校がたくさんあり年に一、二回は交換留学がある。しかし日本国内で「第~魔法学校」はたったの十一校しかない。
パンフレットを見ているとちょうどいいぐらいに時間が経ち、彼は学校用のバッグを手に持ち家から出た。
どんなに魔法や科学が進歩しても電車というものは存在する。だがとても速い。一分で次の駅に着いてしまう。
そんな速さで走っていたら人間の体が耐えられないがそこは魔法の出番だ。Gとは物体が地面の方向への力(重力)を受けており、その大きさはその物体の質量に比例する。これを重力加速度ことGという。そのため魔法で電車を軽量化魔法で物体を軽くしGを軽くしたのだ。
十分後彼の目的地である「魔法科学校前」についた。
駅にでただけで周りには彼と同じ制服を身に纏った人がたくさんいた。
和也もその人の集団にまぎれ登校した。校門前では生徒会の人らしき人たちが新入生を誘導していた。
この時間は本来、授業を行っているが新入生だけはすこし遅れさせてこさせていたから、誘導もかなり楽なものだ。
「新入生はこちらです」
生徒会の人たちが誘導するほうへ和也も進んだ。
「あちら側で先生たちがクラス表を配っています」
和也は誘導された場所で先生がたからクラス表を一枚もらった。
「ありがとうございます」
和也は先生に一口礼を言い。
あまり混んでない場所でクラス表をみていた。そこで彼は自分の名前を探していた。
「一年D組か・・・・・・」
ようやく自分の名前を見つけた和也は自分に聞こえるくらいの声で呟いた。
この学校のクラス分けの基準でA~C組が「一等生」と言われ魔法力が高いものクラス。D~F組は「二等生」
と言われている。こんな感じに成績によってクラス分けされている。だからといってA組が一番強く、F組が一番弱いわけではない。それぞれのクラスで力が均等になるように分けられている。
和也の場合は魔法力なんて微塵もないから、普通はなにがあっても入学出来ない。いや運が悪ければ試験すら受けられないかもしれない。
彼はあくまで異能者だ。
そもそも異能者および超能力者や霊能者は役に立たなくなったのではない、いなくなったのだ。十年前にある魔法師により異能者および超能力者や霊能者などは魔法式演算を脳で出来る高レベルの魔法使いだと判明された。そこで世界中にいる千人以上の異能者および超能力者や霊能者に魔法式演算機「MCA」を使用させたところ。
見事全員が魔法の発動に成功という結果がでた。しかし、和也にはその結果がでず、それで彼が世界で唯一、正真正銘の異能者ということが分かった。その力のなかで最強の能力の一つが力の向きの変更またの名は反射。これは魔法にも効果がある。仮に遠距離型の魔法を受けても反射を使っている限り体に触れた瞬間に跳ね返る。近距離型の場合も同じで攻撃が体に触れればその武器または拳は弾け飛ぶ。
無論、魔法以外でもこれの効果は発揮する。
そんな彼がほんのちょっと本気をだせば世界を一人で征服できるかも知れない存在である。そんな理由で彼は力を抑えつけられている。彼の首についている首輪こそ彼の力を抑えこんでいる。
なぜこの首輪が本当に異能力を抑えこむ力があるかは和也はわからない。
入学式まで自由行動を言い渡された和也は自分の教室となる場所に荷物を置き、教室にいても暇という理由で学校の庭のベンチで家から持ってきた紙製の本を読んでいた。
そんな読書の時間を楽しんでいる和也にある声が聞こえた。
「助けてー」
とかすかながら聞こえたのだ。その声を聞いた和也は本を自分のズボンのポケットに入れ、ベンチから立ち上がり声がする方へ駆け出した。
そこは学校の裏で人気が全くなく、助けを求めた人物がすぐに分かった。
その人は女性で制服をきているからここの学生だと思うが、しかしその女生徒は今、壁に追いやられていた。
壁に追いやっているのは二人の男子生徒だ。
男子生徒が何か言っているようだったが、和也には聞こえなかった。
和也は迷わずに、なおかつ気配を消しながら、女生徒のところに走った。
「あなたたちは何をしているんですか」
女生徒の前に立ち和也が叫んだ。
いきなり現れた第三者に女生徒を含め二人の男子生徒も驚いていた。
しかし、いち早く我に帰った男子生徒の一人が、
「私たちは仕事で」
それに続きもう一人の男子生徒も
「そうだ仕事で・・・・・・」
しかしそこに和也はあること言った。
「つまりあなた方は仕事で女性を襲っていると」
この発言は今のこの状況を口にしたものだった。
ここで男子生徒たちは押し黙った。
和也はこの隙に女生徒を連れ逃げようとしたが、
「ふざけるな。なにも知らないやつが」
といいながら殴りかかってきた。
攻撃は単純なパンチ。
和也は特にこれといったことも知ることなく、それを右手で受け止めた。
最初の衝撃こそ痛かったがそのあとはすぐに痛みが消えうけとめている右手にすこし力をいれた。
相手はその痛みに反応したのかピックとした。
しかしそれはまだ序の口だ。
和也は手の力を徐々に強めていった。
相手の方も自分の拳に徐々に痛みが増していくのに気づいていた。
「おい放せ」
和也はそれを無視し一気に力を入れた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ。痛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。放せ、放せ」
そんな相方の異常な叫び声に反応したのか、もう一人男子生徒が
「いいかげんにしろ」
と叫びながら蹴りを入れてきた。
拳を握っている方の男子生徒を無造作に放り投げ、和也は特になにもすることなくただ突っ立て蹴りがくるのを待っているだけだった。
次の瞬間蹴りが飛んできた。
足を痛めたのは蹴りを受けた和也ではなく蹴りを入れた男子生徒のほうだった。
ちなみにここまで彼は一切の能力を使用していない。だがそれもそのはずだ。彼の強さは異能だけではない。
いや具体的にいえば、異能があったから鍛えられたもの。もし異能がなかったら当たり前かもしれないが一般の高校生だったと思う。
「大丈夫ですか」
和也は襲われかけていた女子生徒に話しかけた。
「・・・・・・」
女子生徒はボーっとしていた。
和也はそれもそのはずだと思った。
今まで自分を襲っていた男子生徒をあっという間に倒したんだ。
しかし女子生徒がとった行動は和也の予想外のことだった。
「あのー」
「決めたわー!」
いきなり、さっきまで襲われていた女子生徒が叫んだ。和也は驚き少し後ろに下がった。
「起きなさい。二人ともほら、それでも一等生」
女子生徒は自分を襲っていた男子生徒を起こしていた。
「うっ、う、なんでしょうか」
「私は彼が生徒会に入るなら、生徒会長をちゃんとします」
この瞬間和也の思考がフリーズした。
そのあと和也は助けた女子生徒、八雲衣沙羅から今までの経緯を聞いた。
「すいませんでした」
全ての事情を聞いた和也は脊髄反射で土下座をして謝っていた。
地面がアスファルトだったにが幸いか制服はあまり汚れずにすんだ。
「本当にすいませんでした。事情も知らずに先輩方を投げ飛ばしたりして」
「いや俺たちの方もこそあれは端から見たら間違いなく襲っているしか見えないからな。仕方がなかった。それと君の名前は、えっと・・・・・・」
「和也です。沢渡和也です」
「和也か、それじゃ一つ聞きたいことがある。君が俺たちに 近づいたときにつかったのは加速系魔法か」
いいかたは優しかったがそれを言う、眼は厳しいものだった。
魔法学校といえども授業以外で魔法を使うのは原則禁止である。
だが和也に魔法は使えない。よってその速さは身体的によるもの。
「いいえ。ただ走っただけです。先輩」
この答えに男子生徒及び衣沙羅も驚きを隠せないでいた。
魔法も異能も使わずに身体能力だけであれだ加速したのだ。その反応は普通だろう。その質問から推測すると和也の加速は魔法と同じくらい速かったことになる。
「それはそうと」
もう一人の男子生徒が話題を変えた。
「私の名前は風見颯それでこの馬鹿の名前が伊集院慎。これからよろしく。そして入学おめでとう。和也君」
「ありがとうございます。風見先輩。でもどうして僕が入学生だと分かったんですか」
「それは簡単なことだよ。ジャケットに青の刺繍が入っているだろう」
颯は和也のジャケットの刺繍があるところを指をさしながら言った。
「あ、本当だ」
「ちなみに俺たち三人は二年生だからな」
と慎が割り込んできた。
つまり先輩にかわりはなしと和也は思った。
「それと困ったことがあれば何でも聞けよ」
「はい」
「それはそれと和也お前はもう自分のクラスが分かっているだろ。何組だ」
「D組です」
「D組か・・・・・・。生徒会に二等生が入るのはなー颯どう思う」
「私は彼が生徒会に入るのは反対だ。そもそも二等生が生徒会に入るなんてありえない」
「ちょっと待ってください二人とも」
衣沙羅が強く訴えた。
「まず第一にこの学校のルールに二等生が生徒会に入ってはいけないというものはないわ」
「しかし生徒会に入るだったら、強くなくては」
「その点は問題ないと思います。肉弾戦において二対一で和也君が勝ったじゃありませんか」
颯と慎は少し黙った。
「それに和也君が生徒会に入ったらもしかしたら差別がなくなるかも知れないわ」
「差別?」
和也は首をかしげた。
「ええ、この学校の入試は魔法の実技及び魔法力で決まっているのは分かるよね。またそれによってクラスも分けられるのも」
「はい」
「そのせいでね。一等生と二等生の差別が激しいのよ」
和也はここまで聞くと大体のことを理解した。
強者が弱者を虐げる。よくあることだなと思った。
「なるほど。それで僕が生徒会に入ったら差別のほうが少しは軽くなると思ったんですね」
「はい。それで入ってくれますか」
「あのすいませんが僕はまだこの学校にきて一日も経っていません。それにこれからのことも考えたいんで、時間をくれませんか。それに衣沙羅先輩も少し考えて本当に僕が生徒会に入ったら学校が変わるか考えてみてください」
「ええたしかにそうね。ありがとう話が出来てよかったは。それと携帯端末出してくれるかしら」
携帯端末とは電話や通話はもちろん、ネット機能、電子マネー、生活に必要なものがほとんど入ってるものだ。
「私の電話番号とメールアドレス教えるから、君のも教えなさい。もしかしたらかわいい後輩になるかもしれないんだから。お姉さんはなんでも相談にのるから気軽に連絡してね」
和也はもう流されるがままにその場を任せた。
「和也はこのまま俺について来い入学式が行われる講堂まで案内してやるから」
「はい」
移動中にとくに会話はなかった。しかし和也は少し聞きたいことがあった。それは衣沙羅のあの言葉の意味についてだ。「私は彼が生徒会に入るなら、生徒会長をちゃんとします」その意味は和也には分からなかった。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。