金正恩第１書記、核実験を強行　小型軽量の「ブースト型」使用か

　北朝鮮は１２日、３度目の地下核実験を「成功裏に行った」と明らかにした。北朝鮮は過去２回、核実験を実施しているが、金正恩（キム・ジョンウン）第１書記の体制下では初めて。朝鮮中央通信は「爆発力が大きく小型化、軽量化し、高い水準で安全で完璧に実行した」と報じた。専門家は、爆弾を小型・軽量化させることができる高性能の「ブースト型核分裂爆弾」の可能性を指摘。長距離弾道ミサイルへの搭載を意識した小型化が、米国への威嚇を目的としていることは明らかだ。

　１２日午後３時（日本時間同）すぎ、北朝鮮の朝鮮中央テレビでは男性アナウンサーが核実験の実施を「われわれの核抑止力の優れた性能が誇示された」と初めて伝えた。

　朝鮮中央通信は、「平和的な衛星打ち上げの権利を乱暴に侵害した米国の暴悪非道な敵対行為に対処し、国の安全と自主権を守るための措置の一環」と指摘。平壌の広場で取材に応じた大学生（２７）は「米国と追従勢力に断固たる鉄ついを下し、本当に痛快だ」と話した。

　実験が行われたのは、北東部の咸鏡北道吉州郡豊渓里（プンゲリ）付近。韓国国防省によると、１２日午前１１時５７分（日本時間同）ごろ、同付近でマグニチュード（Ｍ）４・９規模の「人工的な地震」が観測された。

　北朝鮮は１１日に米国と中国、ロシアに対して核実験実施を通告したとされ、韓国政府も１１日中に情報を入手。日本も米国から核実験通告の連絡を受けていた。核実験の爆発規模は６～７キロトンと推定されている。広島に投下された原爆は１６キロトン、長崎は２１キロトンだった。

　過去２回の核実験はプルトニウム型とみられるが、朝鮮中央通信は今回の核実験を「多種化したわれわれの核抑止力の優秀な性能が物理的に誇示された」と報道。過去２回と異なり、高濃縮ウランを使用したことを示した可能性がある。

　さらに専門家は、爆弾を小型・軽量化させることができ、核分裂を効率的に起こしやすい高性能の「ブースト型核分裂爆弾」の可能性を指摘する。核爆発には、核分裂が連鎖する「臨界」が急速に進むことが必要。ブーストは、爆弾内部に収納した重水素と三重水素（トリチウム）で小さな核融合を起こし、高エネルギーの中性子を大量に供給。この中性子によってウランやプルトニウムの核分裂を急激に進める方法だ。軍事アナリストの小川和久氏は「核物質の量が同じでも威力はより大きくなり、爆弾の小型化につながる」と話した。

　長距離弾道ミサイルへの搭載を意識した核兵器の小型化を示唆することで、核開発の進展をオバマ政権ののど元に突きつけ、直接対話再開を狙っているとみられる。

　国連安全保障理事会は１２日、緊急会合を開き、対応を協議。昨年１２月の事実上の長距離弾道ミサイル発射に対する今年１月２２日の制裁決議で、核実験をした場合「重大な行動」を取ると警告しており、制裁の大幅拡大に向けた決議が議題になる。

　◆北朝鮮の核実験　北朝鮮は２００５年２月に核保有を宣言、０６年１０月９日と０９年５月２５日に豊渓里付近で地下核実験を実施した。いずれも寧辺の実験用黒鉛減速炉（５０００キロワット）の使用済み核燃料から抽出したプルトニウムを使用したとみられているが、爆発規模はそれぞれ１キロトン未満と数キロトンにとどまった。北朝鮮は０９年６月にはプルトニウムと並ぶ核兵器原料である高濃縮ウラン製造につながるウラン濃縮着手を公式表明している。

（2013年2月13日06時04分スポーツ報知）