「横島!!
 こうして無事に再会したからには、勝負といこうぜ!!」

「お断りじゃー!!
 30代後半になったんだから落ち着けよ!!」

「へっ!!
 この伊達雪之丞!!
 誰よりも強くなる事をママへの誓いは一生忘れねー!!
 ライバルであるオマエとの戦いほど、胸が躍るものは無かった!
 諦めきれるか!!」

「・・・オマエ、まだママとか言ってんのか?」

「・・・いや、かおりと付き合っていた頃に言い方だけは変えられた。
 今のはオマエと再会できて、昔に戻ったような気がしたからつい・・・な。
 普段はオフクロと言ってるし、今は『弓雪之丞』だ」

「婿入りかよ・・・
 西条共々、尻に敷かれてそうだな」

「うるせー!!」

雪之丞も横島君に会えて、かなり舞い上がってるわね。
彼だけじゃなくて、この場にいる全員がそうなんだけどね。
人間、妖怪、神族、魔族・・・
その全てが彼との再会を心から望み、嬉しさを隠し切れなかった。
これも彼の人徳・・・と言ったところかしら?

「ふえーん!!
 ルシオラちゃーん!!
 会いたかったでちゅよー!!」

「姉さん、ゴメン!!
 私は・・・!!」

「もう・・・
 いつまで経っても子供なんだから、パピリオは・・・
 ベスパも気にしないでちょうだい。
 あの時は、お互いに大切な人の為に戦っただけ。
 ヨコシマが楯になったことは予想外だったけど、私は自分で選んだ行動よ」

「姉さん!!」

「ルシオラちゃーん!!」

「あらあら・・・」

ルシオラも姉妹と再会して大変そうね。
でも、特にベスパは気にしていたから素直に受け入れてあげなさい。

「アナタはもういいのかしら?」

「ええ。
 私達はもう満足したもの。
 今は彼等に譲ってあげるわ」

私の隣に座っている母さんに催促されるけど、少なくとも私は充分。
でも・・・

「それに横島君を加えて、久しぶりにおキヌちゃんも入ったフルメンバーが揃ったんだもの!
 明日は仕事をたくさん抑えてあるわ。
 稼げる時には稼いでおかないとね!」

「・・・全く、アナタというコは」(呆

「でも、今思えばかなり豪華なメンバーだね?
 オールスターって感じだよ」

母さんの呆れと諦めが混じった表情と溜息は気になったけど、輝彦さんの感想につい頷いてしまう。
今、事務所に居るのは所長である私、所員であるシロとタマモのみ。
おキヌちゃんはGS免許を取って、私が輝彦さんと結婚した後に氷室家に戻っていった。
横島君は言わずもがな。
もう二度と集まることはない、美神除霊事務所のフルメンバー。
15年前はそれが当たり前と思っていたのに・・・ね。
ちょっとした感傷に浸っていると、右側からクイクイっと服を引っ張られ止められた。

「お姉ちゃん・・・
 あの人が横島忠夫・・・さん?」

「ええ、そうよ。
 彼が行方不明になった時、アナタは産まれたばかりだから姿は覚えていないわよね。
 ちなみに、彼にアナタのオムツも替えてもらった事があるのよ」

「っ!!」(真っ赤

反対側に座っている私の娘を膝に抱いたひのめからの質問に答えつつ、少しイジワルな私の言葉に赤くなる。
ママや私と違って、ちょっと気が弱いから心配。
美神の娘は常に誇り高く、強気でなくてはいけないのよ!!

「でも、せっかくだからちゃんと自己紹介しましょうか?」

「ええっ!?
 ちょ、お姉ちゃん!!」

私の提案にガバッと顔を上げて、赤いまま腕をブンブン振って止めてとアピールするひのめ。
このコには、横島君の事をよく話していたから憧れのようなものを抱いていて仕方ないかもしれない。
娘もひのめのマネをして楽しんでいる。
で・も、止めるわけ無いじゃない(邪笑

「横島君ー!!
 ちょっとこっちに来てくれないかしらー!?」

『うーっす!!
 それじゃ後でな、雪之丞、ピート』

『はい』

『勝負、忘れんなよ!!』

一言断ってから、腰を上げる横島君。
でもすぐ隣に座ってる虎には声を掛けないわよね?
影が薄いから気付いていないとか?
それよりも、ひのめに注意しないと。

「ほら、彼が来るわよ。
 ロリに目覚めたらしいから、気をつけなさい。
 実際にしたら、私が引導を渡してあげるけど」

「その時は僕も参加させてほしいな」

「ええ、いいわよ」

「・・・うん、大丈夫。
 私もあの人がそんな風に思えないし、優しいお兄さんのように見えるから」

「お兄さん・・・ね。
 ないとは思うけど、横島君に惚れちゃだめよ?」

「はうっ!?」

見た目は高校生か二十歳前に見えるけど、実際には三十歳越えてるのよ?
それよりも、霊感で横島君の何かを感じ取ったのかしら?
どう言ったって、彼は内に入れた女の子は手を出さないから。
そう考えれば、彼に向こうの世界で永住を決意させたエヴァンジェリン達はよほど大切な存在なのね。
でも、今はまだ彼の所有権は私のを忘れるんじゃないわよ。
そう簡単に自分のモノを譲ってあげないんだから・・・ね。






『GS美神+ネギま!』

「人魔と歩む者達」
 第八話・英雄の帰還と別れ 3






魔鈴の経営するレストランで、横島は親友達から優しかったり手荒ったりする歓迎を受けていた。
抱きつかれたり、泣かれたり、背中を叩かれたり、グーパンチなど様々。
それでも横島は口では文句を言いつつも、嬉しそうだった。
ネギ達も一歩引いて、そんな彼等を見守った。

今はそれぞれ仲間内で会話しており、横島も雪之丞・ピート・・・影が薄いタイガーと話し込んでいた。
だが、美神に呼ばれ席を立つ。

「あっ・・・
 隊長、お久しぶりっす」

「ええ、そうね・・・
 こうして無事に再会できたこと、本当に嬉しく思うわ」

「うっす」

美神達のテーブルに横島が到着すると、まず目に付いた美神令子の母・美神美智恵に挨拶をする。
15年経ち、さすがに若いとは言えないが瞳の強さは決して衰えておらず雰囲気の深さが増していた。
その彼女が変わらない彼に柔らかく、そして何処か陰のある笑顔を向ける。
横島も気付いていたが周りがいるために敢えて何も言わずに視線を変え、この中で見知らぬ・・・
いや、彼の記憶にある赤ん坊の面影を残した少女を見やり驚愕する。

「すると・・・
 このコが・・・」

「ええ、あの赤ん坊だったひのめよ。
 その膝に抱いているのが私の娘、令美(れみ)よ」

「え、えっと・・・
 初めまして・・・と言うのも変ですが、美神ひのめです」

「みかみ、れみでーす!」

令子の紹介にひのめは緊張しつつ、彼女の娘・・・令美は元気いっぱいに挨拶する。

ひのめは姉と同様、髪を伸ばしている。
しかし姉のように勝気な雰囲気はなく、どちらかというとおキヌに近い雰囲気を持っている。
充分美少女だが、スタイルは母や姉に比べると少々不足しているのが難点といえば難点だろうか・・・

令子の娘である令美も、母によく似ている。
ハーピーに襲われ、時間跳躍で美智恵が預けに来た幼少の頃の令子と瓜二つである。

その二人の姿に横島はしばし呆然とするが、すぐに我に返り柔らかく微笑む。

「ひのめちゃん、大きくなったなー!
 それに令美ちゃんも可愛いし、将来絶対に美女になるぞ。
 あっ、ひのめちゃんも充分可愛い!!
 俺が保障する!!」

「っ!!」

「もちろんよ。
 なんと言っても、私の妹と娘なんだから」

横島の下心など一切無い本心の言葉、さらに大人びていて包み込むような微笑みに益々赤くなり俯いてしまうひのめ。
令美は目の前の人物が自分達へ厚意に溢れていると感じ、横島に抱きつく。
西条はピクリと反応するが、美神母娘の視線で大人しくしている。

「ひのめちゃんは今はどうしてるんだい?
 念力発火能力のコントロールは出来てる?」

横島も椅子を一つ拝借し、令美を膝の上に乗せ美神一家のテーブルに混ざる。
まず最初に尋ねたのが、ひのめの現在の状況と念力発火能力のコントロール。
赤ん坊だった時の彼女が、初めて見せた時を思えば当然の事だろう。

「は、はい。
 六道女学院に通っていて、中学三年生です。
 コントロールはもう大丈夫です」

「美神の娘として、いつまでも自分の力すら扱えないようじゃダメだからね。
 10歳前からコントロールは完璧よ」

その問いにひのめは過去の暴走時代を思い出し赤面しつつ答え、令子も当然と言いつつも誇らしげに追記する。
横島は祖母、母と違って大人しい雰囲気を持っているように感じていたが、
やはりひのめも『美神』であり、才能があるなーとある意味棚上げした感情を持っていた。

「だったら、将来はやっぱGS志望かい?」

「その予定です。
 お母さんや姉さんのように・・・とまでは言えませんけど、頑張っていきたいです」

「ひのめ。
 こういう時は、私達を超えるって言わないとダメよ。
 自信を持ちなさい」

「お母さん・・・」

「ねっ?」

「うん!!」

将来は姉と同じようにGSを目指しているひのめ。
超一流の美神家の血を引き、周りには超一流のGS達の修行を受けており学園では常に学年トップ。
高校生のトップクラスでさえ、彼女に勝てるものは片手で足りるだろう。
それほどの力を持ちつつも、普段に性格は大人しめで自分に自信がもてない少女だった。
そのことに母・姉の二人は、変わってほしいと常に考えていた。

「令美も才能があるはずだけど、タイプは私や母さんと似たようなものね。
 今は適度に鍛えているわ」

「へぇー
 令美ちゃんもGSになりたいの?」

「うん!!
 ママみたいになるの!!」

「そっか・・・
 頑張れよ」

横島の問いに、令美は顔を上に向けて笑顔で頷く。
今は子供ながらの憧れだろうが、純粋に望んでいるのも確か。
横島はこれ以上何も言わず、彼女の頭を撫でる。
その光景をひのめ達はしばし見守るが、令子がパンパンと手を叩く。

「呼んだ用事は済んだわ。
 皆に飲み物でも注いで来なさい」

「うっす。
 ひのめちゃんも令美ちゃんもまた後で。
 隊長、失礼します」

「はい」

「はーい!」

「もう隊長どころか、一戦から引退した身よ。
 名前で呼んでちょうだい」

「分かりました。
 それじゃ、美智恵さんでいいですか?」

「ええ。
 行ってらっしゃい」

美智恵が横島からの自分の呼び名を訂正させてから、一同は席を外した彼を見送る。
すると、横島はすぐに周りに囲まれ騒ぎになる。

「彼がいると、本当に周りが明るくなるわね。
 令子もそう思う?」

「ええ。
 今なら分かるわ。
 初めはただの荷物持ちだったのに、私は何も教えなかったのに自分で成長しムードメーカーになっていった。
 私でさえメドゥーサや事件の中で彼がいなければ命を落としていた場面のあったし、無意識に頼っていた。
 ルシオラ曰く『本当に必要な時には、あっさりと不可能な事でも乗り越えるワイルドカード』って評価していたわ。
 本当に・・・そうね」

「令子・・・」

「お姉ちゃん・・・」

再び雪之丞に捕まり、タイガーが自分の存在をアピールするが暑苦しいと蹴り倒す横島の光景を、
令子は複雑な想いが込められた視線で見つめていた。
美智恵とひのめはそんな彼女にどう声を掛けて良いか分からず、西条も娘を抱きつつ複雑な気持ちを抱えていた。

「あら?
 ちょっと失礼」

そんな雰囲気をかき消すように、美智恵の携帯が鳴り出す。
着信を見やり、腰を上げ席をはずす。
外に出て行った美智恵だったが、それほど時間が経たずに戻ってきた。

「誰からだったの?」

「横島君のご両親からよ。
 予定じゃ明日だったのだけど、大急ぎで仕事を終わらせ日本に戻ってきたそうだわ。
 空港からこちらに向かっているから、駅に着いたらもう一度連絡を貰って迎えに行くことになったの」

横島の両親である父・大樹と母・百合子は、
息子の発見と元の世界ではなく平行世界を選び『一時的』の帰省に戻ってくると令子から連絡を受けた。
一週間先とはいえ仕事がかなり詰っており、初日は歓迎会があるということで二日目に日本へ来日する予定だった。
だが二人も親であり、どうしても我慢できず仕事を終わらせたようだ。

「分かったわ。
 今日丸一日のパーティの予定だったけど、早めに終わらせましょう」

「でも歓迎会の事は知っているから、外から一目見たらホテルに向かうそうよ。
 直接な再会は、予定通りに明日でいいそうよ」

「それはそれで悪いわよ。
 だったら、横島君には内緒で夕方に切り上げましょう。
 それで同じホテルの部屋を取って、彼等だけにしてあげましょう。
 エヴァンジェリンたちも会いたいでしょうしね」

「そうしよう。
 彼等も横島君との機会はこれで終わりというわけじゃない。
 残りの日数で各場所を周るのだから、納得するだろう」

両親の気遣いに、今は一人の親として心情が理解できる令子はそこまではと気が引けた。
そして彼女の提案に夫である西条も頷く。

「令美。
 ちょっと横島君の相手をしていてちょうだい。
 今の話は教えちゃダメよ?」

「はーい♪」

「良い返事♪
 私達はその内に皆に知らせるわよ」

令子の指示に全員が美神一家は頷く。
そして未だ騒がしい周りに目をやると、横島だけではなくネギ達も各自この世界の住民と談話を楽しんでいた。

「いいか、ピートよ!!
 同じ真祖の吸血鬼として、貴様の親父のアホさ加減を前々から許せなかったのだ!!」

「は、はあ、すみません・・・・」

「もっとも、吸血鬼と言うのはだな・・・!!」

「マア、大人シク聞イテヤッテクレ。
 御主人ハズット気ニシテイタカラナ」

「お義父さんにも、昔は操られて苦労したワケ。
 それは水に流すとしても、私の義父としてあのボケはないわ。
 シッカリ聞くワケね」

「エミさん・・・」(泣

エヴァはピートを通して、彼の父であるブラドーに文句を言われチャチャゼロに慰められていた。
ピートは妻であるエミでさえ黙って聞けといわれ、内心で涙を流す。

「横島さんはこういう味付けが好みですよ。
 例えば・・・」

「ふむふむ・・・」

この世界で横島へ料理を振舞っていたおキヌから彼の好みや味付け、工夫を熱心に聴いている木乃香。
さらにメモへ記録している所から、彼女の意気込みがよく分かる。

「ほほー
 刹那殿は太刀を使うのでござるか」

「はい。
 京都神鳴流と申します。
 シロさんは忠夫さんと同じく霊波刀を使うのですね?」

「そうでござる!
 武士たるもの、刀で堂々とでござる!!」

刹那は先ほどから追求が続いていたシロと、互いの戦術を話し合っていた。
腕試しがしたいという気持ちは双方持っていたが、今は彼の歓迎会のため話し合うだけに留めている。
これはこれで楽しんでいる二人だった。

「そうねー
 相手が年下なら自分がりードしないと・・・という、のどかちゃんの気持ちは分かるわ。
 でも、やっぱり神父さんが仰っていた通りに自分のペースで頑張れば良いと思うわよ」

「そ、そうでしょうか?」

「ええ。
 ネギ君はクラスの人気者で、焦るの仕方ないかもしれない。
 でも、あなたは彼のパートナーなのよ?
 絆を深めながら見守って、彼が進む道を誤りそうだったりしたら引き止めたらいいの」

「わ、私に出来るでしょうか?」

「もちろん!!
 好感度ランキングで一位だったんでしょう?
 あなたが出来なければ、誰も出来ないわ!!
 ああ、青春だわ!!」

のどかは彼の記憶を見たときに知った、机妖怪の愛子に恋の相談を持ちかけていた。
彼女も親身に接し、アドバイスしつつも思春期にありがちな青春に喜んでいた。

「なるほど・・・
 そちらの魔法は、精霊というモノを行使して魔法を使うのですね。
 そして、本契約に仮契約・・・
 その証であるパクティオーカードやアーティファクト・・・ですか」

「ええ。
 その具現化する力が僕達の魔力です」

「松明代わりの光程度から、それこそ地形を変えるほどの大呪文まであるです。
 アーティファクトは個人にあったアイテムが召喚されるです」

「正確に言えば、アーティファクトの機能が付いているのを『アーティファクトカード』と呼ぶがな。
 中には、仮契約の証であるカードのみという場合もある。
 おもにマスター側に魔力や氣が低い場合、そうなる時が多い。
 親分は例外といったところだな」

「魔法は武装解除や身体能力の強化などの補助的モノや、回復などまでと千差万別。
 この子はよく武装解除をくしゃみ一つで暴走させてしまい、周りの人たち服を脱がせた事もありましたけどね」

「そ、それは・・・
 悪意がなくとも、なんというか・・・」(汗

「あう・・・」

「今はもうないそうなので、安心です」

魔鈴は貸切を頼みに来た令子から横島の帰還と共に、平行世界には魔法が存在すると聞かされずっと楽しみにしていた。
今は本場であるネギ・カモ・ネカネの説明を受け、興味がある夕映も参加している。
ネカネの付け足しに魔鈴は横島に育てられた影響かと嘆き、ネギは縮こまり夕映がフォローする。
周りの人間達は歳を重ねそれなりに変化しているのに、全く変わらない魔鈴の姿に突っ込めずに・・・

「初めまして、ミス・マリア。
 忠夫さんからアナタの事を教えていただいてから、一度お目にかかりたいと思ってました。
 同じく無から生み出され、魂と感情を持つアナタに」

「こちら・こそ・初め・まして、ミス・茶々丸。
 私も・会えて・嬉しい・です」

「ほほー
 そなたが異世界のアンドロイド・・・いや、ガイノイドじゃったな。
 平行世界に存在する魔力を動力にし、さらに科学力によって作られた娘・・・か」

横島と最初に二人っきりになった時に聞いた、マリアに会いたいと常に思っていた茶々丸。
こうして念願が叶い、マリアと談話を楽しんでいた。
普段はボケ老人と化しているカオスも、科学者として興味を引かれていた。
だが『モノ』としてではなく、娘と自然と評する彼は茶々丸を一人の存在と認めていた。

「あの頃は貧ちゃんもまだ貧乏神で、貧しくて大変でした。
 それでも、だからこそ引越ししてきたアパートの隣に住んでいた横島さんと会う事が出来たんです。
 今の夫と結婚して幸せですが、あの頃の仮とはいえ横島さんと結婚式を開いた記憶は私の宝物です」

「小鳩さん・・・」

「小鳩・・・」

「貴女は後悔はしないように・・・ね」

アキラは、横島が住んでいたボロアパートの隣の部屋に住んでいた小鳩が語る昔の話を聞いていた。
令子と同様、遠い目をする小鳩にアキラと貧乏神は掛ける言葉がなかった。
そして横島が数多くの女性に想われつつも、彼女達の15年という時間を少しだが察する事が出来たアキラだった。

「アスナはネギのことが好きじゃないの?」

「ち、違うわよ!!
 わ、私はガキに興味は無くて、渋いオジサマが好きなの!!」

「そ、それはそれで、また偏った趣味ねー」(汗

「でも、そういうタマモ・・・さんは横島先生をどう思っているの!?」

「タマモで良いわよ。
 そうねぇ・・・
 出会いこそアレだったけど助けてくれたし、人間の頃から妖怪だからって敵愾心を持たなかったバカだし・・・
 まっ、おキヌちゃんと同じって言っておくわ」

「・・・え?」

明日菜はタマモからクラスメートから続くお決まりの質問をされ、必死に否定し自分の趣味を挙げる。
反対に意趣返しというわけではないが横島をどう思っているか訪ねると、
意外すぎる返答に挑戦的に笑うタマモの顔に視線を固定したまま固まってしまった。

「こうして、再び姉妹全員が揃う日が来るとはねー」

「あら?
 さっきまで、泣きながら抱きついてきたのは誰だったかしら?」

「あ、あれはっ!」

「ルシオラちゃんもベスパちゃんをいじめたらダメでちゅよ。
 でも・・・ルシオラちゃんが若返ったら、ベスパちゃんが一番年上に見えるでちゅねー」

「っ!?」

「ルシオラちゃんも胸は小さいままでちゅね。
 大人の時でも小さいから、成長する可能性は低いでちゅね」

「っ!?
 そ、そんなことはないわ!!
 今は成長期なんだから、元の姿まで成長した時には大きくなっているはずよ!!
 ええ、そうよ!!
 食生活にも気をつけるし、毎日牛乳を飲んでいるんだから!!」

「ね、姉さん・・・」

ルシオラは、今も姉妹であるベスパ・パピリオの三人で集まっていた。
当初はパピリオだけではなく、ベスパも泣きながらルシオラに抱きつき大変だったが、今は落ち着きを取り戻している。
そのことをルシオラにからかわれ、無意識にパピリオにトドメをさされたベスパ。
続く無邪気で残酷な言葉を放つパピリオに、何処か言い聞かせるように反論するルシオラ。
その言い分にそっと涙を拭ったベスパだった。

「もう許してほしいなのねー!」

「ダメです。
 アナタは毎回毎回オシオキしても懲りませんから、今回はお開きまでずっとそのままです」

「そ、そんなー」(泣

ヒャクメは自分のみならず、横島やネギ達の心を読もうとして小竜姫の仏罰を受けた。
何処から取り出したのか分からないがロープでグルグル巻きにされ、逆さまに釣られているヒャクメ。
人とは違い頭に血が上るという心配はないが、それでも哀れと感じるのは止めることは出来ない。
しかしその下でお茶を啜る小竜姫には、誰も声を掛けられず周りには誰も集まらなかった。


令美が言われたとおりに横島へじゃれ付いている間に、令子達はこの後の予定を伝え周る。
この歓迎会が予定よりも早く終わってしまうのは残念だったが、両親の気持ちは当然の事である。
横島達ともまだ機会はあるため、二つ返事で了承していった。
そんな中・・・

「美智恵さん、少しよろしいですか?」

「ええ。
 二人だけの方がいいのかしら?」

「出来ればお願いします」

「でしたら、奥の個室を使ってください。
 ご案内します」

「ありがとう」

伝えに来た美智恵を引き止めたのはネカネだった。
何か重い雰囲気を感じ取った美智恵、魔鈴も個室を提供しネギ達の視線を背中に感じながら席を外した。



案内された部屋は座席指定の一室だった。
それでも扉もあり、余程大声でなければ外に洩れる心配はないだろう。
外からの横島達の騒がしく賑やかな声が微かに聞こえる分、その静寂を強く感じられるであろう。
魔鈴も案内した後、飲み物を運んできてからは用事があれば呼んでくださいといって退室する。

「どうかしら、この世界は?
 アナタ達の世界ではオカルト・・・じゃないわね、魔法の存在は隠すべきモノとされているそうね?
 実際にオープンされている世界はいかがかしら?」

「そうですね・・・
 見た目は私達の世界とは変わりませんが、あの事件を見てやはり違うと実感しました。
 異質の力が表に出ている分、その手の犯罪に苦労していそうですね。
 魔法の存在をさらけ出そうとした者がいましたが、その管理は聡明な彼女でもそう簡単に行かないでしょう」

ネカネの本題の前に、息抜きとばかり美智恵から一つの質問を出す。
問われたネカネは正直な感想を語り、美智恵も頷く。

「そうね。
 だからこそ命を代価に商売するGSや、主に一般人を対応としたオカルトGメンがあるのよ。
 GS被れや霊的犯罪を取り締まるのも、私達・・・私はもう引退したわね。
 輝彦君達の仕事よ」

「私達、魔法使い達もその手の犯罪者や秘密を漏らす者達を強く取り締まっています」

「お互い、持つ力には苦労してそうね」

「全くです」

裏表の差はあるが、同じような組織の決まりに苦笑する二人。
そんな時、扉の外から横島達の叫び声が聞こえた。


『横島!!
 さっきの話だけどな、勝負する時は俺ん家に来てくれ!
 子供達に見せてやりてー!!
 かおりのヤツは、キヌの件や魔神大戦の本当の話を知らされていないからよく思っちゃいねーが気にすんな!!
 子供達も、強さに関しては俺の方を信頼しているからな!!
 良い勉強になるだろう!!』

『だから嫌といってるじゃねーか!!
 それにバトルジャンキーを量産してんじゃねー!!』

『あっ、それなら戦わなくても良いですから僕のところもお願いします。
 可愛いですよ、僕の子供』

『あっしもお願いしますじゃー
 魔理しゃんはかおりさん同様に横島さんをよく思ってないけど、何とか説得しますじゃー』

『何を『自分は幸せな家庭を持ってます』って自慢しとるんじゃー!!
 ワイなんて、ワイなんてなー!!』

『だったら、さっさと結婚して子供を産んでもらえば良いだろ?
 相手はたくさんいるんだからよ。
 そうだ!!
 いつか、俺達の子供で戦わせようぜ!!
 嬢ちゃん達も優秀そうだし、さぞかし強い子供が生まれるだろう!!』

『お断りじゃー!!
 それに、子供どころか結婚なんぞ出来るはずがないだろうがー!!』

『ん?
 お前が望むならいつでも産んでやるぞ?
 まっ、その前に結婚式が先だがな』

『え、エヴァちゃん!?
 君、子供産めるの!?』

『さて、どうだろうな?
 試してみるか?』

『よ、横島さん!!
 こんな小さな子を身篭らせる気ですか!?』

『違うんだ、おキヌちゃん!!
 エヴァちゃんの妖艶な笑みにドキドキしたけど、俺はまだ手を出してないー!!』

『まだってどういうことですか!?』

『横島君!!
 それは主もお許しにならないぞ!!
 今すぐ懺悔するべきだ!!』

『今のは言葉のアヤっすー!!
 神父も真に受けないで下さいー!!』

『アンタ達!!
 子供の令美やネギ君の前で、そんな話をするな!!』

『アウチッ!!
 な、何で俺だけ・・・』(泣


そんなやり取りの後、外は以前の少々騒がしい程度に収まる。
その会話を聞いていたネカネと美智恵は冷や汗を流している。

「ね、ネカネさん・・・
 エヴァンジェリンさんは子供を産めると言っていたけど、本当かしら?」

「さ、さあ・・・」

ネカネもよく分からないので言葉を濁し、二人の脳裏には妊娠したエヴァの姿が浮かんだ。

「「・・・」」(汗

物理的に不可能だろうとか、それ以前に受け入れられるのかと少々下品な突っ込み互いに引き攣った笑みを見せ合う二人。
仕切りなおしと気を紛らわせる為、出された飲み物を一口飲む。
しかし想像のエヴァがもたらした衝撃は中々消えず、仕切りなおすには時間が掛かった。
ネカネは内心で『わ、私もその覚悟はありますから!!』と、横島にアピールを送っていた事を美智恵は知らなかった。


その後、ようやく落ち着きを取り戻した二人。
それまで飲み物をオカワリするほど、意外と回復に時間が経過したが・・・

「そ、それで、お話というのは何かしら?」

「はい」

美智恵の催促に姿勢を正し、真剣であり目には若干の敵意が見え隠れする視線を向けるネカネ。
向けられた美智恵も気後れせず、同じく姿勢を正し受け入れる体勢をとる。

「失礼を承知で訊ねさせていただきます。
 美智恵さん、貴女は忠夫さんをどう思っているのですか?」

「・・・本当に単刀直入ね」

真っ直ぐ・・・そして厳しい目で自分を見やるネカネの言葉に、美智恵は若干影を落とす。
ネカネの質問はただ彼を好きかどうか・・・という質問ではないと理解している。

「私は忠夫さんの深層意識の中で過去を見させていただきました。
 あの人がGSという世界に入った経緯、数々の事件。
 魔神大戦・・・」

「・・・」

ネカネは淡々と語りながらも、膝の上に置いている拳がスカートを強く握り皺を作る。

「忠夫さんが私達の世界に迷い込むまでを見た時に、私が何を感じたか分かりますか?」

「愚かで傲慢な神族と魔族。
 そして、自覚のない私に対しての怒り・・・ね?」

「それ以上に、神族や魔族が行動を起こさなければ出会うことが出来なかったと考えてしまう自分も・・・ですが。
 それでも、貴女が目の前にいるのならば問わずにいられません。
 逆天号に攻撃した時、もし一網打尽に出来るならば忠夫さんをも巻き込むつもりでしたか?
 そして・・・
 あの人は愛する人を失ったのに、あなたは身篭って出てきましたね。
 結果論としても、あまりにも残酷すぎませんか?
 せめて、必要な霊破片だけでも集める事は出来なかったのですか!?」

「・・・」

ネカネの責めに近い追求に、美智恵は無言で返すのみ。
普段は温厚のネカネも、この反応に目が釣り上がる。
さらに口を開こうとする前に、美智恵に変化があった。

「っ!?」

溜息を一つ零し、その表情から先ほどまでの気丈さは消えた。
変わりに浮かんだのは、疲れきった弱弱しいモノであった。

「あなたの言う通りよ。
 私は歴史を変えてはいけないという『大義名分』をかざし、今から思えば何よりも娘である令子を優先しすぎたわ。
 知っているとは思うけど、令子を『処分』すれば魂の結晶と共に転生しアシュタロスの手に戻る事はない。
 暗殺部隊が送られていたのも、その為」

「・・・」

どちらにしてもおキヌを初め一同も反対をしたが、この時代を一人の命を払う事で防げる確実な対策であろう。
アシュタロスが意趣返しもせずに諦める・・・という条件付だが。

「ネカネさん。
 本当に大事な人の為ならば、あらゆる犠牲を払う覚悟も時には必要なのよ。
 エヴァンジェリンさんだったら、横島君のためみ迷わずその手段を選ぶ覚悟を持っている。
 自覚している彼女とは違って、私の問題はそこよ。
 最悪の場合、令子を私自らの手で殺すと言いながら、その覚悟を本当は持っていなかったこと。
 そして、横島君への罪の重さを自覚していなかったこと」

最後の時間跳躍を使い二十年前に跳び、夫以外の関係者全てと連絡を絶った。
その間にひのめを身篭り、彼等の前に現れた時に感じたのは歴史通りに辿った事による『安心感』だった。
だが・・・

「横島君が人魔となり、全てを受け入れても変わらない彼に甘えてしまっていた。
 彼が行方不明になって、事の次第をご両親に伝えに行った時に遅まきながら罪を自覚したわ」

彼女の脳裏に、横島の両親を訪れた時の光景が浮かんだ。

横島の両親には、美智恵のみならず令子も負い目があった。
あの時は何も知らずとも、彼に戦う術や知識を教えてこなかった令子。
全てを知りつつも介入し、歴史を変えてはいけないという『大義名分』で横島の人生と愛する人を犠牲にした美智恵。
横島が行方不明になった後、美智恵が両親の元へ訪れ魔神大戦を含め全て話す。
すると、娘から聞いていた気丈でやり手であった母・百合子は泣き崩れ、
妻を支えつつ、横島の女好きの元祖であろうが自分に紳士的に接しようにも厳しい目を向けずにいられない父・大樹。
その光景に美智恵は初めて罪を自覚した。

「犠牲された者の気持ちなんて、考えもしなかったわ。
 もし令子を犠牲にしていたら、私もどういう行動をしていたか分からない」

「美智恵さん・・・」

美智恵の話・・・いや、懺悔を聞きネカネも落ち着きを取り戻す。
そして、今は彼女も苦しんでいるのだろうと気付いた。

「謝って許される事じゃないし、ルシオラさんが生き返ったからチャラというわけじゃない。
 でも、この後に二人に頭を下げるつもりよ。
 これが今の私の本心。
 貴女にはどう謝罪すれば良いかしら?」

「いえ。
 元々私は第三者で、アナタを責めていたのは自己満足に近い事です。
 お二人に真摯に謝るならそれだけ充分です。
 こちらこそ、申し訳ありませんでした」

ネカネも、本来ならば自分が割り込む権利さえないと理解している。
これ以上はただ美智恵を苦しめるだけであり、自分の中から蟠りが消えていくのを感じ頭を下げる。

「いいえ。
 自覚する前の私を見たのなら、そう思われても仕方ないわ。
 ・・・私が言えた義理じゃないけど、横島君のことをお願いね」

「はいっ!!」


後日、美智恵は横島とルシオラに改めて謝罪する。
だが、当の二人は意外な表情をした。

『アレは俺とルシオラが決めた決断です。
 言い方は悪いかもしれませんけど、あの決断には美智恵さんは全く関係ないっすよ』

『ええ。
 だから気にしないで下さい』

と語られ、美智恵はもう一度深く頭を下げた。


「そう・・・
 横島君も相変わらずのトラブルを呼び込むわねー
 あらっ?
 ちょっと失礼」

本題は終えたが、そのまま談話していると再び美智恵の携帯が鳴り取り出す。
今度はメールであり、目を通し携帯をしまう。

「ごめんなさいね、ネカネさん。
 横島君のご両親が、店から少し離れた所まで来ているそうなの。
 私が駅前まで車で迎えに行くと伝えておいたのに・・・」

「ええっ!?」

事情は伝えていたが、横島の両親がすでに近くにいると言われると動揺するネカネ。
手ぶらで個室に入った為に鏡や道具もなく、ワタワタと服の皺や手櫛で髪を整えるネカネの姿に美智恵も微笑み一つ提案する。

「そうね。
 やっぱり、あちら側の世界の住民も一人はいてくれたほうが助かるわ。
 ネカネさん、お願いできるかしら」

「も、もちろんです!
 こちらこそ、お願いします!」

横島には内緒にする為に正面出口は使えず、呼び出した魔鈴に事情を話し裏口を使わせてもらった。
すでに待っているということで着の身のままで向かうネカネだったが、数歩歩いては服や髪をチェックし立ち止まる。
『それならば先に行ってましょうか?』と美智恵が提案するが、
それならばレストランに戻っても同じなので気合を入れて歩き出す。
数分後・・・ネカネのチェックなければ一分も掛からない場所に、一組の男女が道の端にバッグを降ろし佇んでいた。
男性は通行人をなんとなしに眺めているようだが、
側にいる女性が腕を組んでおり即座にキメることが出来る体勢だと見る者が見れば分かるだろう。
そんな二人にまずは美智恵が近づき、声を掛ける。

「こうして直接顔をあわせるのも久しぶりですね。
 こちらから車を手配すると言っていましたのに・・・」

「ごめんなさいね。
 どうしても落ち着かなくて、先に来てしまったのよ。
 それにこの宿六が、変に暴走しない為に行動している方がいいから気にしないで」

「ハッハッハッ・・・
 長年行方不明だった息子に会いに来たんじゃないか。
 そんなことはしないぞ」

「だと良いけど」

予定を狂わせてしまったことを謝りつつも理由を述べ、手を解く横島の母・百合子。
先ほどまで、通行人を物色していたことを微かにも出さずにのたまう父・大樹。

「ですが、本当によろしいのですか?
 遠目から見ずとも、直接お会いになったら・・・」

「いいのよ。
 今は彼等の時間ですし、明日には話せるからね。
 ただ、先に一目だけ確認したかっただけ。
 忠夫が本当に帰ってきたということを」

美智恵の確認に、百合子は首を横に振る。
それでも息子の姿を求める姿は、横島にこそ見せない強くとも弱い親心。
その心情を理解できた美智恵は静かに頷く。

「そうですか。
 ですが彼以外には皆さんにすでに伝えていまして、夕方に切り上げることになっています。
 こちらが用意したホテルで、横島君達と一週間を過ごしてください」

「・・・ありがとうございます」

「いえ、気にしないで下さい」

美智恵や息子の友人たちの気遣いに、感謝の意を伝える百合子。
大樹にも静かに頭を下げられ、美智恵は多少照れくさくなり話題を変える。

「そうです。
 案内する前に、一人ご紹介したい人物がいるのでした。
 ネカネさん」

「はい」

美智恵は気を遣って多少離れていたネカネに呼びかけ、呼ばれた彼女も近づく。
失礼がないように自己紹介をしようと口を開く前に、大樹が一瞬でネカネの目の前に現れ手を握られる。

「美しいお嬢さん。
 今夜暇かな?
 もしよろしければ、この後ディナーでもご一緒にいかがかな?」

「あ、あの・・・」(汗

さすが横島の父だと、嫌がおうにも納得させられる大樹の行動。
振りほどくのも失礼と考え、どうしていい分からずと惑う彼女だったがすぐに解放される。

「言ったそばから何をやっとるかー!!」

「ひいーっ!!」

例えお天道様が許しても、妻・百合子は黙ってはいない。
彼女も一瞬で移動し、夫を殴り飛ばし折檻する。
これもまたエヴァにオシオキされる横島と瓜二つ。
ネカネと美智恵は声を掛けずらく、そのまま折檻が終えるまで見届けていた。

「ごめんなさいね。
 ウチの宿六が失礼して・・・
 それで、アナタは?」

「は、はい!
 わ、私はネカネ・スプリングフィールドと申します。
 横島忠夫さんには大変お世話になっています!」

パンパンと手を払う百合子の問いかけに、慌てて自己紹介するネカネ。
横島の記憶の映像を見た時より、やはり歳を取っており皺も見え始めている百合子。
ちなみに、その下で痙攣している大樹には目を合わせない。

「ということは、貴女が平行世界とやらの住民かしら?」

「はい。
 向こうの世界では、私と従弟のネギの保護者のようなものになっていただいています」

「もしかして、ウチの忠夫と・・・」

「ええ。
 共に生きていくと誓った者達の一人です」

「あなたが・・・」

ネカネと息子の関係を聞き、百合子も目を細める。
息子が平行世界を選んだ経緯は彼女も聞いており、その決意をさせた人物達がいるとも。
その一人であるネカネを目の前にし、敵意はないもの探るような視線を向ける百合子。
対して、ネカネも彼女の視線を微笑んで受け入れる。
その構図はしばし続くが、先に動いたのは力を抜いた百合子だった。

「・・・ふう。
 忠夫を好きになってくれて、あの子もこの世界を捨てるほどの決意をさせる人達と聞いた時は驚いたけど・・・
 アナタなら忠夫に勿体無いほどだわ」

「い、いえ・・・
 私こそ忠夫さんに追いつくために日々修行中で、逆に迷惑を掛けっぱなしで・・・」

百合子の自分への評価に恐縮するネカネ。
その様子に百合子は微笑み、彼女の手を握る。

「アナタの事を詳しく聞きたいのは山々だけど、そうすると他の子達とフェアーにならないからね。
 後で時間はあるのでしょう?」

「はい。
 歓迎会が終えた後、ホテルへ向かいますのでその時に・・・」

彼女の視点での息子の事や様々な事を聞きたかった百合子だが、
他に想いを寄せる人物もいると知っているので敢えてこの場では野暮なマネをしなかった。
ネカネも理解しているので頷く。

「お願いね。
 ・・・ほら、アンタもいつまでも倒れてないでさっさと立ちなさい!!
 それと、このコや忠夫の恋人『達』に手を出したらただじゃすまないからね!!」

「はいはい。
 だが、恋人達がいると認めたということは忠夫には何もなしかい?」

「それとは別問題よ。
 日本の一般常識とモラルに反した愚息は、強くお仕置きをしなくちゃ」

「あ、あの・・・
 程々に・・・」(汗

百合子の声に、先ほどまで表現しづらかった大樹が何事もなかったようにムクっと起き上がる。
埃や汚れを落とすが怪我一つない。
どうやら横島の女性への煩悩のみならず、異常な回復力をも父から引き継いでいたようだ。
令子に多大なダメージを受けたのに、このあとに母からもオシオキされれば無事ではすまないと察したネカネがフォローする。

「それじゃ、皆さん。
 そろそろ行きましょうか」

「そうね。
 お願いするわ」

話も一段落したと判断した美智恵が催促し、百合子も頷く。
横島夫妻は荷物を担ぎ、二人に付いて行き魔鈴のレストランへ向かう。
距離もそれほどなく、すぐにレストラン前に到着し指差す美智恵。

「あそこです。
 歓迎会はもう宴会のようなものになっていますので、静かに開けたら彼でも気付かないでしょう。
 皆さんは知っていますので、ご安心してください」

「あそこに・・・忠夫が・・・」

「・・・」

感傷気に様々な表情で扉を見つめる横島夫妻。
百合子も先ほどまでの気丈さも消え、不安が見え隠れしている。

15年間、行方不明だった一人息子。
それ以前に彼には世界か恋人か・・・・という辛い選択をさせられ、人魔となり永遠に存在し続けることになってしまった。
しかもその存在をよく思わない神族や魔族、文珠という素晴らしいアイテムを作り出すことに目を付ける組織もあったらしい。
その全てがGSの世界に入り込んだことがキッカケである。
もし、自分が無理やり連れて行けばと後悔もした。
その不安が、この扉の先にあれほど会いたかった息子がいるのに躊躇わせていた。

「・・・行こうか?」

「・・・ええ」

その妻の気持ちを察し、それでも同じ気持ちであろう大樹が肩を抱き誘導する。
百合子も静かに頷き、扉の前まで歩き夫と扉に手を掛ける。
そして落ち着く為に若干時間を掛けてから、隙間程度の扉を開き中を覗く。
すると・・・


『横島君〜
 こうやって再会できて冥子も嬉しいわ〜!
 皆、出ておいで〜!!』

『ギャー!!』

『アカン!!
 誰や!!
 ウチの冥子に酒を飲ませたんは!?』

『キャハハハハ!!』

『ちょっ、横島さん!!
 こっちに来ないで下さい!!』

『やかましい!!
 魔族であるジークなら、これくらいなんともないだろ!
 大人しく楯になれ!!』

『人界へ下りる時には力が落ちることをお忘れですかー!!
 あ、姉上、助け・・・』

『ジーク!!
 軍人たる者、これくらいで根を上げてどうする!!
 楯となり、潔く散るが良い!!』

『あれ?
 僕、見捨てられた?
 って、わぁーーーー!!!』

『ギャー!!
 所詮ジークはジークかー!!』

『酷すぎます、横島さーん!!』

『そして、横島の手当ては私に任せろ。
 フフフ・・・』

『そして・・・
 なんですか?』

『しょ、小竜姫!?
 い、いや、その・・・だな・・・』

『フフフ・・・
 こちらにはヒャクメという、嘘発見器があるんですよ?
 誤魔化そうとしても無駄です』

『クッ・・・』

『さて・・・
 久しぶりに出会ったことですし、色々と話し合いましょうか?
 色々と・・・』

『・・・ああ』

『せめて、人して扱ってほしいのねー!!』

『アンタ、神族だろう?』

『ああっ!!
 店の中で暴れないで下さいー!!
 皆さん、正座ー!!』

『ええーっ!?』

飲酒した冥子が十二神将を召喚し、横島へじゃれ付きという名の突撃を開始する。
横島は咄嗟にジークを楯にするが、魔族とはいえデタントの影響で霊力を封じられ、
突撃してくる十二神将を抑えるなど不可能。
姉であるワルキューレに助けを求めるが、無常に断られ横島諸共巻き込まれた。
そのワルキューレも何やら企んでいたようだが、小竜姫に見つかり追及を受ける。
結局は、魔鈴から一同正座というオチが付いた。


「忠夫・・・」

「・・・忠夫」

夫婦に飛び込んできたモノは、記憶と寸分たがわない情けない息子の姿。
だがその光景こそが、何よりも自分達が知る彼と何ら変わりない姿だった。

「うっ・・・」

「百合子・・・」

口元を押さえ崩れ落ちそうになる百合子を、大樹は扉を閉めて抱きかかえる。
静かに涙を流す百合子に、ネカネが静かにハンカチを差し出す。

「お使いください」

「ありがとう、ネカネ君。
 美智恵さん、どちらにしても私達は今すぐ息子と会えないでしょう。
 落ち着くまで時間が掛かりますので、先にホテルに向かいたいと思います」

「・・・そうですか。
 ホテルには、アナタ方の名前で部屋を取ってありますのでお使いください。
 夕方には横島君達も向かわせますので。
 ネカネさん、行きましょうか?」

「はい」

ハンカチを大樹が受け取り、百合子へ渡しながら美智恵へ予定を述べる。
美智恵も頷き、ネカネを連れて裏口からレストランへ戻って行く。
彼女等を見送ってから少し離れた二人。
多少落ち着いた百合子は顔を挙げ、大樹に視線を向ける。

「アナタ・・・
 忠夫はちゃんとそこにいたわ。
 私達の知っている昔のままで・・・」

「ああ。
 だが、忠夫も成長している事は一目で分かった。
 アレは並大抵のことでは、ああはならない。
 かなり苦労したのだろうな」

「ええ」

大樹の言葉に変わらない息子の姿に泣いていた百合子も頷く。
姿ではなく、雰囲気で成長していると感じ取れた。

「でも、本質は本当に変わらない。
 バカでお調子者で、スケベで・・・
 それでも優しい心を持った、記憶にある私達の息子と・・・」

「そうだな。
 あの子が俺たちの息子なのだと胸を張れ、誇りだ」

二人は美智恵が用意したホテルへ向かう。
心の中で、息子に会えた満足感と誇らしさを胸に・・・


一方、歓迎会は予定通り夕方前に終わろうとしていた。
締めに、魔鈴がある提案を出した。

『最後に集合写真を撮りましょう!
 記念になりますし、もう皆さんが一度に集まる事なんてあるかどうか分かりませんから』

もちろん一同賛成し、テーブルや椅子を端に寄せスペースを作る。

「横島さんは中央、その隣は美神さん達で・・・」

横島を中央にして、側には美神達。
その周りを雪之丞達やネギ達が取り囲む。
ネギと令美は横島の前に並び、彼の手が肩に乗せている。

「それじゃ、いきますよー」

カメラをタイマー設定にし、魔鈴も駆け出し中に混ざる。


パシャッ!!


こうして・・・
過去、そして未来でも例を見ないほどの様々な種族がただ一人の男の為に集まった歓迎会は幕を閉じた。
それは決して歴史には載らずとも、彼等の心の中でずっと残っていくだろう。
この日に撮った写真と共に・・・



騒がしくとも、賑やかな歓迎会を終えた横島達。
彼等は飲酒していない西条が運転するワゴンに乗り込みホテルに案内される。

『今日一日はこちらでゆっくりしてくれたまえ。
 明日はチェックアウト後、令子のところへ来てくれ。
 くれぐれも、問題は起こさないでくれよ』

降りた一同に、西条は予定と忠告を残してその場を後にする。
エヴァなどは少々ムクれるが、横島が宥めロビーの受付に移動する。
子供から二十歳前後の男女の団体に、ホテルマンは不審を営業スマイルで隠しつつ対応した。
手続きを済まして鍵を受け取り、早々と部屋に行こうとした横島だがホテルマンから伝言を聞かされた。

『お連れ様方が先に別室に入っているそうです。
 各自、部屋に入る前に先に来てほしいとの伝言を預かっています』

「連れ?」

心当たりがないのは横島のみで、ネギ達は彼の両親だとすでに知っている。
不審がる横島を引っ張り、ひとまず別室に向かうこととなる。
エレベータで登り、目的の階に降りると高級感溢れる雰囲気に顔を顰める横島。

「ロイヤルスィートかよ・・・
 変な成金親父じゃねーだろうな?」

「そんな男が貴様に何の用がある?」

「文珠とかコネを手にしようとかいうGS協会の幹部とかさー
 それに過激派の罠っつーことはないんすか?」

「大丈夫です。
 過激派の者達もこのような街中で騒動など起こさないでしょうし、
 最高指導者様方から忠夫さん達に危害を加えるならば即座に斬り捨てる許可を得ています。
 それにGS協会へも使者が送られ、手出し無用と釘を刺しています。
 ご安心してください」

「そうっすか」

「ゴネてないで、さっさと行くぞ」

「へいへい」

サプライズを知らない横島はGS協会や過激派の罠じゃないかと警戒するが、小竜姫の言葉に納得し安堵する。
動きが遅い横島をエヴァが発破を掛け、
備え付けられていた案内版を確認してから百合子と大樹がいるであろう部屋に向かい歩く。
一室一室の部屋が広く、それぞれの扉に距離があるので少々歩き目的の部屋に到着する。


コンコン


「横島っすけど」

まさか両親がいるとも知らず、暢気にノックし来訪を述べる横島。
後ろを振り向けば、エヴァ達のみならずネギ達も服や髪を整えている事に気が付き予想出来たかもしれない。
こういうことに関しては霊感が働かないのが彼である。

『入ってきなさい』

「うっーす」

中から入室の催促の声を聞き、扉を開き中に入る。
まず目に付いたのは部屋の大きさと高級感。
横島は眉を寄せるが、その中にいた人物にど肝を抜かれた。

「今まで何をやっとった!!
 このバカ息子がー!!」

「オ、オフクロー!?
 それに親父まで!?」

「ハッハッハッ・・・
 俺の声色もなかなかだろ?」

怒りマックスで般若の表情で駆け寄ってきた母・百合子によって。
先程の声は大樹は声色を使い、息子にも気付かせなかった。
その器用さは浮気現場を少しでも誤魔化す為の手段であるが、百合子に通じた事は一度もない伝えておこう。

「忠夫・・・」

「ひっ!!
 こ、これには深い訳が・・・」

不可抗力とはいえ勝手に行方不明になったことに、大魔神襲来かと思わず身構える横島。
だが、予想では殴り飛ばす為であろう延ばされた母の腕は・・・

「忠夫ぉ・・・」

「へ・・・?
 オ、オフクロ?」

自分の背中に回され、母に抱きつかれた。
予想外な事態に戸惑う横島だったが、すぐに母の変化に気付いた。

「事情はすでに聞いてるよ・・・
 無事でよかった・・・
 本当に・・・」

「オフクロ・・・」

彼が初めて見る弱弱しい母の姿に、なんと声を掛ければいいか分からない。
しばし悩むが、自らも母を抱きしめる横島。

「心配掛けて悪かった」

「忠夫ー!!」

その声に百合子は人目など関係なく、息子を力強く抱きしめ再び涙を流す。
大樹も横から妻と息子を両手で抱きしめ、親子三人の再会が叶った。
ネギ達はもらい泣きし、ルシオラ・小竜姫・エヴァ・茶々丸も静かに見守っていた。

こうして横島は美神達や旧友達だけではなく、両親とも再会することが出来た。
彼等がこの世界を訪れた初日はまだ続く・・・



hr


どうも、siroです。

改めまして、あけましておめでとうございます。
今年に頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。

さて、今回は歓迎会をメインにしたものとなりました。
実は新年最初の投稿ということで、気合を入れて初日終了まで書いていたのですが、
途中で規定容量オーバーとなってしまい一度切りました。
やはり予定は未定ですね(汗
初日も終わらずに、すでにニ話分も使ってしまいました。
第八話が終えるのは、何時頃になるのでしょうか・・・(汗

美神は原作では美智恵をママと呼んでいましたが、さすがに年齢と娘が居る事を考慮し『母さん』と呼ぶようにしました。
西条も先生ではなく、お義母さんです。

歓迎会に参加したメンバーは全員一言は出ていますが、分かりづらいと思います。
改めて参加メンバーを伝えますと・・・

人間側から美神一家、(一応)横島、おキヌ、雪之丞、西条、タイガー、小鳩、カオス、エミ、カオス、冥子、鬼道、魔鈴。
妖怪側からシロ、タマモ、愛子、ピート、貧乏神。
神族・魔族側では小竜姫、ヒャクメ、ワルキューレ、ジーク、ルシオラ、ベスパ、パピリオ。
ネギ・横島の両パーティのネギまキャラ達。

以上となっています。

百合子も人の親なので、初めは涙ながらの再会としました。
女性問題に関しては、次回となっています。

冥子が酒に弱いなど、ひのめの性格など独自設定なのでご了承ください。



                                     <