虚構の環:第1部・再処理撤退阻む壁/1(その2止) 原燃に寄りかかる村
毎日新聞 2013年02月02日 東京朝刊
<1面からつづく>
◆虚構の環(サイクル)
◇税収69億円、寄付ふんだん
政府のエネルギー・環境会議が「核燃サイクル維持」を決めてからちょうど1カ月後の昨年10月14日、青森県六ケ所村の大石総合運動公園の野球場に村議や日本原燃幹部ら約30人が顔をそろえた。前年に引き続き開かれた村議会対日本原燃の親睦軟式野球大会。橋本猛一(たけいち)議長と工藤健二専務の両先発で始まった試合は議会側が1点差で逃げ切った。
一行はそのまま村内の温泉施設「ろっかぽっか」で汗を流すと、併設の大広間で宴会を開いた。割り勘の参加費は1人6000円。話題は昨年9月7日の意見書に及ぶ。「再処理から撤退するなら使用済み核燃料の受け入れを拒否する」など8項目の主張を政府に突きつけ、核燃サイクル見直しの方針を覆した。日本原燃役員の一人が橋本議長に近づき頭を下げた。「本当に助かりました」
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村議と日本原燃は工事を介して深く結びつく。青森県に提出された工事経歴書によると、村議や妻、父母兄弟が役員を務めたり、大株主になったりしている建設会社は8社。うち6社が日本原燃に関連する工事を受注し総額約8億円に達する(10年10月〜11年末)。また関係者によると、村議の子供が日本原燃に直接雇用されるケースも複数ある。
村の財政も日本原燃に依存している。
人口約1万1000人の六ケ所村の税収は69億円余。青森県内の自治体でほぼ人口が同じ中泊町は約7億円、鰺ケ沢(あじがさわ)町は約8億円に過ぎない。税収が多いため普通交付税が交付されない県内唯一の自治体で、うち約49億円は日本原燃の払う固定資産税だ(金額はいずれも11年度)。ろっかぽっかも日本原燃側が02年、約23億円かけて建設し村に寄付した。
日本原燃の施設のある一帯は60年代後半から開発対象になった。石油化学コンビナートを誘致する開発計画(後の「むつ小川原開発計画」)が閣議決定(69年)されたためだ。多くの村民が土地を手放し高台に移転。しかしオイルショックで頓挫し、代わりに持ち込まれたのが核燃サイクルだ。