虚構の環:第1部・再処理撤退阻む壁/3 プラントを分割発注、弱点に

毎日新聞 2013年02月05日 東京朝刊

 ◆虚構の環(サイクル)

 ◇「ずっと試験中でいいんだ」

 経済産業省を中心に再処理からの撤退を模索する動きは続いていた。

 03年秋、東京都内にあるかっぽうの小上がり。経産省職員数人が関西電力幹部ら2人と顔を合わせた。当時、業界団体「電気事業連合会」トップは藤洋作・関電社長で、その意向が重要と考え、経産省側がセットした会合だった。

 経産省職員がトラブル続きの六ケ所村再処理工場について尋ねると、関電幹部は「危ないんです」と答えた。当時、漏水や施工ミスなどの発覚が相次いでおり、官民ともに「危険性がある」という認識で一致した。幹部は続けた。「投資が巨額で自分たちからはやめられない(撤退できない)。ただ、これまでも自分たちは国策に協力してきた。国が『やめる』といったらやめられるかもしれない」

 再処理工場の重大な弱点として、分割発注を挙げる声は根強い。

 取材班は関係者から「再処理施設所掌一覧表」と題したA3判1枚の文書を入手した。左半分に各施設の配置図、右半分に受注業者名が記載されている。配置図は核防護上の問題、業者名は私契約に関する事項だとして、いずれも非公開だ。文書によると施設は原発メーカーなど14社に分割発注されている。14社から建設工事を請け負ったゼネコンを加えると25社以上になる。工場配管の総延長は約1300キロ。東京−徳之島(鹿児島県)間の直線距離にあたり複雑かつ大規模だ。

 国の原子力政策作りを担う原子力委員経験者の一人が明かす。

 「プラント設計がばらばらで、分断されて施工している。うまくいくわけがない。トータルで仕切っている会社もない」

    ◇

 04年4月27日、経産省職員2人は意を決して自民党商工族で大臣経験もある重鎮に接触した。撤退には政治の後押しが不可欠だ。場所は東京・永田町の国会議事堂にある一室。A4判5枚の資料を渡し説明した。

 「再処理工場は安全性に疑念がある。行政も電力も本音では『動かしたくない』と思っている。原子力発電自体は維持しつつ再処理は凍結すべきだ。サイクル政策について、首相直轄の『原子力政策改革委員会』(仮称)を新設し徹底的に議論して見直してほしい」

 重鎮は黙ったまま聞き、説明が終わるとこう言った。

 「君らの主張は分かる。でもね。サイクルは神話なんだ。神話がなくなると、核のごみの問題が噴き出し、原発そのものが動かなくなる。六ケ所は確かになかなか動かないだろう。でもずっと試験中でいいんだ。『あそこが壊れた、そこが壊れた、今直しています』でいい。これはモラトリアムなんだ」

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