「どう、ひのめ?
横島君は?」
「・・・すごい。
本当に凄いよ・・・」
本当にそれしか言葉が出てこない・・・
GSである雪之丞さん達の除霊や義兄さんの仕事を見学させてもらった時もあったし、相手にしてもらった時もある。
もちろん、数々のコンビの戦いも見てきた。
今も戦っているシロ姉さんとタマ姉さんのコンビ、雪之丞さんとかおりさんのとコンビ・・・
他にもお姉ちゃんと義兄さんとのコンビもいっぱい・・・
でも・・・
「横島さんが強いとは聞いていたけど、予想以上だった。
遠距離兼防御のサイキック・ソーサー、汎用性がある『栄光の手』。
ただでさえ人間じゃ少ない霊力を半ば物質化した霊波刀、そして文珠。
それに15年越しのお姉ちゃんとのコンビなのに、義兄さんには悪いけど今まで見てきた中で一番息が合ってる。
ずっと今まで側にいたみたい・・・」
「そうね。
こう言ってはなんだけど、私も予測以上だったわ。
ブランクもあるだろうけど、15年前は令子も信用してはいてもまだ背中を預けていなかったの。
今回が本当にコンビのデビュー戦なのよ」
「・・・」
ママからの衝撃の事実に、私は驚愕する。
これほど息が合っているのに、今回が初めてなんて・・・
それはそれで凄いけど、もう一つ気付かされる事があった。
「それに、お姉ちゃん達もいつも以上にイキイキしてる。
雰囲気も今までと違う」
「その原因は?」
「横島さん?」
「ええ」
横島さんが混ざるだけで雰囲気がいつもと違う。
私にとっては、お姉ちゃん・おキヌ姉さん・シロ姉さん・タマ姉さんの四人がいつもの美神除霊事務所のメンバー。
でも、横島さんが参加するとカタが填ったようにピッタリだった。
「そうよ。
彼の扱う霊力技、文珠も確かに素晴らしいわ。
でもね、横島君の本当の凄いところは雰囲気を変える事なの。
目の前の敵に絶望しても、彼がいるだけで立ち上がれる。
悲劇も喜劇に変えるムードメーカーにして、どんな状況をひっくり返すワイルドカード」
「へぇ・・・」
ムードメーカー・・・
そして、ワイルドカード・・・か。
横島さん・・・
「難点といえば本人は自覚なくて、何故か彼ばっかりオチが付くんだけどね」(苦笑
「・・・」(汗
お、オチもつくんだ(汗
そういえば、昔から話に聞いていてもそういうことばかりだったよね・・・
「令子達も三階に着いたようね
ひのめもしっかり見てなさい。
おそらく、もう見ることがが出来ない美神除霊事務所・フルメンバーの戦いを」
「うん」
小さい頃から聞かされていた、裏の英雄である横島さん。
魔神大戦の経緯は聞いていないけど、あの人がいなかったら人間側は負けていたというほど。
見た目や今までの接した中じゃ、優しそうに見えてもそんな風には感じなかった。
でも、かおりさん達との試合やさっきの戦いで思い知った。
雪之丞さんが生涯のライバルと言い続け、お姉ちゃんがずっと待っていた横島忠夫さん。
私なんて足元にも及ばないけど、少しでも見せてほしい。
あの人の戦いを・・・
『GS美神+ネギま!』
「人魔と歩む者達」
第八話・英雄の帰還と別れ 6
二階で白虎と黒豹を撃退した令子達。
彼女達も全員が揃った懐かしさと喜びに、意気揚々と3階に到着する。
今度も横島が先の扉からゆっくりと覗き込み、確認する。
そこには・・・
「いかにもっていった感じね・・・
ここまで来ると、お化け屋敷でもいいんじゃない?」
「あ、あはは・・・」
真ん中にドドンと仁王立ちしている阿修羅像。
しかも、計六本の手には剣・槍など様々な武器を持っていた。
今回は各自一目確認してから、再び階段を少し下り作戦会議を開く。
阿修羅像のその雰囲気と姿に令子はもはや呆れ、キヌも苦笑する。
「でも、美神。
扉、開いていたわよ」
「あら・・・
ホントね。
どうなってんの?」
そんな中、最上階へ続く天井の入り口が開いていることにタマモが気付いた。
令子も同じく視線を向けて確認してから、正樹へ問いかける。
「僕もそんなによく知らんのや。
それに知っていても、そうなんでもかんでも教えるわけにはいかんやろ」
「まぁ。そうでしょうね。
・・・状況から察するに、今度は倒さなくても先は通れるという事かしら?
一筋縄じゃいかないだろうけどね」
例えば『実はフェイクであり、戦闘が始まると閉まるかもしれない』と令子が出すと、
六道女史ならばやるかもしれないと正樹を含んだ一同は頷いた。
「だったら、どうするっすか?」
「もちろん、決まってるじゃない。
ここはいつもの作戦で行きましょう」
「な、何か嫌な予感が・・・」
横島の問いかけに、自信溢れる笑顔で答える令子。
だが、逆に彼は予想がつくのか、嫌な予感が体中を駆け巡った横島。
そして、その予感は正しいものだった。
「それじゃ・・・
行ってらっしゃい!!」
「へぶぅ!!」
神通棍を振りかぶって横島を殴り飛ばして出入り口を超え、阿修羅像へ体当たりすることとなる。
その衝撃がキッカケとなったのか、それとも敵を感知したのか・・・
阿修羅像の目が光り、起動音が鳴り始める。
「それじゃオトリ役、任せたわよー!!
皆、今の内に!!」
『・・・』(汗
「早く!!」
前回のコンビネーションが嘘のように、あっさりと横島をオトリに投げ出す令子。
この事態にキヌ達は呆然とするが令子の一喝で指示に従い、後に続き出口へ続く階段を目指す。
それぞれの心の内では・・・
『横島君だったら、生き残れるから大丈夫でしょ?』(令子)
『い、いいのかなー・・・
で、でも、何か懐かしいですねー』(キヌ)
『せんせいーっ!!
その身を挺した犠牲、無駄にしないでござるー!!』(シロ)
『まっ、よろしくね』(タマモ)
色々と突っ込みたくなるような呟きだった(汗
ちなみに、外で観戦していた雪之丞達もその経緯に椅子から滑り落ちていた。
「いつも、ワイはこんな役なんやー!!
こうなったら、後で『あんな事やこんな事』をしてもらうでー!!」
「あら?
人妻に手を出すの?
横島君は、人の家庭を壊すほどの畜生だったのかしら?」
「ち、ちくしょー!!
美神さんが人の・・・しかも、西条のモノになっちまったー!!
どちくしょー!!」
横島もいつもの願望(煩悩)を叫ぶが、以前とは違う非情な切り返しに血涙を流す。
それでも言われたとおり、オトリ役に勤めようとする。
だが・・・
「美神さん!!
コイツ、そっちに行こうとしてるっす!!」
「何ですって!?」
目の前の横島に気取られることなく、阿修羅像は令子達へ向かおうとする。
令子も振り返り、その事実に唇を噛む。
「階段に向かう者達を優先にされている?
それとも・・・
おキヌちゃん、シロ!!
アンタ達は階段を目指しなさい!!
ただし、敵が着いてくるなら入り口に方向転換!!」
「は、はい!!」
「了解でござる!」
意味は分からずとも、令子の指示通り動くキヌとシロ。
対して、令子・タマモ・正樹は出口に続く階段から逆に離れるように移動する。
そして・・・
「やっぱり!!」
「そういうことね!」
阿修羅像は出口に向かうキヌ達を無視し、横島の妨害を受けているので歩みは遅いが視線は令子達を見ている。
いや、その視線の先には正樹に向けられていた。
「霊力の大きさで判断してるのだったら、シャクだけど目の前に私と同様の横島君がいる。
でも、それを無視しているのなら・・・」
「ターゲットは『依頼人』ということね」
「そういうことやろうな。
護衛、しっかり頼んます」
「面倒な事ばかりね!!」
実際に意識を持つ悪霊たちは、原因である依頼人を狙う時もある。
だからこそ、GSやオカルトGメンも余程の事がない限り現場に連れて行くということはない。
これもGSの卵である者達にとっては、将来遭遇するかもしれない状況だろう。
令子の判断は真似できないだろうが・・・
「横島君!!
さっきも言ったとおり、私達は先に上へ上がるから後はよろしく!!
ターゲットである正樹がいなくなったら落ち着くはずだから、後で来なさい!!
たぶん」
「最後は聞こえなかったんすんけど!?」
「気にしないで!!
いいわね!?」
「うっす!!
喰らいやがれ!!」
相変わらずの不運か?
お約束で最後の呟きを聞き逃し、さらに阿修羅像を引きつける横島。
サイキック・ソーサーを6枚同時展開し、その全てを顔面へ投げつける。
彼にとっては単なる目くらまし程度しか期待していなかった攻撃。
だが・・・
「動きが止まった!?
美神さん、今っす!!」
「OK!!
行くわよ、皆!!」
『はい!!』
何故か、阿修羅像の目から光が消えて動きを止める。
その事態を怪しくは思うが、絶好のチャンスに令子達は全速力で階段を駆け上がる。
横島は殿兼オトリ役の続行の為、阿修羅像とある程度距離をとって待機している。
「このまま動かずにいてくれよ」
横島の呟きに反するかのように、再び目に光が灯る阿修羅像。
令子達はすでに上の階に避難済みであるので、彼女が言った様に大人しくなる事を願う。
そして、阿修羅像は・・・
「あら〜
予想外の展開ね〜」
外でモニター観戦していた一同は令子の判断に椅子から崩れ落ちてしまい、各自座りなおしている最中。
解説役の六道女史ものほほんとしているが、その心中では穏やかではなかった。
「(いくら横島君が〜令子ちゃん並の霊力でも〜、阿修羅像が〜行動不能になるわけないわ〜
裏に確認したら〜、原因は不明〜。
再起動させるように〜指示したけど〜、何か気になるわね〜)」
モニターの中では、起動停止した阿修羅像と向かい合う横島。
元・超一流のGSでもある六道女史の霊感に、何かが引っ掛かっていた。
それでも横島の真の実力を目の当たりにし、記録に残せるのも悪くはないと続行する。
「おーい・・・
これでお終いか?」
「大丈夫よ〜
さっき〜、再起動するように〜指示を出しておいたから〜
ほら〜」
雪之丞の催促に、阿修羅像の目に光が灯り再起動した事を確認する六道女史。
可能性は低いが、先程の横島の攻撃が確認できていない急所に当て、行動不能となったらどうしようと不安だったが一安心。
今後の展開を予想し、食い入るようにモニターを見つめる彼等の期待は唐突に裏切られる事となる。
『へっ?』
突然モニターの映像が途切れてしまい、画面は真っ暗となる。
メインだけではなく各部屋に備え付けられていたカメラ、正樹の額に付けられているモノも同様。
「おいおい・・・
良い所で切れるのかよ?」
まさに見逃せない一戦に期待を膨らませていたのに、このアクシデント。
雪之丞だけではなく、ほとんどの者が同じ気持ちだった。
「ちゃ、ちょっと待ってね〜」
六道女史は再び裏に連絡を取るが、原因不明であり復旧をを急いでいるとしか返答はない。
さらに、勝手に上下へ続く階段の出入り口も封鎖されているらしい。
各自焦る中で音声だけは生きているのか、横島の悲鳴が木霊する。
『どわー!!
壁や床にヒビがー!!
それに、さっき以上に速いー!!
美神さんの嘘つきー!!
逆に強くなっとるやないかー!!
ひー!!
口から炎がー!!
ゲッ、壁が溶けてるー!?
アチチ!!
尻に火がー!!
ぎゃー!!』
最後の悲鳴を最後に、ブツっと音声さえ途切れてしまう。
おそらくトラブルであろうと察し、雪之丞達は戸惑いつつも腰を上げ、ネギ達は不安を隠せない。
逆に落ち着いて見えるのはエヴァとルシオラであり、小竜姫は横島の身を案じつつも何かを考えていた。
「正樹君〜!
聞こえる〜!?」
六道女史も、緊急用にと正樹に渡していた通信機に繋げる。
それは塔に使われている物とは違い、音声のみだが特別製である。
そのことが幸を成したのか、すぐに正樹へ繋がる。
『こちら正樹。
どうかしましたか?』
「トラブル発生よ〜
モニターが全部、映らなくなったの〜
しかも〜、阿修羅像が暴走してるようなの〜」
『なんやて!?』
緊急用からの連絡に正樹も首を傾げていたが、六道女史の言葉にようやく事態を察する。
『下から激しい音はしてるかと思ったんやけど、まさか暴走とは・・・』
「そっちは安全かしら〜?
元々の〜最後の内容は〜、多重に結界が張られて〜護られているでしょう〜?
その先にある〜悪霊代わりのクリスタルを〜破壊すれば終了なんだけど〜」
『ちょっと待ってください。
美神はん達に話して、周りを確認してきます。
それと、僕も戦力として働いてええですか?』
「もちろんよ〜
出来るだけ早くね〜」
緊急事態にもはや元々の予定は続行は不可能と判断し、設定である『依頼人』を辞め令子達に協力しとうとする正樹。
もちろん六道女史も承認し、数分で調べ終えた正樹から報告を聞く。
『おそらく、この階は大丈夫です。
怪しそうなんはありまへんし、シロはんとタマモはんも匂いを調べても自分達以外に誰もいないそうです。
ですが、扉が閉まられていて救助に向かえまへん。
そっちから開けられへんのですか?』
「無理なのよ〜
こっちのコントロールが〜受け付けなくて〜」
令子達がいる部屋は安全そうだが横島へ助けに行く手段がなく、ある意味閉じ込められたという状況。
対策を考えている最中でも、下から微かに戦闘音が聞こえる。
その間、外でも助けに行こうとする雪之丞達だったが、令子の予想以上に壁は強固であり中々打ち破る事が出来ない。
ならばワルキューレ達に頼み込もうとした時、通信の相手が正樹から令子に変わる。
『皆、落ち着きなさい。
横島君は大丈夫よ』
「そういえば〜、令子ちゃん達は何をしてるのかしら〜?」
『私?
もちろん、『仕事』の続きに結界を一つ一つ解除している最中よ』
「ええ〜っ!?」
令子達も必死に何か策を考えているのかと思えば、元々の依頼である仕事の続行。
これには雪之丞達はもちろん、六道女史まで驚愕する。
「令子ちゃん〜
いいの〜?」
『良いも何も・・・
私達の仕事は、結界を解いてクリスタルを破壊する事。
もう、さっさと終わらせたいのよ。
あっ!
予想外なトラブル発生の為、報酬は三割追加でよろしく♪』
横島の身を案じていないのかという問いにも、令子はシビアな言葉で返すのみ。
これにはネギ達はもちろん、雪之丞たちも手を止めて不快な表情で心中を表す。
その雰囲気を察した六道女史は、再び令子に問いかける。
「ねぇ〜、令子ちゃん〜
本当に〜横島君の事が心配じゃないの〜?
冥子達も〜横島君を〜助けに行こうと〜してるのよ〜」
『皆も放っておきなさい。
無駄な労力なんて、一銭の得にもならないわよ?
この程度のトラブル、GSでの仕事じゃ当たり前のこと。
気にするだけ損よ?』
だが、逆に令子は火に油を注ぐような言葉を出す始末。
これには美智恵は顔を顰め、ひのめでさえ塔にいるであろう姉へ責めるような視線を向ける。
場は険悪な雰囲気になる中、令子はそれさえ察していたように先を続ける。
『いい?
良き聞きなさい。
おキヌちゃん達にも言ったけど、私が『美神令子』であるように彼は『横島忠夫』。
不可能を無理やり可能にし、ここぞという時にはやる男。
私と同様の霊力を持ち、猿神の修行を受けているのよ?
人間が作った木偶の坊程度じゃ、人魔の封印も解かなくても平気よ。
その内『死ぬかと思った』とか言って、こっちに来るから気軽に待ってなさい』
それは彼女なりに横島を信じているがゆえの言葉。
考えてみればキヌたちも側におり、もちろん助けに行こうとしただろう。
だか、令子の想いが込められた言葉に落ち着きを取り戻し、彼女達も信じて待つことにしたのだろう。
『美神、下が静かになったわ』
『決着がついたようでござる』
『そう。
やっと、落ち着いて結界の解除が出来るわね。
アンタ達も見て・・・
見ることは出来ないのね。
聞いてなさい』
さらに耳を床につけていたシロとタマモが、先ほどまで戦闘音が響いていた下の階が静かになったことを伝える。
その報告に、令子は通信機を持ったまま塞がれた出入り口の鋼鉄の扉の前まで歩む。
数秒の間、無言の時が流れる・・・
そして・・・
ダダダダダダダダダ!!
ドンドンドンドンドンドンドン!!
『美神さんの嘘つきー!!
逆に強かったやんけー!!
マジで死ぬかと思ったわー!!
あれ?
開かない?
おーい!!
美神さーん、おキヌちゃーん、シロー、タマモー!!
ワイだけ仲間はずれは嫌やー!!
しかも、炎の暑さで蒸し風呂状態なんやー!!
開けてくれー!!』
鋼鉄の扉越しでも、横島が元気に泣き喚く姿が目に浮かぶほどの泣き声。
これには、一同全員が力が抜ける。
『それじゃ作業の続きをしてるから、その間にシステムを復旧させてくださいね。
じゃ♪』
言いたい事も言い終えた令子が正樹に通信機を渡したのだろう。
一瞬ノイズが入るが、すぐに正樹が応答に出る。
『え、えっと・・・
どないしましょ?』
「そうね〜
令子ちゃんの言ったとおり〜、急いで〜システムを復旧させるから〜待ってて〜」
『分かりました。
ひとまず通信を切りますので、何かあったら知らせてください』
「よろしくね〜」
一先ず、切羽詰ったトラブルは解決したと判断した六道女史。
後は、裏方にシステムを復旧させる事を急がせるのみ。
原因諸々は・・・
「(お任せしましたわよ〜、小竜姫様〜)」
横島の無事を確認してから、ワルキューレを伴って席を外す小竜姫に任せれば良いと気楽に構える六道女史だった。
「ちっ!!
所詮、人間共が作った人形。
我等が力を与えても、この程度か」
「人魔どころか、封印されたままで一人で倒すとは・・・
やはり、あの者は危険な存在。
この世界から追放などでは生ぬるい。
元は完全に断っておかなくては・・・」
トラブルの原因であり、経緯の全てを上空で見ていた神族と魔族。
計画は失敗という結果に魔族は舌打ちし、神族は横島の存在に懸念を示す。
「だが、少々腑に落ちないことがある」
「なんだ?」
元々、成功する可能性は高いとは言えない作戦。
失敗したところで問題はないのだが、それでも以前から疑問を持っていた魔族。
神族も構わないと先を勧める。
「何故、映像を切る必要があった?
もし人魔の封印を解いたならば、その姿と魔力に人間どもを怯えさせる事も出来たであろう?
態々、我等が別で記録する必要も・・・」
「それは簡単なこと。
小竜姫殿やワルキューレ達を警戒してのこと。
もし、映像に出すと我等の存在に気付かれていたかもしれん」
「そうか・・・
特に小竜姫には注意しなければならんからな。
横島忠夫に仇成す者・・・我等を斬り捨てる許可を最高指導者から与えられている」
自分達が最高指導者の直接命令である『横島忠夫に手出しを禁ずる』に反する行動をとっているのは自覚している。
逆に彼等にとっては、何故彼を野放しにしている方が不思議であり苛立っていた。
「この場は安全なのだろうな?
下には情報専門のヒャクメがいるのだろう?」
「安心しろ。
彼女は自分の能力を過信し、何事も霊視で判断してしまう愚か者だ。
少しピントをずらせば、見つからん」
魔族の懸念にも、神族が余裕で大丈夫だと太鼓判を押す。
魔神大戦の折、アシュタロスがオカルトGメンの秘密基地に侵入した時のヒャクメの不始末。
その経緯も魔族も聞いており、嘲笑いながら頷く。
「そうか。
だが、この場での用事は済んだ。
さっさと帰還するぞ」
「ああ」
それでも計画は失敗と結果が出たのだ。
これ以上、留まっても意味はなく帰還することする。
彼等にとっては成功率に低い作戦であり、それほど重要性がなかった。
だが、今度は彼等が選択を間違った。
魔神大戦の後に考えさせられたのは横島だけではないのだ。
『ですが、それは叶わないことでしょう』
『我等も甘く見られたものだな』
「「っ!?」」
聞き覚えがあり、最も警戒する者達の声が聞こえた神族と魔族。
咄嗟に動こうとするが、それぞれ背後から押さえられてしまう。
神族は小竜姫の神剣が首元に、魔族の後頭部にワルキューレの銃が当てられて。
「な、何故、我等の存在に気付いた!?」
「あなた方が侮っていたヒャクメのお陰です。
彼女も反省を踏まえ、あらゆる視点・角度から見るようになりました。
精神的に成長を果たしたヒャクメには、見逃すという事はありませんよ」
美神達も思う所はあったが、何よりも悲痛感に襲われたのは神族・魔族である小竜姫達。
人界では魔族たちが関わらなければ手を貸せないと言っていたが、アシュタロスが動いた時には何の役にも立たなかった。
ヒャクメは途中まで美神達と共にいた為、自分を責める気持ちも強かった。
その無念さをバネにし、一つの成長を遂げたのだった。
「な、何故・・・?
あなた達は、そこまでして横島忠夫を護る!?
人魔など汚れた存在を!!」
「そうだ!!
ヤツは魔族と人間のハーフという存在ではなく、まさに融合を果たした人魔!!
その危険性は理解しているはずだ!!」
「・・・一つ言っておきます。
彼が人魔となった経緯は、我等の不甲斐なさの結果です。
本来ならば我等が対処しなくてはならない事件で不覚を取り、最後まで人間達・・・忠夫さん達に任せることしか出来なかった。
感謝ことすれ、我等には多大な借りがあの人にあるのですよ?」
「それとこれとは話が別だ!!
それこそ後始末として、我等の手で横島忠夫をっ!!」
「愚かな・・・
ここまでくると逆に哀れだな」
追いつめられた神族が小竜姫達が理解できないと叫び、魔族も賛同する。
その言葉にピクリと眉を寄せる小竜姫だったが、一呼吸して正論を展開するが話は通じない。
唯一彼の疑念を正当化するならば横島がその力を暴走させるかだが、それこそ可能性はゼロだと言えるだろう。
ワルキューレも怒りを通り越し、あまりにも横島を理解しておらずそのような考えしか出来ない彼等を憐れむ。
「横島忠夫は世界の敵であり、排除することは必然!!
人魔など穢れた存在など、一片の慈悲もなく正義の鉄槌を!!
今からでも遅くない!!
アナタも協力してくだ・・・」
「黙れ」
「「っ!?」」
「小竜姫!!」
なおも自分が正しく、横島を認めない神族。
その内容と、何を思ったのか小竜姫にも協力を・・・という言葉は、彼女の『逆鱗』に触れるには充分だった。
冷たいながらも怒りが篭った小竜姫の声と威圧感が神族と魔族を襲い、ワルキューレも焦る。
「あっ・・・」
「グッ・・・」
しかし小竜姫は神剣を振るいこそすれ、二人を気絶させる程度で済ませた。
地上へ落下するのを彼女が担ぎ事なきを得た。
一瞬で斬り捨てる展開を予想していたワルキューレだったが、この結果に逆に戸惑う。
「し、小竜姫?」
「・・・大丈夫ですよ、ワルキューレ。
彼等は大事な情報源です。
話によると、更なる企みを計画中とのこと。
今はそちらを優先します」
「そ、そうか・・・」
ある意味、軍人である自分を超える逆鱗状態の冷徹な小竜姫。
これにはワルキューレも口元が引き攣る。
「申し訳ありませんが、私は先にこの者達を連れて妙神山へ戻ります。
ワルキューレは一言、皆さんに言っておいて下さい。
あっ、詳しくは内緒ですよ?
忠夫さんの帰省に、このような影を落とすことはありません。
六道女史と美神さん、エヴァさんと忠夫さんだけに」
「わ、分かった」
今の小竜姫は怒りを抑えられず、雰囲気が増している。
表面的に覆う事は出来ても、横島に気付きいらぬ心配をかけてしまう。
そのことがすぐに予想できた小竜姫は雰囲気から若干鋭さが消え、
苦笑の中に想いを込めた視線を彼がいるであろう下へ視線を向ける。
「すぐに私もジーク、ベスパ、ヒャクメも連れて妙神山へ戻ろう。
情報をはかせた後、すぐに攻め込むだろうからな」
「お願いします」
ワルキューレの言葉を聞いた後、小竜姫は二人を連れてこの場を後にする。
そして残った彼女も下降し、横島達の元へ戻る。
「(戦士・横島の最初で最後の帰省。
これ以上、無粋な輩に邪魔などさせるものか!
覚悟しろ!!)」
内心で怒りの声を上げるワルキューレ。
彼女も愚か者達に、怒りを感じていた・・・
戻ってきたワルキューレは上層部から帰還命令が出たと説明し、ジークたちを連れて妙神山へ去っていく。
横島・エヴァ・美神・六道女史には本当の理由を説明し、警戒して置くようにと忠告を残して。
その後・・・
阿修羅像を倒したところを見ていたと思ってた横島だが、トラブルにより誰も見ていないと知り落ち込む。
『ワイは所詮こんな扱いや〜』とぼやくが、雪之丞のみならず他の者達から試合を申し込まれた。
当然拒否するが、周りからの希望により流れ的に従わされた。
かなり盛り上がったのは言うまでもないが、一番の盛り上がりを見せたのは刹那とシロの試合。
異世界での氣を使う剣術・京都神鳴流を目のあたりにし、各自を大いに驚かせ感心させていた。
六道女史でさえ・・・
『GS試験なら〜、霊力の測定だから〜一次試験は落ちるけど〜
二次試験の〜試合なら〜優勝は無理だろうけど〜資格は取れるわね〜』
と高評価を残した。
ちなみに、それぞれの手合わせもちゃっかり録画していた。
他ではルシオラが弓に15年前の事を謝罪し、逆に弓からも横島のことで謝罪したりと。
そして、当初は横島が魔神大戦を語る予定だったが・・・
『自分の不幸自慢をする気はねーよ』
と断り、令子が語った。
ここでようやく知りえたかおりと魔理・ひのめは衝撃を受け、横島の重さを理解した。
その後、日が暮れるまでそれぞれ過ごした。
そんな中、令子が休憩しつつネギ達と談笑している横島へ近づく。
右手には『ある物』を持って・・・
「横島君。
ちょっといいかしら」
「うっす。
場所を変えますか?」
「別に良いわ。
すぐ済むし、ネギ君達がいても問題ないしね。
はい、これ」
「へっ?
・・・ええっ!?
み、美神さん!?」
ネギ達には聞かれたくない話・・・妙神山に戻った小竜姫達の事かと考えたが、令子は持っていたものを彼へ投げ渡す。
咄嗟にポイっと投げられた物を両手の掌に乗せた横島だったが、その物に彼のみならず驚く。
「今回の報酬よ。
今までは時給だったけど、今回は特別に仕事の報酬として渡すわ。
最初に言ったけど、それは仕事全体の報酬の一厘よ。
アンタも一週間しか過ごさないといっても、これくらいは入用でしょ?」
「・・・」
それは一万円札の札束、百万円。
令子が語る大口の依頼の六件、六道女史からの依頼、そして迷惑料であるその合計である七割の上乗せ。
さらに、今回での不始末による三割の要求。
それでも一厘としては少々多めだろうが、仕事の内容としてはかなり少ない。
それでも、思わぬ報酬を渡された横島はというと・・・
「み、美神さんが俺に大金を!?
天変地異の前触れやー!!」
「言うにことかいて、そんな言葉かー!!」
「ギャフン!!」
令子が自分にこれほどの大金を渡すなどと信じられず、逆に恐れを抱き張り倒される横島。
その時に飛んだ札束は明日菜がキャッチするが、普通の中学生の感性を持つ彼女にとって初めて持つ大金。
恐れ多く手が震えながら咄嗟にネギに投げ渡すが、職持ち(?)とはいえさらにのどかに渡す。
それがまた刹那に渡され、即興のキャッチボールのような展開になってしまう。
令子とは言うと自分がどう思われているかと知り、エヴァに一言残してからぷりぷり怒りながら離れていく。
しかし横島の言葉は、彼女をよく知る者達にとっては当然の反応だろう。
「全く・・・
その歳になっても素直じゃないんだから」
「お姉ちゃん・・・」
そのやり取りを見ていた美智恵は苦笑し、ひのめは姉の新しい一面を見て少々驚いていた。
「これは・・・」
「そうなのよ〜
どう思う〜?」
そんな中、後始末と捜査を兼ねて塔の中に入った六道女史と正樹。
白虎と黒豹は回収済みであり、異質な力の残滓があったと報告を受けていた。
最後の阿修羅像だったが、最高の霊的処理を施した壁を溶かすほどの炎の余熱が部屋を熱している。
システムが復旧するまで閉じ込められていた横島だが、扉越しずっと喚くほど元気があった事を知らせておこう。
それも冷却処理した後、作業員と共に入った二人を驚かせたものがあった。
「ほ、他に傷という傷がないということは・・・」
「ええ〜
この傷跡を見ると〜、霊波刀の一撃ね〜」
横島が言っていた通り、壁や床などに溶けた痕跡があった。
それよりも目を惹いたのは、壁にもたれる様に倒れている阿修羅像。
その胸元の中央部に霊波刀で貫いた傷跡があった。
だが、二人は他に傷がないという意味に驚愕していた。
「美神はん達から気を逸らす為に、何度かサイキック・ソーサーを使うとったけど・・・
威嚇用なのか、傷一つも付いていまへんでした」
「そうね〜
だったら〜、彼は〜急所を一突きで〜倒したのよ〜」
「正直言って信じられへんのやけど、目の当たりにすると信じないわけにはいかへんな・・・」
阿修羅像のスペックの高さは彼も知っており、さらに横槍からさらに力を上げられた。
横島もカメラが回っていると思い、文珠を使っていなかった。
そんな中でも的確に急所を判断し、霊波刀で貫く洞察力と霊力の強さ。
正樹は改めて、横島が自分達が考えていた以上だと思い知らされた。
「でも〜
オチが付いて〜、良い所は見れないというのが〜彼らしいわね〜」
「ホンマです」
それでも横島らしいオチに二人は笑う。
それは彼を恐れずに、受け入れているという何よりの証拠。
「さて〜、
それじゃ〜、戻りましょうか〜
私も〜平行世界の話が聞きたいわ〜」
「はい」
後は処理班に任せ、六道女史と正樹は塔を降りていく。
外では様々な盛り上がりを見せ、騒がしくも賑やかな時間が流れていった・・・
「この度は、本当に申し訳ありませんでした」
「顔を上げてください、小竜姫さん。
悪いのはアナタではなく、企んだ者達なんですから」
一同は夕方には解散し、横島達は寝泊りしているホテルに戻る。
着いた頃にはすでに日が暮れて夜になり、横島夫妻もすでに戻っていた。
横島達が到着してから少し時間が経過した後、妙神山から小竜姫も帰還してきた。
明日菜達には伏せておくので、彼等にはホテルを散歩をしてもらった。
部屋に残っているのは横島・エヴァ・ルシオラ・横島夫妻、そして小竜姫のみ。
まず最初に、横島親子に頭を下げ謝罪する小竜姫から始まった。
「それよりも・・・
その過激派とやらはどうなったのですか?
忠夫は、今後どのような?」
「もしかしたら、今すぐにでも平行世界とやらに?」
横島夫妻は当然小竜姫を責めたりせず、息子の身を案ずる。
横島も自分が狙われているのは承知のうえだったので、自分よりも両親やネギ達を案じている。
その心配は、次の小竜姫の言葉で安堵することとなる。
「ご安心ください。
あの者達は最高指導者様方が直接情報を吐かせ、拠点を占拠し捕らえることが出来ました。
もう、大丈夫です」
「そうですか・・・」
小竜姫の太鼓判にホッとする夫妻。
そこへ、紅茶を一口啜ったエヴァが口を開く。
「ほう・・・
最高指導者が直接動いたのか?」
「はい。
忠夫さんの帰省には余計なトラブルを起こさないように細心の注意を払っていたのに、この失態。
自分達の直接命令を聞かず、忠夫さんを狙う輩を今度こそ根絶しようと気合を入れていました。
しかも、老師も参戦してましたね」
「そ、そうか・・・
それは凄まじい事になっただろうな」
「一応、黙秘させていただきますね」
最高指導者が気合を入れての行動、そして上級をも超える猿神の参加。
それはもうかなり『頑張った』のだろうと、冷や汗を流すエヴァ。
小竜姫も敢えて語らず、表情を改める。
「強いて幸運だったといえば、一網打尽にすることが出来たことです。
あの者達は忠夫さんに横槍を入れた後、過激派の拠点に集まる予定だったようで・・・
確認できている者達から、そんな素振りを見せていなかった者達までいました」
「小竜姫。
それは、本当に過激派だけの集まりだったのか?
話に聞く限り、どちらかというと・・・」
「まさか・・・」
小竜姫の言葉に引っ掛かるものを感じたエヴァ。
別の可能性に思い至った百合子が言葉をなくす中、小竜姫は若干時間を空けてから続ける。
「はい・・・
過激派の残党は一割にも満たず、ほとんどの者達は忠夫さんを排除しようとして集まったようです」
元々の過激派は15年前の一件でほとんど処分され、証拠不十分である者達も事前に釘を刺していた。
だからこそ安堵していたのだが、実際には横島をよく思わない神族・魔族は想定以上に多かったのだ。
無論、種族全体にしては微々たる程度であり、ほとんどが下級、中級が少々といったところ。
上級は一人もいなかった。
だからこそ、上級クラスを含んだ軍隊や猿神を引きつれた最高指導者達には手も足も出ず一網打尽にされた。
「様子見の段階で捕らえられたのが幸いでした。
計画の目的は、忠夫さんの排除を正当化すること。
人界で封印を解かせ、人魔となった忠夫さんを人間達に見せ、彼等の意思として『断罪』するといったモノでした。
計画には横槍は当然として、人界などと気にもせず実力行使や、挙句にはエヴァさん達を人質に取るといったモノまで・・・」
「・・・本当に呆れるな。
魔族はともかく、神族とは笑わせる」
「さらに言わせて貰えば、もし成功し人魔の封印を解かせたとしましょう。
ですが、自分達には力が及ばないので、正式な軍隊に任せるつもりだったようです」
「・・・もはや、呆れを通り越すな」
すでに追い込まれていた彼等の計画は、人魔の横島の危険性を全世界に広めるといったモノでしかなかった。
計画が順調に行っても、直接な手を下すのは自分達には上級以上がいないので軍隊任せである。
だからこそ、囚われた時に小竜姫を誘ったのだ。
逆鱗に触れるとは知らずに・・・
「小竜姫さん。
でしたら、忠夫は平行世界に戻った方がいいんじゃ・・・」
小竜姫の口から語られる百合子は、厳しい表情で考えを口にする。
自分達も決して息子や義娘達と別れたいのではなく、危険性を考えてのこと。
少なくとも、ネギ達の世界では神族たちのような強大な者達から狙われていることはないのだから。
「大丈夫です。
先程も言いましたが、最高指導者様方がさらに念を入れて見張っています。
もはや徒党を組んでの行動は不可能であり、個人ではあまりにもリスクが高すぎます。
それに実力行使に出る者達はあらかた捕らえましたので、後は忠夫さんをよく思わずとも静観しているでしょう。
無論、私も今まで以上に注意しますので安心してください」
「そうですか・・・
よろしくお願いします」
「はい、任せてください」
だが、小竜姫の太鼓判に胸を撫で下ろす夫妻。
横島とルシオラは頭を下げ、エヴァはようやく飲み物に手を伸ばす。
この話は一段落したことで全員気が緩み、普段と同じ雰囲気になる。
「忠夫、今後の予定はどうなってるんだ?」
「明日と明後日は改めて挨拶回りだな。
明日は世話になった所・・・神父や六道、一応学校にも顔を見せに行くつもりだよ。
明後日は雪之丞達といったところだな」
昨日・今日会っているとはいえ、一日では周るには時間が足りない。
だからこそ、余裕を持って二日に分けたのだ。
「それと、こっちに来てからエヴァちゃん達に付き合わせてばかりだからな。
明々後日は皆で何処か遊びに行って、次の日は自由行動と考えている」
仕方ないとはいえ、こちらの都合ばかりにエヴァ達に付き合せていたのに気が引けていた横島。
だからこそ、残りの二日は彼女達の時間にしてあげたったのだ。
「忠夫さん。
皆さんで遊びに行くと仰いましたが、何処に行くかもう決まっているのですか?」
そこで疑問を口にしたのは小竜姫。
意外な人物からの問い掛けに、横島は少々目を丸くするが隠すようなことではないので正直に話す。
「特に考えてないっすねー
候補はデジャブーランドとか・・・
他に行きたい場所はありますか?」
あそこならば学生である明日菜達も楽しめるだろうし、
ちょっとした霊的技術も使われていると令子から聞いていたのでエヴァも大丈夫だろう。
要望があれば変更するつもりだったが、小竜姫はさらに意外に表情を明るくさせた。
「いえ!!
むしろ、願ったり叶ったりです!!」
「は?
ど、どういうことっすか?」
「実は・・・」
その後、夫妻も交え予定を決めていく6人。
ネギ達が様子見に来るまで、話し合いは続いた・・・
横島が自分の世界に戻ってきて三日目。
朝食を済ませた後、ホテルのロビーで集合と決めて着替えや準備の為に一度別れた。
横島は母・百合子から呼び出され、ネギに先に準備していてくれと伝え両親と共に連れて行かれた。
そしてエヴァ達はロビーに集合するが、横島親子は少し遅れて到着した。
だが、彼女達が目を惹いたのは横島の服装だった。
『わー!!』
「お、オフクロ・・・
やっぱり年齢的に考えてさ、これはキツイんじゃ・・・」
「何言ってんだい?
見た目はあの頃と変わらないし、学校に行くなら制服を着るのは当然よ」
そう・・・
横島が来ていたのは学生服、いわゆる学ランだった。
百合子は美智恵から息子の荷物一式を預かっており、当然学生服も含まれている。
それを持参しており、ゴネる息子を理屈・屁理屈&威圧で着せたのだ。
「いつもの一張羅やスーツしか見てないけど、こうしてみると高校生くらいにしか見えないわねー」
「ですが、なにか親密感を感じますね」
「うん」
高校時代に人魔となり、成長が止まった横島。
しっかりと手入れされていたのだろう、破損もない学ランを着た横島の姿に新鮮さこそあるものの違和感はなかった。
明日菜は正直な感想を述べ、夕映とアキラも賛同する。
横島の周りを囲んで騒ぐ明日菜達、ルシオラや小竜姫は懐かしさに目を細める。
中には、小竜姫を除くと自分が一番年上のように感じて若干ヘコむネカネ。
そんなやり取りがしばし続き、大樹がパンパンと手を叩く。
「それじゃ、今日も別行動だね。
お義父さん、頑張ってくるからな!!
明々後日、楽しみにしていてくれ!!」
「は、はあ・・・」
「なんやよーわからんけど、頑張ってなー♪」
「おう!!」
大樹の気迫と言葉に、刹那は意味が分からず首を傾げ、木乃香はマイペースに声援を送る。
それに気を良くした大樹は、百合子を伴って先にホテルを後にする。
『明々後日』という言葉に首を傾げる明日菜達、そして意味を理解しているエヴァ達は苦笑する。
だが、横島がゴネて時間が経っており押しているのも確か。
横島はようやく立ち直り(開き直り?)、場を仕切りなおす。
「えっと・・・
確か、エヴァちゃん達は美神さんに呼ばれているんだったよな?」
「ああ。
なにやら、話があるらしい」
「えっ?
どういうこと?」
横島の確認に頷くエヴァだが、何も知らない明日菜達は困惑顔。
当然の反応をする彼等に、横島も説明する。
「昨日、美神さんがエヴァちゃんに言伝を預けていてな。
エヴァちゃん・茶々丸ちゃん・ネカネちゃん・木乃香ちゃん・刹那ちゃん・夕映ちゃん・アキラちゃん・・・
この7人に事務所に来てくれってな」
『ええーっ!?』
ネギ達の世界での横島メンバーへの令子からの呼び出し。
これには、当の本人達は驚きの声を上げる。
当然ロビーにいるため人が多く、視線を集めてしまい慌ててペコペコ謝る彼女達。
コホンと咳払いして、横島は説明を続ける。
「その他の俺やアスナちゃん達は、近くにあるオカルトGメンの本部で時間を潰すつもりだ。
西条にも連絡済で、見学でもしていればいいと許可をもらってるし。
ルシオラは俺と行くが、小竜姫様はエヴァちゃん達に同行するから。
15年前とは逆に若返っているルシオラはともかく、小竜姫様は顔が広いからな。
もし知っているヤツがいたら、騒ぎになるし」
『へー』
霊力というのはネギ達にとっては未知のモノである。
昨日に令子達の戦いや、数々のガチンコバトルで他の能力も見たが興味があるのは当然のこと。
「あ、あの・・・
それは、私達も参加出来ないのですか?」
令子に呼ばれているが、知識欲と好奇心は人一倍にある夕映。
出来れば自分も見学したいという願望が抑えきれず、横島に問いかける。
その上目遣いにして『お願い』の気持ちが込められた視線に、彼女の願いを予測していた彼でさえかなり萌えた。
「し、心配しなくても大丈夫だよ、夕映ちゃん。
美神さんの話が終わるまで部屋を借りて待たせてもらうだけで、見学自体は皆でしようと思って待つから。
言伝を聞いたエヴァちゃん曰く、俺達は席を外してほしいらしいからな」
「そ、そうですか・・・
安心したです」
横島の気遣いに、ようやく安堵する夕映。
彼女の要望は木乃香達にとっても同じ気持ちだったので、エヴァは『当然だな』と呟いているが同じく安堵する。
「おっと・・・
本当に時間が押してきたな。
これ以上、美神さんを待たせると折檻されかねん。
移動しようか?」
『はーい!』
少々・・・いや、かなり怖い想像に身震いした横島がエヴァ達を誘導する。
ある意味超VIPな横島達に、
外には移動役として散々待たされた西条自身がタバコを吹かせながら多少待ち疲れながら待機していた。
「それじゃ、また後でな」
「ああ。
長丁場になるやもしれんが、きちんと待っておけよ」
ようやく事務所前に到着した横島達。
ここで令子に呼ばれたエヴァ達と、オカルトGメンに向かう横島達と別れることとなる。
「分かってるって。
木乃香ちゃん達も、美神さんに何か言われたら俺にちゃんと言えよ?
美神さん相手にどこまで出来るかは分からんけど、楯程度にはなれるからな」
「あはは。
横島さんらしいな〜
・・・うん、大丈夫や!」
横島に想いを寄せる自分達のみが呼ばれた意味に、緊張していた木乃香達だったが彼の無意識の行動に肩の力が抜ける。
エヴァは事務所の窓を下から挑戦的な視線を向け、不敵に笑っている。
「・・・それでは行くか」
『はい!!』
エヴァが先頭に立ち、木乃香を引き連れるように事務所の中に入っていく。
最後に小竜姫が苦笑し、横島に『また後で』と伝え入っていく。
「さて・・・
僕達も行こうか?」
「へいへい」
「僕、とっても楽しみです!!」
こちらは先にオカルトGメンに向かう横島・ルシオラ・横島の頭に乗っているチャチャゼロ・ネギ・カモ・明日菜・のどか。
西条が催促するが、横島は気のない返事を返すのみ。
だが、ネギの威勢の良い声に気をよくする。
「ハッハッハ・・・
ネギ君は素直で良い子だ。
どこぞのお兄さんとはえらい違いだ」
「喧嘩売ってんのか、西条?」
「身に覚えがあるからそう聞こえるんだよ、横島君。
だが、君からの喧嘩なら断るわけには行かないね。
どうしようかな・・・」
「物騒なこと言ってないで、案内してちょうだい。
いつまでもこの場にいると、美神さんが顔を出して怒られるわよ」
「そ、そうだね。
僕としたことが大人気なかった。
さあ、行こう!」
ネギを褒めつつも遠まわしに横島を貶し、彼もその意味に気付きバチバチと火花が散る。
そんな二人のやり取りに溜息を零しつつルシオラが諭し、こちらもようやく移動する。
「(頑張ってね、皆。
美神さんはもちろん、おキヌちゃん達もかなり強敵だから)」
そのルシオラも、一度だけ事務所に目をやりエヴァ達に声援を送ってから場を後にする。
「いらっしゃいませ、皆さん。
お待ちしていました」
「待たせたな」
事務所の扉をエヴァがノックし、柔らかく出迎えたキヌの案内で一同は中に入る。
中には円形のテーブルの椅子に座っている令子、そして彼女の左右を囲むかのようにシロとタマモもいる。
「皆さんもどうぞ。
飲み物を持ってきますね」
「お、お構いなく・・・」
キヌの誘導に、各自席に着くエヴァ達。
シロの隣には小竜姫、タマモの隣には飲み物を配り終えたキヌ。
令子の対面側にエヴァが向かい合うように座り、木乃香達も彼女の周りに席に着く。
「まずは一言謝っておくわ。
悪かったわね、時間を作ってもらって」
「気にするな。
私も同じ事を考えていたからな」
令子の謝罪をエヴァは軽く受け止め、キヌが用意した紅茶を啜る。
「初日も飲んだが、美味いな。
褒めてやるぞ、キヌ」
「ありがとうございます、エヴァさん」
「当たり前よ。
おキヌちゃんの淹れてくれたモノに文句は言わせないわ」
大仰な言葉だがエヴァの褒め言葉にキヌは嬉しそうに礼を述べ、若干物騒な台詞を出す令子。
一同も紅茶を飲み、多少リラックスしたところで令子が口を開く。
「最初に聞くけど、昨日の私達の戦いはどうだったかしら?」
「と、とても、素晴らしかったです!
式神たちを一瞬で操るおキヌさんのネクロマンサーの笛。
そしてシロさんとタマモさん、美神さんと忠夫さんのコンビネーション!
私達が目指す場所への指針となりました!」
「そう?
ありがとうね、刹那ちゃん」
令子からの問いに、若干興奮気に語る刹那。
戦闘者であるがゆえ、その凄さを肌で感じていた。
それ以上であるエヴァ、本当の戦いを経験していない木乃香達も充分経験になった。
素直で真っ直ぐな褒め言葉に柔らかく微笑む令子だったが、すぐに表情を改める。
「ねえ、エヴァンジェリン。
昨日の『一件』、彼女たちに話してあるの?」
「いや。
小竜姫からは一先ず黙っているように言われたからな。
こればかりは、茶々丸でさえ伝えていない」
令子からの確認に、エヴァは小竜姫に視線を向ける。
その意味を察した彼女が一つ頷いた事で、令子は話を続ける。
「塔でのトラブルだったとき、裏ではかなりの事が起こっていたわ」
「まさか・・・」
『裏』という言葉に、その意味を察したネカネの表情が強張り若干顔色を悪くなる。
「そのまさかよ。
横島君を邪魔者扱い、人魔の危険性を叫ぶ神族・魔族達が横槍を入れてきたの。
白虎や黒豹、阿修羅像のスペックの増加に暴走。
映像を途切れさせたり、システムを弄くったりしたのも・・・ね」
『っ!?』
今更ながら裏での暗躍を聞かされ、言葉をなくすネカネ達。
さらに令子の言葉に感銘を受けたとはいえ、何も動かなかった自分達に怒りさえ覚えていた。
キヌ達は、令子からすでに聞かされていたのでこの場では取り乱したりはしない。
「で、でしたら、今後も・・・」
「いえ、大丈夫です。
この件は最高指導者様方がさらに力をいれ、念には念を入れています。
これ以上無理して動いては、滅ぼされるのは自分達と否が応にも理解しているはずですから」
「反省はあるだろうけど、それは引き止めた私にも責任があるからそんなに責めないでね。
それよりも、私が言いたいことは・・・」
令子は平行世界の住民達、安堵する一人一人に視線を向ける。
それは決して、良いものではなく厳しいものだった。
「横島君はこの世界じゃ、理不尽に常に狙われる立場なの。
確かに、アンタ達の世界に行った方が安全かもしれない。
でも、そっちの世界じゃ霊力自身はなく魔法使いとやらじゃ並以下。
それなのに、ややこしいヤツラには目を付けられているんでしょ?」
令子が語る『ややこしいヤツラ』というのは、関東魔法協会会長・近衛近右衛門。
そして、唯一霊力を知られているフェイトのこと。
「私としては平行世界に逃げ込むよりも、過激派がほとんど一掃された今なら、この世界にいるほうが安全だと判断するわ。
だから、横島君に向こう側を選ばせたアナタ達に頼みがあるの。
皆から説得してくれないかしら?
彼にこの世界に残るように」
『っ!?』
「君達はどうするのかしら?
もし、横島君がこの世界に残るようだったら・・・
共に残る?
それとも家族や友人達を選んで、横島君抜きで元の世界に戻る?」
令子の言葉は、木乃香達にとって衝撃以外の何者ではなかった。
横島が自分達の世界に残ると聞かされたとき、彼女達の心には正直に言うと安堵感があった。
彼に想いを告げ、受け入れられた。
だが、自分達が世界・・・家族や友人達を捨ててまで、今すぐに横島に付いて行けるかと訊かれれば言葉が詰る。
彼女達もいつか横島達の命を分けてもらい、永遠に彼等と共にすることを目指している。
その間、家族や友人達との死という別れはもちろんある。
だが、それは彼女達が寿命まで生き抜いてからの別れであり、その覚悟は出来ている・・・と思っている。
それが今、突然選択を迫られてしまい言葉が出ない。
それはまさにキヌも未だ悩んでいる部分であり、改めて横島の決意の重さを思い知らされた。
そんな木乃香達の葛藤を余所に、紅茶を飲み終えたエヴァは今度はこちらの番だと、茶々丸に紅茶を作らせようと指示を出す。
茶々丸も主の命令に頷き、台所を勝手に使うわけにはいかずキヌに案内してもらうと声を掛ける。
そんな二人の態度に、令子とキヌは怪訝な表情をする。
「ちょっと、エヴァンジェリン?
アンタ達は何か反応はないの?」
「ああ、ないな。
私は元の世界に未練などなく、横島がこちらの世界に戻るなら共に行くとすでに伝えてあるからな。
茶々丸は少々複雑だが、同じだろう」
「ああ、そういうこと・・・」
令子からの追求に、軽く決意と覚悟を語るエヴァ。
茶々丸は主であるエヴァが共にするなら問題はなく、ペコリと一礼するのみ。
真祖の吸血鬼として、過去に何があったのか予測は出来る令子は一つ舌打ちをする。
だが、エヴァの話は続く。
「だがな。
私はこの件に関しては、横島の決意と覚悟を優先するぞ?
ヤツは並大抵・・・それこそ自分の安全など気にせず、他の要因があったからだろう。
我等を試す為とはいえ、少々無粋だな」
『試す?』
「ちょっ・・・!!」
最後の言葉に引っ掛かるものを感じ、首を傾げる木乃香達。
そして、さらに慌りの表情を浮かべる令子。
「ど、どういうことですか?」
「これは美神令子からの、私達への試練なのだろう。
忠夫を託す価値があるのかどうか・・・とな」
『ええーっ!?』
「もう・・・
バラすのは早すぎるわよ」
夕映達の困惑しつつの問いかけに、あっさりと全て話してしまうエヴァ。
これには令子も力が抜け、椅子へもたれる。
「全く・・・
全部台無しじゃない」
「試練の内容としては悪くはないが、木乃香達は経験は浅くまだまだ未熟。
想いの大きさ、ヤツの為ならば命をも賭ける覚悟はある。
だが・・・
その問いに時間を掛けられるなら、もう少し先でも良いだろう。
キヌが未だ迷っているようにな」
「・・・」
エヴァはキヌに視線を向けると、彼女は顔を逸らし俯く。
それでも一つ溜息を付き、顔を上げる。
だが、その表情は暗いモノだった。
「・・・やっぱり、バレてましたか?」
「丸分かりだな。
因みにだがな、私と小竜姫、ルシオラの3人は木乃香達に命を分け合い、共に生き続けることとなっている。
忠夫にはまだ伝えていないが、ヤツからも分け合ってもらうつもりだ」
「そう・・・
未だ悩んでいるおキヌちゃんの為を思ってこの質問をしたけど、確かに少し早かったかもね。
まっ、エヴァンジェリンと茶々丸ちゃんだけでも聞けただけで良しとしないとね」
元々今回の目的は、エヴァ達に横島を託す事が出来るか見極めの為。
キヌが横島に付いていくかどうか悩んでいるからこそ、同じ問いかけをしたのだ。
しかし最近まで『こちら側』に関わっていなかった中学生の木乃香達、戦いの心得はあるものの精神的には未熟な刹那。
ネカネにとっても村が襲われたという過去を持つが、麻帆良祭のようなものではなく『本物の戦場』などに立った事はない。
横島の為ならば命を賭けることは出来るが、その『先』はまだまだこれから。
現にキヌですら悩む難題を、彼女達に『答え』を出させようとするのは少々酷であろう。
「この難題は私が引き継ごう。
無論、私の評価は厳しいからな。
覚悟しろよ」
『あ、あはは・・・』
左右を見回し挑戦的に笑うエヴァに、今回は苦笑しつつも表情は強張っている。
それほどまでに、この難題は重く受け止めているのだろう。
「でしたら、神族達からの横槍というのも?」
「それは本当の事よ。
この世界のほうが安全かもしれないといった事もね。
でも、最後に選ぶのは横島君本人だし、彼はもう決断してるわ。
少なくとも、私はもう何も言わないわ」
もし、西条と結婚していなければ彼女も悩んでいたかもしれない。
だが、彼を愛して結婚し、子供も生まれた。
今の自分には何も語る資格などないと分かっていた。
「どう、おキヌちゃん?
中途半端になっちゃったけど、少しは参考になったかしら?」
「は、はい・・・
もちろんです」
「そう?
ちなみに、シロとタマモはどうするの?」
キヌの反応を見やりつつ、未だ黙っていた二人に声を掛ける。
最初に口を開いたのはタマモ。
「私はすでに決めてあるわ。
妖怪だから長寿だし、令美の人生くらいは見届けてから平行世界に行こうかと思ってる。
最高指導者なら、帰ってこれなくとも行くことは出来るみたいだし」
「拙者はおキヌ殿と一緒で未だ考え中でござる。
タマモに誘われているでござるが・・・」
妖怪であるからこそ、ある意味両方を取ったような選択をしたタマモ。
殺生石から生まれた彼女にとって家族と呼べるのは、それこそ令子達である。
だからこそ、令子の直接の血を引く令美の寿命まではこの世界に留まりたいと思っている。
もしひのめのように、かなり後にもう一人生まれたならその時にまた考えるとのこと。
シロはタマモからこの計画を聞かされ、誘われているのだが彼女は家族がいる。
だからこそ、今すぐに返事はしていない。
少なくとも50年・60年は先であろうから、タマモも納得している。
「そう・・・
もし、おキヌちゃん達がそっちに行ったら皆の事をよろしくね」
「ああ。
忠夫を選ぶほどの覚悟があるならば、仲良くやれるだろう。
歓迎してやる」
「あ、ありがとうございます」
令子はキヌが横島を選んだ場合の事を考えエヴァに一言頼み込み、彼女も大仰に頷く。
簡単に認めるつもりはなくとも、実際の自分には横島を引き止める権利さえないと思い知られた令子。
木乃香達も彼女達なりに横島を大切に思い、エヴァがいるならば心配することはないだろうと安心した。
さらに小竜姫にはこの15年の間にいかに横島を想っているか知っており、なによりルシオラもいる。
もう、横島は少なくとも自分の手を離れたと感じた令子。
「ちょっと待ってね」
一言断ってから席を立ち、デスクの引き出しを開け一枚の書類を取り出す。
再び椅子に座り、その書類をエヴァ達の前に差し出す。
「これは・・・」
「そう。
見たら分かるけど、15年前に横島君がバイトに入った時に書かせた契約書よ」
それは、横島が事務所にバイトに入った時に書かせた物。
元気はよく時給250円で雇えるのは良いが、長く持つとはあの時の彼女は思っていなかった。
だからこそ、念には念を入れて契約書を書かせたのだ。
結局・・・この契約書を楯にする機会はなく、横島は事務所に居続けた。
「その書類をあげるわ。
煮るなり焼くなり好きにしてちょうだい」
「・・・そうか。
確かに受け取った」
それは令子が持つ横島の所有権を譲り渡す儀式。
紙だけではなく、彼女の様々な想いが込められたモノ。
エヴァもこの場だけは、神妙な態度で書類を受け取る。
「横島君のこと、お願いね・・・」
「ああ。
任せておけ。
私達はヤツを手放さず、共に生き、そして幸せになる」
こうして・・・
美神令子から、横島を託されたエヴァ達。
彼女は、人生の一区切りを終えたのだ・・・・
どうも、siroです。
まず最初に、遅くなって申し訳ありません。
仕事などリアルな日々が忙しく、遅れに遅れてしまいました。
本当にスミマセンでした(ペコリ
さて・・・
今回は神族・魔族達からの襲撃と、美神が正式に横島を手放しエヴァ達に託しました。
本来の予定では襲撃はこの先もあったのですが、
シリアス続きで下手をしたらドロドロな展開になるかもしれませんので却下しました。
やはり、この帰省は基本的には明るくほのぼので済ませたいので・・・
美神からの『試練』で、エヴァと茶々丸以外には答えを先送りにしました。
ですが、キヌですら出せない難題を木乃香達があっさりと出すのもおかしいな・・・と考え、今回は宿題としました。
ホントにどうしましょうかねー、おキヌちゃん・・・(汗
美神が横島との契約書があるなどは独自設定なのでご了承ください。
彼女なら、抜け目なくそれくらいはしていそうなので(笑
