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立川断層 激震広がる可能性も
2月8日 16時55分
首都圏に大きな被害を及ぼすおそれがある「立川断層帯」を大規模に掘削して調べた結果、地震を起こす断層の動き方がこれまで考えられてきたメカニズムと異なることを示す痕跡が新たに見つかりました。
新たに見つかった痕跡から何が分かるのか、調査をしている研究グループは何を明らかにしようとしているのか、社会部災害担当の加藤大和記者が解説します。
立川断層帯とは
立川断層帯は東京・多摩地区などに伸びる長さ33キロの活断層です。
国の想定では、マグニチュード7.4の地震が起きて、東京・多摩地域を中心に神奈川県北部や埼玉県南部など広い範囲で震度6弱以上の激しい揺れになるとしています。
死者は東京と埼玉県、神奈川県で6300人に達するとしています。
どんな調査
政府の地震調査委員会は、立川断層帯について東日本大震災のあと、地震が起きる危険性が高まっていると指摘しています。
このため東京大学などの研究グループは去年10月から、東京・立川市と武蔵村山市にまたがる自動車工場の跡地で「トレンチ」と呼ばれる溝を堀り地層の様子など詳しい調査を行っています。
溝の大きさは長さが250メートル、幅20メートル、深さは10メートルと、活断層の調査としては異例の大きさです。
新たに見つかったのは?
私は10月下旬の調査開始から、現場で取材を続けてきました。
研究グループが作業を始めてから2週間程たった11月中旬、砂利などが堆積してできた層の中から、ほぼ垂直に伸びている粘土や土が混ざった層が見つかりました。
この垂直の層が新たな発見でした。
立川断層はこれまでの地形の調査などから地震の際に断層が主に縦にずれ動いていたことが確認されているため、「逆断層」と呼ばれるタイプの地震が起きると考えられてきました。
しかし、見つかった垂直の層は、逆断層タイプの地震では見られず、断層が横にずれたときに見られる痕跡です。
研究グループでは、垂直の層の中の石の形や向きなども詳しく分析して横にずれた痕跡と判断しました。
研究グループの代表を務める東京大学地震研究所の佐藤比呂志教授は、立川断層は縦にずれ動くと同時に、横にも大きくずれ動く可能性が出てきたと考えています。
動画:2月7日 ニュース7より
揺れはどう変わる
断層が縦にずれ動くと同時に横にも大きくずれ動くと地表の揺れはどう変わるのか。
一般的にずれ動く量が大きくなり、今の想定よりも激しい揺れの範囲が広がる可能性があります。
地震が起きた時の揺れの強さや広がる範囲は断層の動き方だけでなく、地盤の揺れやすさや、断層がどの方向にずれ動くかによっても大きく異なります。
研究グループは詳しいシミュレーションをこれから行うことにしています。
動画:2月7日 ニュース7より
今後の調査
調査結果は今後、国が、地震による揺れや被害などの想定をする基礎の資料となります。
研究グループでは今後2年かけて、地層や地盤の詳しい調査を行い、地震が起きるメカニズムや激しい揺れになる場所、それに地震が起きる間隔など立川断層帯で起きる可能性がある地震の姿を明らかにして結果を公表したいとしています。
佐藤比呂志教授は「活断層の危険性が分かれば、防災対策や都市計画に生かすことが出来る。できる限りの手を尽くして、みなさんにどのぐらい注意しなくてはいけないかをお伝えできるようになればいいと思う」と話しています。
まだ分からないことが多い活断層
全国には分かっているだけでおよそ2000の活断層があるとされています。
しかし、国が調査や評価を行った断層は長さが20キロ以上、想定される地震の規模がマグニチュードが7程度以上を対象にしていて、110にすぎません。
平成12年の鳥取県西部地震や平成20年の岩手・宮城内陸地震ではこれまで活断層が確認されていなかった場所で規模の大きな地震が発生するなど、全国にはまだ知られていない活断層があるとされています。
さらに、東日本大震災のあと、日本全体にかかる力のバランスが変化したことで、これまで地震が少なかった場所でも発生する可能性はあります。
自分の地域であまり地震が起きていないからといって絶対起きないとは言い切れないのです。
お住まいの地域に活断層があるかどうかだけを気にするのではなく、日ごろから家具の固定をしたり、非常用の持ち出し袋を用意したりするほか、地震が起きた際の安否確認の方法を家族で話し合うなど、事前にできる準備をしておくことが何よりも大切だと思います。