悲劇 〜NIGHTMARE COME TRUE〜 SAINT

1999年1月14日発売
ご意見などは掲示板へどうぞ

 地雷とかクソゲーとか、ゲームの中でも特にひどいものを評するときに使われる言葉がいくつかあります。しかし、プレイヤーの神経を逆撫でさせるという点で、とくにひどい代物が確実に存在するという事実を、私は1本のソフトによって思い知らされたのでありました。あらゆる面に対して神経を逆撫でさせ、なおかつ、そもそも「商品」としての最低限の責務さえ果たしていないというゲームソフトによって…。

シナリオ

 主人公は、病院経営者の息子で、医大生。彼の元に届いた一通の封筒。その指示に従って少女を陵辱した主人公は、次から次へと少女を襲っていくことになる。その陵辱の果てに待っている真実とは何か。

 

 取り扱う舞台装置としてのテーマは、非常にヘビーなものがあります。医薬関係機関をバックとした構造的犯罪とその被害者、人倫と罪悪、友情と憎悪、そういったもろもろの関係が複雑に入り組み、ダークな設定が生きるような素材を配置しています。

 また、題材に「薬害」という、非常にシビアなものを敢えて使った点そのものは、一定の評価をしてよいでしょう。もはや忘れられつつある観のある、HIV薬害問題。これをもとに思いついたものなのでしょうが、人間のもつ「倫理」というものの根本にはなにがあるのか、それを、今現在生きている我々は見失ってはいけないはずです。ともすれば、特定の個人なり団体なりをスケープゴートとして攻撃しておしまいにしたり、はたまた、空疎な体制批判的言辞に終始して自己陶酔的結論に帰着しがちな「進歩的」メディアも多い中、やや安直ではあるものの、超重量級のシナリオを支えるに十分な設定です。実際問題として、医薬関係の不祥事等はそれが表沙汰になることが少なく、あってもそれは当面の体制維持のためにトカゲの尻尾切り程度の「その場しのぎ」を続けるのみ、というケースもあり、さらにはこういった機関に対する告発等も、司法機関で救済される可能性が(現状では)相当に低いといった点を考えれば、なかなかに衝撃的な題材である、とも言えましょう。

 

 しかし、その設定にのっているシナリオがねぇ、スカスカ(--;)

 上記のようなヘビーな素材は、確かに、活用するのは非常に難しいでしょう。しかしながら、こういった「素材」を出していながら、陵辱シーンだけのサービスゲームにしてしまうシナリオライター氏のセンスというものが、私には理解できません。否、単に「薬害」というものを使ったにせよ、それを強引なギャグで力技的に処理してしまうシナリオになっているのなら、それはそれでいいと思います(使い方によっては非常に危険なシロモノになりますが)。しかし、このゲームでは、(攻略の順序にもよりますが)半端に「倫理」といった領域に踏み込んでしまっているため、消化不良という印象が非常に強くなってしまいます。ごく単純な陵辱ゲームというのであれば、それなりに見ることもできる、と言えないでもないのですが、それならば、せいぜい脅迫するためのネタ程度で済ませておくべきであり、某スポーツ少女がまっとうに活躍するようなエンディングを中途半端に入れることの意味などなかったと考えます。

 ばっさり言ってしまえば、「素材」を活かせず、腐らせてしまっています。もともと毒のある「素材」なのですが、こういったものが活かされないままに腐臭を放っている様は、腹立たしさを通り越して、情けなさを感じます。

 

 細部の描写が、妙にリアルなのも、なんだか不気味な感じです。盗撮した写真を、「このままじゃ現像には出せないな」と、自分で現像する、など、ほかのゲームには見られない点もあるのです。しかし、根幹がスカスカなので、枝葉の色つやが多少良くても、全体としてはかなり低い評価をせざるを得ません。

ゲームデザイン

 陵辱対象の最初の1人は強制ですが、残りの陵辱候補は3人。その順序、あるいは手順によって、ストーリーは微妙に変化します。また、シナリオ全体を通じてのキーパーソン的な役割を果たしうるキャラもいるため、数回プレイする必要があるでしょう。実際には、行き先の選択、および、その先で出会ったキャラとの会話選択によってゲームが進みます。

 

 陵辱のターゲットとなる少女は、まず最初に1人(Aとします)、そして3人(以下、それぞれBCDとします)です。この際、BC間の人間関係(Dは、BおよびCとは疎遠)とか、A(最初に陵辱)を、BCD攻略に利用するとか、そういった要素が絡んでくるため、攻略の順によって、シナリオが微妙に違ってきます。

 しかしシナリオ自体は、基本的に同じ設定であり、ゲームオーバー以外の分岐もほとんどありません。難易度はそれほど高くありません。シナリオやCGを楽しむには適当なスタイルとなっているといっていいはずです。

 

 しかし……それ以前の問題として、バグがひどすぎ(--;)

 まず、デフォルトの状態では、起動に必要なファイルがインストールされないため、インストール後もゲームを起動することができません。どうやらインストーラ自体にバグがあるようです。CD-ROM内のファイルを手動でインストールする必要があります。

 さらに、ゲームを進めていくと、ハングアップする個所はあるわ、イベントの発生がめちゃくちゃになっているわ、セーブはできてもロードはできないわ、もうどうしようもありません。ゲームを「楽しめる・楽しめない」以前に「プレイできる」状態で出荷してほしいものです。これでは、対価を支払う「商品」とは呼べません。

不具合・修正プログラム

 上記のとおり、山のような不具合があります(--X) RSKのWebサイトに修正ファイルがアップされていました(現在は確認できません)が、これでもまだ十全のものではないようです。

操作性など

 セーブは、任意の個所で可能。また、セーブファイルは、作成の都度、名前を付けて単独のファイルとして保存可能なので、HDやMOなどに無尽蔵に作成できます。さらに、このファイル名は、自由につけることができますから、例えば「B陵辱完了直後」などといったファイル名もOKです。しかし、この一見便利なセーブファイルですが、いざロードしようとすると、非常に使いにくいものがあります。まず、ロードしようとしても、一発でロードできるとはかぎらず、数度リトライしてセーブファイルが開ける、あるいは何度やってもロードできない……これが通常パターンだと思っていただいてけっこうです。さらに、ロードしてみると、実際にセーブした位置よりも明らかに前の部分からスタートします。どうやら、いくつかのセーブポイントを区切ってあるようで……。

 さらに、速度調整・スキップとも機能ナシというのも、困ったもの。1回のプレイ時間が短いとはいえ、繰り返しプレイが必要なゲームである以上、これは必須でしょう。一応「自動的にテキストが流れる」オートスキップというのがありますが、これをぼーっと見ているより、エンターキーを連打した方がよっぽど速いんですけど。

 CGモードでは、各ヒロインごとにサムネイル表示され……ねえじゃねぇかよお!! 見たはずのCGが見られ……、たった3枚しか見たことになってないだとぉ? このあたりも、「バグ満載ゲーム」の本領を存分に発揮してくれます。回想モードはなし。

サウンド

 BGMはMIDIです。悪くはありませんが、さほど印象にありません。音声は、なかなかいいですね。基本的に、縛ったり監禁したりというのはなく、精神的に追いつめてなぶるのがこのゲームでの陵辱パターンなので、追いつめられるのがよくわかります。

グラフィック

 キャラデザは、デッサンの狂いが目立ち、特に乳首の描写など「オイオイ」と思わせるところも多かったのですが、それでも、表情が意外とうまく描けていたと感じました。特に、絶望したときの瞳(本当に縮瞳現象など起こしたら大変ですが)が印象的です。

 Hシーンは、私はかなり良いと感じました。SMは1つだけで、あとは見かけ上はあくまでもノーマルです。もちろん、「陵辱」には違いないのですが、Hシーンの大半は、相手を追い込んで和姦に持ち込んでいるため、一見ソフトなHシーンが、実にエグいものに見えます。硬派な鬼畜者の方々(何だそりゃ)には、多少物足りないかも。

 背景は、写真を取り込んだだけですね。もう少し芸がほしかったところですが、別にそういったところに力を入れる必要もないでしょうし、ここはいいとしましょう。

お気に入り

 なし。

総評

 「名は体を現す」ということばを、そのままお返しいたしましょう。そう言いたくなる代物です。発売直後から、ネット上で「なんじゃこりゃ」という怒りの嵐が吹きまくったのは当然のことでしょう。お金を払って買った「商品」としては、欠陥品以外の何物でもありません。シーズウェアの『Re-leaf』もかなりひどかったのですが、これに比べたらかわいいものです。下手に期待していただけに、修正ファイルを使ってなんとかプレイしていても、怒りのやり場が収まらなかったものでした。

 このゲーム以降、「SAINT」ブランドでのゲームがリリースされている気配はありません。サポートのまずさも相まって、ブランドが姿を消した可能性が高い、と睨んでいるのですが、実際のところはどうなのでしょうかね。

個人評価 ★☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
1999年9月14日(1月16日、NIFTY SERVE FCGAMEXにアップロードしたものを加筆・修正)
(2000年11月21日、加筆・修正)
Mail to:Ken
[レビューリストへ] [トップページへ]