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(23時間29分前に更新) |
中国海軍艦船による海上自衛隊護衛艦への射撃管制用レーダーの照射問題は、日本と中国の主張が真っ向から対立し、話し合いの糸口さえ見いだせない状況だ。
国際社会に向けた情報合戦の様相さえ呈し始めている。
尖閣諸島沖で1月30日に発生したレーダー照射について日本政府は5日、小野寺五典防衛相が緊急に記者会見し、その事実を公表した。軍事情報をあえて公表することで「中国の危険な挑発行動」を国際社会にアピールする狙いがある。
安倍晋三首相は7日の衆院予算委員会で「国際社会のルール違反」だと中国を厳しく批判した。
一方、中国外務省は8日、「使用したレーダーは警戒用管制レーダーであり、射撃管制用レーダーではない」と日本側発表を否定した。
中国外務省の華春瑩(かしゅんえい)・外務省副報道局長は「日本が危機をあおり、緊張をつくり出し、中国のイメージをおとしめようとしている」と不信感をあらわにした。だが、中国の主張は説得力が乏しい。どのような意図の下でレーダー照射が行われたのか、真相を追求するのは当然である。
その一方で忘れてならないのは、1月25日、公明党の山口那津男代表と会談した中国の習近平総書記が、尖閣問題をめぐる日中の「対話と協議」に積極的な姿勢を示した、という事実である。習総書記は「大局的な立場に立って、戦略的互恵関係を推進していきたい」と述べた。
日中対話の扉を閉ざしてはならない。
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現在の日中関係には、軍事衝突に発展しかねない極めて危険な要素が潜んでいる。
中国国防省はレーダー照射について「日本政府高官が無責任な発言を行い、『中国脅威論』をあおっている」と、日本側を批判したが、これは中国軍が進めている「世論戦・心理戦・法律戦」の具体的な展開と言っていいだろう。
多様な情報に接する機会の少ない中国国民は、この種の情報に接して日本批判を強め、戦争による解決を支持する方向へと傾斜していく。
一方、日本国民も、中国側の挑発行動や強引さに嫌中感情を募らせ、安全保障に対する危機感から沖縄周辺の軍備増強を求めるようになる-。
尖閣諸島の「地元」である沖縄側から見ると、日中双方に、このような懸念すべき国民心理と軍事的な動きがみられるのである。
悪化する国民感情に引きずられ、ずるずると泥沼にはまっていく-そのようなシナリオは今や絵空事ではなく、蓋然(がいぜん)性の高い事態となった。
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朝鮮半島は、北朝鮮の3回目の核実験をめぐって大揺れだ。国際社会の警告を無視して核実験に踏み切れば、韓国も「強力な抑止力」の構築に動き、不安定化は避けられない。
竹島問題や従軍慰安婦問題で冷えた日韓関係もまだ改善されてはいない。
その上、日中関係も一触即発の状態が続けば、東アジアは一体、どうなるのか。
日中韓3か国の国民にとって、今が踏ん張りどころだ。