アナタは広い砂漠に立っている…自由に進もう『風ノ旅ビト』プレイレポ

 
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アナタは広い砂漠に立っている…自由に進もう『風ノ旅ビト』プレイレポ

2012.03.15
『風ノ旅ビト』関連情報
『風ノ旅ビト』公式サイト

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 ついに本日2012年3月15日(木)より配信がスタートとなった、ソニー・コンピュータエンタテインメントのプレイステーション3向けダウンロード専用ゲーム『風ノ旅ビト』。本作のゲーム内容を、発売より一足お先にプレイする機会を得たので、その様子をまとめたプレイレポートをお届けしよう。
 なおこの記事は、ダウンロードゲーム作品をピックアップし、プレイレビューをお届けするコーナー「落としゲー中身拝見!」の“特別編”として掲載。限られた時間内で触れたという事もあって、採点は割愛させていただく。


 『風ノ旅ビト』は、PS3向けダウンロードソフト『flOw』(フロウ)と『Flowery』(フラアリー)を手掛けたゲーム開発会社「thatgamecompany」による最新作。過去の2作品と同じく、『風ノ旅ビト』も非常にユニークな雰囲気を持つ作品である。

 本作の持つ世界観や大まかなゲーム内容については前回の紹介記事でもお届けしたとおり。
 今回のプレイレポートでは、ゲームを開始してから中盤にかけての様子をくまなくご紹介していく。記事の後半では、本作のローカライズプロデューサー・岩瀬尚子氏へのインタビューも掲載。本作を購入しようと検討しているひとも、いま始めてタイトル名を耳にしたという人も、ぜひチェックしてほしい。


■■見渡す限りの砂漠を延々と進む…ルートはひとつではない

 ゲームを開始すると、プレイヤーが操る不思議な存在“旅ビト”が、広大な砂漠の真ん中に佇んでいる。ガイドのメッセージが表示されるわけでもなく、ストーリーが語られるわけでもなく、ただ砂漠の真ん中に“放りだされる”ことになるのだ。

 筆者は、事前情報を何も聞かずにテストプレイをさせてもらったため「これから何をしていいのか」がサッパリわからない。適当にコントローラをいじったところ、右スティックで視点変更、左スティックで旅ビトの移動ができることがわかったので、とりあえず広大な砂漠を進んでみる。

▲プレイヤーが操作することになる“旅ビト”。本当の名前は何なのか、どんな生い立ちなのか、どんな生物なのか…何も知らされない。その分、色々な解釈ができるだろう

 しかし、行けども行けども砂漠、砂漠、砂漠である。丘のように砂が積っている場所を歩く際は進みにくく、斜面を下る際には勢い良く滑り降りていくなど、砂漠地帯ならではの歩きにくさが表現されている。実際に砂漠を歩いたことがなくても「きっとこんな風に歩きにくいんだろうなぁ…」という感覚が味わえるはず。その表現力の豊かさは、ますます途方に暮れる感覚を味わせられることになる。
 辺りを見渡しながら進んでいくと、はるか遠くの方にキラキラと輝く山を発見。「とりあえずあの山を目指そう…」と、手探り感が否めないまま、山に向かって歩み始めたのだった。

▲見渡す限り砂だらけ…。一見すると目印が何もないように思えたが、遠くに光る山を発見。当面の目標として、とりあえず歩みを進めることに

 しばらく歩いていくと、鉄板のようなものがいくつも地面に刺さっている場所に差し掛かったり、石造りの建物を発見できたりと、段々と風景が変化していく。
 試しに建物の上に登ってみると、屋上で不思議なオブジェを発見。触れてみたら旅ビトが光に包まれ、首に巻き付けているマフラーのような布がニュッと伸びた。どうやら何らかの力を得たらしく、「×ボタン」を押すと一定時間だけジャンプできる、というアクションが追加されたのだった。

▲妙な鉄板がたくさん砂漠に突き刺さっている。触れても特に何も起きないのだが、「これは一体何?」と考えずにはいられない ▲砂漠の中には色々な建物が建てられている。はるか昔の遺跡なのだろうか?説明が一切ない分、想像も膨らんでいく…

 プレイを進めていくと、色々な場面で「布」が重要な役割を果たすことになる。例えば、旅ビトはジャンプすると、ジャンプした時間に従って段々と力が失われ、力がゼロになると一時的にジャンプできなくなってしまう。だが道中で、空中にヒラヒラと舞う小さな布の群れを発見。これに触れることで、再びジャンプする力を取り戻せることがわかった。
 「○ボタン」を押すことで旅ビトは不思議な音と衝撃波を周囲に発生させられる。この衝撃波を小さな布に当てると、さらに高くジャンプすることが可能だ。

▲画面手前でヒラヒラと無数に舞っている、小さな“布”に注目。これに触れることで、失ったジャンプ力を取り戻すことができるのだ

 先へ進むためのギミックとしても、別の種類の「布」が重要な役割を果たすことになる。歩みを進めていると、崩れた岩の上や建物の屋上などで、古びて変色した布を発見できる。これに触れるか、「○ボタン」で放つ衝撃波を当てると綺麗な布に変化。これによって先へ進むための橋がかかったり、足場ができたりなど、色々な仕掛けが作動して道が開けるのだ。

▲画面左奥の砂山に注目してほしい。瓦礫の中からまるで植物が生えるかのように、古びた布が空に向かって伸びている。これを蘇らせれば、何らかの仕掛けが作動するのだ

 仕掛けを解きながら先へ進んでいくと、旅ビトの姿に似つかわしい、不思議な物体が置かれている。この置物はいわゆる“ゴール地点”であり、近づいて反応させることで淡い光を放つ。旅ビトはその光の中に座り込んで、何かしらの物語を匂わせる、不思議なムービーを見ることができるのだ。

 どんなムービーが待ち受けているのかは、実際にプレイした時のお楽しみとして、あえてここでは説明しないことにする。ただ、このムービーにも文字情報は一切表示されない不思議なものとなっているので、100人いたら100種類の解釈ができるかもしれない。
 ムービー再生後は、次のステージへと続く巨大な扉が開放されて、新たなステージへと進む事ができる。ここまでが1つのステージの大まかな流れだ。

▲不思議な物体が光を放ち、旅ビトはおもむろに光の中に座り込む…。何かの儀式を思わせるような、荘厳な雰囲気が漂う瞬間だ

 このように、「1:歩きながら古い布を探す」「2:古い布を復活させ、先へと進む仕掛けを解く」「3:ゴール地点に配置された物体に近づいて巨大な扉を開ける」という工程が、各ステージにおける大まかな流れとなっている。
 ただし、ゴール地点へと辿り着くルートは1つではなく、色々な進み方が用意されている。どんな歩き方をしていくかは、プレイヤー自信の判断に委ねられるのだ。

 ちなみに、道中で発見できる白く輝くオブジェに触れることで旅ビトがジャンプできる滞空時間を増やせるのだが、必ずしもジャンプ力を強化する必要もない。ジャンプ力を強化していくも良し、全て無視してしまうのも良し…と、人によってプレイスタイルも千差万別なのだ。

▲ゴール地点へと辿り着くための方法は1つではない。どんな道があるのか、繰り返しプレイして探してみるのも良いかも

 なお、各ステージごとに趣がちがっており、「蛇」をイメージさせるような“空飛ぶ布”が進む道を導いてくれたり、ステージの大部分が急斜面となっていて勢い良く滑り下りる爽快なシーンがあったり…と、同じ砂漠のシーンでも変化を楽しむことができるので、飽きが来ることはないはずだ。

 今回のテストプレイでは、遺跡の地下通路のようなステージも体験することができた。とっぷりと日も暮れ、崩れた天井部分から降り注ぐ月明かりが、地下を不気味に照らしているのが印象的だった。
 雰囲気に圧倒されながら先へ進んでいると“サメ”を彷彿とさせるような巨大な敵キャラクタがいきなり出現。こちらを発見すると強烈な突進攻撃を喰らわしてくる危険な相手なので、奴らに見つからないようにこっそりと進む…という、これまでのステージとはまた一味違う体験ができたのだった。

▲空を飛ぶ蛇のような布は、どうやら旅ビトに有効的な様子。「小さな布」と同じく、触れることでジャンプ力を回復してくれる ▲暗く冷たいイメージの地下ステージ。地面にはやはり砂が広がっており、段々海の中をイメージさせるような、青白い空間が広がっていく…

 以上が、今回のテストプレイで触れさせてもらうことができた部分である。各ステージとも違う雰囲気を味わえ、ワクワクしながらゲームを堪能できたが、この時点でもまだ“中盤”あたりとのこと。後半のステージでは一体どんな体験が待っているのか…それは、製品版を実際にプレイして、ぜひ自分自身の目で確かめてほしい。もちろん筆者も、製品版でラストシーンまでを堪能してみるつもりだ。

 最初は、右も左もわからないまま先へと進み、偶然発見できた仕掛けを作動させて先へと進んでいくという、とことん説明を排除したゲーム内容は、やはり同じ制作会社の手掛けた『flOw』や『Flowery』にも通じるところがあった。
 ただ、ストーリーなどが言葉で説明されないということは、プレイヤーそれぞれが独自の解釈をすることができるという事でもある。自分自身の想像力によってどんな物語を想像し、補完することができるのか。それ次第で、本作の魅力は何倍にも跳ね上がることだろう。

 ちなみに、斜面を滑り降りたり、仕掛けを解除したり、ゴールへ近づいていたり…という盛り上がりのシーンではBGMが一層派手になるなど、音楽面での演出もかなり優秀。
 美しく壮大な夕日が砂漠を照らし、砂粒がキラキラと光を反射させている光景など、思わずため息をついてしまうほど美しいシーンも満載なので、日常に疲れてしまった人は、ぜひ『風ノ旅ビト』をプレイして、この幻想的な世界に浸ってみてほしい。

▲旅ビトが夜空の下、砂漠に佇んでいる。今回のテストプレイでは体験できなかったシーンのひとつだ。さらに後半にはどんな光景が待っているのだろうか…?


■■タイトル秘話や本作の持つ魅力…ローカライズプロデューサーに訊く

 今回はテストプレイとあわせて、『風ノ旅ビト』のローカライズプロデューサーを担当した岩瀬尚子氏に、本作に関するインタビューをさせていただいた。岩瀬氏には、ローカライズにおける裏話や、オンラインプレイに関する情報などを伺っている。プレイする前に読んでおけば、さらに『風ノ旅ビト』を楽しむことができるかも?

▲今回インタビューさせていただいた、『風ノ旅ビト』ローカライズプロデューサー・岩瀬尚子氏

――まずは本作について、どのような部分をローカライズしたのかについて教えてください。

★岩瀬尚子氏(以下、岩瀬氏):
 ゲーム中に出てくる文言は日本語化を行うのはもちろんの事、タイトルもローカライズを行っています。原題は『Journey』(ジャーニー)というものですが、日本では諸事情があり、ゲームタイトルに“Journey”という単語を使用することはできませんでした。
 そのため、“旅”というキーワードはタイトルに残しつつ、ゲームを通して印象的な存在だった“風”というキーワードもくみあわせて、『風ノ旅ビト』というタイトルに決まりました。

――今回プレイさせていただいた内容では、ずっと砂漠のシーンが続いていましたが、ゲーム中は砂漠のシーンがずっと続くことになるのでしょうか?

★岩瀬氏:
 ゲームの前半はほとんど砂漠のシーンになるのですが、後半については他の色々なシーンが登場することになります。実際にプレイして確かめてみてください。

――やりこみも含めて、プレイ時間はどれくらいになるでしょうか?

★岩瀬氏:
 全体のプレイ時間としては、寄り道を全くしなければ2時間程度です。ただし、正しいルートはひとつだけではなく、全く別のルートで目的地へ行く方法もあります。
 別のルートを通ったからといってストーリーが変化するわけではないんですが、隠された壁画を見付けたり、隠されたシンボルを見つけたり…新しい発見があります。寄り道を含めれば3時間は楽しめるボリュームとなっています。

――今回はオフラインでテストプレイをさせていただきましたが、オンラインではどういった遊びが用意されているのでしょうか?

★岩瀬氏:
 オンラインでプレイしていると、リアルタイムで同じ時間に同じステージをプレイしている人の操作する“旅ビト”に出会うことができます。他の“旅ビト”と一緒に行動すると、お互いに「ジャンプ」をチャージしあう事ができるので、よりスムーズにゲ-ムプレイを進められます。
 既存作品のオンラインプレイの多くは、プレイヤーが操作するキャラクタの頭上に「PSN ID」が表示され、「あ、あれば他のプレイヤーのキャラクタなんだな」と判ります。ところが『風ノ旅ビト』では、「PSN ID」も含めて、ほかのプレイヤーに関する文字情報は一切表示されません。
 ボイスチャットやチャット機能もないので、下手をすればゲームのラストシーンまで、他の“旅ビト”を他のプレイヤーが操作しているという事に気づかないかもしれないですね。ラストには、“気付く人は気付く”ような仕掛けも用意されているんですが…。

▲自分とそっくりの旅ビトは、世界中のどこかのプレイヤーが操っている…あえてコミュニケーション機能が排除されているので、まるで作中の登場人物のように感じられることだろう

――ちなみに実際にプレイさせていただいたところ、同じくソニー・コンピュータエンタテインメントさんがPS2/PS3でリリースしている『ICO』(イコ)と近しいような世界観だな、という印象も受けました。

★岩瀬氏:
 開発者は『ICO』や『ワンダと巨像』といった、上田文人さんの作品が大好きで、その辺りから影響を受けている部分もあるかもしれませんね。
 このゲームを手掛けた開発者の意図としては、ゲーム内で“人生”を描いているとのことです。生まれたばかりの時は右も左も分からず、試行錯誤を繰り返していきます。急斜面を滑り降りるシーンで激しさを表していたり、敵キャラクタが現れるシーンで困難に直面する様を描いているという部分があるそうです。
 ただし、本当にそう感じるか、感じないかは、プレイヤー自信の感じ方次第で、正解は特にありません。好きなように感じ取ってもらい、自分の想像力でストーリーを補完する楽しみもあります。

――同じく「thatgamecompany」が手掛けた『flOw』や『Flowery』と違うところ、共通するところは、どんな部分だと思いますか?

★岩瀬氏:
 「thatgamecompany」は「グローバルに通じるゲームを作りたい」という意識があり、この『風ノ旅ビト』にはゲーム中にほとんど言葉が出てきません。その点は『flOw』や『Flowery』と共通する部分だと思います。
 『風ノ旅ビト』には、『flOw』や『Flowery』とは違い、もう一歩踏み込んだストーリーが用意されているのが特徴です。具体的に述べられるわけではありませんが、よりストーリー性は増しています。

――実際に岩瀬さんが、はじめて『風ノ旅ビト』を目にした時、どんな印象を受けましたか?

★岩瀬氏:
 ゲーム開始直後の砂漠のシーンを目にした時は、「すごく綺麗なゲーム」だという印象を受けました。ゲームを進めていくにつれて、ゲームプレイとBGMとの統一感は『flOw』や『Flowery』以上であることも実感できました。

――『風ノ旅ビト』はとても不思議で独特な世界観を持つゲームなので、プレイするのをためらってしまう人もいるかもしれません。そういった人へ向けて、オススメのポイントを教えてもらえますか?

★岩瀬氏:
 実際に体験してみないとわからない、という部分が大きいです。そのため、実際に購入していただいたプレイヤーさんの口コミによって、細く長く売れていくタイトルなのではと思っています。言葉で説明しすぎてしまうと無粋な感じもするので、まずは体験していただければと思います。

――ありがとうございました。


◆『風ノ旅ビト』
ハード:プレイステーション3(※ダウンロード配信タイトル)
ジャンル:アドベンチャー
メーカー:ソニー・コンピュータエンタテインメント
配信開始日:2012年3月15日(木)
価格:1,200円(税込)
プレイ人数:1~2人(協力プレイ)
CERO:「A」(全年齢対象)

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■『風ノ旅ビト』 (PS3)
 (C)Sony Computer Entertainment America LLC. Developed by thatgamecompany.


 
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