ssをひとつのっけます。
某所で数瞬さとこい霖の流れだったので思い切って書き上げました。
あまり長くありません。
いつか話題になっていたさと(こい)霖の新たな切り口を自分なりに模索した結果です。
しかし、もう別のだれかが形にしてしまっているかもしれませんが。
霖之助 こいし さとり
気がついたら僕は香霖堂にはいなかった。
今は薄暗い洋風の一室にいるようだ。
状況把握と現状理解のために僕は今日朝からの自らの行動を顧みる事にした。
朝 昨夜、本を遅くまで読んでいたため少しだけ起きるのがだるく感じたがいつも通りに起床。
枕元の本がしばらく前に読んでしまってそれから本棚から出すことはなかった『宇宙の小石』だったのが気にはなったが。
それからいつものように店を開けようと準備した。寝床の本を元に戻し、カウンターでお客が来るのを待っていた。
そうして…………今に至っている。
この後三回ほど同じ回顧を繰り返し、無駄だという事に決心がついた。
霖之助は考える方向を変え、外部からの影響について考え始めた。
いきなり香霖堂がこんな場所に変わるなど普通ではありえない。つまり何らかの異変に巻き込まれた可能性があるということだ。
例えば、ある時は幻想郷全体が深い霧に呑まれた、そしてある時は満月が欠け長い夜が幻想郷を包んだ、
そのどれも霊夢達が異変解決にのりだしたことで事なきを得たが。
前者はこれは我が香霖堂の数少ないお客様でもある紅魔館の主がやりだした計画であろう。
彼女は吸血鬼である。吸血鬼のルーツは羅馬尼亜という遠く離れた地という説があるらしい。
その地の様子を再現してみたくなったのだろう。
彼女は五百年を優に超える時を生きてきた吸血鬼だが、性格は見た目通りの子供そのものである。
しかしその気になれば異変を起こせる人物である。
長い夜は迷いの竹林に住む永遠亭の住人に寄るものだった。
つまりは今、幻想郷では何者かが異変を起こしていると考えられる。それも幻想郷全体を覆い尽くすような力を持った何者かが。
それに香霖堂、そして霖之助は不運なことに巻き込まれたという事だ。
それからこれから自分の身に起こるかもしれない事、それにどう対処するかを思案していた所
「何やらうるさい声がすると思ってきてみたら、あなたは誰?」
声が聞こえた。声から判断するに少女である。魔理沙達がここまで来てくれたのかとも一瞬考えたが魔理沙達がこんな他人行儀な話し方をするはずもない。
よく見ると見知らぬ少女が立っていた。
「君は、誰だい?」
「それはこちらの質問です。あなたは……あの白黒の魔法使いや紅白の巫女の知り合いなのですか」
「なぜそれが……」
「私は古明地さとり。人の心が読めるのです。」
「君が、魔理沙達の言っていたあの……」
「そう気持の悪い、怨霊も恐れ怯む少女、さとりです」
そう言う彼女の声は少しだけ悲しげだった。
「本当に読めるんだな、心が。読唇術というわけではないようだし。申し遅れてすまない。
僕は森近霖之助。人と妖怪のハー……その表情はもう理解してもらえたようだね」
「ええ。それにあなたが荒事は得意じゃないってこともね」
「そこまで分かってもらえたならありがたい。僕は魔理沙達と違って手荒らなことはしない主義なんだ。だから話のわかる人に会えてよかった」
「あなた、私がさとりの妖怪だって分かっててそう言って……るのね。似たような事をする妖怪もいる……あなたその妖怪が少し苦手なのね。
え、でも手助けをしてもらっている以上露骨に出す訳にはいかない……あなた、心の声が面白いわね。考えがあっちこっちに」
「自分の考えている事を分かってもらうというのは大変な作業だしね。言葉は聞く側によって変わってしまうこともある。それに比べ心の声ならその心配もほとんどない。
まぁ嘘もつけないという事でもあるのだが。」
「そう。私の前では嘘はつけません。フフ、商人としては大変な相手だ、そうね。得意の話術も私の前では意味はなさないわ。」
霖之助は肩をすくめた。さとりはそれを見てまた少し微笑んだ。
「話が始めからかなりずれてしまったわね。どうやらあなたはここ地霊殿に用があってきた訳ではないのね……ええ。
ここは地霊殿、地底の館。そうよ。あなたが考えている異変とやらではないわ。そうだとしたらそれはそれで面白い事だけど」
「僕はてっきりここは香霖堂なのかと思っていたよ。地底の館だったのか……」
「あなたはどうやってここまで……それが分からない……いつの間にかここにいた……」
そこまでさとりは呟くと少し考える仕草を取り
「きっと私の妹の仕業ね。私の妹、こいしは無意識を操る程度の能力なのよ。
あなた、ここに来る前独り言を言っていたような記憶はない? ……そう。
それはこいしがあなたに話しかけあなたが無意識に返答していたの 本? きっとそのタイトルに惹かれたのね。
でもその内容ならあの子はすぐに飽きてしまったのでしょうけど。」
彼女は霖之助の言おうとする事を先に口に出し答えていった。それが一段落した後
「君の言う事は何とか理解できたし、君の妹、こいしだったね。確かに彼女が原因なのかもしれない。
しかしなぜ僕がここに連れてこられているんだい?」
「それは、おそらくあなたがこいしに気に入られてしまったのでしょうね」
「君の家では気にいったものは持ち帰るのが習慣なのか?」
「こいしは……」
「あ! あ姉ちゃん!」
再び少女の声がした。今度はさとりよりも幼い声だった。その発言で誰なのか霖之助には容易に理解できたが。
「もう霖之助とも会ってたんだ。ちょうどよかった。私霖之助をペットにする!」
その言葉に霖之助は唖然とし、さとりは小さな溜息をついた。
僕らは地底の館地霊殿の応接間らしき所に来ていた。さとりの妹であるこいしの言い分をまずは聞いてみようというのである。
「地上でふらふら飛んでたら、霊夢を見つけて遊ぼうかなと思ってついて行ったの。
そしたら変な家に下りたのよ。なんだかガラクタばっかりで少し薄暗い所。ちょっとだけ地霊殿に似てたけど
その家に霊夢は入っていって、なんだかいろいろしてたわ。そこに霖之助がいたの。だからつれて帰ることにしたの」
彼女はさも当然のように言い切った。こいし自身は全て分かっているのだろうが肝心な所はほとんど話してくれてはいない。
僕が分かった事は異変というわけではないが面倒事に巻き込まれているのは確実だということぐらいだ。
僕は助けを求めてさとりの方を見た。さとりならこいしの言いたい事を全て把握できるはずだ。
「期待してる所で悪いのだけれどこいしの心は私にも読めないの。ああ、でもあなたの一番聞きたい事を聞くぐらいはできるわ。
こいし、なぜ霖之助をペットにしようと思いついたの?」
「だって、霖之助と話してると面白いんだもの。
あの家にはいろんなガラクタがおいてあってこれ何って聞いたらすごく詳しく話してくれるの!
でもたまに楽しくないお話まで話しちゃってたけど。」
こいしの話していることから推察するに僕はかなり饒舌だったらしい。
ほとんど自覚がない所から無意識にしてしまっていたようだ。
「そう、それがこいしの能力。無意識を操る程度の能力よ。あら、恐ろしさではなく恥ずかしさの方が大きい……そうね。
聞いた限りの様子だとあなた独りでぶつぶつ呟いている見えても仕方ないものね。ふふっ」
「笑いごとじゃないよ。もし烏天狗にでも聞かれたらどんな記事を書かれるか分かったものじゃない」
「えー、でも話している時の霖之助はなんだかとっても楽しそうだったけどなー」
「らしいわよ」
二人とも笑っている。その笑う理由が違っていれば素直にかわいいと言えるものなのだろうが。あいにく今は当事者である。
僕はペットになる気もこのまま地底の館に居続ける気もない。それをきちんと説明しなければ。
「こいし、僕はペットになる気はないよ。話を聞けばこの地霊殿にはたくさん妖怪のペット達がいるようだが僕は飼われたりはしない」
「なんで? ここにいればご飯だって普通に食べられるし、お燐やお空、お姉ちゃんもいるから楽しいはずよ?」
「彼女達は元々ここの住人、いわば家族みたいなものだろう? 僕にもちゃんとした家があるんだ」
「じゃあ、そこから移ればいいんじゃないの?」
「それは出来ない相談だ。僕はあそこで道具屋を営んでいる。それを投げ出したりはしない。」
「じゃあ、こっちで道具屋すればいいんじゃないの?」
会話は平行線のまま。とりあえず埒が明かないのでさとりの方を見た。
「今回は流石にこいしが悪いわ。こいし、何もいますぐペットにしなくてもいいでしょう?
店主さんにはこれからは友人として地霊殿に来てもらいましょう?」
「僕はわざわざこんな遠くまで……「地霊殿にはあなたの見た事のない道具もありますよ。それにもしあなたがお空の能力を知ったら
きっと興味を持つと思うわ」
最後まで言わせてもくれなかったがさとりの言った事に反応せずにはいられなかった。
「それは道具の商談と取ってもかまわないのかな?」
「どうぞ。ご自由に。私には価値の分からないものばかりだもの。
こいしもそれで我慢してくれるわよね」
「うーん。まぁ、また来てくれるならいいかな」
「それなら僕は一度帰らせてもらうよ。ここからはどうやって帰ればいいんだ?」
「今はお燐もいないし……店主さんは飛べ…ないのね。ならこいし、送ってあげなさい」
「はーい。じゃ、お姉ちゃんまた後でね」
とここまでの会話は覚えている。その時は確かにあの館にいたはずなのだが、すでに僕は香霖堂の中にいた。
まるで、時間が止まってしまったようだと感じたが実際にはもう夜の子の刻を過ぎたあたりだった。
「それじゃ、また来るね、じゃなくてまた来てね」
楽しそうにこちらに手を振り彼女は帰っていった。
これはほとんど導入部みたいなものですね。
2本目を作る電波が飛んでくるといいのですが
余談・キーボードでさとりと打とうとするとSARORIと打ってしまう。なぜか。
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