無償入居終了後に不安 京滋の震災避難者ら
東日本大震災や福島第1原発事故で京都や滋賀の公営住宅に避難する人たちが、来年3月から順次終了する無償入居期間後の住まいの確保に不安を募らせている。特に自主避難者は退去を求められる可能性があり、「生活のめどが立てられない」と、自治体に無償期間の延長を求めている。行政側も避難者の意向調査を始めるなど、対策に乗り出した。11日で震災から1年11カ月を迎える。
避難者に対する公営住宅の無償提供の期間は、京都府や京都市が「入居から3年」、滋賀県や大津市は「最長2014年3月末まで」などとしている。無償期間が終わっても、原発事故の避難指示区域に住んでいたり、自宅が全壊した被災者は、復興支援の特別措置法に基づき、有償ながら継続して公営住宅に住める。
一方、避難区域外から自主避難したり、自宅が全壊を免れた人は、現状では無償期間後、一般住民と同じように公営住宅の公募に申し込まなければならないケースも出てくる。京都市の場合、市営住宅の当選倍率は約9・7倍(昨年4~9月平均)だ。
しかも、夫が被災地に残る母子避難者や、被災地に住民票のある人は公営住宅の一般公募の資格がない。福島県から健康調査や医療費助成を受けるため、住民票を避難先に移せない人は多いという。
このため、複数の避難者や支援者グループが昨年12月、府と京都市に、公営住宅の無償期間の延長を求める陳情書を提出した。
京都市は1月から市営住宅や市があっせんした民間住宅に避難する103世帯を対象に、継続入居の希望や被災地の住宅の状況などの聞き取り調査を始めた。市は「国の動きを注視しながら避難者に寄り添った対応をしたい」としている。滋賀県も、被災地の住宅が全壊を免れた避難者でも継続入居できるよう、規則改正を進めている。
■京都の避難者744人
東日本大震災や福島第1原発事故に伴う京都府と滋賀県への避難者数は、両府県が10日までに把握しているだけで計1095人(京都744人、滋賀351人)となった。1カ月前と比べて京都は3人、滋賀は2人減った。
■自主避難者「原則退去」負担重く
福島市から京都市山科区の市営住宅に避難する阿部小織さん(44)は1月下旬、市から届いた封書を見て、ため息をついた。「出て行かないといけないのかな」。書面には「無償入居期間終了後は原則として退去」と書かれていた。
長女(11)への放射能の影響を恐れて、一昨年8月に自主避難した。収入は福島に残る夫(50)からの仕送りのみ。住宅の無償提供が終わると、生活は一層苦しくなる。
昨年12月、同じ不安を抱える避難者や支援者13人と京都市役所を訪れ、無償期間延長を求める陳情書を渡した。「市営住宅の公募に必要な住民票を移すと、娘が福島県の医療費補助を受けられなくなる」。阿部さんは必死に訴えた。
福島市から長女(12)と伏見区に避難する加藤裕子さんも昨年12月、避難者家族ら88人分の署名を添えて府に陳情書を出した。
京都に来て1年9カ月。今春に中学生になる長女もようやく生活に慣れてきた。「度重なる転居で子どもの負担になることは避けたい」と話す。
避難で失業を余儀なくされた。子育てをしながら仕事を探しているが、正社員の求人は少なく就職は難しい。「自立に向けて、せめて住宅支援をお願いしたい」と、行政支援の継続を切望した。
【 2013年02月11日 10時24分 】