ネット殺人予告:PC遠隔操作 サイバー捜査に限界 警察当局、民間・海外と連携模索

毎日新聞 2013年02月13日 東京夕刊

 遠隔操作事件は容疑者逮捕で大きく進展したが、匿名化ソフト「Tor(トーア)」などに対するサイバー捜査の限界も浮き彫りにした。警察当局は専門捜査員の増員などの対策に乗り出すが、ネットの専門家や法律家らからは「抜本的な解決策はない」との声も聞こえる。対策を進めるには国内だけでは限界があり、他国と連携を求める意見も出ている。

 「捜査としては行き詰まっていると言わざるを得ない」と話すのは甲南大法科大学院の園田寿(ひさし)教授(刑事法)。サイバー捜査に近道はないとした上で、「相手のミスをさがすような、地道な捜査を続けるしかない」と話す。

 海外での事情に詳しい東京電機大の佐々木良一教授(情報セキュリティー)は、米国では通信傍受やスパイ活動などでネット上の犯罪者の絞り込みを行っている点を強調する。「ネット世界の捜査だけで逮捕するのは難しいというのは世界共通だ」。元検事でネット犯罪に詳しい落合洋司弁護士も、Torについて「より進んだ技術の情報交換など、世界的にサイバー犯罪への協力態勢を緊密にしていくべきだ」と主張する。

 警察庁情報通信企画課長や内閣官房情報セキュリティセンター長などを歴任した西川徹矢弁護士は、民間を含めた専門家との連携の重要さを指摘。「捜査上の秘密はあるが、専門家も具体的に説明を受けなければアドバイスはできない。人物を特定せず、行為だけを問い合わせる方法もある」と話す。

 誤認逮捕の発覚後、警察当局は矢継ぎ早に対策を打ち出した。

 警察庁は昨年11月、ウイルスや不正プログラムの解析を行う「解析センター」を新設。各都道府県警が独自に行っていた解析を同センターで一元的に実施し、高度なプログラムへの対応に備えた。

 今年1月には、サイバー犯罪対策に関する「緊急プログラム」をまとめ、民間の「ハッカー」との交流を進めることを決定した。一方、現在、全国に約1000人いるサイバー犯罪の捜査員を、来年度だけで168人新たに増やすという。だが、技術の急速な進歩に捜査現場が追いついていないとの指摘も聞こえる。ある捜査幹部は「周辺捜査を進め、容疑者のミスをさがしていけば、必ず犯人にたどりつけるはず」と強調する。【松本惇、中川聡子、村上尊一】

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 ■ことば

 ◇Tor(トーア)

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