『アリスの館4・5・6』収録のランスシリーズをプレイして充分に楽しめ、さらに、実に多くのキャラクターが活躍する壮大なゲームということで購入。戦闘を重ねて領土を拡大していく、戦闘シミュレーションゲームです。戦闘を続けるゲームといっても、せいぜい一本道のRPGくらいしかプレイしたことのなかった私は、「史上最大級のスケール」という文句に対し、眉につばをつけてかかったものですが…。
『アリスの館4・5・6』収録のランスシリーズをプレイして充分に楽しめ、さらに、実に多くのキャラクターが活躍する壮大なゲームということで購入。戦闘を重ねて領土を拡大していく、戦闘シミュレーションゲームです。戦闘を続けるゲームといっても、せいぜい一本道のRPGくらいしかプレイしたことのなかった私は、「史上最大級のスケール」という文句に対し、眉につばをつけてかかったものですが…。
天下御免の鬼畜戦士ランス。彼はヘルマン領内で盗賊稼業に勤しむが、ヘルマンの兵によって盗賊団は壊滅、奴隷のシィルは捕らえられてしまう。ランスは辛くもリーザスに脱出、彼に恋い焦がれる王女リアと結婚することで、なんとリーザス王位に就任。そして彼は、侵略戦争へと動き出した。シィルを救い出し、ヘルマンに復讐し、魔人を屈服させ、さらに世界中の女を我がものにせんと。
「ランス」というキャラクターに対する事前知識が多少なりともあるかないかでイメージが変わってくるでしょうが、このゲームでのランスは、ちょうど『闘神都市2』のシード同様、徹底的な悪人にすることもできれば、実に情けに弱い王にすることもできます。いわば、プレイヤー好みの「ランス」を操縦し、そして戦闘、イベントを起こしていくわけです。あくまでも、自分の欲望に忠実ではあっても、それを超えた範囲で、彼の人間味をどう出すか。プレイするたびに性格を変えてみるのも楽しいでしょう。
ランスのランスたる最大の特徴といえば、常人には可能でない奇行をあたかも当然のようになし得るという彼の行動の結果、ランス自体が、ゲーム世界を「自分で作り上げてしまう」ことにあるでしょう。もちろん、ゲームの中で展開される物語は主人公が作り上げていくものであり、これはどんなゲームでも一般的にいえることなのですが、こと『鬼畜王』におけるランスは、「視点」のみならず、「世界」そのものを作り上げていく主たる役割を担っています。そして、そこには、悲壮な運命を感じさせることなく、ただ行動基準をあまりにも極端化・単純化した1人の英雄があるのみなのです。
性欲を筆頭とした煩悩丸出し主人公、その行動原理を何らかの形で整理して説明しようということは、それ自体が十分無謀なことなのですが、このゲームにおいては、主人公とプレイヤーとの関係が非常に微妙な状態のままでプレイすることになります。ゲームの中で出されている「世界」は確実に存在しますが(当たり前ですね)、その「世界」を動かす面と、作る面、この双方を主人公が持っているため、プレイヤー自身がその中で盛大に動くことが可能となっています。
このあたりは、抽象的にあれこれ論じても始まらないので、まぁプレイしてください、という以上のことは言えないのですが。
登場するキャラクターの大半にフルネームがつけられていますが(例外はランス本人(^^;)、何度もプレイしているうちに、登場人物のフルネームの大半を口に出して言えるという状況になってしまいました。カスタムの娘たち(マリア、ラン、ミリ・ミル、志津香)、リーザスの将兵たち(リック、レイラ、バレスなど)、ヘルマンの武人たち(パットン、ヒューバートなど)、その他、『ランス4』以前のシリーズに出てきたキャラの相当数が再登場し、さらに、それを上まわる多数の魅力的なキャラが満載です。キャラクターの数というものは、増やしすぎても「味方その1」「敵その2」といった感じになってしまい、大した意味をなさない場合が多いのですが、『鬼畜王』に登場するキャラクターたちは、いずれもそれぞれの「表情」をイベントの中で出してくれるので、非常に生き生きとしています。これは、キャラ同士の関係や繋がりがきちんとしており、また膨大なイベント相互の矛盾がほとんどない(←これは充分驚嘆に値します)点によるものでしょう。キャラクターづくりの妙味はアリスソフトのゲームの真骨頂ともいえますが、『鬼畜王』は、その点で頂点を極めていると感じます。
他地域へと侵攻していくゲームです。1ターンごとに、味方ターン(攻撃しなくてもよい)・敵ターンに分かれています。
味方と敵とが、交互に攻撃する形をとりますが、味方側が占領できるのは、1ターンに1個所だけです(攻め落とせない限りは、何個所でも攻撃可能)。しかし、相手が攻めてくるのは1個所とは限らないので、効率よく兵を配置して防衛・撃退し、場合によっては都市を放棄する必要があります。どこから攻めるか、という自由度はそれほど高くありませんが、フィールドの大きさに見合った選択の余地があるので、いろいろなパターンを楽しむことが可能です。
部将のバリエーションがずいぶんと多いものの、実際に(特に攻撃面で)使える部隊は限られてきます。リーザス主要4将軍を取ってみても、バレスは序盤から最終盤まで使えるキャラですが、コルドバはいなくても大して困りませんし(^^;) また、マリア、ミル、ガンジー、五十六、レリューコフ、ハンティ、ロレックスなど、強力な途中参加組も多数隠れています。ただ、ハンティとロレックスの双方を確保できないのは残念なところ。
各ターンでは、多種多様なコマンドで、イベントを発生させることが可能です。そのバリエーションについては、簡単に語れるものではありません。「臨時徴収」(要は公式の都市略奪)によっていろいろなものを発見、「遠距離操作」で洞窟探検、などなど。圧巻は、やはり「ハーレム」でしょう。いろいろな女の子をより取りみどり、まさにこれこそ男の夢! ランスでなければ実現不可能な話です。
「シナリオ」面でも触れましたが、膨大なイベントが用意され、しかもそれらの発生順序パターンが複雑怪奇を極めているにも関わらず、ほとんど矛盾がなくまとまっているのは、実にすごいことと感じます。
私の環境では、特に不具合と感じられる面はありませんでしたが、製品CD-ROMの中に新バージョンがLZH形式で圧縮されています。どういう違いがあるのかはわかりませんが。
シミュレーションゲームというと、実にいろいろ面倒な操作を要求されるものですが、このゲームでは「イベントをどう発生させるか」に主眼をおき、あとは自由にプレイしていくことが可能なので、操作にはすぐに慣れます。侵略先をクリックして戦闘(平和裏に併合可能な場合もあり)、街をクリックしてイベントを起こし、などなど。
マウス操作が基本になっていますが、マウスポインタを合わせた状態でエンターキーを押すことも可能です。ターン開始時にオートセーブされますが、ランダムで発生するイベントを起こすor避ける場合など、「オートセーブされたデータをロード」すれば、割とうまくいくケースが多いのが特徴です。「オートセーブ」という機能にはあまりありがたみを感じない場合が多いのですが、このゲームだけは例外で、オートセーブ機能がなければずっとやりにくくなっていたことでしょう。
ただし、各セーブデータごとに、プレイ時のデータ(それ以前に見たCGの情報など)がすべて書き込まれますので、注意してください。
CGモードは、シーン再生モードを兼ねており、サムネイル表示されます。また、CGモード・BGMモードの他、「幸・不幸モード」というのがあり、ゲーム中に登場した女性キャラクターが、ゲーム終了の時点で幸福になったか不幸になったかが記録されます。幸福条件、あるいは不幸条件には結構厳しいものがあるため、この幸・不幸モードをすべてコンプリートするには相当の時間がかかるでしょう。
BGMは、CD-DAで演奏されます。勇ましい曲、情けない曲など、シンプルのようでいて、実に渋くきく、いい曲がずらりと並びます。曲単体で聴いて楽しむ、というタイプのものではなく、まさに戦争中なり、という雰囲気をうまく出しているBGMです。
クライアント領域は640×400なのですが、フル画面でCGが出ることがないのが残念。しかし、なにしろ膨大な量のCGがぎっしりと詰まっており、Hシーンもなかなか濃いものがあります。量があまりにも多いので、バリエーションにはかなり苦しいものを感じますが。
イベントシーンなどでは、会話をする2人の立ちCGと、両者のフルネームとが同時に出ます。ここで、表情の変化がまったくないのが残念ですが、なかなか笑える問答、しんみりとさせるやりとり、そういったいろんな会話イベントを楽しむのに文句のない形になっているといえましょう。
他に挙げようがないでしょうね、やっぱりランス。がはははは。
これだけではあんまりなので他に挙げると、「有数の男前キャラ」リック・アディスン、同じくヒューバート・リプトン、使えるジジイことバレス・プロヴァンス、いじめて娘(^^;)エレノア・ラン、…以下、キリがないので省略いたします。
いろんなサイトで、多種多様な取り上げ方がなされています。しかし、レビューとしてまとめるのが難しいのか、はたまたメジャー過ぎて取り上げるのもアレということなのか、独自の記述を見せてくれるページは意外と少なかったりします(^^;)
女の子たちがひどい目にあうのが嫌だ、という方。どういう形にせよ、早くゲームが終わらないと落ち着かない、という方。これ以外であれば、ぜひともプレイしてみることをお勧めします。「ランス」→「鬼畜」→「嫌だ」という固定観念を脱すると、そこには、おそろしく豪快かつ広大な世界が、あなたを待っていることでしょう。
そこに鳴り響く不気味な高笑「がはははは」、笑う門には鬼畜あり、人を見たら鬼畜王と思え。そんな世界で、徹底的なフィクショナル・ワールドで、思いっきり暴れてみませんか? 主人公たるランスは、プレイヤーの分身という面を持ちながら、かなりの程度「だってランスだから」と、プレイヤーの責を負わせてくれるため、ヘラヘラ笑いながらいろんなことができるのが、このゲームの持ち味でしょう。
「夢のゲーム」というフレーズは、決して嘘ではありません。
個人的に10点評価をしていないのは、ただ単に「うむ面白い。それでどうなんだ」といえる、「踏み込み」の余地がないという点があるから、というだけの理由です。