i.知的財産権

i-1.著名
i-2.GIF忌避論
i-3.攻略法の著作権
i-4初学者向け著作権
i-5.参考文献

 攻略法の作者もまた著作権者です。従って攻略法作りにも知的財産権は無関係ではないのですが、本論とははずれますので付録として書いておきます。著作権法について初心者は『i-4.初学者向け著作権』から読むことをお勧めいたします。

 なお知的財産権(intellectual property right)は知的所有権、無体財産権、無体所有権ともいわれることがあります。おもに注目している視点によって変わってくるわけですが、これらの言葉は同じ意味だと考えて差し支えありません。知的財産権に包含される関連法律分野は以下の通りです。

・著作権法
・プログラム登録法
・特許法
・実用新案法
・意匠法
・商標法
・不正競争防止法
・半導体集積回路配置法
・種苗法

 このうち特許法・実用新案法・意匠法・商標法を工業所有権法と括ることもあります(参考/特許庁『2.工業所有権制度について』)。この付録では攻略法でぶち当たるであろう知的財産権関係のトピックだけかいつまんで説明します。おもに著作権法、そして特許法もすこしだけ触れます。

i-1.著名

 本文でも2.3.【著名】のところで少し書きましたが、日本国内ないしベルヌ条約を批准している国においては作品には自動的に著作権が発生するので必ずしも著名を付す必要はありません。これはベルヌ条約が無法式主義であるためであり、なんの登録をしなくても著作権が発生することを同条約が求めているからです。従って国内においては著名が著作権に果たす役割というのは少なく、書いた方が本人の確認がしやすいというくらいです。無名の著作物の場合は著作物の発表後50年で著作権が切れるとの文言もあります(著作権法52条)が、あとからでも登録などの方法で著名して発表したのと同じ期間に延ばすことができるので心配はありません。むしろ「文責が誰にあるかをはっきりさせ文章に信用をもたらす」方が著名の意義としてはウェートが大きいでしょう。

 とはいえ、著名にまったく意味がないわけではありません。万国著作権条約に加盟していてなおかつベルヌ条約に加盟していない国では、決められたフォーマットで書く著名にメリットが生じてきます。またアメリカ著作権においても著名をすることに意義があります。従って著作権のつもりで書くのであれば、これらアメリカ著作権法ないし万国著作権条約のフォーマットで書くことをお勧めします。その万国著作権条約のフォーマットとは、© (○の中にCを書いた)記号著作権者名及び最初の発行の年、が書いてあることです(万国著作権条約第3条)。ですから、

©KO-1 2000

などと書いておけばいいです。「まるしー」記号は©とHTMLのソースに書くことで出ますが、ブラウザによっては(C)と見えることがあります。PCの著作権表示によく見られるように©2000-2002としてもいいです。こうしたフォーマットによる著名を必要とするのは、万国著作権条約においては、ベルヌ条約とは違って方式主義が取られており、著作物に自動的に著作権が発生するわけではなく、何らかの方式にのっとって登録する必要があるからです。

 しかし今日では、ベルヌ条約を批准しておらずなおかつ万国著作権条約を批准している国というのはそう多くはないのでほとんど意味はありません。ただアメリカ著作権法上は、登録主義を取っていた名残で(というより基本的に方式主義なのを無理矢理ベルヌ条約に対応させているので)この表示が訴訟の際に重要になってきます。気になる人はアメリカ著作権法のフォーマットでちゃんと書いておきましょう。(アメリカ著作権法401条(d)参照)。


#各条約の締結状況についてはCRICのhttp://www.cric.or.jp/db/z/teike_index.htmlを参照。
 当然ながらどちらの条約にも属していない国は「条約の加盟国の著作権を保護する必要はない(逆もまた然り)」。

 ここで「ちゃんと」というのは「正確に」ということです。(C)などと「かっこしー」で書いているようではまだ正確とはいえません。これだと万国著作権条約はクリアできますがアメリカ著作権法はクリアできるかどうかわかりません。そういうわけでアメリカ著作権法に記載されているように「C記号(丸の中にCの文字)、または『Copyright』ないし『Copr.』」を書くべきです。

 「まるしー」を書くべく©とHTMLソースに書いたとしてもブラウザによって明示方法がかわってきます。IEなどは文字化けせずに表示できるのですが、NN4.7xを使っていると文字化けして(C)と見えてしまいます。NN3に至っては(C)とすらでずに文字化けしてしまいます。一応ソースを見れば書いた人の意図はわかるのでいいような気もしますが、アメリカ著作権には(C)でもよいという文章はありませんし、そういう判例もないので大丈夫という確証はありません。印刷されてしまえばなおさらです。従ってそういったことをできるだけ回避するために画像ファイルを使って明示するか『Copyright』や『Copr.』を併用して使うのが安全でしょう。IBMホームページビルダーなんかがこのパターンで、起動させるとロゴに(C)とCopyrightの2つが表示されます(ver.6.01にて)。

i-2.GIF忌避論

 GIFは特許に関する問題があるためWEBでは使わない方がいい、という意見に関して触れます(参考『GIFライセンス問題についてわかるページ(Internet Watch)』)。本文の『3.3.4.スペーサー』で少しだけ触れましたが、ここではもう少し突っ込んだ話をします。

 まず明らかにしておきたいのは特許法の射程です。特許法68条では

 「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。」

と書かれています。つまり特許法は「業として」実施する権利を特許権者に付与するだけで、個人使用に関してはまったく関知しておりません。これ以上は「業として」という語彙の定義問題になりますが、個人のWEBサイト程度なら「業」には当たらないものと考えて良いでしょう。またしばしば「アメリカの特許で…」という話も聞きますが、特許は属地主義が基本です。従って、例えアメリカで特許が成立していたとしても、日本で特許が成立していなければその方法を使ったとしても問題にはなりません。法律も日本のものが適用されます。

 ではここからは、権利関係がどうなっているのかというところからあらためて見ていくことにしましょう。

 正確には米国UNISYS社はGIFそのものの特許を持っているのではありません。持っているのはGIFイメージを作成または表示するために使用される"LZW(Lempel-Ziv-Weich)"というデータ圧縮アルゴリズムの特許です。コレに関する特許はアメリカの特許は発行が1985年で、当時のアメリカ特許法だと発行日から17年間有効なので、今年(2002年)中に特許は切れそうに見えます(なお現在の米国特許法は発行から20年)。しかしながら特許というのは基本的に特許を受けた国内でのみ保護されるものであるため、たとえアメリカでの特許の状況がどうであろうと日本国内においてはそれは関係しないと考えます(属地主義)。

 では日本ではどうなっているのでしょうか。UNISYSの以下のページを見てください。

日本UNISYS http://www.unisys.co.jp/LZW/
米国UNISYS http://www.unisys.com/about__unisys/lzw/lzw__license__japanese.htm

 米国UNISYSが保有していると主張しているのは[特許番号:2123602]と[特許番号:2610084]で示される特許です。興味のある方は一度特許庁の特許庁特許電子図書館でコレを閲覧してみることをおすすめします。直接リンクは貼れないようですので自分で検索してください。


特許庁
特許法
関連条文は 第三条一項、第六十七条、第183条の3〜20、附則 (平成六年一二月一四日法律第一一六号)第四条
#一応正確性を期するために特許法は総務省のサイトへリンクしているが、法庫の方が見やすい。また過去の特許法は特許庁のサイトにある。

特許庁特許電子図書館(IPDL)
[日本国特許番号2123602/特公平05-068893]
[日本国特許番号2610084]
[アメリカ合衆国特許No.4,558,302]

 現在の特許法では保護期間は出願日から20年です。しかしながら平成7年(1992年)に特許法の改正(平成七年七月一日施行)があり、このころは改正以前の保護期間は現行法とはちょっと違って「出願日から20年」もしくは「出願公告から15年」のどちらか期間の短い方でした。また米国から日本に国際出願されているケースでは、国際条約で第一国に出願した日が(優先権主張日)第二国以降に出願した日より優先されることとなっています。

 これらのことを考慮すると、この2つの特許はそれぞれ以下の日まで保護されることにります。

[特許番号:2123602]
優先日 1983/6/20 ←こちらで計算(+20年)
出願 1984/06/20
公告 1993/09/29
保護期間 2003/06/20まで
[特許番号:2123602]
優先日 1983/6/20 ←こちらで計算(+20年)
出願公告 1992/12/16
保護期間 2003/06/20まで

 つまり特許が2003/06/20まで有効であるため、通常のGIFに関してはその日まで米国UNISYSが権利を持つといえそうです。

 以上が現段階(2002年3月現在)でのUNISYS側から提供された情報と特許庁の情報をあわせて考慮した上での結論です。まだこの他にも米国UNISYSが関連特許を出願・取得している可能性もあり、これ以上の展開もあり得えます。日本UNISYS側のサイトによると「他に2つの特許を出願中」と書いてあり、うち1件は特許番号:2610084であるとしてももう1つの特許がある可能性があります(特許番号:2610084の【発明の数】が2になっているのでコレですべてフォローしているのかもしれません。もちろん特許が成立しない可能性もありますがはっきりとしたことは不明です)。なお今回は筆者が技術方面に疎いため、その方面には踏み込んでいない事に注意してください。特許の有効性等については一切考慮していないので、そのつもりで読んでください(詳しい方にフォローしていただけると嬉しいです)。

 さて、まとめになりますが、一番最初に書いたとおり、基本的に個人のWEBサイトで使う分には特許法の保護の範囲を離れるためにGIFファイルを使ってもそのこと自体は問題ありません。唯一問題になるとすれば、サイト中で使っているGIFファイルを作ったソフトが特許の問題をクリアしているかどうかということになりますが、現在ではソフトメーカーの多くが特許料を米国UNISYSに払っているため*、これらの会社のソフトを使ってGIFファイルを作れば何ら問題はありません。そういうわけで特にフリーソフトで作ったりしない限りは問題が発生するとは考えにくく、エンドユーザーにはあまり関係ない話であるように思われます。


*米国UNISYSの公表するライセンスを受けているメーカーは以下の通り。
Adobe
Alchemy Mindworks
Asymetrix
Claris
Corel
Deneba Systems
Eastman Software
Equilibrium
JASC
Learning Company
Macromedia
Micrografx
Microsoft
NetObjects
Scansoft/Visioneer
Symantec
Visio
(アルファベット順)
この他、約2,000の会社がライセンスを結んでいるようなのでここになくても慌てないこと。詳しいことは米国UNISYSの原文を参照。

i-2.1JPEGの特許問題について

 JPEGの特許を持つと主張するアメリカの会社が出てきて、その主張に対してソニーが特許使用料を払ったとするニュースがありました。

『米企業がJPEGの特許ライセンスを主張〜ソニーが支払いに応じる』http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/2002/0723/jpeg.htm
『突如動き出した「JPEG特許」の大きな波紋』http://www.zdnet.co.jp/news/0207/24/ne00_jpeg.html

これに関してもGIFと同様に業に当たらなければ気にする必要はないでしょう。

i-3.攻略法の著作権[編集著作物/額に汗の理論]

 攻略法の著作権はどう考えたらよいでしょうか?結論としては攻略法は著作物ではあるものの保護されない部分もあり得ると思います。

 そもそも攻略法はゲームの正解の選択肢を書き出したものであることが多いですから、AということをすればBとなるという「事実」を書き出したものといえそうです。であるならば、攻略法そのものは創作性のある著作物であるということは難しいと思います。特に選択肢列挙方式ではその傾向が強いです。

 ここで反論として「選択肢を限定するために苦労をした」とか「その選択肢はいくつもある正解の1つであり、それを選択したことについて著作権が発生するのではないか」という反論がありそうです。これについては1つずつ書いていきましょう。

 まず「選択肢を限定するために苦労をした」ということに関してですが、そもそも著作権法が「創作性のあるもの」を保護する法律である事を思い出していただくことで、答えが出ると思います。著作権はある種強力な保護を与える要件として「創作性」というものを要求してはいますが、「苦労」や「労力」といったものは要求していません。従って極端な話、まったく労力をかけず1時間程度で作ったものでも創作性があれば著作権は発生しますが、逆に何十時間かけて苦労して作ったものであっても創作性がなければ著作権は発生しません(商売が絡んだ場合、民法の一般不法行為や不正競争防止法で保護されることは考えられます)。

 著作権の業界ではこれは「額に汗(sweat on the brow)」の論理とか法理とか呼んだりしています。日本の著作権史上では明確にこの法理が明言された判決などはなかった*と思いますが、一般的に言われていることです。余談ですが、今日ではデータベースの分野に限ってこの原則を外そうという動きが世界的に見られます**


*アメリカではFinest判決(FEIST PUBLICATIONS, INC. v. RURAL TEL. SERVICE CO., 499 U.S. 340 (1991)/by Find Law)でいわれた。日本語資料としてはこちらを参考(サーバー知的財産法:サイバー法学)

**EUではsui generisにより多大な投資をしたデータベースに関しては保護をするとするEU指令(EU Directive)が出ていて、各国が実際の法律を作成する段階にきている(31996L0009 Directive 96/9/EC of the European Parliament and of the Council of 11 March 1996 on the legal protection of databases)日本語訳はこちら。アメリカもデータベースを保護する法律を作ろうと提起はされているが、いまだ法律化はされていない。

 次に「その選択肢はいくつもある正解の1つであり、その中のある1通りの正解を選択したことについて著作権が発生するのではないか」ということです。これは著作権法12条の編集著作物「編集物でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するもの」にあたるのではないかということでしょうが、これに関しても私は懐疑的です。問題点は2点。そもそもその選択というのはどのくらいの幅があるものか?それからその選択をしたことでどういう創作性が生まれたのか?ということです。

 攻略法の選択肢は言うまでもないことですが有限です。しかもその数も事実上無限というほど多くはないでしょう。そういった中での「選択」または「配列」には限りがあり、誰がやってもある程度は同じものになりがちです。そのような前提条件の中で「選択」や「配列」を行ったことによって創作性を生み出した、と結論づけるのは苦しいでしょう。「創作物」というよりは単に攻略できるという「事実」や「情報」といった方が適切に思えるからです。従って、選択肢を書き出したものの攻略法としての創作性はなきに等しいと思います。

 しかしながら、これらの細かい点をもって、攻略法は法的にはまったく保護されないかというと、そういうわけではないでしょう。その攻略法に付随して書いた攻略法自体の説明文攻略のしかたを自分の言葉で書いたような場合は、当然ながら保護されます。つまり普通に攻略法を作る場合、自分で文章を書いていくところがあるわけですから、何かしら保護されるところがあるということです。また、HTMLのソースということを考えれば、配列には自由度がかなりありますし、それによって攻略法の作者が主張したいことを表現できますから編集著作物という主張もできそうです。詰まるところ、攻略法を構成する要素はともかくとしても、攻略法としてまとめられた時点でたいていの攻略法には著作権が存在するといってよいと思います。

i-4.▼初心者向け著作権(主に著作権者としての立場から)

 著作権法の初心者を対象としたものです。基本的に権利者側から見た著作権という立場で書いています。
 以下この項目では(第X条)と書いてあればそれは著作権法のことです。

著作権ってなに?なんで著作権があるの?

 著作権法の第1条に目的が書いてあります。著作権法とは「著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする」法律です(著作権法第1条)。前半部分に書いてあるとおり、この法律の目的は著作権者の利益を保護するところにあります。著作権があることで本やCDやWEBのコンテンツが保護されます。なかったら保護されていません。なお、「文化の発展に寄与することを目的とする」というところはあくまで努力規定というかとりあえず書いてあるだけの目的になっています。

 普通、物はそのものを持っていることでそれが自分の物であることを証明し、そのものからの利益を得ることができます。しかしながら著作物は形を持っていないので、普通の方法では誰の物だと主張することができませんしそれでは利益を得ることもできません。そういった有体物ではないもの(無体物)を保護するための特別な方法が著作権です。所有によってコントロールできないものを、ある意味、法律によって著作権者が著作物をコントロ−ルできるようにする法律であるといえないこともないでしょう

 ここで言う著作物とは手に触ることのできる物体(本、CD、ビデオカセット、DVDなど)のことではなく、その物体に入っている・転写されている(専門用語で化体している)内容そのもののことです。例えば一般に販売されているCDをあなたが買ったとすると、その物体としてのCD自体は所有していますがCDの中の音楽は所有していない(曲の著作者が権利を持っている)ということになります。

著作権で保護されるものは?

 著作権では「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」が保護されます。また著作権で保護されるもののことを「著作物」といいます(第2条1項)し、著作物を創作する者を「著作者」といいます(同2項)。「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とは書いてありますが、これらはあくまでも例示であって「思想又は感情を創作的に表現したもの」というのが実質的な基準になります。この「思想又は感情を創作的に表現したもの」というのはわかりにくいですが、要は「オリジナリティのあるもの」ということです。そしてこの基準はものすごく広く解されています。よく言われる例として「子供の書いた絵でも(オリジナリティがあれば)著作権が発生する」というものがあるくらいです。従って、自分のオリジナルのものであればそのレベルがどんなに低かろうと保護される、と考えてよいです。

 また著作権は表現は保護してもアイデアは保護しないというところに特徴があります。これは表現が固有性が強いのに対してアイデアは非常に汎用性が高いので、これを保護してしまうと却って著作物が作られなくなってしまうからです。

 それから著作権法は特許法などとは違って独占的に使用できる権利ではありません。これは工業所有権のようにある1つの技術を独占的に保護することで新規発明のインセンティブにすることを前提としたものではなく、文化の多様性を認めることを前提とした法律だからです。そのため理論的には、まったく違う人がまったく同じものを作ったとしても、それが盗作でなければその両方に著作権が成立しますし、どちらも訴えられる筋合いはありません。

著作権法に違反するとどうなるの?

 著作権法に違反すると、悪い場合は刑事罰が科されます(3年以下の懲役または300万円以下の罰金/第119条〜)。また、民事上でも損害賠償などを命じられることでしょう。

 なお、著作権法は親告罪ですので、著作権者が告訴しない限りは警察などは動きません(第123条第2項)。従って、著作権者は自分の著作物が盗作されていることがわかった場合は、自ら何らかの行動を起こす必要があります

著作権の発生要件

 特に条件はありません。著作物を作った時点で自動的に発生します(第17条2項)。
 ただ、一応登録することはできます。参考として文化庁のサイトへhttp://www.bunka.go.jp/8/4/VIII-4.html

著作者の権利にはなにがあるの?[第17条〜第29条]

 著作者は以下の権利を有します。

著作者人格権(第18条〜第20条)
 公表権、氏名表示権、同一性保持権

著作権(著作権に含まれる権利/第21条〜第28条)
 複製権、上演権及び演奏権、上映権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権、翻案権
など

 なお、著作権で規定されている権利は、厳密には「著作人格権」と「著作権」に分かれます。ややこしいので注意してください。大きな違いは、著作人格権は一身専属で他人に渡すことはできないところです(第59条)。逆に「著作権」は譲渡することができます。日本の著作権法上では著作者人格権の関係上、作者が著作者人格権を放棄することができないので、厳密な意味でのパブリックドメイン(公有)には出来ません

攻略法の関係で特に重要な権利は?

 上に記した著作権によって発生する権利のうち、攻略法という媒体で特に重要な権利は「複製権」と「公衆送信権」でしょう。

複製権(第21条)

 著作物を複製する権利です。著作者の許諾なくして複製することは許されません。

公衆送信権(第23条)

 著作権をインターネットなどでアクセス可能な状態にするかどうかを決めることです。これも著作権者の許可なしで誰からもアクセスできるような状態にすることは許されません。

著作物の保護期間は?[第51条〜第58条]

 一般に著作者の死後50年まで保護されます。細かい規定はありますが、とりあえず50年と覚えておきましょう。

著作権の制限(第30条〜第50条)

 これだけ強力な権利である著作権ですので、当然ながら制限が付きます。一定の事項にかかるのであれば、これまで述べてきたような著作権を侵害するようなことでも違法ではありません。制限事項はたくさんありますので、ここでは重要なものだけ挙げることにします。

●私的使用のための複製(第30条)
 「著作権の目的となつている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる」

 公表された著作物であるならば、個人がPCで見たり印刷して使ったりということを著作者は制限できないということです。しかしながら今日ではP2P技術の発展によって私的使用のための複製の範囲が問題になっています。上の条文に見られるように「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」が法の許容する範囲内であるので、P2Pで技術的には一対一のやりとりをするといっても実際にはどこの誰ともわからないような人に渡すのはこの範囲からはずれます(公衆送信権の侵害)。

●引用(第32条)
 「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」

 公正な引用であれば著作物の利用に制限ができません。引用が明瞭に区別されなおかつ引用される文章が従で、引用した者の書いた文章が主であるというのが「公正」の基準といわれています*。しばしば引用と称する無断転載がよく見られます。マニュアルやメーカーのWEBサイトの記述をそのまま用いて「あらすじ」あるいは「内容紹介」とすることは引用ではなく無断転載となりますので注意してください。

 それからこれはWEBサイトや書籍において「無断転載・引用は禁止いたします」という文言を見かけることがあります。しかし転載はともかく引用は著作権法で認められた著作権の制限事項ですので、一般に引用は法的に禁止されません。引用する側は著作者に許可を取る必要はありませんし、著作権者側も引用の禁止を強制できません。著作権者だからといって無限に権利が認められるわけではありませんので注意してください。


*最高裁判決において次のように言われた。
「引用にあたるというためには、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められる場合でなければならないというべきであり、更に、法一八条三項の規定によれば、引用される側の著作物の著作者人格権を侵害するような態様でする引用は許されないことが明らかである」(強調・下線は筆者による)
昭和55年3月28日最高裁判所第三小法廷(上告審)昭和51年(オ)第923号(マッド・アマノ事件)

#日本の著作権においてはフェアユース(Fair Use/公正利用)という概念がない。フェアユースというのは日本語では「公正利用」と訳される一般的な自由利用を認めるような制度のことである。第1条で「公正な利用に留意しつつ」と書いてはあるもののフェアユースに関する明文の一般条項はなく、代わりに第30条以下の個別具体的な条項が並んでいる。個別具体的に使用できる場合が書いてあるということは使用できる場面が明確でわかりやすいという反面、その場面以外では使うことができないということなので使用に際しての制限が大きいということでもある。一般に日本の著作権法というのは、権利者側に篤い法律になっているといえる。
参考:フェアユースとは何か(藤本英介 ネット環境下の著作権と公正利用(フエア・ユース))

条約って?(ベルヌ条約、万国著作権条約など)

 基本的に日本国内のことは日本の法律で運営されています。当然外国の国内のことははその国の法律で運営されています。これはそれぞれの国の慣習や常識が違うためであり、その方が理にかなっているからです。しかしながら自国と外国で法律が違うということは、保護されるものに違いがでてくるということでもありますし、そもそも自国の権力の及ばないところには法律は適用できません。このため、海外で自国の利益を保護する為には各国の利害関係を調整し、お互いに妥協できるところは妥協して、協力できるところは協力する必要があります。こうした約束が明文化され形になったものが条約です。

 条約の他にも協定、協約、取極(とりきめ)、規約、憲章、規程、議定書などの名称が使われます。この条約を批准することで批准国同士で各国の利益を保護しあいます。また、妥協できないところがある場合は条約を批准する必要はありませんが、その場合は批准しなかった国の利益は守られません。条約によっては項目ごとに批准ができたりします。そういうときはその項目だけ相互に利益を尊重しあうということになります。

 さて、著作権法においてはベルヌ条約万国著作権条約の2つの条約が有名です。日本は両方の条約に加盟していますので、どちらの条約の批准国でも著作者の権利が保護されるという仕組みになっています。この「保護される」ということは、批准国内においてはその国の国民と同様に保護されうるということです(内国民待遇)。当地の法律が適用されるということは、本来であれば万国著作権条約だけを批准している国ではその国での著作物の登録を要するということになってしまいますが、そういう場合は万国著作権条約の保護要件を満たしていれば著作物とみなされることになっています(これに関しては『i-1.著名』で取り上げました)。ただ万国著作権条約のみを批准している国は少ないので、この件に関してはあまり問題になることはありません。

 その他著作権に関する条約にはWIPO著作権条約TRIPS協定などがあります。

ゲームの画像を使いたいんだけど

 著作権者(ゲームメーカー)に許諾を採りましょう。「著作権に関するガイドライン」などがWEBサイトにて公表され、それに則した形での使用が可能な場合は、それに沿って利用することが可能です。

 画像や素材を利用する際に注意する点は、許諾と適切な利用方法にあります。メーカーサイトの画像ファイルに直接リンクを張って表示することフレームによって自分の攻略法の一部に見せかけるような行為はHTMLの技術としては単にリンクを張っただけで問題ないように見えますが、法律的には問題になります。技術的にどうこうではなく、為したことがどういう外観をしているかに注目するべきです。

別に著作権なんていらないんだけど…[パブリックドメイン]

 自分の作ったものはパブリックドメイン(Public Domain/公有/「著作権フリー」)でいい。そういう場合は、READMEなどにその旨を書いておきましょう。

 著作権は著作者が持つ権利ですから、当然放棄することができます。しかし著作者人格権は著作者のみに属しており、放棄することもできないというのが通説のようです。従って日本では作者の意思があっても厳密な意味でのパブリックドメイン(公有)にはできません 。しかしこれはあくまで法律上のことであり「放棄する」と言うのは自由ですし、もしそれを破った場合は信用を落とすことになりますから意味のない宣言ではないといえそうです。

著作権は手放さないけど再配布はできるようにしたいんだけど…

 そうすることも可能です。READMEにその旨を書いておきましょう。

 ただプログラムであればコードを守るために意味があるのでしょうが、攻略法のような文字ベースのものでは法律的に意味があるのかちょっと不明です。というのも再配布が可能と言うことですので、一番重要な権利である「複製権(第21条)」と「公衆送信権(第23条)」を行使しないと言っていると解釈できるからです。また先にも書いたように著作者人格権は放棄できませんので氏名表示権も同一性保持権(勝手に意に添わない改変されない権利)も持ったままです。だから上で言ったような日本で実行しうるパブリックドメインとほとんど変わりがないといえそうです。

 攻略法をひとまとめにして配布することの条件として許可するのであれば、分割配布の抑止にはなるでしょう。


#許諾など個別交渉もIT化によってフルオートでやってしまえばいいのではないか?こうした要求や考え方がないわけではない。「コピーマート(北川善太郎)」、「超流通(森亮一)」、「トランスパブリッシング(Ted Nelson)」、「MPEG-21」といったシステムがそれである。それぞれ違ったアプローチをとっているのであるが、どの方式もまだ実用には至っていない。

##一般的ではないが個人でこういうキャンペーンをやっている人もいる。
プロメテウス・キャンペーン』主催者:白田 秀彰 氏
文書版フリーウェア宣言(!?)といった感じ。

 その他Q&A的なことは岡村 久道弁護士の『電子ネットワークの知的所有権法 F.A.Q. (Frequently Asked Questions)』などのサイトを参考にしてください

i-5.参考文献(知的財産権)

 基本的に著作権関係の資料が多くなっています。このリスト以外で知的財産権に関して詳しく勉強しようと思う方は、田村教授「たむたむのおへや」の『知的財産法の調べ方』を参照するとよいでしょう。精選された膨大な参考文献リストを手に入れることができます(ただし、ここのところ更新がされていないので最近の本がフォローされていません)。

i-5.1.書籍

中山信宏『マルチメディアと著作権』(岩波新書)1996年1月発売 \700+税 ISBN4-00-430426-1
 著作権の権威の一人。岩波新書ということもあってとりあえず安い。

田村善之『知的財産法(第2版)』(有斐閣)2000年10月 \4,000+税 ISBN4-641-04499-6
 この本は知的財産権全般について書かれているが、田村教授の著には著作権についてだけ書かれた『著作権法概説 第2版 (有斐閣/2001年11月発売/\5.000/ISBN4-641-14313-7)』もあり、著作権法だけを学ぶならこちらの方が詳しい。また手に入れる術があるなら『知的財産法(1)〜(4)』法学教室235号〜238号(2000年)から読むのもいい。1つのケースを設定してそこから実地的に解説をしている。なお、田村教授の理論は「インセンティブ理論」といわれ少々特殊な位置にある。有力説ではあるが通説とまではまだ言えないので初学者は注意すること。

加戸守行『著作権法逐条講義(3訂新版)』(著作権情報センター)2000年3月 \15,000+税 ISBN4885260264
 著作権法のコメンタール。著者は現行法を作った当時の文部省著作権課課長補佐。著作権法施行令および同法施行規則制定時の文化庁著作権課長。そういう現行法に深く関わった人の著であるので立法意図などが書いてあったりする。べらぼうに高いので専門家向けであったりする。

作花文雄『詳解著作権法』(ぎょうせい)1999年12月 \6,000+税 ISBN4324060495

著作権判例百選 第3版(別冊ジュリスト第157号・有斐閣)2001年4月 \2,400 ISBN4-641-11457-9
 著作権に関する判例(要旨)が解説とともに載っている。実地的に勉強するときには必携。

はじめての著作権講座 著作権って何?(社団法人著作権情報センター)2002年4月発行
 社団法人著作権情報センターの発行する無料書籍。著作権団体の作る冊子なので堅実な解釈をしている。

i-5.2.WEB

総務省法令データ提供システム
 政府の出しているオフィシャルな法律集。ただし見づらい。

法庫
 オフィシャルなものではないが見やすい。

最高裁判所知的財産権判例集
 知的財産権関係の判例はここで調べられる。問題は、判例のあるURLがしばしば変わること。従って、判例を見つけた際はURLだけでなく判決年日付や事件番号もメモしておいた方がよい。
 最高裁判所判例集判決全文表示より
 昭和55年 3月28日最高裁判所第三小法廷(上告審)昭和51年(オ)第923号(マッド・アマノ事件)

Find Law
 アメリカ法律検索。判例も探せる。
 「額に汗」を否定したFEIST PUBLICATIONS, INC. v. RURAL TEL. SERVICE CO., 499 U.S. 340 (1991)の判決文。
 実際この手の定番サイトはLexis.comなのだがこちらは有料サイトなので…。

ARIADNE『3 法・知的所有権』
 リンク集『ARIADNE』の知的財産権に関するページ。WEB上で資料を探す場合はここからたぐっていくとよい。


文化庁 著作権〜新たな文化のパスワード〜
 文化庁の出している著作権の解説文。

 しかしこういうところでいうのも何だが、内容はともかくはWEBの作り方としてあまりよろしいものではない。パチモンくさい作りで、とりあえずパッと見て信用できるようにはみえない(特に文化庁トップページ)。見栄えが信用問題に直結する好例である。また迷子になりやすいという点でも好例。わかる。今はフレームで項目のメニューが出るようになったのでまだ使いやすくなった(昔はなかった)が、むしろこういうものは細切れにせずにある程度ざっくりとまとめて置いたり、サイトマップがあった方が読みやすいことが身にしみてわかる。そんなわけで(困ったことに)WEBサイト自体も反面教師として参考になる(2002年5月3日時点)。

社団法人著作権情報センター(CRIC)
 無料の書籍を配布していたりする。またここの出している月刊著作権専門情報誌『コピライト』は著作権を勉強する人は必読。但し非売品で賛助会員にしか配布されない。
 その他サイト内には国内・国外の著作権に関する情報がある。以下のものはこの『攻略法の作り方』でも取り上げている。
 日本国内の著作権に関する法律
 ・ベルヌ条約(抄)(正式名称:文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約パリ改正条約 )
 ・万国著作権条約(正式名称:万国著作権条約パリ改正条約 )

WIDE University,School of Internet(SOI)
 「世界中の学ぶ意欲を持つ人々に、デジタルコミュニケーションを基盤とした従来の制限や境界にとらわれない高度な教育と研究機会を提供する」ことを目的としたいわゆる日本版インターネット大学の一つ。実際に京都大学や慶應義塾大学などで行われた授業のVTRやレジュメを見ることができる。

WEBコンテンツと知的財産
 パシフィコ横浜で行われたInternet Week 1997のチュートリアルのレジュメと講義の動画。WIDEで公開している。1997年末の内容なので新しい論点には対応していない。聴衆が専門家ではない一般企業社員向けのようで、内容は実地的に押さえてある。講師は岡村久道弁護士と藤本英介弁護士。後半の藤本弁護士の側の説明は『ネット環境下の著作権と公正利用(フエア・ユース)』の方が詳しいだろう。前半の岡村弁護士の説明も次の氏のサイトにあったりする。

サーバースペースの法律
 前出の岡村弁護士のサイト。法律系のサイトとしては有名どころ。『電子ネットワークの知的所有権法 F.A.Q. (Frequently Asked Questions)』などがある。

法情報学(夏井高人研究室)
 EU Database Directive日本語訳がある。ここも法律系サイトとしては有名どころ。

白田の情報法研究報告
 『プロメテウス・キャンペーン』をやっている白田 秀彰氏のページ。とはいえ、むしろ白田氏は修士論文 『コピーライトの史的展開』(書籍版は未公開)の方で有名。

著作権のひろば
 神奈川にある日野行政法務事務所の一コーナー。一部内容に「?」な部分があるものの、著作権の基本的部分から実践的な方向まで幅広い分野をコラムのような語り口で説明している。とりあえずここで興味がある分野から読んでみるといいかもしれない。

コピーマート
 他にも『サイバースペースにおける著作権と「著作権市場」』『マルチメディアと著作権―コピー・マート(COPYMART):著作権市場―』といったページがWEBにはあるが、できることなら雑誌『NIRA政策研究 Vol.10 No.12 コピーマート:著作物の権利処理と流通に関する一提言』などの書籍媒体の方を見た方が手っ取り早い。 

超流通
 『超流通:知的財産権処理のための電子技術』などを参照。他の2つ(コピーマート、トランスパブリッシング)と比較すると企業から研究される割合が多いように思われる。

トランスパブリッシング(Transpublishing)
 日本語の解説ページもある。しかし「転載を許可する」というトランスコピーライトのあるサイトをトランスクォートしないと現行日本著作権法には違反するので注意すること。

The MPEG Home Page
 基本的には動画の規格標準化団体なのだが、MPEG-21ではコンテンツ流通に関する標準化を進めているようだ。日本からはコンテンツIDフォーラム(cIDf)が標準化に貢献している。

CI-NIME教育メディア著作権関連情報
 元々は放送大学の一部門から独立したNIMEが作っている(だからドメインがac)。学校で著作物を利用することについての内容がメインだがその他にもいろいろおいてある。


特許庁
  過去の特許法

特許庁特許電子図書館
 特許関連の文書の検索・閲覧ができる。

松本直樹の米国特許法研究室
 米国特許に関してはここ。


参照本文

2.3.【著名】
3.3.4.スペーサー


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