女子柔道暴力問題:山口香・JOC理事に聞く/上 特定の選手、見せしめ
2013年02月10日
◇対応鈍い全柔連…もともと彼らの中では軽い問題
柔道全日本女子の15人が告発した暴力、パワーハラスメント問題。選手から相談を受け、告発を後押しした柔道日本女子初の世界王者で、日本オリンピック委員会(JOC)理事の山口香・筑波大大学院准教授(48)が毎日新聞のインタビューに応じた。問題の真相、柔道界が抱える課題とは。2回にわたって紹介する。【聞き手・藤野智成】
−−選手の告発をサポートすることになった経緯は。
◆サポートではなく、最初に全日本柔道連盟(全柔連)に訴えたのは私です。ロンドン五輪も終わった(12年)9月の終わり。何人かの女子選手との雑談の中で体罰が話題に上がった際、ある選手が「ナショナルチームでもあるよね」って。話を聞き出すと、園田隆二・女子監督(当時)の代表合宿での暴力やパワハラの話が出てきました。暴力の標的として、声を上げるのが苦手な一人の選手の名が挙がりました。他の選手や周辺のコーチに確かめると、おおむね同じ答えが返ってきました。程度の問題もあるので、男性コーチに問うと「ボコボコ」という表現を使った。これは手ではたいた程度の話ではない、暴力だろうと考え、すぐに全柔連幹部に伝えました。
−−全柔連の対応は。
◆全柔連は園田監督に事実を確認し、園田監督は暴力を認めました。幹部は被害を受けた女子選手からも聞き取りし、謝罪しました。しかし、その後の海外遠征の時です。園田監督は集合の際、その選手に「何か文句があるのか」と言い、その選手が試合で好成績を出すと、皆の前で「勝てたのは、厳しく指導したからだ」というような話をしたと、選手たちから聞きました。
−−再び全柔連に抗議を?
◆私には女子柔道が恵まれない時期から取り組んできた自負がある。殴らなくては強くならないなんて、ふざけるなと思いました。女子選手がこんなふうに扱われるのが許せませんでした。16年リオデジャネイロ五輪に向けた新体制の人選の時期であり、園田監督の交代を訴えました。でも幹部の回答は「園田には情熱がある、指導力がある」。そのまま全柔連は11月5日に園田監督続投を発表しました。
−−そして告発へ。