このニュースに関連した操作メニュー
ニュース記事評価
昆布ヨウ素 豪で健康被害の集団訴訟…習慣の違い、過剰摂取の形に
2013/01/23 16:57更新
この記事に関連するフォト・情報
記事本文
日本で製造された豆乳を飲んで健康被害が出たとして、豪州で販売業者などを相手取った集団訴訟が起きている。豆乳に含まれていた昆布の高濃度のヨウ素(ヨード)が原因とみられる。日常的に昆布を食べている日本人には問題ない量でも、摂取量が少ない欧米人では急な過剰摂取で健康被害が起きる可能性があるという。昆布や海藻を食べる日本食は海外でも健康的な食事として注目されるが、専門家は「安易な食文化のグローバル化は避けるべきだ」と警鐘を鳴らしている。(平沢裕子)
◆10人の甲状腺障害
豆乳は豪州の健康食品会社「スパイラル・フーズ」(本社・メルボルン)の依頼で、日本の食品会社「マルサンアイ」(愛知県岡崎市)が製造し、「ボンソイ」の製品名で豪州のスーパーなどで販売。しかし、2009年12月、豪ニュージーランド食品基準局に「高濃度のヨウ素が含まれる」と指摘され、リコール(自主回収)。きっかけは子供1人を含む10人の甲状腺障害だった。集団訴訟は、同様にボンソイを飲んで甲状腺に異常が出た人たちが起こしている。
当時のボンソイにはスパイラル社の要請で昆布を使用していたが、リコール後、昆布は使用していない。輸出を担当した「むそう商事」(大阪市北区)は「豆乳をおいしくするため、塩の代わりに昆布を使っていた。昆布は日本古来の食品で日本人は日常的に食べており、ヨウ素の問題は認識していなかった」と打ち明ける。
関連記事
記事本文の続き 国立医薬品食品衛生研究所の資料によると、リコール時のボンソイ1カップ(約200ミリリットル)のヨウ素は約7・5ミリグラムで、豪州で推奨される成人1日当たりの耐容上限量の約7倍だった。ただ、昆布の煮しめ2個(10グラム)のヨウ素は13ミリグラムで、ボンソイのヨウ素は日本人にとってはさほど問題となる量ではない。
尚絅(しょうけい)大学(熊本市)の西山宗六教授(内分泌学)は「日本人の健康な大人の場合、昆布でヨウ素の過剰摂取が問題となることはほとんどない。長年の食習慣によって日本人にはヨウ素への耐性ができているのだろう」と指摘する。
◆妊娠中は控えて
ただ、日本人でも妊娠中や授乳中の母親はヨウ素の過剰摂取に注意が必要だ。新生児の甲状腺刺激ホルモン(TSH)値が高いと先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)の恐れがある。西山教授が平成12~15年に新生児約3万8千人のTSH値を調べたところ、TSH値が高い新生児の母親は妊娠中、正常な新生児の母親の約6倍ものヨウ素を摂取していた。「めんつゆやカップ麺など昆布エキスを含む食品は多く、気づかずに過剰摂取している可能性もある。昆布は有益な食品だが、妊娠中や授乳中の女性は摂取を控えてほしい」と西山教授。
ボンソイは「数百年の伝統ある日本の豆乳レシピ」との宣伝文句で健康食品として売られていた。西山教授は「以前、インドネシアで(イスラム教で禁忌の)豚肉エキス入りの食品が問題となったことがあるが、これも他国の食文化に対する無知が原因だった。長年の食習慣によってその国の人の体が作られている面もあり、ヨウ素は日本以外では扱いに慎重にならなければならない。販売の際は厳重な注意書きを添付すべきだ」と話している。
【用語解説】ヨウ素
甲状腺ホルモンの働きに必要な微量ミネラル。海藻や魚介類に含まれ、特に昆布には多量に含まれる。豪州ではヨウ素不足を補うため、一部の食卓塩やパンにヨウ素を添加。ヨウ素が不足気味の国の人が急激に多量を摂取した場合、甲状腺機能低下症などの健康被害を起こしやすいことが分かっている。「日本人の食事摂取基準」(平成22年)では、1日当たりの推奨量(成人)は0.13ミリグラム、基準超の摂取で健康障害のリスクが高まるとされる「耐容上限量」は2.2ミリグラムとしている。
広告
話題のニュース
ニュース記事ランキングの一覧
タイトル | 更新日付 | 補足情報 |
---|---|---|
【主張】安保懇談会 「国の守り」の総点検急げ | 02/10 03:17 | |
なりすましメール 逮捕の30歳男、平成17年… | 02/10 09:50 | |
なりすましウイルス 逮捕の30歳男、頭から上… | 02/10 10:15 | |
「レーダー照射」中国“嘘つき”のウラ 秦の始… | 02/10 10:30 | |
なりすましウイルス コミケ大量殺人予告容疑、… | 02/10 08:47 | |
「ちょんの間」の絶望…あっという間に“売春人… | 02/09 18:22 | |
彼氏の就職内定取り消し恐れ…彼女が身代わり出… | 02/09 18:50 |