中国海軍艦船による日本の海上自衛隊護衛艦などへの射撃管制用レーダー照射について、中国政府は公式に「日本政府が公表した事案の内容は事実に合致していない」と否定した。さらに中国は照射を「監視用レーダー」と主張し、射撃管制用との日本の説明を「捏造(ねつぞう)」とまで言い切っている。
小野寺五典防衛相は映像記録など証拠データの一部開示を検討している。中国は声高に日本を非難しているが、日本政府はあくまで沈着冷静に事実の証拠を示したい。
両政府には真相究明とともに、武力衝突の回避の責任がある。
日中平和友好条約は、国連憲章の原則に基づき「すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する」と定める。
射撃管制用レーダーの照射が日本政府の説明通り事実であれば、中国は国際法違反の疑いが出てくる。日中両政府は双方の国民と国際社会に対し、大きな説明責任を負っている。繰り返すが、日本側は明確な事実証明を行い、中国側は軍事挑発を謝罪し日中間の誤解を解かねばならない。今回の件で国民同士の対立を煽(あお)ったり、両国の戦略的互恵関係を損なったりしてはならない。
射撃管制用レーダーの照射は過去にもあったとされる。主権者である国民には「知る権利」があり、これまで公表されなかったことは不可解だ。ただ、今回の公表をもって対中国で強硬路線にかじを切る契機や口実にしてはならない。
今回の問題で、尖閣諸島から百数十キロ離れた海域で中国海軍艦船と海自艦船が激しくせめぎ合っていることが明らかになった。
尖閣諸島周辺では海上保安庁が領海警備を行っているが、中国海軍や海自の艦艇の投入でこれ以上緊張を高めてはならない。偶発的な武力衝突を避けるため、双方が海域から軍備を撤収すべきだ。
外交交渉で偶発的衝突を防ぐ「海上連絡メカニズム」を整え、日中関係の改善を急ぐ必要がある。
中国は国内総生産(GDP)で世界2位、日本は世界3位である。国家間の深刻な対立が、国の経済をゆがめたり、国民生活を疲弊させたりするのは歴史が証明している。日中対立は、世界の平和と安全にとっても有害無益だ。両国は粘り強い戦略的対話を通じて、未来志向の友好関係を再構築すべきだ。
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