ネット殺人予告:PC遠隔操作、容疑者逮捕 05年にも殺害予告 「慎重に捜査を」(その1)
毎日新聞 2013年02月11日 東京朝刊
「会員にこういう人はいませんか」。東京・秋葉原のインターネットカフェを捜査員が初めて訪れたのは、1月中旬。男性店長によると、捜査員はこのとき片山容疑者を含む4人の名前を挙げ、店長はそのうち片山容疑者が同店の会員であることを伝えた。
数日後の18日夕方。片山容疑者が来店し、漫画本を持って個室に向かった。その直後に再び捜査員が現れた。退店後、片山容疑者が過去に利用したことのあるパソコン2台を押収したという。
店長によると、片山容疑者は昨年7月26日に初来店し、運転免許証などを提示して入会。以来計7回訪れ、いつも個室を利用した。夕方が多く、逮捕前日の今月9日は午後7時ごろから約1時間利用したという。店長は「物静かでまじめそうな人。トラブルやクレームもなかった」と言う。
足跡は別の「カフェ」にも残されていた。台東区浅草の雑居ビルにある猫カフェ「浅草ねこ園」。オーナーの女性は「物静かだったが、顔は覚えている」と話す。店内には十数匹の猫がいる。片山容疑者は1人で猫を眺め、触って過ごすことが多かったという。直近では7日昼に来店。オーナーは「退店時に『お気をつけて』と声を掛けたが、無表情な感じだった」と振り返る。
逮捕前日は、同区内の別の猫カフェを訪れていた。店長(29)によると、午後3時ごろから約1時間、ソファ席に座って生ビール1杯を注文し、店員に猫の名前を聞いて抱き上げたり、おもちゃを使って猫とじゃれ合ったりしていた。周囲を警戒している様子はなく、他の客との相席にも応じたという。【松本惇、福島祥、石丸整】
◇「手口似ている」 前回事件、傍聴の阿曽山さん
05年に殺害予告事件を重ねたとして実刑判決を受けた片山容疑者。当時の裁判はどうだったのか。
「被告人、前へ。」などの著書で知られ、片山容疑者の当時の裁判を傍聴した芸人の阿曽山(あそざん)大噴火さん(38)によると、法廷では、片山容疑者が逮捕を免れるための工作を施したと指摘された。殺害予告を書き込む際は、ノートパソコンを公園に持ち出して、無線LANでネットにアクセス。書き込んだ後はLANカードを廃棄し、パソコンのデータも削除していたという。