ずっと気になっていたブラコンアンソロジー『Liqueur―リキュール―Vol.2』をやっと最近購入しました。

この本は「エロ漫画」ではありませんが、兄妹や姉弟のソフトな「近親愛」の物語を存分に楽しめると思います。
帯の後ろに「24人の作家の描く、少女たちの叶わぬ恋の物語。」と書いてあるように、ほとんどの作品が女の子(姉か妹)視点で、能天気な明るいストーリーよりほろ苦い物語の方が多い感じです。
以前に紹介した
「第一弾」に比べてページ数は120%程となりましたが、作品数も16から24と大幅に増えており、各作品のページ数は短めになっています。
また、大多数の作家が「第一弾」とは変わっていますね。
それはいいのですけど、残念だったのは「第一弾」の表紙も描いていたカトウハルアキが抜けてしまったこと。
個人的には
『夕日ロマンス』の番外編を読めたことが「第一弾」の価値の80%以上だったから今回も描いて欲しかったなあ。
とは言っても全体的なレベルはむしろ上がっている感じだったので、印象に残った作品をいくつか簡単に紹介します。
渡辺静の『ある姉の不道徳』
両親が亡くなって以来、バイトをして弟を養いながら学校でも成績トップという姉の心の裏に隠された禁断の劣情。
こういう「狂気」を秘めた作品は好みですね。
よしだもろへの『伝染』
キスで風邪がうつるというベタな内容ですが、「何が花粉デビューよ、あほくさっ」と赤い顔で言い放つ関西弁の妹がとにかく可愛いです。
カザマアヤミの『よるとまひる2』
この作品だけ「第一弾」からの続編となっている双子の兄妹の物語。
マイルドな切なさが前作より強調されていますね。
雨隠ギドの『おにいちゃんカメラ』
兄に対する妹の想いが痛いほど伝わってくる、この本で一番完成度が高いと思われる作品。
兄の彼女が自然体の「いい人」であるだけに、ラストの情景に深みが感じられます。
袴田めらの『影は、光を追いかけるばかり。』
(小さい頃からずっと、兄は陽(ひ)、私は陰(かげ)だ)と思ってきた少女の禁じられた恋の物語。
兄と妹の関係性がなかなか面白い作品ですが、重めのストーリーと軽めの絵柄がちょっと合っていなかったような気も……
Kashmirの『いもうと観察日記』
兄のブログに書かれた「妹の生態」のひとつひとつがとても面白い。
ツンデレ風味の妹が可愛いなあ。
五十嵐電マの『フレーム・イン』
水着姿の妹を兄がカメラで撮るという状況がすごくエロティックに感じられる作品です。
「エロ漫画」なら珍しくもないですが、そこまでいかないのが逆にリアルなドキドキ感を醸し出しています。
狩野蒼穹の『今年からは妹』
冒頭で「いいこと考えた、あたし妹になるわ」と姉が宣言するところから始まる物語。
能天気なバカ話かなあと思っていると、最後にその言葉の本当の意味を知ります。
キダニエルの『たぬきねいり』
(目をひらくのが)
(キライ)
(視線の先の同じカオ――)
(吐き気を催す絆を感じてしまうから――)
そんな想いを秘めたクールビューティーな妹が寝たふりをしながら兄に甘えるのが良いです。
位置原光Zの『たくらんで妹』
「私はお兄ちゃんをひとりの男性として好きです」という爆弾発言から始まる女子学生3人の会話劇。
「お兄ちゃんには人として終わっていてもらわないと困るの!! 妹としては!」などの名言もあり、「兄妹相姦漫画」の愛好者ならニヤニヤすると思います。
壱号の『姉の特権』
いとこの少女と姉弟の三角関係。ドロドロな恋愛物語の展開となっていきますが、「ケータは私と結婚してくれる?」という姉の言葉に対する弟の答えによって救われます。
どの場面でも弟は呑気にゲームをしていて悩んでいるのは女の子だけという構図も面白いです。
大朋めがねの『はさみ。』
成長することによって離れていく姉弟の物語。
この作家は「近親相姦漫画」でも切ない系を得意としているので、この本のラストを飾るに相応しい安心のクオリティです。
でも、姉の名前を「さを」にしたのは何か意味があるのかな? 弟は「希(のぞみ)」という比較的普通な名前なだけにちょっと違和感がありましたね。
姉に対する弟の呼び方が物語のポイントにもなっているので余計に気になりました。
これら以外にもバラエティに富んだ作品が掲載されているので、「ブラコン」に興味がある人なら一見の価値があると思います。