虚構の環:第1部・再処理撤退阻む壁/6止 上層部「維持」で意思統一

毎日新聞 2013年02月08日 東京朝刊

 ◇経産省「撤退派」を次々更迭

 04年6月、原子力政策決定の鍵を握る経済産業省資源エネルギー庁の電力・ガス事業部長と原子力政策課長が交代した。新任の安達健祐(けんゆう)部長(現経産事務次官)と柳瀬唯夫課長(現首相秘書官)らはすぐに青森県に飛んだ。柳瀬課長が回想する。

 「三村申吾(しんご)知事、古川健治六ケ所村長と会った。2人とも『あなたたち(国)、何をやっているんですか。東京の人が無責任に振り回さないでほしい』と言った。怒っているというより困っている感じだった」

 六ケ所村は全国の原発から使用済み核燃料を受け入れている。なぜか。それは、再処理工場でウランとプルトニウムを取り出して再利用する核燃サイクル事業のためだ。ところが当時、さまざまなマスコミが「国が核燃サイクル見直しへ」と報じ、地元は不信感を募らせていた。柳瀬氏は「会談後、撤退するにせよ、維持するにせよ、はっきり決めなければならないと感じた」という。

 同月、電力側に再処理からの撤退を持ちかけていた村田成二・経産事務次官が退任。すると翌月以降、水面下で動いていた経産省職員数人が次々異動した。エネ庁職員が解説する。「当時、新体制になり上層部は『サイクル維持』で意思統一した。そして撤退派を更迭した」。粛清の嵐が吹いた。

 同11月、内閣府原子力委員会の「策定会議」が核燃サイクル維持を基本方針とする中間報告をまとめた。翌月には再処理工場で、初めて放射性物質(ウラン)を使った試験が始まる。「ついに施設が汚れた。廃炉費用が約1・2兆円増え、撤退はさらに難しくなった」。更迭された職員は無力感に包まれた。

     ◇

 「再処理事業の確実な実施が著しく困難となった場合、(工場を経営する)日本原燃は使用済み核燃料の施設外への搬出を含め、速やかに必要かつ適切な措置を講ずる」。98年、日本原燃、青森県、六ケ所村が締結した覚書だ。国も電力もこの文書に基づき「再処理から撤退→工場に貯蔵中の使用済み核燃料が各原発に送り返される→収容しきれなくなり全原発が即時停止」というシナリオを最も恐れる。

 現職のエネ庁課長級職員が取材に答えた。「核燃サイクルは恐らく完成しない。早く撤退した方がいいと思う。でも実際の政策となると無理」。電力会社首脳も「『サイクルをやるべきだ』とは思わない。しかし仕方がない」と言う。

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