EP−ROMの昔話・その23

V.R.デート五月倶楽部

2002年12月29日

 ヒロインが複数いて、最終的に一人を選ぶ、というタイプのゲームの場合、以前においては「同級生」型とも言うべき、「一定期間をプレイして、最後に一人を選んで告白」というタイプが多かったように思います。が、今日においては「前半でヒロインの絞り込みが行われ、その後絞り込まれたヒロインのシナリオに分岐」というタイプが多いようです。

 ではこの今日のようなタイプのゲームの元祖は何なのでしょうか? おそらくそれが今回のタイトルにある「V.R.デート五月倶楽部」であろうと思われます。デザイアーより1995年8月に発売されたゲームです。

 詳細についてはKenさんのレビューを参照して頂きたいのですが、このゲームがその後のゲームに与えたであろうものが2つあります。

[1] Hシーンとエンディングの直結

[2] キャラクターのポーズ変化

 まず[1]から。「最後に一人を選んで告白」というタイプの場合、18禁ゲームである以上、どこかでHシーンを入れなければならないわけですが、「告白する前にHシーンを入れざるを得ない」わけで、これは冷静に考えればおかしなことです。また、キャラクターによってはゲームの期間が終了する前にイベントが全て終了してしまうということもあり、その後期間終了までダレるという問題点もあります。しかしこの「五月倶楽部」のように、「告白→Hシーン→エンディング」と直結するならこれらの問題点は全て解消されるわけで、なかなかの先見性があったと言うことができると思います。

 続けて[2]ですが、これ以前のゲームでは立ちCGでの変化というのはせいぜい表情程度で、ポーズが変化するということはありませんでした。しかしこのゲームではキャラクターのセリフに合わせてポーズがコロコロと変化します。これは見ているだけで楽しいです。実際、比較してみると良くわかるのですが、「To Heart」などはこの「五月倶楽部」の正常進化版と言うことができるでしょう。

 そして驚くのはPC-98版の場合、わずかフロッピー3枚組だということです。しかしたったそれだけとは思えないボリュームがあり、このゲームをプレイした人はほとんどが3枚組とは思えないボリュームに驚いていました。

 このゲーム、PC-98版などではスタッフロールが仮名になっていたのですが、のちに出たDX版では本来の名前に戻ったようで、シナリオ担当として、萌木一路さん、たいらひとしさん、三峰奈緒さんの3人が上げられています。

 現在までにこのゲームは3種類のバージョンが出ているのですが、

[1] PC-98版

[2] Windows3.1/95 16色版

[3] フルカラーDX版

 [1]と[2]は基本的に同じです。違うのは[2]には聴くに耐えないような音声が追加されている(OFFにすることをおすすめします)ことと、音楽が若干違うことです。

 [3]はCGがフルカラーになったこと、音声がまともになったこと、プレイアビリティの向上、などがあるのですが、大きいのはソフ倫の新規定に合わせるために美里ときららのシナリオが一部変更されてしまったということです。しかしこれ、シナリオの根幹に関わる部分なので、シナリオの味わいが大幅に失われてしまいました。このゲームにおいて評価してよいシナリオというのは美里、きらら、秋穂、圭子の4人だと思うので、この変更はかなり痛いものがあります。まあ、16色版のままでは倫理規定にモロに引っかかってしまうので仕方がないのでしょうが。

 また、16色版ではCG表示領域とメッセージ表示領域ははっきり分離されていたのですが、DX版では一般的な、フル画面のCGにメッセージウィンドウがフロート表示、という形式に変わりました。CGが大きくなったというメリットはあるのですが、そのためにキャラクターのポーズ変化という味がスポイルされてしまったということと、メッセージ表示エリアが狭くなってしまったために、文字の並びがどうにも美しくない、と感じられたものです。逆に言うと、16色版では文字の並びの美しさまで配慮していた、ということができるのですが。

 「CGが16色&音声なし」でもかまわないというのであれば絶対に16色版の方がおすすめです。Kenさんからの情報によりますとWindowsXPでも動くそうですし。

 シナリオの内容は名作と言うにはちょっと弱いですが、今でも十分通用するだけのものを持っていると思われます。個人的にシナリオの内容が思い出深いゲームなのですが、どこかで見かけたのであれば、やってみても損はないゲームだと思います。

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