熊本大発生医学研究所(熊本市)の博士課程1年、大垣総一郎さん(25)と粂昭苑(くめしょうえん)教授(50)らの研究グループが、マウスとヒトの受精卵から作る胚性幹細胞(ES細胞)を使い、それぞれ小腸の細胞を作り出すことに世界で初めて成功した。同大が7日発表した。
大垣総一郎さん
この手法は人工多能性幹細胞(iPS細胞)への応用が可能であり、小腸疾患の原因解明や新薬開発、再生医療につながるという。5日付の米科学誌「ステムセルズ」電子版にも掲載された。
大垣さんらによると、2種類の薬剤を使い、ES細胞の増殖や分化をコントロールする手法を開発。ES細胞を未熟な小腸上皮細胞に誘導した後、粘液やホルモンなどの分泌、栄養の吸収機能を持つ細胞に分化させた。その結果、ES細胞の約90%が小腸細胞になった。
同じやり方でiPS細胞から小腸細胞を作ることにも成功した。iPS細胞から大腸の細胞を作った例はあるが、小腸は初めて。
将来的には、患者の血液などを基にしたiPS細胞から小腸細胞を作り、体内に戻すなどの治療に使うことも考えられるという。
大垣さんは「低コストの薬剤で効率よく小腸細胞を作ることができた。この細胞が腸と同様に機能するか、研究を進めたい」。粂教授は「小腸が形成される仕組みには不明な点が多く、解明につながる可能性がある」と言っている。(山口尚久)
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