「高齢者はIT(情報技術)が苦手」という認識は、改める必要がある。すでに60代の半数以上がインターネットを利用し、ショッピングやコミュニケーションの手段として使いこなしている。「ITを使いこなすデジタルシニアが増えてくれば、彼らの知恵を生かす新ビジネスやシニア層の在宅就労も増えてくるのではないか」と東京大学大学院情報学環教授の橋元良明氏は予測する。
――橋元さんは、シニア層のインターネット利用に関する調査研究を電通と共同でされていますね。どういう狙いでいつごろから調査研究を始められたのですか。
橋元 2010年6月に電通総研と私で電通内に「デジタルシニア・ラボ」を立ち上げました。これはIT、特にネットを有効に活用してもらうことによってシニアが生きがいを見いだすような社会をつくり、結果的に社会全体が活性化・効率化することを目指した組織です。
いままでいろいろ調査をしたのですが、全国レベルの調査を3回、グループインタビューも数回行いました。それから、ユニークな試みとして、富山県でNPO法人の「PCTOOL」の協力を得て、それまでパソコンを触ったことも使ったこともない高齢者13人にパソコンを貸与し、パソコンの使い方、ネットの利用の仕方をお教えしながら、その方々がどう変わっていくか、1年間ずっと継続的に追うというフィールド実験も行いました。
■1年でブラインドタッチ習得した人も
――13人の方はおいくつなんですか。
橋元 60歳以上で、70歳を超える方もいらっしゃいました。
――とても興味深いフィールド実験ですね。
橋元 最初はキーボードも打てない状態だったので、キーボードの打ち方、文章の作り方から教え始めました。その後、飲み会や宴会の案内状を作っていただいたりしました。そして、みなさんが興味を持たれる年賀状作り、お友達リスト作りを手掛けたのですが、すぐにネットに移り、ネットショッピングをお教えすると、やはり興味があって、女性の方などは積極的に時間を割かれました。
ゲームをやられる方もいらっしゃいましたし、全員が交流サイト「フェイスブック」を使うようになり、今でもその方々同士、あるいはPCTOOLとやり取りをされています。
――まったくの初心者からフェイスブックに行くまでが早いですね。
橋元 そうなんです。キーボードも1年でブラインドタッチになった人もいます。みなさん、パソコンを駆使するようになりました。反応を聞きますと、いろいろな健康・医療情報を自分でネットで探して、勉強して詳しくなられた方もいます。グルメサイトも人気で、夫婦で調べて、おいしい店に行くようになったという人もいました。旅行関係でいろいろなサイトを見て、そのうちチケットをネットで取って旅行に行くような人も出てきました。
高齢の方は歩くのも大変です。富山はクルマ社会なので、クルマを運転するのがおっくうだと、近隣の店だけではいい商品が見つからないこともあるようなのですが、例えば「卵殻むき機」のようなおもしろい商品をネットで見つけたという話も聞きました。お米など重いものも、スーパーなどからネットを通じて取り寄せられるので、「非常に生活が豊かになったように感じる」「自分が幸せになったような感じがする」――という人が多かったです。
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