社説:北朝鮮またも核実験 深刻な脅威を直視せよ
毎日新聞 2013年02月13日 02時30分
北朝鮮が、3度目の地下核実験を成功させたと発表した。「爆発力が大きいながらも、小型化、軽量化された原子爆弾を使い、完璧に行われた」と誇りもした。
韓国の国防相は、北朝鮮が09年に行った2度目の核実験の「2倍程度の威力」と推定した。
その後、北朝鮮は追加の外務省談話を発表し、今回の核実験は米国への「1次的な対応措置」だと指摘。米国が強い姿勢に出れば「より強度の高い2次、3次の対応」を続けると警告した。憎むべき脅迫であり、詭弁(きべん)である。
◇緩みなき対応を
安倍晋三首相は声明を発表し「わが国の安全に対する重大な脅威」であると同時に「国際的な軍縮不拡散体制に対する重大な挑戦」だと厳しく非難した。今後は国連安全保障理事会での速やかな協議と、日本としての措置が焦点になる。緩みのない対応をしてほしい。
北朝鮮の発表はあったが、実際にどんな実験をしたかは不透明だ。
過去2度の実験と同様に、旧式原子炉の使用済み核燃料棒から抽出したプルトニウムを使ったのか。新たに遠心分離機で得た高濃縮ウランを用いたのか。
韓国政府や米国の核物理学者が予測したような「2カ所以上での同時実験」や「ミサイルに搭載可能なほど小型だが爆発力は大きい強化型の核弾頭」実用化も目指したのか。追加の実験も強行するのか。
これらの疑問を解ける段階ではないが、北朝鮮の「核の脅威」がさらに深刻化したのは間違いない。
北朝鮮は先に触れたミサイル発射の際、何らかの物体を軌道に投入するなど技術進歩を見せつけた。大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発の可能性も軽視できなくなった。
ICBMそのものは米本土を狙う兵器だが、その完成に必要な核弾頭の小型化技術は当然、射程の短い中距離ミサイルにも使える。大量に実戦配備済みのミサイル「ノドン」は、日本のほぼ全域を射程に収めている。これに小型化された核弾頭を搭載すれば、日本にとって最悪の大量破壊兵器になる。
この厳然たる事実を軽視してはならない。北朝鮮の発表が誇大なものである可能性もあるが、ともあれ深刻に警戒し、これ以上の脅威拡大を食い止めねばならない。
北朝鮮の核・ミサイル開発が続く背景の一つは、中国の姿勢だろう。北朝鮮は食糧やエネルギーの7割以上とも言われる量を中国に依存している。中国がその提供量を少し絞るだけで北朝鮮は立ちゆかなくなるという見方さえある。
しかし中国は北朝鮮をかばい、国連安全保障理事会では厳しい制裁や非難の決議を回避する場合が多かった。昨年のミサイル発射について、1月の安保理で北朝鮮への制裁強化の決議が全会一致で採択されたのは例外に過ぎない。