この写真もそろそろ・・           

どうなってるんだ!準天頂衛星・みちびき

by Mr.参謀
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商品概要
「みちびき」日本の科学技術の結晶です
カテゴリー:サービス>GPS衛星
企業・団体:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
支払い価格:\0(ただし、関連商品を\64,600で購入)
利用時期:2012年5月〜
利用のきっかけ:『高度誤差1m以内』というスペックが必要だったから
寸評:
情報不足も甚だしい。「みちびき」本来のスペックでの運用は、
まだ未定みたいですよ。
『現場で性能を発揮すること』が目的なら、スペックを鵜呑みにした過剰な期待はしない方が良い。


目次
第1章 「みちびき」への期待と疑念
第2章 未だ本来の性能が出ない「みちびち」の運用状態
第3章 欲しい情報が見えないJAXAのサイト
第4章 あとがき

第1章 「みちびき」への期待と疑念
1−1.利用のきっかけ

 近くの城山の測量地図を制作している関係で、去年(2011年)春に、ガーミン社のハンディGPS・ Gregon450を購入し、利用し始めた。このモデルに限らず、ハンディGPSの基本精度は、 遮蔽物のほとんど無い場所でも水平2〜3m、高度10mずれるのが相場で、精度を上げるには 同一ポイントを日時を変えて複数回測定し、平均値を取る必要がある。山間部ともなると、 山の影になったり、樹木の影になったりして受信可能な衛星が減ったり感度が低下するなど、 水平で20m以上ずれる事も珍しくない。衛星測位の高度については、 少し感度が下がっただけで、50mずれる事も珍しくない。 このため、感度の良い気圧高度計が付いているモデルを使い、うまく気圧変動補正を行えば、 誤差を3m程度に抑える事も可能ではあるが、後処理も大変であり、GPSの現状の精度には 甚だ不満があった。
 そこで、去年(1011年)、『高度誤差1m』という触れ込みで運用が開始された日本のGPS衛星 「みちびち」だが、これに対応したGPSは、1日でも早く入手したいアイテムである。 今年(2012年)2月に「みちびち」非対応の同じガーミン社のeTrex30を現地気圧測定用として購入し、 このシリーズの国内モデルが既に「みちびち」に対応している事を知ったのは、2ヶ月以上後になって からであった。こうなったら居ても立ってもいられない。生活費を削ってでも欲しいものは欲しいので ある。
1−2.「みちびち」対応GPSの入手と初期評価

 「みちびき」の弱点は、現在1機で楕円(8の字)軌道を取っている関係で、1日のうち 利用出来る時間が限られている事である。公転周期(23時間56分)が地球の自転と合っていないので、 利用出来る時間は季節と共に変化して行く。真夜中に天頂に来る季節に買っても使えないため、 無駄な出費となる。そこで、ネットで調べてみたが、 QZレーダー というJAXAが提供する見た目の衛星位置表示ソフトで確認出来ることが判った。
 5月頭の時点では、午後に天頂折り返し時刻があり、次第に天頂時刻が12時に近付くという ベストシーズンである事が確認出来た。こりゃラッキーとばかり、(何故か高価な)国内モデル eTrex20J(気圧高度計無し)に威勢良く全国地形図を付けて購入に踏み切った。
 5月連休の最中に届いたGPSを早速外でテストしてみると、何故か「みちびき」(No.193)の 高度が南の地平線に張り付いて表示され、感度も良くない。不思議に思って、夜中になって再度 確認してみると、何故か高い角度で感度も良好となる。何回かチェックして、実際の天頂時間を 割り出してみた所、QZレーダーの表示位置よりも9時間ほど遅れている事が判った。
 9時間ねぇ・・・。
 日本時間(JST)はイギリス時間(UTC)よりも9時間進んでいるのは、国際感覚のある人間 なら判るでしょう。恐る恐るQZレーダー(Ver1.2)の設定を確認してみる。


 時刻基準のデフォルトがUTCになってんじゃん!!怒!

 設定がUTCなのに、なぜアプリ起動時のデフォルト時刻が「UTCの現在時刻」ではなく、 「UTCの9時間後(日本時間の現在時刻表記)」になっているんですかぃ?
 全く意味無いだろう!!悪質な引っかけにしか思えないのである。更におかしいのは、時刻基準 の設定を変更しても、設定時刻の表記はそのままで、代わりに衛星の位置(実時間)が変わると言う 摩訶不思議(無意味)な動作をする。普通は表記時刻の方を変えるものだ。
 このアプリを作った担当者も、仕様を決めて動作を検証した担当者も、正しい動作を理解してない ことが想像出来る。

 JAXAに本件の苦情をメールした所(5/8)、1ヶ月余り(6/27)で修正バージョンアップ(Ver1.3) され、それ以後『わざわざ確認したのに誤って解釈される』という可能性は廃除されている。
 結局、この季節の運用状態は、以下の通りであり、

  2012年6月時点での「みちびき」(1号)の天頂折り返し時刻


  2012年6月時点での「みちびき」(1号)の12時の位置


このように、昼間は全く使えない状況にある。
 みちびきの軌道(公転)周期は23時間56分なので、秋にかけて夕方から次第に使えるようになり、 12月頃がベストシーズンという、文字通りお寒い状況である。ただし、最新(直近)のアルマナック (軌道データ)を使って確認しないと、軌道にずれが出て高度75度以上の天頂エリア(一番内側の円) に入らなくなることもあるため、注意を要する。 このずれはアプリの計算誤差なのか、衛星の軌道修正のためなのかはよく判らない。

 そんな訳で、無用なデカい地雷を踏まされた訳で、JAXAに怒りをぶつけるしかないのであるが、 話はそれだけでは収まらなかったのである。
1−3.高度の精度が出ない

 気を取り直して、更に評価を続ける。もちろん夜中限定である。

 自宅周辺(低層住宅地区)の路地に立ち、衛星受信画面を確認する。
 現地高度は103m(ルートラボによる)であるが、手持ち高度を1mとして加算し、 104mが正しいものとする。
 まずは、まだ夕方の時間帯。室内の窓際に置いた状態なので、感度は今一つ(誤差7m)である。

 みちびきの(ガーミンGPSでの)番号は「193」で、現在南20度付近にある。 「42」は静止衛星ひまわりで、常に南45度付近に位置する。 各衛星の感度バーの下に出る「D」の文字は、補強信号(WAASまたはMSAS)が有効に働いていることを示す。 補強信号を出している衛星には、このマークは付かない。
 ・・と言う事は、補強信号を出しているのは、みちびき・・ではなく、ひまわり!?
 みちびきがひまわりの補強信号のお世話になっているのは、本末転倒ではないか・・・。
 幸いにも、たまたまなのか、高度は誤差1mの値を表示しているが。


 みちびきの天頂折り返し時刻付近で、屋外で受信してみる。
 受信感度は十分なレベルだが、高度表示が残念な値になっている。
 何より、番号の大きなみちびきが常に最後になるので、感度の無い米GPSに追い出されて 表示されてないのは残念!(それだけのためにGLONASS入れるか?)


 ひまわりの補強信号が邪魔なので、敢えて南45度方向が建物の影になる位置に移動する。
 みちびきの認識はされているが、特に何も変化が無い。まるでGPS衛星が1つ増えただけ のような動作である。

 一体どうしたんだ、みちびき!君の力を見せてくれ!


 GLONASSを入れると、高度表示の誤差が半分以下くらいに良くなる。
 ちなみに、ガーミンGPSの位置誤差表示は、有利な受信角度の組み合わせとか関係無く、 単純に受信出来ている衛星の感度の足し算で計算しているようで、肝心な時に誤差表示の数倍 ずれている事が多い。

第2章 未だ本来の性能が出ない「みちびち」の運用状態
2−1.「補完信号」と「補強信号」

(1) 『みちびき』とは、日本の宇宙科学技術が誇る、高度1m以下の誤差精度を誇るGPS衛星である。
(2) 『みちびき』は、高精度測位実証実験に(おおむね)成功した。
(3) 『みちびき』は、2011/06/22にアラートフラグを解除し、運用可能状態になった。
(4) ガーミンのGPS日本版モデルが『みちびき』の受信に対応した。

 もし、これだけの情報しか無かったら。

(a) 『ガーミンのGPS(日本版)で、高度1mの精度が出る』

 そう思うのは自然である。

 ガーミンGPS日本版モデルの発売元・いいよネットのサイトにある「みちびきの補完信号に対応」 という謳い文句について、疑念が深まったので、サポートにメールで問い詰める。
 『補完信号が受信出来ているかどうかは、衛星の番号が表示されているかどうかで確認している。』 との回答に、『そんないい加減な!』と憤慨したが、この時点で改めてJAXAのサイトを確認して、 みちびきの現在のサービスの稼働状況を調べてみる事にした。

■JAXAプレスリリース(2011/06/22)
『準天頂衛星初号機「みちびき」測位信号の提供開始について』
<本文より抜粋>
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)はこれまでの技術実証にて、準天頂衛星初号機「みちびき」の 測位信号(L1-C/A、L2C※1)の品質・信頼性が準天頂衛星システムユーザインタフェース仕様書 (IS-QZSS)に適合することを確認したため、6月22日にL1-C/A、L2C測位信号のアラートフラグ※2 を解除しましたのでお知らせいたします。
 残りの測位信号(L5、L1C※3)についてもIS-QZSSへの適合を確認した後、順次アラートフラグの 解除を実施いたします。
 アラートフラグの解除により、「みちびき」対応のGPS受信機では「みちびき」の測位信号を 測位計算に利用することが可能になります。

 この記事には、L1-SAIF(みちびき独自の補強信号)のアラートフラグが解除されたという記述は無い。 (このページは、購入前に見て、ガーミンが抜けている事を確認している)

■JAXAプレスリリース(2010/10/26)
『準天頂衛星初号機「みちびき」の初期機能確認の実施状況(全測位信号送信開始)について』

 この試験送信の開始記事と合わせて、各信号の概要を理解していなければ、上の記事だけでは 予定しているサービスの肝心な部分がまだ使用出来ないという事を理解するのは不可能である。
 2011/06/22の記事の後、いずれかのアラートフラグが解除されたという記事は出ていない。 アラートフラグ付きの試験信号では、近代化GPS(L5、L1C)や、みちびき独自の補強信号(L1-SAIF) が放送されているが、現状は『従来精度の米GPSの互換信号しか運用可能になっていない』 と言う事なのか。
 情報を混乱させた原因に、「補完信号」と「補強信号」という極めて類似した呼称が使われている ことが上げられる。

■JAXA報告書(2010/12/15)
『準天頂衛星初号機「みちびき」の定常運用移行について』の13ページ目に、
@「GPS補完」
GPS互換信号を送信し、GPSとの組み合わせによって、利用可能エリアの拡大や利用可能 時間を増加させる。


・・とある。
 他にも、以下に「補完信号」を『互換信号』とした説明が見られるが、検索してヒットしたもの を見る限り、限られた一部の記事でしかない。
『カウントダウン・プレスキット』(プレゼン資料)
『参考』(2010/04/07) 何かの続き?冒頭にGPS関係信号の一覧解説表あり
『準天頂衛星初号機「みちびき」の状況について』(2010/06/16)
『準天頂衛星システムの技術実証の進捗状況』(2012/03/28)
『準天頂衛星「みちびき」の利用』(国土地理院)

 そもそも、「補完」とは、「不完全なものを完全にすること」。これが正しい日本語の意味である。 そこには、「互換」以上の何かを期待してしまうニュアンスが含まれているが、 みちびきの「補完信号」とやらは、(衛星が1つ増えた分だけ)改善はするが、 別に完全になる訳ではない。そこに根本的な語弊がある。
 最初から「補完」でなく「互換」と書いてくれれば、記事全体が何とすっきりすることか。 全てが丸く治まる。余計な誤解などせずに済んだのは間違い無い。 せめて、「補間」(足りないGPS衛星を補うのは、正しくその意味)としたなら、 まだ誤解は少なかったかも知れない。
 JAXAの広報部からは、既に『「補完」という表現は変えない。』との回答を貰っているが、 ここまで押し通されてしまっては、今更変更するのは現実的ではないのは理解出来る。 せいぜい、毎回『アメリカGPSの互換信号』であることの説明を忘れずに付けて欲しい所である。

もうこんないい加減な名称は二度と付けないでくれ!

 冒頭の、(1)〜(4)→(a)という誤解を招かないために、みちびきに対応したGPS端末の発売元の 営業担当者が、みちびきの現状をどこまで理解し、どこまでユーザーに説明する責務があるのか。 そのための資料が判りやすく公開されていると言える現状にあるのか、次章で追求する。

第3章 欲しい情報が見えないJAXAのサイト
3−1.トラップに嵌まってしまうリンク

 みちびきのトップページのページ本体(トピックス)下部の「プレスリリース」をクリックすると、 2010/09/27のプレスリリースが表示されるが、そのページからみちびきのプレスリリースの一覧へ 飛ぶリンクが無い。(トップページ右列の「一覧へ」をクリックしなければならない。)
何より、トピックスが2010年9月以後、プレスリリースが2010年12月以後、更新されていないのに驚く。 (2011年のアラートフラグ解除は、打ち上げ成功に次ぐ重要なトピックスである)
右列のプレスリリースの見出も、2010/09/27が最新のまま更新されていない。これではまるで、 終ってしまったプロジェクトの扱いではないか。なぜこんなずさんな管理になっているのか。
 一方、プレスリリースのリンクの下、 準天頂衛星初号機「みちびき」をクリックすると、最近の情報が記載された「みちびき」の トップページが表示される。

 よく確認してみると、上のトップページは名称こそ「特設サイト」となっているが、親リンクは 「プロジェクト」ページ左列にある「カウントダウンサイト」(要するに打ち上げ迄の話)であり、 そのページのトップには、 『今後の最新情報は「みちびき」のプロジェクトページで随時お伝えする予定です。』と 書いてあるではないか!(やられた!正にこれを書いている時に気付いた始末)
 本来のリンクは「プロジェクト」ページ本文右列の下の方にあるのだが、圧倒的に左列 (カウントダウンサイト)の方が目立つ。これじゃ、必要な情報に辿り着かない訳だ。 カウントダウンサイトの(更新されぬままの)トピックスやプレスリリースの一覧は、みちびきトップと 同じリンクにすれば済む話であるが、なぜそうなっていないのか、甚だ疑問である。 せめて「これ以後の情報は・・」と注記を入れるか、打ち上げが終った衛星はカウントダウンサイト のリストから外すかすべきだろう。

 そんな訳で、みちびき対応GPSの購入直前に見てダウンロードまでしていた、2012/03/28の 技術実証の進捗状況のレポート(最初にどうやって拾ったのか記憶も定かでないが、 恐らく検索から?)も一時見つからなくなったりもしたが、購入前にこの実証実験レポの内容を正確に 理解していれば、まだ高度1mのサービスが運用出来る状況ではないことが「想像出来た」かも・・ と思うと、こと技術的な事に関しては執拗に疑い深い自分としては、情けないと言うか、 根拠の乏しい期待に相当浮き足立っていたのだなと、後悔先に立たず。

3−2.不明瞭な「みちびち」の現状とスケジュール

 今年(2012年)3月に出された 技術実証の進捗状況のレポートが、みちびきの最新の情報になるが、 「衛星の運用状況」(P9)を見ても、肝心の「現在の測位信号の提供状況」には何も触れていない。 そうか、実験の成果に対するレポートだから、運用状況については、別に触れなくてもいいのか。 だったら、他でちゃんと説明してくれないと、困るでしょ? 一々プレスリリースの一覧から「それらしい記事を探せ」とでも言うのですかね(そんなバカな!)。 常識的には、みちびきのトップから直リンクで最新の情報を誰でも「確実に」見られるようにすべき でしょう。
 このレポートには、今後の(中・長期の)スケジュールについては触れられていない。 「衛星の運用状況>(3)今後の予定」には、原子時計とか、放射線の影響とか、どうでもいいような 事しか書かれていない。そうか、これは実験の成果に対するレポートだから、運用スケジュールに ついては書かなくてもいいのか。だったら、他でちゃんと説明してくれないと、困るでしょ? 半年に1回くらいはプレスリリースで更新すべきだろう。(今年の3月分まで入ったスケジュールを どこかで見たような記憶もあるが、既に見つからなくなっている。・・と一度は書いたが、 「QZ-Vision」の「ユーザインタフェース仕様書」のページにある事が確認出来た。)

 実は、みちびきのトップページとは別に、「関連リンク」の下に データ公開サイト「QZ-Vision」 というのがあって、冒頭の「9時間の時差ぼけ」を招いたソフトが置かれていた他に、一部実験データ や実験(放送)スケジュールが公開されていたりする。 (「関連リンク」下の「みちびき特設サイト」と言うリンクは、上の「カウントダウンサイト」 の事なので、無視する)
 場所は何故か「知る」ではなくて「使う」の下の方で判りにくいが、スケジュールは1週間後まで (映画館の上映スケジュール並み)が公開されている。これでは皆目プロジェクトの進行具合は 判らないが、目先のメンテナンスでみちびきが使える状況にあるのかどうかくらいの情報は得られるし、 過去ログ(?)もあるので、測定した日に使える状態だったのかどうかを調べるには有効だろう。 UTと言うのは説明が無いが、UTCの事だとすると、イギリス時間(日本時間+9時間後まで) となるので注意を要する。
 スケジュールは、信号毎に細かく記載されているが、良く見ると、L5、L1C(近代化GPS)が 素GPS信号と共に普通に「測位信号が提供」(アラート解除)されているように見える。 そんな話はプレスリリースされてないが、一体どうなっているのか、他に情報が見当たらない。 L1-SAIF(補強信号)もほとんどがアラート解除で放送されているが、こちらは切り替えや休止が 頻繁に入っているので、「提供」されている状況ではない。

 みちびき(GPS)のユーザーが欲しい情報は、
  1.現状何が使える状況になっているのか。
  2.いつから使える計画になっているのか。
  3.いつ2機目の衛星が打ち上げられるのか。
 それが最優先である。
 加えて、(面倒なソフトを使わなくても判るよう)みちびきの月毎の利用可能時間や、みちびき に対応した各社GPSのリストと対応レベルが一覧で判ればなお良い。
 JAXAは、判り易い方法(場所)で、(誤解を招かないよう)判りやすく、迅速に正確に、情報を 発信・更新すべきだ。

第4章 あとがき
 みちびき関連のサイトを隅から隅まで目を通せば、恐らくは今回のような誤解は生じないだろう。 しかし、こちらの目的は、『みちびきを知ること』ではなく、『みちびきが使える事を確認すること』 である。そのためだけに見るサイトとしては、欲しい情報がなかなか見つけられず、ユーザー フレンドリーでない。余りにも不親切過ぎる構成になっているのが残念である。
 技術サイドには良くあることがだ、JAXAには出来た成果を無造作に陳列するだけでなく、 必要とされている情報を整理・発信するサイト作りを心がけて貰いたい。

 ガーミンのGPSが春にバージョンアップされ(eTrex 10/20/30、Oregon x50で確認)、 測位精度に関する動作が改善されている(*1)。ところが、肝心の日本語版のバージョンアップ がまだされていないのが現状である(2012年7月時点)。発売元に予定を聞いても返答無しなので、 予定は未定と言うことか。
 日本語版GPSで測位精度に関するバージョンアップが出ない事には、他の機種と併用して 平均値で精度を上げようとしても釣り合わず、加えて季節が「みちびち」の受信に適さないため、 「みちびち」対応GPSは、しばらくお蔵入りの状態になってしまった。 この現実は、もう悲劇としか言い様がない。
 ちなみに、基本測位精度については、eTrexもOregonも明確な差は無いが、誤差表示はGLONASS 無しの同じ条件でも、eTrexの方が明らかに少なく表示されるのが厄介である。当然、GLONASSを 有効にすると、実際の測位誤差が増えても誤差表示は更に小さく表示される。

*1:従来のガーミンのGPSでは、『現在の測位位置(まだ表示していない)と表示位置との 距離が誤差表示以内であれば、現状の表示位置を保つ』いわゆる「ゴム紐動作」になっている。
これは、ゆるいゴム紐を繋いで引っ張り回している重りの位置を示すようなものであり、 たまたまゴム紐の反動で真の測定位置を示す事もあるが、ゴム紐が伸びた状態を長く保つことが 多く、そのためわざわざ時間をかけてウェイポイントの平均位置を測定しても、 真の平均位置を示さない問題があった。 また、トラックログでは、ジグザグのルートを歩くと、直線っぽい軌跡が記録されることが多い。
 バージョンアップ後は、そのような動作は改善されたが、移動速度が遅かったり一個所に留まっ ていると、トラックログが頻繁に動き回るため、見掛けのデータ量が増えてしまう問題がある。 トラックログについては、10秒とか1分とか、移動速度にも応じて平均値を取るような動作が 望まれる。

 みちびきで計画されている全ての測位信号が提供されたとして、気になるのが補強信号(L1-SAIF) の効果である。現実問題、現在ひまわりから出ている補強信号は、山中の樹木下に入るとほぼ 使用不能の状態になる。樹木のある場所では、残念ながらみちびきの補強信号も動作しないと 見て間違い無いだろう。つまり、樹木下で高度1mの精度は出せないという事だ。
 例えうまい具合に真上が開けていて、みちびきの補強信号が受信出来たとしても、 GPSでの測位には、ある程度開いた角度を持った最低4つの衛星が見えている必要がある。 原理的には、衛星との距離が正確に判るのであれば、3つあれば位置は特定出来るのだが、 それは衛星とGPS端末の時計が完全に同期していればの話である。時計を同期させるため には、水平方向で反対側に位置する衛星が最低1組必要になる。 全ての衛星が方位90度、仰角90度の範囲にしか無いと、絶対距離が出ないため、時計の 同期が取れない。
 水平方向の精度は、多少時計の同期がずれていても反対側の衛星で相殺する事で精度が 保たれるが、高度方向は「反対方向」(=地底側)が有り得ないので、 時計のずれがそのまま誤差になって表示される。 それが『GPSは高さ方向の精度が悪い』(誤差表示2mの場所で高度が10m以上ずれる) と言われる理由だろう。
 以上、誰かに教えて貰った訳ではないが、自分なりに考えた結果である。

 もう一つ気になるのが、現状のeTrexがみちびきの補強信号に対応するバージョンアップがされる かどうか。現在の日本版モデルの対応状況は、みちびきに対応する衛星番号が追加されただけで、 ソフトの変更としては何の苦労も無いが(海外版も早く対応して欲しい所)、 みちびきの補強信号に対応するには、L1-SAIFという日本独自の測位信号を受信し、 そこから補正情報を読み取る処理が必要になる。現在ひまわりの補強信号(日本ローカル)に 対応している事から考えると、将来対応される可能性はあるだろうが、最悪は次のモデルから 限定となる事も考えられる。周波数は同じなのでアンテナの問題は無いが、信号処理ICが ハード的に対応出来なければ、どうしようもないのである。判る人には判る話だと思うが、 オフレコでもいいので情報を戴きたい所である。
 私のように、間違った理解の元に「みちびき対応」GPSを購入してしまった場合は、 今のうちに手放してしまった方が良いかも知れない。 それでも、今秋以後のみちびきシーズンで、多少の効果を確認してから・・ と思うのは、技術屋としての悲しい性ではある。

・・・と言う落ちで終る予定であったが。

 とある掲示板の情報(と言うか、気付いていたが深く追求していなかった)を夜間蚊に 刺されながら確認した所、とんでもない(と言うか「嬉しい」)事実が発覚した。

     
【eTrex 20J の衛星受信画面】  【eTrex 30 の衛星受信画面】

 衛星一覧を見ると、1ヶ所だけ違いがあるが、eTrex海外版には本来無いはずのものが、 しっかりと見えているではないか。(やったな!ガーミン)
 登録外の衛星を認識した時は、最後の番号から自動で割り当てられるようだ。どうやらこれも バージョンアップの恩恵らしい。海外版でみちびきが見えると言う事は、みちびきの補強信号が 使えない現在、測位動作に関しては、日本版と全く同じと言って良い。むしろ、海外版の方が バージョンアップがスムーズに出来る分だけメリットがある。これでわざわざ高い日本版を買う 理由は皆無となったに等しい。(残念ながら、Oregon 450では認識されない)
 念のため(の必要も無いのだが)、QZレーダーで衛星の配置を確認してみた。


  【上と同一時間帯のGPS衛星の配置(Ver1.3)】

 みちびきの位置はいいとして、他のGPS衛星の位置が全く合わないのは何故だ? ぱっと見、左に90度回転しているようにも見えるが、そうでない衛星もある。 GPS端末側が(No.50以外で)間違っていると言うのも考えにくい。 念のため、前のバージョンで同じ時刻を表示してみると・・

  【同上(Ver1.2)】

 こちらは受信画面とほぼぴったりと一致しているではないか。 Ver1.3の方は、可視位置にある事の計算と高度の計算は出来ているようだが、方角が東西が 逆になっている。指摘差し上げた問題だけ修正すれば良かったものの、余計な所まで 変更するから、こういう事になる。これはJAXAにとっては痛い失態である。早く直してよ。 何なら、修正版の評価を請け負いましょうか。もちろん有料ですが。

と言うかな。良く見たら東西表示も逆になってるじゃないか!怒!
何で途中から初期設定を変えるかな。 一体どこのGPS端末が見上げモードの表示になっていると言うのか。 画面を見上げるようにして使うGPSなんかある訳ないだろう!使いにくいっ!

関連リンク
JAXA|宇宙航空研究開発機構

(みちびき)データ公開サイト「QZ-Vision」 GPS衛星位置表示ソフト

(株)いいよねっと GARMIN-ガーミン社製ハンディGPSナビ正規代理店

TKA Planet ガーミン(海外版GPS)専門店 通販・店頭販売(東京・新宿) <お薦め>

GPSの森(島根大学)掲示板 GPSの濃い話で盛り上がってます


『どうなってるんだ!準天頂衛星・みちびき』 (C)Mr.参謀(Horigome Takashi) 2012
Mr.参謀へのメール:mailto:HGC00477@nifty.ne.jp_


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