EP−ROMの昔話・その34

さくらの季節

2003年2月6日

 皆様は「楽しいゲームの例を挙げて下さい」と言われましたらどんなゲームが思い浮かぶでしょうか?(「面白いゲーム」ではありません、念のため)。改めて聞かれると結構難しいものですが、私が1つの例としたいのがタイトルの「さくらの季節」です。ティアラより1996年4月に発売になったゲームです。

 ゲーム内容は、主人公山神修司(名前変更不可)はずば抜けた運動能力を持つがゆえに他人から畏敬の目で見られて孤立する、という経験を重ねてきたため、本気を出すことなく適当に過ごしていればいい、という考えを持っていました。そんな修司が高校に入学すると、いつの間にやら周りに女性たちが集まってきて・・・ というゲームです。

 ゲームの期間は1年ですが(サブキャラとのエンディングだと1年経過する前に終了しますが)、イベント単位でゲームは進行するためダレを感じることなくプレイすることができます。

 特徴的と言っていいのが、主人公が「色恋沙汰に無関心」ということが上げられるでしょう。別にストイックというわけではないので、「無関心」という言い方が一番適切な気がします。

 さて、このゲームの発売当時は2つのことで話題になっていました。

 まず1つはゲームに登場するキャラがアニメのヒロインなどにパクリなどというレベルではなく「そのまんま」であることでしょう。メインの3人はレイアースのキャラそのままだし、他にもエヴァンゲリオンのキャラそのまんまなどがいます。これ問題になったという話は聞いていませんが、大丈夫だったのでしょうかねぇ?

 惜しまれるのは、これがゆえにこのゲームは正当な評価を受けていないのではないか、と思えることで、ゲーム自体は「元ネタを知らなければ楽しめない」などというものではなく、非常な「楽しさ」を味合わせてくれるものです。それだけにキャラがパクリであるのが残念でなりません。オリジナルのキャラクターであってもこのゲームは十分に楽しめるものであったでしょうから・・・

 もう1つは、メイン3人のうち一人に告白する場合は他のキャラに断りを入れなければいけない、ということです。理屈から言えば自分のことを好きだと言ってくれた女の子をほったらかして他の子に走るというのは倫理的に問題でしょうが、そのような女の子に断りを入れに行くというゲームはほとんど見たことがありません。私が知っている限りでは、このゲームの他にはF&Cの「PALETTE」くらいでしょうか。他の女の子に断りを入れるのは結構心が痛みますが、見捨ててほったらかしにするという後味の悪さからは解放されているのでこれはこれで悪くないかな、と思います。もっとも、これを取り入れたゲームというのが他にほとんどないことを考えると一般的には受けはあまり良くないのでしょうね。

 それからこのゲームにはもう1つ特徴があって、ヒロインに「学校の先輩」がいる、というのが上げられます。それまでの学校を舞台としたゲームというのはほとんどが主人公は3年生で、先輩を出すということは「物理的に不可能」だったため「先輩ヒロイン」というのがいなかったのでしょうが。今日では「学校の先輩」はヒロインの形態としてすっかり定着していますが、その意味では先駆的なゲームであったと言えると思います。(先輩ヒロインを定着させたのは「To Heart」でしょうけれど)

 ゲームとしては非常に楽しいものではあるのですが、「主人公とヒロインがひかれあっていく」というラブストーリー的観点ではちょっと物足りなさを覚えるのもまた事実です。これはまあ、主人公が恋愛に「無関心」であるだけにやむを得ないのかもしれませんが。

 もっとも、「レイアースの3人が学芸会やってる」という感想も見ましたので、感じ方は人それぞれなのでしょうね。

 そう言えば、このゲームはWindows95版も出ていますが、PC-98版のベタ移植である上に、操作性はむしろ悪化しているそうなので、もしこれからプレイしようと思うのであればPC-98版の方が良いでしょう。(エミュレータでも動作可能です)

 キャラがパクリであることが惜しまれるゲームですが、ゲームにおける「楽しさ」とは何かについて考える場合には格好の素材を提供してくれるゲームであると思います。

written by EP−ROM