EP−ROMの昔話・その39

To Heart

2003年3月17日

 タイトルのゲーム「To Heart」が出る以前にLeafは「雫」「痕」という2つのビジュアルノベルである程度の評価を得ていました。そしてビジュアルノベル第3弾として出てきたのが「To Heart」です。発売が数回に渡って延期され、期待していた人を結構やきもきさせたのでしたが。私は周囲の期待がかなりのものだったのと、雑誌の付録についていたデモが良さそうだったので購入することにしました。1997年5月にWindows95用として発売になっています。

 さて発売当時においては大きく分けて2つの反応がありました。1つはキャラクターの魅力やシナリオにノックアウトされて萌え萌えになった人。もう1つは「雫」「痕」の路線を期待していたのに「何だこれは、ただの恋愛ゲームじゃないか」と思った人でした。ただ前者の方が圧倒的に数が多く、後者の意見はいつの間にやら消えてしまった感があります。私もそうでしたが、これがLeafのゲーム1本目という方が多く、それ以前のゲームにとらわれなかった人が多かったのかもしれません。

 このゲームがその後のゲームに与えた影響というのは計り知れないものがありますが、その1つとして「主人公べったりの幼なじみ」が上げられるでしょう。それまでのゲームでメインヒロインが幼なじみというゲームはいくつかありますし、「毎日一緒に登校する」までだったら例があります。しかし、毎朝主人公の部屋まで起こしに来て、身の回りの世話を焼く、などというのは見たことがありません。(「晴れのち胸騒ぎ」がこれに近いことをやっていますが、このゲームは設定が特殊なので比較にならないでしょう)それまでの幼なじみというのは「親しいながらも一定の距離を保つ」という場合が多かったのですが、「To Heart」以降の幼なじみは「いくらベタベタしても許される存在」に変質したように思います。それまでのゲームの常識からすればあかりのようにベタベタしていて「恋人ではない」というのはムチャクチャなのですが、今ではこれが普通になってしまいましたね。その後「主人公べったりの幼なじみメインヒロイン」が大量発生したことを考えても、このゲームの影響の大きさを感じずにはいられません。

 もう1つとして「先輩ヒロインの定着化」というのがあります。「さくらの季節」や「放課後恋愛クラブ」にすでに先輩ヒロインは存在していましたが、完全に定着させたのは「To Heart」でしょう。それで面白いのは、先輩ヒロインというのは年上であるにもかかわらず「保護の対象」となる場合が多いのですが、これも「To Heart」の影響のように思います。実際に行ったのは「放課後恋愛クラブ」の方が先なんですけどね。

 このゲームが出たタイミングというのも良かったのかもしれません。1997年というのはPC-98が終わりを告げ、WindowsプリインストールのAT互換機が普及しだしたころですが、そういったマシンを購入された方が18禁入門として「To Heart」を購入したという例も多かったようです。実際、「これが最初の18禁モノ」という書き込みを結構見ましたし。

 ところで私の個人的な感想について。最初は確かに感動しました。しかし、感想や考察などを書くために何度もリプレイしているうちに、シナリオの内容が「こうすれば感動するだろう」というあざとさのようなものが感じられて興醒めしてきました。NIFTYでこのことについて批判して、相当大勢の人を敵に回しましたが、今から考えると何であんなにムキになっていたのか不思議なほどです。私もまだ枯れていなかったのでしょうね。

 それからもう1つ、Leafのゲームというのは「Hシーンになると主人公がエロ親父に変身する」傾向があるようです。このことについてもかなり批判したのですが、賛同してくれた方は少なかったですね。それで「自分の認識の方が少数派」であることを自覚せざるを得なかったのですが、こういうのを喜ぶ人の方が多い以上、「エロ親父に変身する主人公」は無くならないのでしょうね。

 今日の恋愛系のゲームにおいて、「To Heart」以上に大きな影響を与えたゲームはない、と言っても過言ではないほどこのゲームの影響は大きかったと思います。間違いなく歴史に残る1本でしょう。NIFTYの会議室でも大暴れして、思い出深いゲームではあるのですが、好き嫌いのレベルで言うならば「あまり好きにはなれない」ゲームでもあるんですよね。振り返ってみる時に複雑な心境にさせてくれるゲームでもあります。

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