互いによく知り合った男と女とがグループで旅に出る場合、いろいろな思惑が交錯するのは自然の理。しかも、ベタな公認カップル的な組み合わせが出来ておらず、メンバーの人数が少ないとなれば、「何か」が起こる可能性はさらに高そうな感じです。
さらに、ペンションとスキーという「舞台道具」が揃っていれば、その先に起きる展開というのは、ある程度予想可能なのですが、この『卒業旅行』では、いろんな意味でハードな展開が広がっており、意外な楽しさを見せてくれるのでありました。そう、実に「いろんな」意味で…。
互いによく知り合った男と女とがグループで旅に出る場合、いろいろな思惑が交錯するのは自然の理。しかも、ベタな公認カップル的な組み合わせが出来ておらず、メンバーの人数が少ないとなれば、「何か」が起こる可能性はさらに高そうな感じです。
さらに、ペンションとスキーという「舞台道具」が揃っていれば、その先に起きる展開というのは、ある程度予想可能なのですが、この『卒業旅行』では、いろんな意味でハードな展開が広がっており、意外な楽しさを見せてくれるのでありました。そう、実に「いろんな」意味で…。
主人公・孝之(固定)は高校卒業の記念として、幼なじみ4人で春スキーに出かける。ペンションに泊まりながら、スキーを楽しみつつ、主人公はこの旅行で、彼女たちとの関係において幼なじみから抜け出すことができるのだろうか。あるいは、別のキャラクターと幸せになるのだろうか。
シナリオのボリュームは非常に小振りで、かなり早く終わります。このために物足りなさを感じるか、というと、特にそういうわけではありません。展開も急といえば急ですが、それなりにクライマックスと呼べる山場はしっかりと描かれているのは評価できましょう。むだを排し、いたずらに時間をかけることなく作っているという印象です。ボリュームの少なさも、エンディングの数でフォローしているという印象ですが、その分岐もさほど難しくはないので、何度もプレイしていれば、かなりのエンディングを見ることができるはずです。ただ、CGモードも何もないので、エンディングの確認ができないのがつらいところでしょう。
シナリオの展開としては、1回のプレイで1人を攻略できるというのが基本です。したがって、最初から何度もプレイすることになりますが、各シナリオ間のバラエティの幅広さを堪能できるので、割と良い方法かと思います。
また、女の子の出し方、取り上げ方も、非常に地に足のついたものとなっています。Xゲームの場合、どうしてもヒロインが「男性視点でのステレオタイプ」という枠にはまってしまいがちです。あるいは、女性のクリエイターが作られたゲームなどでは、「主人公は白馬に乗った王子様」といった扱われ方が鼻につくケースが多いように見えます。しかし、そのいずれにも走ることなく、バラエティに富んだキャラクター群を、地味ながらむだなくきちんと描いているという点では、非常に光るものがあります。いわゆる「破壊力」という点では大したことはないのですが、「ベタな展開」だけではない意外さを見せてくれるシナリオとして評価できます。ただ、バラエティがかなりあるので、個人的な嗜好から外れるシナリオやキャラが出る可能性が非常に高いのですが(私は、某お嬢様とロリなガキは却下)。
唯については…コメントは控えます(^^;) そういうゲームになると目の色が変わる方もいらっしゃいますので、そういう方に論評はお任せしましょう。
選択肢によってフラグ立てを行い、それを繰り返すことでシナリオが分岐していくタイプのアドベンチャーゲームです。好感度といった要素はないようなので、気楽にプレイすることが可能です。
難易度もそれほど高い方ではありません。選択肢をすべてつぶすような感じでいけば、まずほとんどのエンディングに到達できるでしょう。もっとも、エンディング確認ができないのは困ったところですが。
私の環境では不具合はありませんでしたが、ジャニスのWebサイトにアップされている修正プログラムを使うと、逆に動作がおかしくなりました。やるな、ジャニス(爆笑)
セーブできるのは選択肢が出たところでのみ3個所で可能、ロードはプレイ中は不可、メッセージスキップ不可、256色モードでないと起動不可など、なかなかストレスが溜まりやすい操作性になっております。1回あたりのプレイ時間が短いのであまり気にはなりませんでしたが、これで長かったらシャレにならないような。メッセージ表示はCapsLockによってノーウェイト可能で、キーボードも使用可能というのが救いといえば救いでしょうか。
CGモードやBGMモードはありません。CGは、ゲームCD-ROMの中にBMPファイルとしてそのまま入っているので、見ることは容易ですが、先述のとおり、エンディングを確認できないのは痛いところです。マルチエンド方式のゲームには必須の機能だと思うのですが。
BGMはPCMファイルで演奏されますが、あまり記憶に残りませんでした。音声はなし。
通常シーンでは、会話をするキャラの表情アップ(これの変化がなかなか楽しい)と、イベントCG(背景+立ちキャラの場合と独自CGの場合とがあり)とを組み合わせた形となります。いかにも「古そう」という印象を抱かせる出し方ではありますが、これはこれでおもしろいので良し。フル画面になるのは、Hシーンだけのようです。
イベントシーンでのマンガ的なCGが非常に楽しいですね。トランク爆発シーンとか(^^)
キャラクターの立ちCGがワンパターンで、しかもマシン環境によってはかなり描画に時間がかかるのはあまりよろしくありません。見ていても楽しくない。コミカルな画面での楽しさに比べ、それ以外の画面ではどうも手抜きのように感じられてなりません。
朱奈でしょう。第一印象では美穂の方が上だったのですが、背負ってきたものの重みが全然違うぞ。もっとも、堂々と朱奈の方を選ぶと、美穂に刺し殺されそうな気もしますが(^^;)
さすがに古いゲームということなのでしょう、これを正面から取り上げられているところはあまり見当たりません。
操作性の悪さ、立ちCGのショボさなど、なんとかしてくれ、と思う反面、セリフの使い方、イベントの組み方、そして何よりもキャラクターの配置など、非常に光る面を多々見せてくれる、小さいながらもよくできた作品だと思います。
ただ、ゲームそのものが「時代を感じさせる」ような古くささを放っているだけに、今からあえてプレイしてみるほどのものではないかもしれません。この作品は、後の『星のささやき』で、上に挙げた利点を忠実に継承させていますので、今となっては、こちらの方がお勧めですね。「古さ」そのものも継承している観がなきにしもあらずではありますが(^^;)