つむぐ:2013・1 桃浦 カキの生育状況見る「試し剥き」 変わらぬ地道な作業 /宮城

毎日新聞 2013年01月31日 地方版

船上でカキを引き揚げる大山徳市さん。刺すような寒気の中、キビキビと作業を進める=石巻市桃浦で25日
船上でカキを引き揚げる大山徳市さん。刺すような寒気の中、キビキビと作業を進める=石巻市桃浦で25日

 ◇遅れていた収穫、顔ほころぶ

 25日早朝、石巻市・牡鹿半島の桃浦(もものうら)漁港。プレハブの事務所に続々と漁師たちが集まってきた。入り口近くにタイムカードが設置され、入室の時間を印字する。「少しは会社らしくなってきたでしょ」と合同会社(LLC)「桃浦かき生産者合同会社」社長に就任した大山勝幸さん(65)。東日本大震災までは、個人経営で浜の漁師それぞれが“1人社長”。勤務時間の管理など考えもしなかったことだ。

 サラリーマン漁師となっても、日々の地道な作業は変わらない。この日はカキの生育状況を見る「試し剥(む)き」の日。ミーティングの後、勝幸さんは大山徳市さん(67)、後藤盛人さん(61)と共に漁船に乗り込んだ。

 刺すような寒気の中、朝日がまぶしい海を進むこと約10分。「ストップ」と勝幸さんが叫び、操舵(そうだ)室の徳市さんが船を止める。震災後、新たに作ったカキ養殖いかだを下ろした海面だ。

 船上の機械でロープにつるしたカキを引き揚げる。カゴには収穫されたカキが山積みになり、用意したカゴ6個があっという間にいっぱいになった。黙々と作業を続けていた3人の表情が少し緩んだ。

 震災後の再開当初は、より浜に近い場所にいかだを下ろしていた。だが、ガレキが海底に残っており、絡まったロープが切れる事態が発生。約1カ月前、沖にいかだを移した。「車など大きなガレキは撤去したけど、海底のガレキは探査機にも映らないんだ」と勝幸さんは表情を曇らせる。どこにガレキがあるか分からなければ、安心していかだを海に下ろせない。県にもガレキ撤去のためのダイバー派遣を求めている。

 今年は、震災の影響だけではなく、長い残暑による海水温上昇などで県内のカキ養殖は全般的に出荷が遅れている。桃浦も例外ではない。一進一退の状況が続くだけに、収穫の喜びはひとしおだ。浜に戻りカキ殻を剥く。こぼれ落ちる身に、3人の顔がほころんだ。

 浜には出資会社、仙台水産の阿部武志・石巻連絡所長も顔を出し、カキの身入りの状況を確認。生育状況をにらみながら、勝幸さんらと出荷時期を見極めていく考えだ。LLC設立前は、このような水産卸会社などとの連携はなかった。勝幸さんは「これからはただ取るだけじゃない。売る側の意思に合わせて漁師も動くようにするんだ」と話す。ただ、軌道に乗るかどうかは未知数。LLCの挑戦は始まったばかりだ。【宇多川はるか】

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