「With You」の発売後、F&Cより今度はフェアリーテールブランドで「PALETTE」なるゲームが発売になるとの発表がありました。が、「With You」で痛い目をみていた方は今度は見送りと決めた方が多かったようです。かく言う私は、と言えば、「ヒロインが選択できるシステム」というのに興味をひかれて突撃してみることにしたのでした。F&C嫌いの人には「懲りない面々」などと揶揄されたりもしたのですけどね。さてその結果はどうだったのでしょうか?
ゲーム内容は、主人公は高校生で、子供の時に主人公の家に引き取られて実の姉のように過ごしてきた従姉のお姉さんのマンションに居候しています。そして周りには幼なじみが二人、主人公を「お兄ちゃん」と慕う従妹の女の子、さらには従姉のお姉さんを通して知り合った他校の女子生徒、と女の子に囲まれています。さてその中で主人公は誰と恋に落ちるのか、というゲームです。
最初から始める場合はシナリオが3つ選択でき、恵理&翠編(幼なじみ二人)、玉緒編(従妹の女の子)、深月編(他校の女の子)があります。さらにバッドエンドを見ると千晴編(従姉のお姉さん)が追加されます。ただしヒロインの選択と言っても、そのキャラしか攻略できないというわけではなく、他のキャラとのエンディングを見ることも可能です。ヒロイン選択というのは「登場する回数が多くなる」くらいの意味であると考えた方がいいのかもしれません。メインヒロインシナリオからのエンディングと他のシナリオからのエンディングではそれぞれ味わいが違い、キャラクターの魅力を十分に味わえる作りとなっています。
しかし幼なじみ二人の設定が、片方が活発、もう片方が大人しい眼鏡っ娘、と「With You」とそっくりなのには驚きました。これは「偶然そうなってしまった」のだそうですが。
このゲーム、内容的には完全に「日常の1コマ」であって、劇的な展開等は一切ありません。それだけに、ゲームからインパクトを受けることを求めている方には全く向かないでしょう。私としては描写を完全に日常の範囲にとどめておくことによって、ごく普通の生活の良さをうまく描いていると思うのですが、そういった感想はあまり見かけない所を見ると私の感性が一般とかけ離れているのでしょうね。念のために書いておきますと、間違ってもシナリオ重視系の方にはお薦めできません。ご注意を。
ここで2つほどこのゲームの特徴的なことを書いておきたいと思うのですが、まず1つ目として、ゲーム中である女の子に告白するために、それまで関わりのあった女の子に断りを入れる必要がある場合がある、ということです。以前「昔話」その34で触れた「さくらの季節」とこの「PALETTE」以外ではこういった描写は見たことがありません。ヒロインの方から身を引いて主人公の背中を押す、というタイプなら色々あるんですが。
告白する相手が決まったら他のヒロインのことなど全く無視、という主人公が大半な中にあって、こういう筋を通す描写はなかなかないだけに、その点だけでも評価していいのではないか、と思っているのですが。
もう1つは、「親しい間柄ではあるのだけれど、恋人への一歩が踏み出せない」というパターンはよく見かけますが、その一歩のために非常に不愉快なイベントを挿入しているゲームがあります。(例「To Heart」「ONE」) ところがこのゲームにおいては、「主人公が他の女の子にフラれる」というイベントをもって来ています。これなら女の子の方は傷つかなくてもすむのでうまいやり方だな、と思ったのですが、一般受けはしないでしょうかね?
個人的にはかなり気に入っているゲームなのですが、このゲームの最大の欠点はキャラクターデザインにあります。Kenさんも気に入らなかったようですが、やっぱり一般受けはしにくいでしょうねぇ。これまた「if」の世界になるのですが、もしこのゲームのキャラクターデザインが「With You」の橋本タカシ氏だったら。「With You」を超えるヒットとなっていたかもしれません。絵のせいで不当に低く評価されている感があり、残念でならないのですが。
強くプレイを勧めるほどにずば抜けたセールスポイントがあるわけではないのですが、地味ながらも結構こだわって作られた作品であるだけに、何気ない日常の心地よさというものを体験してみたいという方にはいいかもしれません。間違ってもシナリオ重視系の人はプレイしてはいけませんが。