「不確実性」を買う? 新春「福袋」のカラクリ
東洋経済オンライン 2月11日(月)8時0分配信
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| 撮影:尾形文繁 |
■ 福袋は、日本限定の「縁起物」?
いまや新年の風物詩となった福袋。実は国際的には非常に珍しいもののようだ。著者の勤める大学には多くの留学生や外国人同僚が在籍しているが、彼らに尋ねてみても、自分の国にそういった商品がある、という反応はなかった。
【詳細画像または表】
私自身も海外で福袋を見掛けたことは一度もない。日本人にとって当たり前の福袋だが、かなり特殊なガラパゴス的商品なのかもしれない。
確かに、ちょっと冷静に考えてみると、「福袋」という販売方法は一風変わっている。通常の商品と違い、いくつかのアイテムがパッケージに詰められていて、しかもその内容が消費者にはわからない。
「×万円相当の福袋」のように、定価(または通常の販売価格)の合計額が、目安として知らされていることは多いが、どのような商品が入っているかは、実際に買ってみるまで闇の中、いや袋の中なのである。こんなリスキーな売り方がよその国で流行らないのも、当たり前のような気がしてくる。
では、福袋というのは日本固有の非合理な慣習、商法にすぎないのだろうか?
それとも、この売り方には何らかのメリットが潜んでいるのだろうか?
今回は、福袋をめぐるこの興味深い問題について、経済学的な視点から皆さんと一緒に考えていきたい。買い手と売り手のインセンティブに注目しながら、経済学の力で見えない福袋の中身を読み解いていくことにしよう。
■ 福袋の三つの特徴 まとめて・安く・不確実?
福袋の特徴は大きく分けて三つある。まず一つ目の特徴は「まとめ売り」だ。一つの福袋の中には、通常複数のアイテムが入っている。
そして二つ目はその「値段の安さ」。福袋の値段が、中に入っているアイテムの定価合計の半額以下になるくらいは当たり前で、7〜8割引なんてことも決して珍しくない。商品がたくさん詰まっていて、その値段が格安、とくれば消費者が福袋をお買い得と感じるのも、もっともだ。
けれども、この二つのポイントが、そこまで珍しい特徴かというと、そうでもないだろう。複数のアイテムの抱き合わせ販売は日常的に観察されるし、安売りならセールやバーゲンを通じて定期的に行われる。また、その二つを組み合わせた、「□ブランドの商品を○個買えば、△円値引き」という売り方も、しばしば見掛ける。
では、福袋を福袋たらしめているユニークなポイント、三つ目の特徴が何なのかというと、それはやはり中身の「不確実性」だろう。消費者の視点からは、「運」と言い換えられるかもしれない。初詣のおみくじと同じで、福袋の中身は買って開けてみるまでわからない。こういった極端なリスクを伴う商品には、通常ほとんどお目にかからない。
中身がわからないというのは、一見するとおみくじのようなドキドキ感やワクワク感を生んで、消費者にウケそうな気もする。ただ、多くの消費者はこういった不確実性を嫌う(=リスク回避的である)ことが知られている。
たとえば消費者が二人いて、どちらも商品Aには8000円の価値、商品Bには2000円の価値があると考えているとしよう。いま、二つの商品をそのまま、つまり何が得られるかを明らかにして販売すると、売り手は8000円+2000円で1万円を手にすることができる。
では、福袋のように中身がどちらかわからない形で、二つ並べて売りに出した場合には、いったい何が起こるだろうか?
最終更新:2月11日(月)13時45分
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