虚構の環:第1部・再処理撤退阻む壁/1(その2止) 原燃に寄りかかる村

毎日新聞 2013年02月02日 東京朝刊

 村商工会長の上長根浅吉(かみながねあさきち)さん(63)は、10代のころから出稼ぎで北海道から大阪まで転々としていた。「先祖代々から守ってきた土地を手放せない」という父を説得して農地を売り、工務店を起こし年商2億〜3億円の株式会社に育てた。上長根さんは「サイクルをやめれば村は貧しかった昔に戻ってしまう」と語る。斎藤行雄さん(83)の思いは複雑だ。「土地が開発予定地区に入っている」と言われ77年、20年続けてきた酪農をやめ警備員になった。「『コンビナートができる』と夢みたいなことを聞かされたが全然できなかった。売却した土地は今、原野になっている。再処理工場だっていつまで続くか分からない」と話す。

 今年1月23、24日、九州電力玄海原発1〜4号機から出た低レベル放射性廃棄物の入ったドラム缶計1040本がむつ小川原港(六ケ所村)に陸揚げされた。「低レベル放射性廃棄物埋設センター」(同)に埋設処分するためだ。再処理工場、ウラン濃縮工場と合わせ「核燃3点セット」と呼ばれ、かつては逮捕者を生む激しい反対運動が展開された。しかしこの日、港に反対派の姿はなかった。

 撤退への道は阻まれた。実は攻防は10年前にもあった。=つづく

 この連載は小林直、太田誠一、清水憲司、高島博之、松谷譲二が担当します。

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