1997年10月31日発売
夏にバイトとなると、「俺様が汗水垂らして働いているというのにみんなのうのうと遊びやがってチキチョー」というヒガミ根性がわき上がるものでしょうが(…え、そんなのアタシだけ?(^^;)、「かわいい女の子が仰山おる」となると話は別。太陽の下に光り輝くあのコと会える、あの職場で、さぁ今日もガンガン働くぞー! そんな労働意欲を起こしてくれる(?)ゲームでしょう。個人的に、前作が「まぁ悪くないな」という印象だった上、今回の方が絵柄がより好みだったので、第一印象は◎の状態でプレイ開始。さて、終わった後の印象は…?
シナリオ
親友・矢野真士の誘いを受け、高校最後の夏休みを「Piaキャロット二号店」というファミリーレストランでバイトをすることになった主人公、前田耕治(姓名とも変更可能)。面接に向かう途中、文字通り「衝撃的」な出逢い方をした女の子・日野森あずさをはじめ、Piaキャロにはかわいい女の子がいっぱい。週6日ベースのハードなバイト生活、その結末に待っているのはどんな夏物語なのでしょうか。
基本的に、前作『Piaキャロ』と、コンセプト・ゲームデザインとも、まったく同じといって差し支えないでしょう。バイトはあんなにラクじゃないって、とツッコミを入れたくなる舞台設定もそのまんまです(^^;)
ただ、今回の登場人物では、主人公とあらかじめ知己のあるキャラは男友達の真士だけです。したがって、出会うキャラクターはみな「初お目見え」なので、主人公と彼女たちとの関係構築という点で、よりていねいな記述が必要となるわけです。
しかし、この点から見ていくと、いうなれば「屈折した心理」を描こうとして、逆に「屈折」を醜い形で露呈させるような結果に終わっているシナリオがあるなど、「出会いは突然に、そして…」の「…」の部分に関しては、前作よりも手が込んでいるという印象を受ける反面、もう少し素直(ざっくばらんにいえば単純)にベタなノリで進めた方がよかったのではないか、という印象があります。
具体的には、あずさシナリオなど、主人公はプレイヤーの視点からはかなり異様な行動を取るわけですが、その行動を取った結果として起こる一連の出来事を追っていき、さらにハッピーエンドらしきエンディングをつぶさに見ていくと、最終的にハッピーと呼べる状態になっているとはとうてい思えないのです。雨降って地固まる、といいますが、雨を降らせ過ぎて地盤を崩してしまっているという観を受けました。
また、キャラクターごとのシナリオ内容の格差がかなり大きいという印象を受けましたが、10人もいれば仕方がないでしょうか。
ちなみに、今回の「Piaキャロ二号店」の店長は、前作の主人公、木ノ下裕介氏です。前作は、姓を実名、名を「ケン」でプレイしていたので、全然気がつきませんでした(^^;)
ゲームデザイン
自己育成型SLGで、パラメータを自分で調整していきながら、他キャラとのイベントを発生させ、各ヒロインとの関係を進めていくゲームです。
1日は、基本的に午前と午後とに分かれます。午前中はフリー、午後は仕事(休みの日はフリー)となります。午前中は、勉強、運動、他キャラとの接触、あるいは休息などを行い、午後は、業務内容(1週間単位で組むことができます)に応じた仕事を行います。それぞれの行動によってパラメータが変動し、また、イベントが発生します。
お目当てのヒロインを攻略するには、そのヒロインに対する好感度を上げておくのはもちろんですが、必要なイベントを発生させておくこと、主人公のパラメータを一定水準以上にしておくことが必要です。しかし、後者のパラメータ管理は、前作ほどシビアなものではないので、「こんな数値で大丈夫か?」と心配する必要はありません。前作のさとみは異様にハードルが高かったのですが(^^;)
パラメータ管理の容易さは、プレイヤーにストレスを感じさせないもので、非常に親切だと思います。なお、ゲームを始める段階で、制服を選ぶことが出来ます。
不具合・修正プログラム
修正プログラムが、F&CのWebサイトに用意されています。ADMの最新版ともども、ダウンロードして修正版を当てておくことをお薦めします。
あずさシナリオのあるシーンに行くと、画面がブラックアウトして先に進まなくなる、という現象が起きました。ソフトウェアMIDIとの相性が悪いのではないか、という噂がありますが、定かではありません。一応、BGM(MIDI)をオフにすると、この現象は止まりましたが。
この他にも、時々止まることがあるので、セーブできるときにはセーブしておく、という、悲しい習性が身に付きました(^^;)
操作性など
セーブ&ロードは、自室でのみ、10個所まで可能。前作ではセーブ&ロードは非常にやりにくかったのですが、今回はかなり自由に行うことが出来るのはいいですね。
メッセージスキップ、音声オン・オフ切り替えなど、マウスクリック1つで容易に可能など、ユーザーインタフェースはかなり改善されています。
CGモードやBGMモードも用意されていますが、CGモードでは、各ヒロインのCGは制服ごとに異なっているので、注意が必要です。単純にクリアしただけでは、CGモードは絶対に埋まりません(^^;)
サウンド
オープニングのヴォーカルで仰天させられるのは、F&Cの離れ業として定着したのだろうか、と思わせるオープニングです(^^;) スキップすることは可能なので、お好みに応じてどうぞ。私は好みではありませんが、『プルミエール2』のオープニングよりははるかにマシです。
BGMは、MIDIで演奏されます。音源は、FM音源、GM音源、GS音源(数種類アリ)から選択可能と、なかなか多岐にわたりますが、XG音源という選択肢がないのは、F&Cのゲームをプレイしていつも疑問に思っていることなのですが。少なくとも、ゲームリストにアップしたゲーム中、XG音源対応のゲームは1つもありません(※)。
クライマックス付近でのサウンドは、ほとんど印象に残っていません。というよりも、先述のとおり、このゲームをプレイしたときには、BGM(MIDI)をオフにしており、MIDI音源搭載ボードを購入して以降は、エンディングを1つ再確認しただけなので、しかたがないのかも知れませんが。
むしろ、日常での元気な、あるいはほのぼのとしたサウンドが耳に残っています。好みとしては、「笑顔の君がステキ」でしょうか。この主人公にはあまり似合わないセリフのように思えてなりませんが(^^;)
音声は、主人公をのぞきフルボイスです。演技はいいのですが、ちょっと音質が悪すぎます。ファイル容量の関係上、仕方がなかったのでしょうが、割れた音で甘い声を出されても、あまり萌えません(^^;) ただ、美奈ちゃんの「えへへ」声、反則ですぅ(^^;)
※少なくとも2000年以降の作品の多くは、XG音源に対応しています。(2001年5月28日付記)
グラフィック
みつみ美里さんを初めとする原画家さんのキャラクターは、くりっとした目が非常に魅力的で、ゲームに上手くマッチしています。
何よりも気になったのは、表情変化のやり方の中途半端さですね。目パチ口パク程度の演出は目新しくも何もなく、また笑顔や照れ顔、怒り顔といった表情変化もいまさらというコトバが似合う演出でしょうが、問題なのは、同一の服装の場合、首から下はいつも同じ姿勢でいること。
例えばあずさの私服姿を例に取ってみると、両手を腰に当ててやや胸を反らし気味という姿勢なのですが、ブスッとしている時(この時が一番多いような気もする(^^;)にはいいとして、笑っているとき、あるいは顔を赤くして照れているときにこういう姿勢を取るのは、あまりにも不自然でしょう。表情というのは、顔だけで表せるものではない。これは、『バーチャコール』シリーズなどがよく証明してくれているわけで、そう斬新な技法ではないはずです。ここに違和感を覚える人もけっこういると思うのですけれど。
その反面、イベントCGの美しさは、さすが、といえるものですね。光線を実にうまく利用したCGは絶品です。逆光は女性を映えさせる、というのは、写真撮影などではよく使われるテクなのですが、CGではかなりアレンジが難しいと思うのに、これを惜しげもなく出されては、たまりません。また、コミカルなカットもなかなか楽しく、美奈シナリオで「犬を愛でる女性たち(約1名は目を縦一線にして怖がる)の図」など、なかなかのものです。
また、ちびアニメが画面中央でシャカシャカと元気良く動き回るのは、前作と同様です。
お気に入り
玉欄ヾ(^^;
……え〜、真面目にいくと、キャラ的にはあずさなのですが、シナリオがあまりにも私的好みから逸脱していたので、ここは公平に、該当なし、としておきましょう。
総評
各キャラクターごとに、いろいろなイベントを配置し、そしてその魅力をうまく引き出すという、前作で成功した手法を忠実に受け継ぎながら、新たにシナリオを深めようとした方法は、充分に評価できると思います。しかし、その「深め方」の方法的なベクトルに勘違いが混じっていたのでは、という印象が拭えません。女の子と仲良くなる、そしてそのコの魅力を引き出していく、という視点に徹するのであれば、ハプニング的な事件は1つ用意しておけば十分なはずです。しかし、起伏のあるラブストーリーを作ろうと色気を出してしまった結果、キャラクターの魅力は高いレベルにあるままで、主人公への感情移入が著しく阻害されやすいシナリオになってしまったように思えます。
あずさシナリオの場合、主人公の視点で進みシナリオなのであり、三人称、あるいは神の視点からの描写は一切ない以上、納得しにくい主人公設定それ自体にも問題がありましょう。このシナリオが特殊、といってしまえばそれまででしょう。しかし、少なくとも形式的にはメインヒロインのハズで、そのキャラクターに対して与えられたシナリオにおける主人公の行動は、このゲーム全体を通じたイメージをある程度体現しているといっても差し支えないはずです。
グラフィックの美しさに対する表現手法の失敗、かなり改善されてきた操作性に対してのシナリオ間の不統一。こういった問題点を残している以上、それなりに楽しめたゲームではあり、それなりの評価ができるゲームではあっても、残念ながら「それなり」以上の水準と認めることはできそうにありません。
個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
1999年8月24日
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