ブルペンで変化球を投げる阪神・藤浪=宜野座【拡大】
大事にしまっておいた宝石を丁寧に取り出す。変わらず輝くものばかりではなかった。剛球と6変化球のコントラストに、見る者は大いなる希望を抱いた。しかし、初のブルペン本格投球に藤浪は不満顔。まだほんの小手調べだ。黄金右腕はここからさらに自己研さんのペースを上げる。
「全球種を投げました。リリースの感覚がずれていましたし、コントロールも全然つかなかった。納得のいく投球ではなかったです。最初なので仕方ないといえば仕方ないですけど、次以降、しっかり修正できればと思います」
虎党のみならず、全野球ファンが固唾をのんで見守る。拍手で迎えられると、入念にステップ位置を固めた。まず13球の直球を低めに集めると、豪華ラインアップ披露の開始だ。セットポジションにかえてカーブ3球を皮切りに、スライダー4球、フォーク6球、チェンジアップ6球、カットボール3球、ツーシーム4球。最後8球はすべてワインドアップで直球を突き刺す。1球ごとにどよめきが起こる計47球の熱投ショーだった。
内角に食い込むツーシームはややコースから外れたこともあり、2球続けて捕り損ねた片山ブルペン捕手は「シュート系で動いてくる。真ん中に来たらすごい。直球も、指にかかった球は150キロくらいに感じた」と驚嘆。受け手は力を感じとっていた。
ブルペン解禁だけでなく、屋外フリー打撃も行った。実戦に近いメニューが増え、18歳の顔は晴れ晴れとしている。
「スライダーとカーブは良かった。基本になるボールなので、基本をしっかりしながら、他のボールもしっかり磨いていきたい」
すべてを意のままに操り出したら、手がつけられなくなるだろう。甲子園で春夏連覇の栄光を知る指先が、プロの舞台でも輝きはじめた。 (長友 孝輔)
(紙面から)