中国による「レーダー照射問題」で政府が伏せていた事実
2013.02.08 20:30:00 記者 : 夕刊ガジェット通信 カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ : 夕刊ガジェット通信
尖閣諸島周辺の公海で、中国の艦艇が海上自衛隊の護衛隊に向けて、火器管制レーダーを照射したことを、2013年2月5日に小野寺五典防衛相が明らかにした。また、1月19日には、海自のヘリコプターに向けてもレーダーを照射した疑いがあると言う。これに対して、安倍晋三首相の意向に基づき、外務省は中国政府に対して抗議した。
一方、中国外務省の報道局長は、レーザー照射が軍の単独行動であったことを示唆しつつ、「極めて危険な行為であり遺憾だ。戦略的互恵関係の原点に立ち戻り、再発防止と、事態をいたずらにエスカレートさせないように強く自制を求める」と2月6日の会見で述べた。そして、7日の会見では、「最近、日本側が危機をあおって緊張を高め、中国のイメージを損ねている」と開き直った見解を示した。
火器管制レーダーとは、「大砲やミサイルなどで射撃するため、標的へ向けて電波を照射し、その反射で距離や方位を測定するレーダー」で、「ピンポイントで対象物を追尾」し、「約20キロ離れた水上の目標も捉えることができる」(毎日新聞、2月6日付)。このレーダーを照射してロックオンすれば、あとはボタンを押すだけで対象物を破壊できる。
つまり、ボタンのひと押し先に日中間での戦争が待っていたわけである。まず、本当にレーダーが照射されたのか。続いて、誰がその判断をしたのか。中国政府には、この2点について、日本に対し説明を尽くす必要がある。仮に、現場の艦艇が独自に判断し、レーダーを照射したのなら、中国政府の軍部への指揮命令がいかにずさんなのかを証明することになる。
ただし、この問題で注意すべきは、中国の行動だけではない。本来は海上保安庁が警備すべき領海で、海自の艦船が活動していた。なおかつ、防衛省はその事実を日本国内で公表していなかった。レーダー照射は中国に非がある。しかし、国民が知らぬ間に、緊張する尖閣諸島の周辺海域に艦船を派遣して、さらなる緊張をもたらした防衛省にも問題があろう。
海保の艦船にレーダーが照射されたという話は聞かない。そして、海保の艦船しかいないはずの海に、いきなり海自の艦船が現れたら、中国の軍部が警戒感を強めるのは当然のことである。2国間の緊張を高めておいて、その原因である尖閣への海自の艦船派遣という事実を伏せておく防衛省の姿勢に、不信を抱いたのは筆者だけであろうか。
(谷川 茂)
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