「暗黒太極拳」だの「闇の盆踊り」だのと、それだけで何かを感じさせてくれる異名を持つこの『センチ〜』は、実は私には思い出深い作品だったりします。1998年1月、NECインターチャネルよりSS版として発売されました。PC版は1998年10月に発売されています。
あらすじは――春、主人公に届いた一通の手紙。消印のないそれには「あなたに、あいたい」としか書かれていなかった。主人公には全国に12人の想い出の女のコがいて、この手紙はその中の一人が出したに違いない。主人公は手紙を出した女のコを見つけることが出来るだろうか?――というものです。平たく言うと、札幌から長崎まで日本全国に12股をかけるお話です。
このゲームで一番強烈な個性をもっているのが実は主人公。一見まともそうですが、やってることは凄いです。
小・中学生時代(9年間)に12回転校したことはまぁよしとしましょう。親の仕事の関係でしょうから(どんな仕事だ?)。しかしそれぞれの都市に一人ずつ想い出の女のコがいるってのが凄い。しかもこの想い出、主人公が演出した形跡があります。
一例を挙げると高松娘。このコは病弱で内向的・泣き虫・リルケを愛読・登校拒否の気があるという、毒牙にかけるにはもってこいの女のコ(ぉぃ)。主人公、何気なく近づきます。仲良くなって高松娘を励まし、ようやく彼女が決意して登校したとき――主人公は急に転校したあとで、机には「ガンバレ」と書いてあった……。
急な転校といっても、連絡する手段はあるはずなんですけどね。しかも机に「ガンバレ」の文字……。一見心温まるお話なのですが、これは高松娘の心に印象づけるために演出したのでしょう。と言いますのも、これが一人ならそんなことは言わないんですよ。しかし他のコの別れも似たり寄ったり。
しかも金沢娘(呉服店の跡継ぎ、本人は画家希望)に「着物もカンバスもおんなじだね」と、わかったようなわからんような台詞で女のコの気を引きます。他のコの気の引き方も似たり寄ったり。(こればっか)
私が思うにこの主人公、“モテるために生き、モテるために手段を選ばない”人間なんでしょうね。『センチ〜2』のOPではこの主人公が交通事故で死んだところから始まるそうですが、「よく刺されなかったな……」と思ったもんです。(笑)
お気に入りは京都娘。今や絶滅したと考えられる“お嬢様”です。(爆弾発言) 黒い意味でのお気に入りは札幌娘。(ぉぃ)
終盤でのイベントですが、札幌娘と夜景を見に行って彼女が目を閉じたのを主人公が勘違いしてキス、そしてビンタされます。その後仲直りして札幌娘の別荘に行くのですが、吹雪で帰れず二人で一泊。札幌娘が「怖いから」と主人公のベッドに潜り込んで、しかも「信用してる」……。主人公は悶々とした一夜を明かします。……あのシーンだけは心から主人公に同情しましたね。
このゲームのBGMは良いですね。気に入ってサントラも買いました。各女のコのボーカル曲もありますが、そちらもメロディーは良かったです。しかし歌が揃いも揃って下手っぴ。全員が、とまでは言いませんが殆ど『とらハ』OP曲と互角ではないでしょうか。
散々ボロクソに書きましたが、結構楽しめましたよ。語るに足る内容ではないですが、あまり不快になることもありませんでしたし、何よりここまで突っ込めると……。(笑)