書淫、或いは失われた夢の物語。 / Force
作品情報
- タイトル
- 書淫、或いは失われた夢の物語。
- 評価
- ■■■■□
- ブランド
- Force
- リリース
- 2000/07/15
あらすじ
(OHPより)
蜘蛛の糸を伝って。いつかキミに、抱かれる日が訪れるまで。
ホラー、恋愛、陵辱……。ホテルの中で繰り広げられる、幾重の物語。それらは蜘蛛の糸の様に絡み合い、リンクし、補完しあっています。
書き切れない夢と渇望をページに挟んだ密室型ノベルタイプAVGを、どうぞ。
概要
今は亡きブランド「Force」が生み出したミステリー仕立てのADV。ロットアップによる需要と供給の問題で、隠れた名作との噂が広まった今、市場では不当なプレミアが続いている。
「書淫」「失われた夢の物語」の2編を収録。ふたつの物語はオムニバス形式ではなく互いに錯綜する作りとなっており、その構成の妙こそが、本作が名作と謳われる所以なのでしょう。
シナリオ
「書淫」並びに「失われた夢の物語」の軽いあらすじ。
書淫、
もうこれ以上、傷つきたくないから。
私は、私を偽る。
彼女は、傷ついた私を慰める。
偽った私を慰める言葉、
それは幻想に向けられた子守り歌に過ぎない。
しかし、
私はそれで満足なのだ。
私は偽りの自分に満足しているのだから。
満足なのだ。
『ホテル内に閉じ込めた
もう逃げることはできない χ』
「あなた」が連続婦女暴行魔「χ」となり、人里離れた僻地のホテル邸内にて3人の女性を蹂躙(じゅうりん)する物語です。
しかし、あなたの前には自分こそがχだと語る何者かが現れる。χは己のはず、困惑するプレイヤーをよそに、このどこかがおかしい物語の火蓋は切って落とされます。
僕はたまらずに少女のもとへ行き、
手を差し伸べるけれど、
少女はまるで空気の様に、
僕の手を素通りしていった。
その時、僕は改めて「これ」が、
夢であったことに気付き、
そして「僕が何もできない」事が、
この世界の「ルール」だとわかった。
結局僕は、
彼女を遠くから眺める事しかできなかった。
少女はその間、
ずっと「ごめんなさい」を繰り返していた。
失われた夢の物語。
『冬になったら迎えに来ます』
ある日、ホテルから人間が居なくなった。外部に通ずる唯一の正門は堅くカギを閉ざされたまま。ホテルの四方を囲む塀は、まるで外界を拒むかのように堅牢で、とても乗り越えられそうにない。残された置き手紙には一言「冬になったら迎えに来ます」、果たして――?
――
ええい! Forceのシナリオライターは化け物か!!
とにかく伏線の量が尋常ではありません。一見破綻しているように見えるファクターのことごとくが後に回収されます。何を食べて育てばこういうモbもとい、ライターになれますか。
ただ、プロットの構造美を追求するあまり肝心の「物語」が蔑ろになっているきらいもあります。全体構造に脱帽することはあっても、シナリオそのものから強い感銘を受けることはまずないのではないかと。このことから、本作は構造を楽しむゲームである、といえましょう。
グラフィック
正直、シナリオに救われている感が否めません。同一キャラがCGごとにプチ整形するのは仕様ですかそうですか。各自、脳内パッチをうわ何をするお前ら――
料理の絵、ワイングラスが小さ過ぎ。それとも、これはツッコみ待ちなのか……。
サウンド
MIDI形式ですがどれもBGMらしいBGM、変に自己主張していない良質な楽曲で、とても好感が持てました。曲名も――
テーマ1
と愚直(ほめ言葉)で、同名作品の織り成す淡白さに一役買っている気がします。
「END2」はサスペンス調で格好良く、小生の好きな『ファミコン探偵倶楽部』(FDS)を彷彿とさせる、名BGMだと思います。
キャラクタ
登場人物はとても少なく、固定ハンドル以外はほとんど登場しません。けれど、これは物語の中核に関わってくる重要なファクターのひとつなので、なぜこの世界の住人にリアリティがないのかは自身でご確認ください。おそらく納得の行く理由であることと思われます。
システム
「nbook」という深沢氏自身が組んだシステムを使っているようです。これに関しては勉強不足のため、詳細がわかりません。プログラム初回起動時にはまず、フォント作成から始まるといったこだわりよう。
特筆すべき点として選択肢毎に現れる「キーボード入力枠」が挙げられます。これはプレイヤーが任意のワードを入力して選択肢を増やすといった代物で、残念ながらあまりうまく機能していないのだけれど、雰囲気を盛り上げる要素として一役買っています。ただ、「好き」「嫌い」の二択を迫られた際に「嫌い」と打ったらコマンドを弾かれました。アゴが外れました。
総評
この物語には明確に定められた結論がひとつとして存在しません。「書淫」の世界も、「失われた夢の物語」も、そして作中の「現実」でさえも、残された謎に対する答えは何ひとつ導き出されず、最後はプレイヤーの憶測がモノをいう、そんな作品です。読み手に解釈が委ねられるタイプのエロゲーとしてはKeyの「AIR」が有名ですが、この作品もそれに通ずるものがあります。結論は書き手が用意すべき、と考えるかたは見送ったほうがよいかもしれません。
書籍や映像媒体では決して伝えることのできない、ゲームという媒体のみが可能とする表現(からくり)を内包した作品です。ある意味「ゲームメディア」の究極形といえます。
(C) Force 2000
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