これまでの放送

2012年9月16日放送

日本一のコマ?町工場の戦い!

直径2センチにかける職人達の技と心意気。そして感動とハプニング!

コマ

最強のコマ作りへの執念!
      決め手は旋盤加工のスゴ技

超硬合金はめる手元一番長く回るコマを決める「全日本製造業コマ大戦」。ルールは、コマの直径2センチ以内、片手の指で回す、という実にシンプルなもの。今回初めて開かれるこの大会の北海道・東北予選には中小企業や工業高校、15チームが参加します。その中で、もっとも重いコマをつくり優勝を目指すのが、宮城県岩沼市から参戦した岩沼精工。仙台空港の南に広がる岩沼臨空工業団地の一角にある従業員52人のこの会社は、金属プレス加工の高い技術力で、携帯電話に使われる金属部品などを製造しています。コマは、「しんちゅう」を素材にして、外側に重くて硬い「超硬合金」という素材のリングを付けることにしました。外側を重くすることで遠心力が高まり、より長く回るからです。

打合せする千葉さんと砂澤さん大会4日前。コマ作りを担当する常務の千葉厚司さん(写真左)と製造部の砂澤(いさざわ)克明さん(写真右)が、頭を抱えていました。コマの形がなかなか決まらないのです。悩みのタネは、コマの先端部分。とがらせると、地面に食い込んでしまい、丸めると、地面との摩擦が強くなり、長く回すことができないのです。「しんちゅう」を素材にした試作はすでに20個を超えました。できあがったコマは、一つ一つ回して、タイムを記録します。やっと試作23個目にして納得のいく結果が。しかし、この時、千葉さんの頭には、ある構想がありました。コマの素材を「しんちゅう」から「銅タングステン」に変えようというのです。

旋盤をまわす砂澤さん常務の千葉さんが新たな素材「銅タングステン」を買ってきました。「これは、機械加工で切削できる中では一番重いと言われる材料。コマ自体を重くしようと思います。」長さ5センチで8000円と非常に高価な材料ですが、4本購入し、コマをつくることにしました。コマは、旋盤という機械を使ってつくります。この会社で、旋盤を一手に引き受けている砂澤さん。まずはコンピューター制御の旋盤ではなく、手動の機械で削ることにしました。この会社では、これまで銅タングステンを加工したことがありません。初めての素材には手動の機械を使って、削り出す刃の種類や動かす速度などを決めるのです。

旋盤加工のアップ砂澤さんに課せられた作業は、直径16ミリぴったりのコマをつくること。大きくなると外側にはめる「超硬合金」のリングが入らなくなり、小さいと抜け落ちてしまうからです。誤差は1000分の2ミリまでしか許されません。銅タングステンを使ったコマ作り。4本の材料のうち3本でテストを重ね、これが最後の1本...果たして1000分の2ミリの誤差の範囲内でつくることができるのでしょうか。結果は・・・15.998ミリ。誤差の範囲内。見事に仕上がりました。「強いコマをつくるためなら、とことんまで極めたい」。岩沼精工がそこまで勝利にこだわるのには一つのワケがあります。

津波直撃 救世主登場!各地の町工場の心意気

津波去年3月。海岸から2キロの所にある岩沼精工にも、高さ2メートルを超える津波が押し寄せました。生産設備60台すべてが津波にのまれてしまったのです。社員たちはみな途方にくれました。しかし震災からわずか3日後、東北各地、30社以上の中小企業が、機械の提供や生産の代行などを申し出てくれたのです。その中の1社、宮城県美里町の富士精密は、比較的、使用頻度の少なかった研磨機とワイヤー放電加工機を無償で岩沼精工に贈りました。また山形県長井市の朝日金属工業は、生産設備をなくした岩沼精工の社員を招き、「設備を自由に使っていい」と申し出ました。

支援した会社地図「やっぱり同じ東北の地域で同業でやっているわけですから、困った時はお互い様。」「ここの地域性としては、自然にお互いに助け合うっているのが、根っこにあるんだと思う。」2社ともそれまで岩沼精工との仕事の取り引きは全くありませんでしたが、放っておけなかったといいます。こうした支援によって、震災からわずか3か月後に操業が再開できた岩沼精工。千葉さんはコマ大会に優勝することで、お世話になった人たちに復興の証を示したいと考えています。

益子卓郎さん(U字工事)

益子卓郎さん(U字工事)

(震災のあとに、東北の中小企業同士が助け合った姿を見て) 僕が勤めていた工場でも、やっぱり仕事が忙しくてどうにも納期に間に合わないっていうときがありました。そういう時には、仲のいい小さな工場に頼んで、「ちょっと手伝ってくんないかな」って。そういう助け合いも、実際あったんですよ。

福田薫さん(U字工事)

福田薫さん(U字工事)

それに、そこの工場にしかない機械とかもあるので、「ここだけやってくれる?」って言って加工してもらった時もありましたね。そういう横のつながりが、町工場にはすごく大事だと思います。



社内が変わった!コマ作り 社員たちが続々参加

社員に説明する金野さん宮城県・富谷町にある、従業員33人のプラモール精工。この会社が得意とするのは、プラスティックの加工。主にパソコンや冷蔵庫などのコネクターをつくっています。大会一週間前、コマ作りを担当する9人の社員が集まりました。リーダーは設計課・課長の金野政雄さん。社長からは、「一切口を出さない。社員の発想力だけであっと驚くコマをつくれ」と命じられました。...とはいえ、社員の皆さん、なかなかすぐにはアイデアが出て来ません。

新聞を読む脇山社長社長の脇山高志さん。コマ大戦への参加は、会社の将来を考えてのことでした。この会社は、4年前のリーマンショック以降、下請けの仕事が減り、売り上げは3割落ちています。「メーカーの発注に頼るのではなく、独自の自社製品を開発しないと生き残れない」。そう考えた脇山さんは、コマ大戦に出場することで、社員たちの発想力を試すことにしたのです。コマは、金野さんが描いた設計図を元につくることになりました。

銅の本体しかし、この会社には大きなハンデがあります。コマ作りに使う「旋盤」の機械を持っていないのです。そこで社員たちは、金属をあらゆる形に削り出す、「マシニングセンタ」や、複雑な形をくり抜く「ワイヤー放電加工機」など、工場にある機械を最大限利用してコマをつくりはじめました。わずか半日で、コマが組み上がりましたが...、設計段階で考えていたような、あっと驚く動きになりません。原因は、本体部分の素材、銅にありました。銅は金属の中では比較的やわらかい特徴があります。そのため、溝の部分が変形し、ほかの部品がひっかかってしまったのです。結局、素材や設計をイチから見直すことになりました。

皆で作っている風景あれから2日後。本体部分の素材を銅から鉄に変え、コマ作りが進められていました。そして現場では、ちょっとした変化が。コマ作りにかかわっていなかった社員たちが、作業の立て込む仲間を積極的に手伝っていたのです。リーダーの金野さん。コマ作りをする社員たちに、いつもとの違いを感じていました。「普段の業務だと、みんなで一つのことをやるっていうんじゃなくて、それぞれ自分の担当を黙々とやるっていう感じなんだけど、こうやって集中してやるのも頭を使っていいんじゃないかな。」

からくりゴマ・ハイスピードカメラ映像大会前日。完成したコマを社内でお披露目。脇山社長がコマを見るのはこれが初めてです。なんと!回り始めると、中から部品が飛び出してきました。胴体の中央から金属部品が飛び出してくる「からくりゴマ」だったんです。外側に重みを持たせることで、遠心力が高まり、コマが長く回り続けるのです。社長から合格点をもらった「からくりゴマ」。その開発を通じて、社内の雰囲気が変わり始めました。社員達から次々とアイデアが出てくるようになったのです。社員が一丸となってつくった、技術の結晶。決戦の準備が整いました。

結果発表!
  町工場がガチンコ勝負!最強のコマ決定戦!

さあ、いよいよ「全日本製造業コマ大戦」北海道・東北予選、決戦の火蓋が切られました。相手に2回連続で勝つと、次の試合に進めます。1回戦第4試合。「なんだあれ!」「すごいですね。」"からくりゴマ"のプラモール精工のコマが回ると、会場は大盛り上がりです。しかし勝負の3投目...ああっ!うまくコマを回せない!残念ながらここでプラモール精工、1回戦敗退です。続いて、重い素材・銅タングステンを使った岩沼精工。1回戦はなんなくこなし、準々決勝の相手は...被災した時、機械を無償で提供してくれた、あの富士精密です。岩沼精工のコマを回す砂澤さん、緊張したのかなんとコマを土俵の外へ出してしまう痛恨のミス!結果、その後も勝ち進んだ富士精密が優勝しました。適度に重さがあったこと、コマの先端に鉄の玉が埋め込まれていたこと、そして1日1時間の練習で培った"コマ回しテクニック"が勝利のポイントでした。この大会の優勝と準優勝のチームは、来年2月に横浜で開かれる全国大会に出場します。

トーナメント表

優勝:富士精密(宮城県美里町)
準優勝:宮城県白石工業高校(宮城県白石市)
3位:庄司製作所(宮城県柴田町)
4位:サカイ技研(北海道札幌市)
ベスト8:岩沼精工(宮城県岩沼市)・東北精密工業(福島県福島市)
     太田精工(宮城県大河原町)・小林工業(秋田県由利本庄市)

山根一眞さん(ノンフィクション作家)

山根一眞さん(ノンフィクション作家)

この大会では、まずほかに勝つために「自分で何を作るか」って発想が必要。それから、設計も自分でしなくちゃいけない。材料選びも自分でしなくちゃいけない。加工も考えなくちゃいけない。で、最後出来上がったものが、こういう戦いによって評価されるっていう。名前を挙げることによって、「おもしろい会社があるな」と。「なかなかいいアイディアがあるな」。さっきの金属が飛び出してくるような"からくりゴマ"、あれもきっとね、「ああいうものを作れるとこなら、ちょっと頼みたい」とかね。そういうことにも繋がってくると思うんですよね。今後、このチーム同士が、ものすごく強い交流を持って、絆持って、大きな課題がきたときに、「おお、みんなでやろうぜ」ってなると思いますよ。

お問い合わせ先

「全日本製造業コマ大戦」について
コマ大戦の公式ホームページ
ホームページ: http://www.komataisen.com/

コマ大戦のフェイスブックのページ
ホームページ: https://www.facebook.com/komataisen

今回取材したコマ大戦・北海道東北予選について
北海道東北予選・仙台場所のフェイスブックのページ
ホームページ: http://www.facebook.com/samurai.koma

VTRで取材をしたコマ大戦の参加会社
震災から復興した会社(銅タングステン製のコマ)
岩沼精工(宮城県岩沼市)
ホームページ: http://www.iwanuma-sk.co.jp/pc/

"からくりゴマ"をつくった会社(回すと広がるコマ)
プラモール精工(宮城県富谷町)
ホームページ: http://www.plamoul-seiko.co.jp/

VTRに登場した岩沼精工に支援をした会社
機械を提供した会社
富士精密(宮城県美里町)
電話: 0229-31-1051

場所を提供した会社
朝日金属工業(山形県長井市)
ホームページ: http://www.asakin.co.jp/
カビラさん選曲のエンディングの曲
曲名:「In This Country(1987)」
歌手名:Robin Zander(ロビン ザンダー)