虚構の環:第1部・再処理撤退阻む壁/4 自民商工族がエネ庁に圧力

毎日新聞 2013年02月06日 東京朝刊

 ◆虚構の環(サイクル)

 ◇直接処分、試算膨らませろ

 04年5月14日午前8時、東京・永田町の自民党本部。7階の一室で「エネルギー関係幹部会」が開かれた。自民党政調に置かれたエネルギー関係の委員会に所属する商工族ら衆参16議員が出席。経済産業省資源エネルギー庁の日下一正長官、石毛博行次長、寺坂信昭電力・ガス事業部長、業界団体の電気事業連合会幹部が招かれた。

 会議は非公開。議員らは取材に対し「覚えていない」などと答えた。しかし経産省職員が作成し、関係部署に送信した議事メモが残されていた。

 3日前の同11日、日経新聞が1面トップで、国の原子力委員会がコスト高から「核燃料サイクル政策を抜本的に見直す」と報じていた。会議は報道を基にエネ庁を「つるし上げる」(出席した経産省職員)構図だった。

 A議員「日経新聞に訂正を打たせろ」

 B議員「役所の課長レベルに(核燃サイクルに)反対の人がいるので、こういう問題が出てくる」

 日下長官「閣議後の大臣会見で(報道は)事実無根であると発言していただいている」

 B議員「大臣が発言しても十分ではない」

 C議員「原子力は報道との戦い。まともな報道は少ない」

 当時、青森県六ケ所村の再処理工場を動かすと18・8兆円のコストが生じると公表されていた。一方、再処理工場を動かさず使用済み核燃料を地中に捨てる直接処分を選んだ場合のコスト試算について、エネ庁や原子力委、電事連などが共同で作業を進めていた。

 D議員「直接処分のコストについて強引に(試算を)作ればいい」

 発言は「意図的に直接処分のコスト試算を膨らませろ」という意味だ。会議に出席していた経産省職員は「今でも覚えている。ひどいと思った。ただ試算は『粉飾』しなかったはず」と語る。別の職員は「粉飾したといううわさを省内で耳にした」と話し真相は分からないが、いずれの職員も会議の様子から「撤退は難しいと感じた」と振り返る。自民党議員はこう話したという。「2カ月後は参院選。スタンスを維持しないと支持者が離れる」

 電力業界は立ち位置を変えた。電事連の総合政策委員会(通称社長会)は自民党の会議と同じ日「サイクル確立に向けた流れを確実なものとする」ため全会一致で「推進に関する決議」をした。02年から撤退に向けて経産省と水面下で協議してきたが、政策転換した際の責任を国、電力いずれがとるのか折り合いがつかなかった。この間、立地自治体である青森県や六ケ所村の反発が強まり時間切れになったのだった。

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