音楽にはまりつつあります。
某動画サイトで作業用BGMを探す日々。
なんとなく早苗さんにはケルト系の音楽が似合いそうな気がします。
さて、ここからはssとなります。
例によってねつ造設定がありますのでお気をつけて。
「守矢さんとこの」
正体不明の空飛ぶ船の異変が解決されて数日。
各地で宴会が行われている。
初めはその異変の大本である聖白蓮たちが住む命蓮寺、そこに酒好き達が集まり場所を転々としながら宴会は続いていた。
酒好きの鬼達がいるせいかはたまた本人達の気質か、はたからみたらそれは凄まじい宴会である。
騒ぎ声が絶えることはなく飲めや歌えやの大合唱。
そんな中に僕は一人投げ出されていた。
「たまには付き合いも大事だぜ」
「そうそう、酒は皆で楽しまないと!」
と手癖の悪い妹分から言われ一緒にいた二本角の鬼に無理矢理連れられて宴会に連れてこられた。
魔理沙からの誘いだけなら何とか口八丁手八丁で切りぬける事も出来るが、鬼である萃香に眼を付けられたとあっては
口で言っても聞いてはくれない、手を使われたらもうどうしようもないというものである。
というわけで霖之助は半ば無理矢理参加させられていた。
しかし会場に連れてこられた頃にはもうかなりの人数が出来あがっていた。
そこかしこに見知った顔がいた。
烏天狗の文は同じ烏天狗であろう髪を二つに結んだ少女と飲み比べている。
妖夢は主人の食べる料理を持ってくるのにおおわらわ
紫は妖夢の主人である幽々子の隣で式に色々と言い
その式は主人には適当に相槌を返しながら自身の式の世話をしていた。
咲夜と彼女の主レミリアは霊夢の横で飲んでいる。まぁ、咲夜はあまり飲んではいないようだが。
そうやって周りを見ていたらいつの間にか連れてきた張本人達はそれぞれ散ってしまっていた。
どうやら、僕の事より自分の欲を満たしにいくことを優先したようだ。
僕としてはその方が好都合である。
正直な話、天狗や鬼達と飲み比べなどになったらひとたまりもない。
それに僕はお酒はそんな味も分からないような状態で飲むのは好きじゃない。風情を肴にちびちびと飲む方が性に合っている。
騒ぎに巻き込まれないよう、彼は一人酒と猪口を持って人の気配のない場所に隠れるように座った。
酒の酔いもほどほどに良くなってきた頃、後ろから声が聞こえてきた。
「そこで怪しく立っているのはだれですか~?」
まずい、僕がここにいるのがばれたか。なんとか今日の所は切り抜けられそうだったんだが……
「この場を乱すふとどきな妖怪なら、私、こちやさなえが退治しますよ~」
ふらふらとした足取りでこちらに向かってくる少女、名前はさなえといったか。
確か魔理沙達が話していた山の神社の風祝だったはずだ。今回の異変では霊夢達と同じように異変解決に奔走したらしい。
どうやらこの宴会に来て飲まされたようだ。薄暗いこの場でも顔の様子が酔っている事を示していた。
その様子だと退治される側になってしまいそうな気がするが……
とりあえず、落ち着かせて話をしよう。
「僕の名前は森近霖之助。魔法の森で古道具屋を営んでいるものだ。今日は魔理沙達に連れられてここに来ているんだ」
「りんのすけ……ああ、あの二人がいってました~、変わった人だって。じゃあ、あなたはふとどきものではないんですね?」
「とりあえず、この場で暴れたりなんかはしないよ」
「なぁんだ、ようかいたいじが出来るかと思ってちょっと期待してたのに」
今の様子では逆にやられる確率の方が高そうだ……という突っ込みはしない方がよさそうだ。
折角相手が気を許しているのだから気分を害することはしたくない。
上手く話を合わせてここを切り抜けよう。
「そんなに妖怪退治がしたいのかい?」
「信仰を得るためです! 神奈子様もそれがいいとおっしゃってました!」
「それでこの異変解決に乗り出した訳か。」
「そうです! それでですね、聞いてくださいよ。道中にはいろんな妖怪がいたんです!
最初に出会ったのはネズミの妖怪でした。後から聞いた話だと彼女は探し物を見つける名人だそうで」
「…そ、そうなのか」
異変解決という言葉に反応した彼女は僕の横に腰かけて僕に話を始めた。
そう言って彼女は自分が見聞きして体験してきた異変の内容を話していた……のだろうと思う。
酒のせいだろうか、少々話す事が支離滅裂だった。
それでも僕が異変の事だと分かったのは霊夢達からある程度の事を聞いていたからだと思う。
……というわけで守矢神社にも少しずつ信仰が集まってきたんです!」
そこまで言い終えると彼女は得意げに胸を張った。
こういう場合は相手に同調しておくのが一番無難な切り抜け方だ。
「そ、そうか。それはいいことをしたんだね」
僕が一言そう言うと彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「ですよね! もりちかさんだけです。この場でそう言ってくれたのは」
大概の連中が大騒ぎしているなかでこんな話をしても流されるだけだとは思わなかったのだろうか。
もう始まる時点で酔い始めていたのだろう。
そう結論付けた。
そうこうしていると彼女は欠伸と伸びをして
「ふぁあ……いっぱい話したらなんだか眠くなってきました……」
こっくりこっくりと船をこぎ始めた。
本来ならば彼女を起こすか別の誰かに任せるのが適当なのだろうが生憎近くには誰もいなかった。
人気のない所を選んだのだから当たり前なのだが。
「早苗、ここで寝てしまうのはよくない。眠いのは分かるが起きるんだ。」
「大丈夫ですよ……私はあらひとがみですから……」
声の調子は全く大丈夫に聞こえなかった。
「この季節に外で寝てしまうのはよくない。眼を覚ましてくれ」
「だいじょぶですってば……あらひと……はそんなこ……」
途中で言葉は途切れてしまった。酔っているとはいえ気が抜けすぎな気がする。
とはいってもこのまま彼女を放っておくのも良くない。
すうすうと気持ち良さそうに眠る彼女を起こすのは忍びなく、僕はしばらく一人でぼうっとしていることになった。
彼女を見やると、眠りながらも少し寒そうにしている。今まではお酒のおかげで暖かい状態でいられたがそう長くはもたない。
とりあえず毛布がわりになるようなものが必要だ。しかし近くにはそういうものはありそうにない。
「しかたないか……」
結局、上着で代用することにした。僕の場合、半妖の力のおかげで暑さ寒さの耐性は人間よりは高い。
だから少々薄着でも困らないのだ。それにこういう場は過去に何度か経験がある。
香霖堂で魔理沙達が宴会を勝手にやって眠ってしまった彼女たちの世話をさせられている。
そのせいだろうか、苦笑混じりに溜息が出てしまうのは。
上着をかけると彼女は体をなるべく外に出さないよう小さく丸くなった。
彼女は外の世界から幻想郷にやってきたと言っていたが外の世界とこちらでは大きく文化に違いがある。
それに戸惑いを覚えたりしたことはあったのだろうか?初めのころはあったのかもしれない。
だが今の彼女の表情を見るにこちらの世界でも楽しくやれているようだ。
と考えていると早苗がやってきた方向に人影が見えた。
「お、早苗。こんなとこにいたんだね。っとそこにいるのは……」
「僕は森近霖之助。魔理沙達に連れられてここに来た古道具屋だよ」
僕は早苗を探しに来たのであろう人影にそう答えた。彼女の介抱を任せられると楽なのだが……
「あらら、見事に気持ち良さそうにしちゃって」
「彼女にお酒を勧めたのは誰だ?彼女はあまり酒に強くなさそうだが……」
「うーん。飲んでみなよって言うのは私たちなんだけどこの子ブレーキかけれらんないんだよね……」
言葉尻の語調と裏腹に彼女は楽しそうである。
「彼女が下戸だと知っていて飲ませているのか。」
小さくため息を漏らす。
「まぁまぁ、楽しそうだからいいんじゃないの? それに霖之助もあんまり人のことは言えないと思うけどね」
彼女はすでに酔いつぶれている魔理沙の方を指さす。
「僕のことを知っていたのか」
「話だけね。偏屈な道具屋だってさ。でも聞いてた割に結構いい顔してるね。もっと卑屈そうで根暗な奴かと思ってたよ」
彼女はいったい僕のことをどんな人物だと言っているのだ。明日にでも問いただしておかないといけないかもしれない。
「さてと、そろそろこの子を連れて帰んなきゃ。介抱ありがとね」
彼女が早苗を背中に背負う状態になっている。その姿はどうにもちぐはぐな感じがしておかしかった。
例えるなら小学生が高校生を背負っているような感じである。
このままでは引きずっていきかねないが、なんてことはない、彼女は空が飛べる。ひと一人ぐらいならなんとかなるのだろう。
「感謝されるほどでもないさ。ただただ人の話を聞くのも嫌いじゃない」
「そう言ってくれるとありがたいねぇ」
「彼女が楽しそうに話してくれたおかげでね、魔理沙や霊夢から聞いた話とまた違った視点で聞けて良かったよ」
「……この子は私たちのためにこっちに来るのを決断したんだ。それからはずっと信仰のために時間を費やしてくれたんだ。
もちろんその中でいろんなことがあってちょっと行き過ぎたこともしちゃったけど、この子なりに必死だったんだよ。
あっちの世界でできなかった事を取り戻そうとね」
「君たちが初めて来たときに起こした異変かい? もう霊夢たちは気にしてないよ」
「そうみたいだね。こっちとしてはありがたいよ。それに本当に今日はこの子に付き合ってくれてありがと。
今度お礼に行かせるよ」
「お礼よりうちの商品を買ってくれた方が助かるが? 」
「うーん、それも考えとくよ。じゃ! 」
そういってその場を蹴り、ふわりと浮いて彼女たちは飛んで行った。
「さすがは神か。軽々とつれていったな」
と僕は聞く人が聞いたら怒られそうな台詞を夜の空につぶやいた。
「神奈子ー。そろそろ帰ろ」
「早苗は……ってそこにいるわね」
「連日飲ませすぎちゃったみたい。でもちゃんと話を聞いてくれたのがいてくれたみたいでね」
「へぇぇ。珍しい奴じゃない。この場でそんな冷静なんて」
「独り酒してた所に早苗が乗り込んじゃったみたいでね。ほら、あそこの」
「暗くて見えないじゃない……まぁ、また今度でいいかしらね」
「そっ。とりあえず帰って寝かせてやりましょ」
明くる日……といっても宴会からは約二日経っているのだが。
あの後は、酔っぱらった霊夢や魔理沙の世話を押し付けられ彼女を香霖堂まで連れ帰る事になった。
僕自身は歩きで山を下りたため香霖堂まで着くのが遅くなったのだ。ちなみに二人はスキマでの移動だったが。
彼女達はある程度元気になった所で自分の家へ帰って行った。
その頃にはもう夕暮れも近くなっており、香霖堂はとりあえず閉店の看板を出してその日は寝ることにしたのである。
またいつものように客が来るまでの時間の有効活用である読書に勤しんでいるとカウベルの音がした。
「あの……こちらは香霖堂ですよね?」
その声には聞き覚えがあった。約二日ほど前に。
「東風谷早苗……だっだね。ようこそ。香霖堂へ」
「あっ、はい! 私は東風谷早苗です。香霖堂さ……じゃない、霖之助さんですか?」
名前を呼ばれたことか、ここが香霖堂だという事かどうかは分からないが彼女は驚いたのか変な言い間違いをしてしまったようだ。
「慌てなくともいいさ。ここが香霖堂、僕が店主の森近霖之助。古道具屋と外の世界の道具を取り扱ってるよ」
「あ、ありがとうございます……この間はお世話になりました。といっても私あの時の記憶がほとんど無くて、諏訪子様から
聞いた話しか覚えてないんですけど……」
一度礼をした後、深呼吸をして彼女はそう言った。
彼女はおそらく緊張しているのだろう。一度あったとはいえあの時は酒宴の場。
本人の言うとおり記憶もないほど飲んでいたのなら僕とはほぼ初対面に感じても仕方あるまい。
彼女はとりあえずの挨拶は終わって次に何と言われるか待っているようだった。
諏訪子と交わした口約束の事も聞いていて何かやらなくてはいけないという気になっているのかもしれない。
が、こちらとしては新たな良客になり得る人物にいきなり掃除や草むしりをやらせるというのはしたくない。
まぁ、例外もあるにはあったが……
さて、どうしたものかと考えていると彼女が勘定台の上に置いてある道具に目をやってこう聞いてきた。
「それ、ポケベルですよね? 」
「ん。これは無線呼び出し用小型電波受信機ではないのか? 」
「そんな長い名前では聞いたことがありませんけど……私たちはこれをポケベルって呼んでましたよ」
外の世界ではそう呼ばれていたのか。きっと略称をつけることで明確にこれを表す事ができたからだろう。
呼び名を考えるにポケとベルに分けられる。ベルは呼び鈴の意味を表す英語からだろう。じゃあポケとは……
「あ、あのー……霖之助さん?」
呼びかけられて僕は彼女そっちのけで道具の考察に入りかけた事に気がついた。
「すまない、こんな店をやっているものだから道具の事になると少し周りが見えなくなってしまう事があってね」
「ふふっ。そうなんですか」
「そういえば君は外の世界から来たんだったね。もしよければ少し話をしていかないか?
いつまでも客人を立たせていては僕としても申し訳ない」
「いいですが……お礼に関しては……」
「その事なら気にしなくていいさ。幸か不幸かああいうのは慣れているしね。僕にとっては外の世界の事を知る人物と話が
できる方がありがたい」
「はい。分かりました。霖之助さんがそれでいいのなら」
「なら、そこにある椅子にでも掛けてくれ。僕はお茶菓子でも持ってくるよ」
「逆に気を遣わせてしまったみたいですね」
彼女は初めに店に入ってきた時より幾分柔らかい表情になっていた。
話をしてみるとポケベルは早苗が小さかったころに爆発的に生産され携帯電話の登場とともに消えていったのだという。
僕としてはこれをどうやって動かすのかを詳しく知りたかったが早苗が一通り触ってみた所電池がありません、とのことだった。
やはりこれも幻想郷では動かすのは困難なようだ。
外の世界の道具に関して話している間、彼女も共通の話題が出来たためか思いのほか長く話をしてくれた。
僕にとっては初耳で彼女にとっては思い出話、なんだか不思議な感覚だった。
緩やかに時間が過ぎていたその時
「本を返せー! 」
大きな音を立てて香霖堂の部屋が開かれた。
そこに立っていたのはあの時魔理沙に追い返された朱鷺のような羽を持つ妖怪だった。
「今日という今日は返してもらうわよ! 運のいい事に巫女も魔法使いもいないし、あんたには負けないよ!」
これは少し厄介な事になった。魔理沙や霊夢がいれば彼女達に任せておけばいいのだが今はそういうわけにはいかない。
どうやって切り抜けようかと考え始めた矢先横に座っていた早苗が立ち上がってこう言った。
「森近さん、この子は妖怪ですよね?」
「ああ、そうだが……」
「しかも森近さんを困らせる悪い妖怪ですね?」
「……」
さっきまでの彼女の雰囲気とがらりと変わり、なぜか顔は嬉しそうだった。
「ならばこの妖怪は退治しなければなりません! 覚悟ー!」
そう言うがはやいか彼女は入口に立っていた妖怪の子に弾幕を放った。
こちらが何をするつもりか聞こうとする間もなくである。
「ひゃあ!」
あの子も驚いてさっと身をかわした。なんとか弾幕は店の中のものには当たらず外へ飛んでいった。
「危ないじゃないの!」
「さっきのはほんの小手調べですよ。まぁ、悪役が最初の一撃でやられちゃうなんて雑魚以外じゃあり得ませんしね。本番はこれからです」
どうにも彼女の良くない所のスイッチが入ってしまったようだ。ああなると僕には止められそうにない気がする。
妖怪の子も大変だろうが、店の心配をしておいた方がよさそうだ。
かくいう妖怪の子もいきなりの早苗の弾幕にけおされたようだ。
「きょ、今日こそ邪魔な奴はいないと思ってきたのに……うぅ……お、覚えてなさいよ!」
彼女は早苗の方ではなく僕を見てそう言って逃げ出した。僕が用心棒でも雇ったとでも考えたのだろうか。
しかしこれで落着したかと思い早苗の方を見ると彼女は既にあの妖怪の子を追いかけ始めていた。
「待ちなさいー! きちんと私に退治されてから逃げるとかしないとおかしいでしょう!」
「ええ! まだ追ってくるの? 白黒のよりしつこ……きゃあ!」
上空ではちょっと一方的過ぎる気もするが弾幕ごっこが繰り広げられていた。
僕の知る限りで弾幕ごっこをし始めた少女達は終わるまでこちらの意見を聴くことはない。
元より僕の声は届きやしないのだろうが。
本来の弾幕ごっこは異変の時に行われるものだが僕にとってはある種見慣れた光景でもある。
おそらくまたやられてしまうであろう朱鷺色の羽を持つ少女には少しばかりの罪悪の感情を
おそらく勝ち誇った表情で帰ってくるであろう早苗には一種の諦めのような感情を持ちつつ二人の様子を見ていた。
この元ネタを書かれた方、そしてここまで読んでいただいた方に感謝を。
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