ユーザーの減少を恐れはじめたFacebookはクールさを取り戻せるか

MdN Design Interactive
2013年02月12日10時00分

2013年02月12日
TEXT：小川浩（シリアルアントレプレナー）

Facebookのアクティブユーザー数が伸び悩んでいるらしい。日本ではフェイクアカウントを大量に凍結し、100万人単位でユーザーを減らしたというデータも出ている。

実際、このユーザーの伸び悩み、もしくは減少傾向というのは気のせいとか杞憂とかではなく、Facebookの経営陣自体が大きな懸念材料として一般公開している事実である。

2013年2月頭にFacebookが米証券取引委員会に提出した報告書において、おもに十代の若年層がFacebookではなく、InstagramやPinterestのような競合SNSや、メッセージングサービスの利用をより好むようになっていると明記し、強い懸念を示している。

これまでFacebookの株価が伸び悩んでいた最大の理由は、モバイルアプリの不出来と、モバイルインターネットのトラフィックを効率的に換金できる広告システムや課金システムがない、もしくはつくれないのではないか？という懸念を投資家達がもっていたからだった。

しかし、今回Facebook自身から、そもそもユーザーがこれ以上増えない、そして若者がFacebook離れをしているという見解が示されたことによって、新たな投資不安が市場を覆うことになるだろう。

実際のところ、日本国内においてもFacebookを使っている中高生はほとんどいないのではないか？大学生でも、2～3年前の盛り上がりと比べると積極的に楽しんでいるように思えない。Facebookユーザーの平均年齢は30代以上になっているかもしれない。

つまり20代前半までの若いネットユーザーはLINEに流れ、Facebookは登録していたとしても、それは企業やオトナ達がたくさんいるから就職に役立つかもしれない、というような必要悪的な利用になっている。

重要なことは、若者はオトナとの交流を望んでいない、というシンプルな真実を直視しなくてはならないことだ。多くの若者にとって、中高年のライフスタイルやモラルの押しつけはダサいものでしかない。自分の親のような世代が好むものは、総じてクールさの欠片もないのだ。誰もが10代のころを思い出せば同意するはずだ。若者はオジさんオバさんが多いコミュニティに入りたいとは思わないし、そこで本音を隠して建前を語りたいとも思っていない。だからFacebookを忌避しはじめるわけだ。

映画『ソーシャルネットワーク』で、主人公のマーク・ザッカーバーグはFacebookは排他的であり学生だけのコミュニティだからクールだと言った。Facebookはいまやそのクールさをみずから捨てているということだ。

LINEは原則としては個人間の通信システムだから、ケータイと同じように、あらゆる世代が使うようになったとしても、あまり気にならないかもしれない。しかし、それでも居酒屋あたりでグレーのスーツを着た会社員たちがLINEの話で盛り上がるようなら、それはブームの終わりを告げる恐怖のサインとなるだろう。

FacebookがInstagramを買収した理由は、モバイルインターネットのゲートウェイを押さえるというよりも、若者に好かれるブランドを保持したいという意志であったと今ならわかる。その証拠に、いままでは買収したすべての企業を解散し、自社ブランドに統合してきたFacebookが、初めてInstagramは独自ブランドを残すことを選択したからだ。トヨタがクールでないのは軽自動車から商用車まで、あらゆる車をつくっているからで、フェラーリがもしファミリー向けの小型車をつくったら、ファンはそっぽを向くだろう。若者はオヤジが好むものを好まないからだ。

Facebookはありとあらゆるネットサービスへのパスポートとして、実名によるソーシャルアカウントを保持する世界最大の企業だ。今後はその資産を生かしつつ、若者に好まれるクールなスタートアップを片っ端から買収にかかるかもしれない。自身は大衆的で安定した大企業として成立し、若年層には個別のクールなサービスを提供する多ブランドを抱える総合ソーシャルサービス企業を目指すわけだ。