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大学などの研究機関に所属する、女性研究者の数が伸び悩んでいます。
欧米の先進国の女性研究者は、3人から4人にひとり。
これに対し、日本では7人に1人しかいません。
こうした中、出産や子育て、介護などと研究を両立できる環境を整え、優秀な女性研究者を確保しようとする取り組みが始まっています。
3歳の女の子を育てる、大槻曜生(あき)さん。
運動生理学の研究者です。
出産後、博士号を取得し、本格的に研究を再開しようとしましたが、子育てと両立できる職場が見つからず、諦めかけていました。
そんなとき知ったのが、お茶の水女子大学の「特別研究員制度」。
博士号を持つ女性を対象に、週にわずか2時間の時短勤務で、仕事への復帰を後押しするものです。
大槻さんは、
「フルタイムで仕事を得る以前の段階として、自分の仕事と子育てのバランスを取っていく、トレーニング期間にぴったり」だと言います。
およそ4年ぶりに研究に復帰した、大槻さん。
給与は週2時間分のみですが、研究施設は、勤務時間外も自由に使うことができます。
子育てとも徐々に両立できるようになったため、大槻さんは現在週4日、実験に通っています。
制度を利用できるのは2年と短いものの、大学の研究員という職歴があることで、次の就職も格段に有利になります。
大槻さんは、
「肩書きがあって、頑張って業績を積んで、次の就職につなげることができるので、本当に助かっている」と言います。
お茶の水女子大学 鷹野景子副学長は、
「研究を中断せざるを得なかった学位を持った女性研究者に、諦めないで研究を復活させることを目指してほしい」と言います。
こうした取り組みの背景にあるのが、日本の女性研究者の少なさです。
昨年度、日本で大学などの研究機関に所属した女性研究者は、全体の14%。
他の先進国を大きく下回る数字です。
そんな中、フルタイムで働く女性研究者への支援も始まっています。
微生物を研究する、山梨大学ワイン科学研究センター助教 乙黒美彩さん。
子育てをしながら、第一線で研究を続けています。
そんな乙黒さんを支えるのが、「研究サポーター制度」。
子育てや介護中の女性研究者を、同じ専門分野の学生が、マンツーマンで支える仕組みです。
保育園への迎えの時間が来ても、安心して実験を引き継ぐことができます。
サポーターの、生命工学専攻 修士課程1年 上田真由さん。
慣れた手つきで作業をこなします。
乙黒さんは、
「サポーターの上田さんが微生物を扱ったことがあるのは、非常にありがたい」と言います。
一方、研究者を目指す上田さんにとって、乙黒さんは身近な人生の先輩。
子育てと研究をどう両立させているのか、聞けるメリットがあります。
乙黒さん「家に帰ってきて、お風呂に入れて 準備して 寝かせて・・・」
上田さん「大変そうですね」
乙黒さん「帰ってからが勝負」
サポーターの上田さんは
「子育てと両立されているということで、将来のことについても勉強になるし、技術を教えてもらうことでスキルアップにもつながるのではないか」と言います。
山梨大学女性研究者支援室 風間ふたば室長は、
「肩を張って頑張るというイメージではなく、多くの研究者が、もっとずっとしなやかに、女性らしくのびのびとやっている。そういうところも若い方々に見ていただいて、自分の将来を考えてもらえれば」と言います。
最初にご紹介したお茶の水女子大学の「特別研究員制度」は、今年度から導入されて、すでに次の職場が決まった人もいて、成果が出始めているということです。
◇特別研究員制度について
「お茶の水女子大学」
広報チーム 男女共同参画推進係
電話:03−5978−5336
◇研究サポーター制度について
「山梨大学」
女性研究者支援室
電話:055−220−8350
◇先進国と比較して日本の女性研究者は14%というデータの出典
総務省:男女共同参画白書 H24年版