| |   |  | 北朝鮮の核実験に対する抗議声明を読み上げる川野議長(左から2人目)=長崎市役所 | 
 
 | 
 「被爆地の心情を踏みにじる暴挙」−。国際社会からの強い制止をよそに北朝鮮が3度目の地下核実験を強行した12日、被爆地長崎では同国への批判が広がるとともに、北東アジア地域の緊張緩和に日本政府が主導的役割を果たすよう求める声が上がった。
 長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)など被爆者5団体は長崎市役所で会見を開き「核実験は、核兵器廃絶の流れに逆行するものであり、許されない」とする抗議声明を発表。長崎被災協の山田拓民事務局長は「正気の沙汰じゃない。許せるものではない」と憤り、長崎原爆遺族会の正林克記会長は「核兵器を持ちながら(北朝鮮に)『核を持つな』と言う核保有国にも怒りを感じる」と語った。
 県平和運動センター被爆連の川野浩一議長は日本国内で核武装論が強まることへの警戒感を示し「軍事的対立で物事は解決しない」と強調した。
 長崎被災協の谷口稜曄会長は事務所で取材に応じ「いかなる国の核実験も絶対に容認できないが、米国の核の傘に依存する日本政府に抗議する資格はない。米国に追従するのではなく、日本はアジア地域の平和的関係構築にリーダーシップを発揮するべきだ」と語った。一方、同市三川町の被爆者、城臺美弥子(じょうだいみやこ)さん(73)は「長崎を最後の被爆地にと訴えてきたが、北朝鮮には何を言っても無駄ではないか」と嘆いた。
 同市の田上富久市長は「激しい憤りが渦巻いている」とのコメントを発表し、板坂博之市議会議長との連名で金正恩第1書記ら宛てに抗議文を郵送。田上市長が会長を務める日本非核宣言自治体協議会も送った。
 北朝鮮の核をめぐる情勢は今後どう進むのか。長崎大核兵器廃絶研究センターの梅林宏道センター長は「北朝鮮が核開発を進める理由は、自国の安全の保障と体制の維持」と指摘。「核保有は米国を交渉に引っ張り出すための政治的道具の性格。実際に核兵器が使われるような局面は非常に考えにくい」と分析する。
 国際社会の対応として制裁決議の強化はやむを得ないとしつつ「制裁での解決だけでは北朝鮮がさらに態度を硬化し、出口が見えない深刻な事態に陥る」と強調。日本や朝鮮半島を含む北東アジア地域が抱える安全保障上の問題を包括的に解決するための枠組みづくりを日米韓3カ国で率先して進めていくべきとした。